月夜裏 野々香 小説の部屋

    

宇宙戦艦ヤマト 『南銀河物語』

   

   

 わたしは、宇宙海賊アルサ・ミエル。

 軍艦でしか国境を越えられないと思っている。

 皮被り野郎には、用はない。

 

第11話 『開発衛星アマテラス』

 チターム第4従星アスタームの軌道上に運ばれてきた開発衛星アマテラス。

 地下は、何層にも刳り貫かれ、資源衛星として使われる。

 採掘場や工場が造られ、

 ここからアスタームに資材が送り込まれていく。

 太陽熱を遮断されたアスタームは、表面の二酸化炭素が冷え、

 内側の熱した二酸化炭素と混ざり合う。

 そして、惑星に落とされる炭酸塩と混ざりながら緩やかに気圧を下げていく。

 衛星アマテラスは、アスターム開発の中核になりつつあった。

 そして、運び込まれるコアチタン鉱の格納庫でもある。

    

   

 アマテラス管制塔

 「・・・・どうかね。真田中将。コアチタン鉱は?」

 「古代提督。これほど軽くて強い素材はない」

 「ガルマンガミラスの妖緑鉱。ボラー連邦の紅晶鉱。西銀河のザイル鉱より軽量で強度がある」

 「粘度が少しばかり弱いが十分に補えるだろう」

 「問題は、加工だろう」

 「そうだが・・・・」

 「アトラス帝国でさえ、加工をあきらめた素材だよ」

 「ふっ 違うね」

 「古代提督。アトラス帝国は、これを加工するために人工進化を進めた」

 「???」

 「ふっ その件は、最高機密になっているから、当分は言えんよ」

 「別に構わんよ。それより、随分な艦隊で来たものだ」

 「全部寄せ集めじゃないか」

 「地球連邦色が少ないほうが政治的に都合が良いのさ」

 「ここはチタームなのだからね」

 アマテラス艦隊格納庫にガミラス・白色彗星・ボラーの艦隊・ディンギル艦隊・地球輸送艦隊が並ぶ、

 「藤堂少将は、どうしたのかね」

 「少し遅れるそうだ」

 「戦術プログラムを見せてもらった」

 「足並みの揃わない艦隊での運用。見事のものだ」

 「本人が聞けば喜ぶだろう。手間取っていたようだからね」

 「しかし、統一指揮を取る上では、どうしても不利になるな」

 「だろうね。それより古代提督。遊星ガイアスと少年は?」

 「少年には芹菜少尉をつけている」

 「惑星ガイアスについては巡洋艦を派遣してみるよ」

 「惑星は、あまり近付かない方が良いな」

 「むしろ、アンタッチャブルに分類できる」

 「・・・真田中将が、そういわれるのでしたら。そうなのでしょうね」

  

  

 恒星間国家群は、遊星ガイアスに気付いたのか、

 監視用の巡洋艦を派遣していた。

 そして、それぞれ、適当と思える距離で停船。

 拡大投影で見るだけ、

 太陽のない深宇宙で半球だけを太陽が当たっているように見せかけ、自転している。

 それだけでも、十分に異常さ、非常識さが、伝わる。

 ガルマンガミラス探査巡洋艦 フォンブルグ

 「・・・それで、全部、断られたのか?」

 「ええ、海賊も死にたくないようです」

 「どこか観測機を打ち込んだ国はないのか?」

 「いえ、どこも」

 「んん・・・臆病者が・・・」

 「打ち込みますか?」

 「いや、もうしばらく。観測を続ける」

 「・・・・・」

 「少なくとも原理がわからるまでは手を出したくない」

 「だいたい。あのエネルギーは、どこから来るんだ」

 「惑星内部に白色矮星でも隠しているのではないのか」

 「いつ消えるのだ」

 「惑星は、ごく標準的な質量ですが」

 「・・・大帝国のガルマンガミラスでさえ、こんな馬鹿なエネルギーの使い方を選んだりしないぞ」

 「ダイソン球を作るか 、もめているくらいなのだ」

 「艦長。ラートゥルの巡洋艦へキサドスから。通信です」

 『・・・これは、これは偉大なガルマンガミラスの探査巡洋艦フォンブルグが臆病風に吹かれ』

 『尻込みですかな』

 「これは、ラートゥルの巡洋艦へキサドスの艦長殿」

 「ラートゥル宇宙艦隊の伝統は確か “勇敢であれ” でしたかな?」

 「どうやら、買い被りのようですな」

 『むろん、“勇敢であれ” というのが伝統です』

 『決して “蛮勇であれ” では、ありませんな』

 多くの場合、他国を犠牲にしても情報が得られるのであれば平気で犠牲にする。

 もちろん、一番乗りが良いに決まっているものの、モノによりけり。

 というわけで、各国の巡洋艦が遠巻きに遊星ガイアスを観測する。

  

