月夜裏 野々香 小説の部屋

    

宇宙戦艦ヤマト 『南銀河物語』

   

   

  

 わたしは、宇宙海賊アルサ・ミエル。

 軍艦でしか国境を越えられないと思っている。

 皮被り野郎には、用はない。

   

第12話 『地球へ・・・』

 開発衛星アマテラスの地下階層空間にコアチタンが満載されている。

 そして、衛星アマテラスは、徐々に衛星軌道を離れて小惑星アマテラスとなり、

 アスターム恒星系を離脱していく。

 アスタームのテラフォーミングは別の開発衛星で行うことになった。

 1年に及ぶ、地球・チタームのプロジェクトは成功。

 あとは時間の問題。

 地球連邦はコアチタンを満載した小惑星アマテラスを地球へ帰還させるだけだった。

 そして、

 
地球連邦第18機動部隊 + ヤマト

地球連邦

ガルマンガミラス帝国

白色彗星帝国

暗黒星雲帝国

ボラー連邦

ディンギル

ヤマト

1

中型空母

2

ゴルバ

1

大型戦艦

1

ディンギル戦艦

1

大型巡洋艦

2

戦艦

1

中型戦艦

1

ベガ型巡洋艦

12

中型巡洋艦

2

バルコム航空戦艦

2

高速空母

1

巡洋艦

5

巡洋艦

3

デストロイヤー

12

駆逐艦

4

護衛艦

5

駆逐艦

4

駆逐艦

4
機動艦 40

コスモドラゴン

36

コスモタイガーX

36

コスモタイガーX

140

コスモドラゴン

200

コスモタイガーX

80

 

 因みに機動艦40隻は、転移能力こそなかったものの、

 ヤマトの第3艦橋の代わりに連結されたものに近い。

 蒼龍(強行偵察型)8隻、

 飛龍(航空戦指揮型)8隻、

 雲龍(次元潜航型)8隻、

 海龍(水雷艇型)8隻、

 幻龍(電子・転移戦)8隻が小惑星アマテラス護衛艦隊の全てだった。

 直径1500kmの小惑星をワープさせた技術はディンギルの技術で、

 アクエリアスを転移させるより楽。

 しかし、人間が乗っているという問題を解決するのに時間がかかった。

 居住区画を宇宙船と同様の機構で防護壁の内側に入れる案も検討され、

 最終的にコアチタンの質量が小さいことから、不用とされる。

 巨大な小惑星でありながら、恐ろしく軽い質量だった。

  

  

 ゴルバ型要塞 “フソウ”

 護衛艦隊の全ては、アマテラスの内部ドックに格納することが出来た。

 しかし、ゴルバ型要塞“フソウ” は、アマテラスに半没させた状態で司令室が設置される。

 アマテラスの内郭にCICがある。

 しかし、装甲化されているゴルバ型要塞が一番安全だった。

 古代提督と藤堂提督が将兵を前に立つ。

 そして、先任将校の古代提督が総指揮を執っていた。

 「諸君」 

 「現在、アマテラスの護衛艦隊はアマテラスに配備されている直営艦隊と」

 「貿易商人の私設艦隊に分けられる」

 「私設艦隊は半分海賊のようなもので金次第という連中だ」

 「諸君らも南銀河で過ごしてきたので、彼ら私設艦隊は頼りになるが」

 「敵に買われると恐るべき戦力にもなると、肌で実感していると思う」

 「結局、金を支払った側の味方になる」

 「今後は、チタームの艦隊の支援は受けられない」

 「地球艦隊と、その貿易商人の艦隊のみになる」

 「このアマテラスの転移航法は機動性が低く、地球まで1年を要する」

 「当然、妨害もあると思う」

 「しかし、利害関係で結ばれた貿易商人を過剰に恐れることはなく」

 「地球連邦軍将兵の戦意と、まったく次元が違う存在と言える」

 「必要以上に敵を過大評価するな」

 「各員、いっそうの努力を求めたい。以上!!」

  

  

 フソウ 司令塔

 チタームの宇宙艦隊で守られていない状態は、脆弱だった。

 地球艦隊が合流しても寄せ集めであり、

 戦力は、チターム第5機動部隊より劣る。

 天秤が良い方に傾いたのは、ゴルバ型要塞の捕獲と戦力化が間に合ったためだろう。

 それでも、地球までの航路。

 恒星間国家や大型貿易商人の攻撃に対しても脆いと思われた。

 「白色彗星並みの防御壁があればな」 古代提督

 「んん、あれは良いねぇ 宇宙支配も考えたくなるよ」 藤堂提督

 「ふっ 地球は、正規の機動部隊の派遣を渋っているようだ」

 「・・・この作戦。粗が多い」

 「それにチタームでの惑星開発で地球連邦も惑星開発で火がついたようだ」

 「第3恒星系の選別をしていた」

 「当然、恒星系開発の護衛で機動部隊が一個常駐させられるだろうな」

 「どうせ、そんなところか・・・」

 「ところで古代提督。あの少年。どうして、乗っているんだね」

 「暇潰し・・・らしい・・・」

 「やれやれ、彼を地球に連れて行くのは、不安だな」

 「確かにそうだな」

 「とはいえ怒らせるのは、もっと怖いか・・・」

 「少なくとも道理は知っているようだ。道理に従う気があるのか、わからないがね」

 「彼がいるだけで、他の勢力が攻めてこない気もするが・・・」

 「どうかな、本体は、あの星のはず」

 「離れても力があるのか不明だよ。試す気はないがね」

  

  

 ディンギル水雷母艦サクラ

 駆逐艦に毛が生えたような軍艦で水雷艇6隻を装備している。

 装甲が強いわけでも、

 火力が強いわけでも、

 機動力がいいわけでもない。

 それなりの装甲。それなりの火力。それなりの機動性。

 輸送船や貨物船と違って自衛が可能で襲撃も可能。

 アルサ・ミエルは、費用対効果で都合が良いので評価しており、

 貿易商人の間でも人気がある。

 南銀河ではモドキ生産も行われていたりする。

 特にハイパーディラックシステム、次元断層システムを装備した水雷母艦は人気がある。

 多くの場合、水雷艇は2隻から3隻で、残りを倉庫として使う事が多い。

 水雷母艦サクラが通常より、多く水雷艇を載せているので、

 どちらかというと海賊よりだった。

 そして、地球に帰還しようとするアマテラスに先行して、航路確保を行っていた。

  

  

 サイラスは、暗礁宙域が多く。海賊の巣で、脅迫もやりにくい。

 少なくとも不正腐敗で追求しても駄目。

 しかし、こと裏切りや契約違反を見つけると。それ以上の効果があったりする。

 アルサ・ミエルは、先任の船長と違って、特定の海賊組合に属しておらず、稼いでいる対象が違う。

 そのため、海賊の溜まり場に来ると浮いてしまったりする。

 海賊酒場

 「よう。アルサ・ミエル。今日も、景気が、いいようだな」

 海賊の一人がアルサ・ミエルに向かって話しかける。

 やっかみ。羽振りが良いと、いろんな情報から漏れてくる。

 だいたい、海賊で安定収入など、

 どこかの大貿易商人と専属契約でも、結んでなければありえない。

 「景気のいい話しを聞きたいなら。教えてあげてもいいけど・・・」

 何人かが色めきたつ。

 結局は、金・・・・

 「ほう、また、海賊仲間を売るのか?」

 「海賊仲間は売らない。仲間ならね」

 何人かが舌打ちする。

 そう、契約に違反していなければ爪弾きにあっても陰口程度。 

 それでも・・・

 それでも・・・

 無