   ※ダイソン球。

      太陽を丸ごと覆って光・熱エネルギーを無駄なく使い切るという世界。

      簡易型にリングワールドがある。

  

  

 褐色矮星バルゴ

 褐色矮星にいちいち名前をつけたりはしない。

 ほとんどの場合。座標の数字を使う、

 しかし、戦略的に要衝であったり、重要な発見があったりすると、

 呼びやすいように名前をつける。

 そして、この褐色矮星バルゴもそうだった。

 他の恒星間国家からも、地球の影響圏からも離れている。

 そこに第18B艦隊の暗黒星雲帝国の巡洋艦4隻、駆逐艦5隻が軌道を周回する。

 『藤堂提督。巡洋艦カブキ。ゴルバ要塞に接舷しました』

 「状況と反応は?」

 『ゴルバ要塞の外見は無傷のようです。反応は、今のところありません』

 これは、悪い方の予測が的中していた。

 機関の故障で放棄されたのでなければ、

 内部にゴルバ要塞を放棄しなければならない危険な要因が残されている。

 「そうか。では、アンドロイド兵を内部へ潜入させてくれ」

 ジリジリと時間が過ぎていく。

 暗黒星雲帝国に占領された折。

 いろんな、資料が地球に残されていた。

 その中に地球遠征に向かっていたゴルバ型要塞(全長1080m×直径630m)の情報もある。

 地球連邦で、これほどの要塞はまだ建造されておらず。計画すらない。

 国力でいうと分不相応ともいえる。

 しかし、凄いといえるかどうか。

 白色彗星が直径20km。

 ディンギル宇宙衛星ウルクが全長20km。

 白色彗星帝国の大戦艦(全長 12200m×全幅 6029m×全高2305m)、

 これらは、機動性で言うと戦艦なのだから。

 ゴルバ型は、低度の低い鈍重な小型要塞と言える。

 『藤堂提督、大変です』

 「どうした!!」

 『ア、アンドロイド兵が・・・・』

 「しっかりしろ! 状況を・・・」

 艦隊全体に警報が鳴る。

 「どうした!」

 『・・・・アンドロイド兵が機能しません』

 「どういうことだ!」

 『こちら巡洋艦カブキ! 藤堂提督。アンドロイド兵が全て機能不全です』

 「・・・保坂艦長。貴様は、無事なのか?」

 『はい! ・・・・解析・・・・どうやら、生体機能と人工機構の連動性に支障があるようです』

 「では・・・人間は・・・?」

 『影響は・・・無いと思われます』

 「それで。か・・・」

 「脳以外のほとんどを機械にしてしまった暗黒星雲帝国がゴルバ要塞ごと放棄したのも頷けるな」

 藤堂がホッとしたように椅子に座り込む。

 「一体全体。なんで、こんなものを・・・・」

 後の調査で地球人の体と、

 暗黒星雲帝国人の脳を繋ぐための伝達ナノマシンを研究培養中。

 突然変異を起こし、ゴルバ要塞全体が感染。放棄されたことがわかる。

 もちろん、地球人も体内に人工物を入れている。

 しかし、補助機能が、ほとんどで依存も小さい。

 さらに気の強い。地球人に害をなさないとわかる。

 それでも、重装甲宇宙服を透過してしまう特殊なナノマシンは危険で絶滅させなければならず。

 そのための対ナノマシンを研究培養する。

 「やれやれ、手間を掛けさせてくれる」

 「確かに・・・しかし、ナノマシンというより、ピコマシンに近いレベルですよ。凄い技術です」

 「ったく。暗黒星雲帝国め非常識なものを・・・・」

  

  

 南銀河

 須郷は、ルートの様子と物資の搬出搬入の様子を見つめる。

 事業が、ある程度、軌道に乗るとマニュアル化される。

 そして、マニュアル化すれば低度の低い仕事になり、

 アンドロイドでも、十分に運用できるようになる。

 ここで、クオリティの高い人間を単調な仕事で遊ばせておくのは、ムダ。

 上手く。運用する必要があった。

 人間も楽な仕事を単調に繰り返すことを望むものの、

 そうさせてしまうと、能力のムダ使いになる。

 というわけで、須郷は、まだマニュアル化されていない部署に人材を追い立てていく。

 軍人には、この辺の感性がない。

 地球人技術者、貿易商人も区別無く。人事刷新していく。

 「須郷社長。少し、やりすぎでは?」 古代提督

 「エリート人事で組織を硬直化させ」

 「ぬるま湯で遊ばせるのは軍人だけで十分ですよ」

 古代提督は、ムッとする。

 衛星アマテラスの設備は、急速に拡大していく、

 合理的に行われたとしたら須郷社長の手腕によるところが大きい。

 特に物資の搬出搬入を滞りなく、に関して軍人の出る幕はない。

 貿易商人も、海賊も、仕事の掛け持ちは当たり前。

 採算重視で9割以上がアンドロイドの船も珍しくなく、

 軍民の採算に対する根本的な意識差は、簡単に埋まらない。

  

  

 ディンギル水雷母艦サクラ

 アルサ・ミエルの仕事は

 “プロジェクトを妨害しようという勢力の弱みを握って脅迫する”

 というものだった。

 そして、仕事の内容と成果によって、スゴシュ貿易商からボーナスが入って、二重取り。

 仕事のベクトルが制限されても収入が倍で、

 さらに支援も受けられ、悪くない取引といえる。

 そして、プロジェクト側の輸送船を狙う海賊船の情報をかぎつける。

 もう少し早ければ、スポンサーを叩いて海賊船を出せずに出来たが時遅し。

 すぐに警備艦隊に通報し、一網打尽の作戦が始まる。

 そして、おこぼれに預かろうとチターム警備艦隊と来る。

 「・・・・輸送船が打ち上げる転移通信を合図に転移」

 「警備艦隊も一緒に転移するので座標を誤らないで」

 「了解です」

 「・・・なんとなく。緊張するわね」

 「これが本来の海賊ですよ」 ガードベルト

 「へぇ〜 そうだったの?」

 「いつも、その前段階で処理されていましたからね。腕が鳴ります」

 「せいぜい、がんばってね」

 「でも、捕獲が目的なんだから。壊さないで」

 「向こう次第ですよ」

 「そうだけど・・・・」

 輸送船が宇宙空間を進む。

 そこに白色彗星帝国の戦艦1隻。ガルマンガミラスの巡洋艦2隻が転移点で、

 輸送船を転移不能にしながら接近する。

 戦艦と巡洋艦が周囲を警戒。

 そして、巡洋艦が輸送船に接舷して海賊が輸送船へと乗り込んでいく。

 ・・・・閃光・・・

 一瞬にして周囲が光で満ち溢れ、明る過ぎて何も見えない。

 輸送船から打ち上げられる転移通信カプセル。

 そして、輸送船に搭乗していたアンドロイド兵の逆襲が始まる。

 虚を付くことが出来た。

 さらにアンドロイド兵は海賊兵士より多数で、しかも強力で白兵戦で圧倒してく。

 警備軍のアンドロイド兵士が海賊を押し返し、巡洋艦側へと流れ込んでいく。

 それだけではない。

 光が消えていくと。

 周囲を警戒していた海賊の戦艦、巡洋艦も、警備艦隊に囲まれていることに気付く。

 警備艦隊は、巡洋艦7隻だったが数で勝り、

 転移点で転移をさせないように封鎖。

 そして、水雷艇6隻が海賊の艦橋を狙っていた。

 これでは、まったく勝ち目がなく。海賊が投降する。

 「・・・・やっと海賊らしい仕事が出来たと思ったら同業者潰しですか」

 「しょうがないわよ。仕事だもの♪」

 アルサ・ミエルは、鼻歌交じりにソロバンを弾く。

 査定では、アルサ・ミエルの取り分が一番多い。

 戦艦1隻、巡洋艦2隻の6割5分の権利は、アルサ・ミエルにあった。

 笑いが止まらないのは、このことだろうか。

 駆逐艦に毛が生えたような武装しかない水雷母艦が大儲けしているのだから、

 情報を知る者の強みがここにある。

 「警備艦隊から通信です」

 「えっ! フィルターをかけて繋いで」

 『・・・ご協力感謝いたします』

 『ブエノミナス船長。アークエンジェルの乗員にも、よろしくお伝えください』

 「いえ、メグレ局長。鮮やかな艦隊運用でした」

 『いや、これも正確な情報のおかげです』

 『今後とも、よろしくお願いしますよ。ブエノミナス船長』

 「ええ、出来得る限り」 にやにや

 簡単な偽装をした水雷母艦サクラ。

 そして、アルサ・ミエルが適当に誤魔化す。

 あとは、警備艦隊から海賊の懸賞金。

 そして、スゴシュ貿易商から口座にお金が振り込まれるだけだった。

  

  

 チターム 第3従星イスターム

 荒稼ぎが終わり、分け前を配分すると。

 やっぱり海賊。羽目を外したりもする。

 当然、女の子のアルサ・ミエルは、あぶれる事に・・・・・

 遊園地で遊ぶくらいが似合っている年頃なのだから、しょうがない。

 といういうわけで、遊園地。

 そして、一人で行っても、つまらず、モウブを誘う。

 もれなく付いて来る地球側とチターム側の諜報員。

 こんな恐ろしい存在を誘うのも、

 どうかと思うのだが同世代の男の子は物足りず。

 年上でさえ、自分の力を知れば引いていく。

 それで残ったのが恐怖の存在であるはずのモウブ。

 だいたい、宇宙空間で戦争しているのだから、遊園地自体が刺激不足。

 隣にモウブがいる恐怖が刺激になる。

 「・・・そうだ。サクラちゃん。君にお土産を持ってきたよ」

 と、どこから出したのか銀白色の長剣。

 受け取ると羽のように軽い。重量感ゼロ。

 剣を鞘から抜くと光沢がある銀白色。反りがあって日本刀に近い。

 「軽すぎない。これ?」

 「速度と力任せだけで切るの?」

 「普通、剣の重みを加重させて、叩き切るんじゃないの?」

 と、恐ろしいことを具体的にいう。

 しかし、重みを感じさせず。手を振るように剣を振る。

 「そうなのかい?」

 「でも、ありがとう」

 「女の子用のプレゼントにしては、どうかと思うけど嬉しいわ」

 「お礼にフランス料理を奢ってあげる」

 実は、コアチタンを精製して出来た剣で、

 追跡衛星で監視していた真田中将を慌てさせる。

 「ありがとう、サクラちゃん。意外に優しいね」

 「い、意外で悪かったわね」

 「両親に疎まれて生きてきた割には、やさしいかな」

 「普通は、もっと凶暴になるからね」

 「へぇ〜 モウブ君。そういうことも、わかったりするんだ」

 「地球人は良くわからないけど。統計的な。一般論でね」

 「当たらずとも、遠からずかも」

 「それより、モウブ君の星は、大丈夫なの?」

 「んん・・・周りに船が集まっているみたいだけどね」

 「五月蠅いから遠ざけているよ」

 「ふ〜ん。じゃ 近付かない方が良いと、思い込ませているんだ」

 「そう。サクラちゃんも得意だろう」

 「あはは・・・」

 まったくデリカシーのないネタばらし生命体だ。

 それでも、モウブは、男の子のカッコウだからデートのような気もする。

 もちろん、モウブの本質を誰より実感するアルサ・ミエルにすれば形だけ、

  

  

地球連邦で捕獲されている艦船

ガルマンガミラス帝国

白色彗星帝国

暗黒星雲帝国

ボラー連邦

ディンギル

中型空母

2

大型戦艦

1

ディンギル戦艦

1

大型巡洋艦

2

戦艦

1

中型戦艦

1

中型巡洋艦

2

バルコム航空戦艦

2

高速空母

1

巡洋艦

5

巡洋艦

3

デストロイヤー

12

駆逐艦

4

護衛艦

5

駆逐艦

4

駆逐艦

4

  

 開発衛星アマテラス

 軍艦というのは、時々訓練しないと練度が下がる。

 というわけで、古代提督は、アマテラスから第18V艦隊を出撃させる。

 大型戦艦1隻、中型戦艦1隻、

 バルコム航空戦艦2隻(コスモタイガーX 80機)、駆逐艦4隻

 戦術プログラムに応じて、艦隊を機動させていく。

 敵であるときは、脅威なのだがイザ自分で指揮を取ると、なんとも妙な気分がする。

 いくつか思いつく、戦術プログラムを作っては試してみる。

 古代提督と藤堂提督の戦術観の違いがでる。

 何しろ年代は古く、正規の戦隊に足りない戦艦、中型艦、小型艦、空母の数がチグハグ過ぎる。

 バルコム航空戦艦は扱いに悩む。

 航空戦艦というのは、そういう類の軍艦だった。

 撃ち合いをさせるには惜しく、

 かといって、航空戦には、中途半端すぎる。

 ヤマトと同じ、単艦で行動させてもいいが艦隊に襲われると弱い。

 艦隊戦は、システマチックでバランスを必要とする贅沢なものだ。

 運用という考えを外し、性能で見るならガルマンガミラス艦隊と白色彗星艦隊を一緒に運用。

 暗黒星雲帝国艦隊、ボラー連邦、ディンギル艦隊を一緒に使うのが良いような気もする。

 それにしても南銀河は混沌としている。

 貿易商人や企業が私設軍隊を持っている。

 大きな企業なら、地球連邦軍並みの戦力を簡単に動かせる。

 スゴシュ貿易商でさえ、500隻の船を南銀河全域で運用している。

 彼らに弱点があるとすれば、採算重視で、損になることはしない。だろうか。

 つまり採算さえ取れれば、無理なことでもするということ・・・・

  

 

 

 

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第10話  『開発惑星アスターム』

第11話  『開発衛星アマテラス』

第12話  『地球へ・・・』

登場人物 恒星間国家群 独立恒星系群 銀河勢力図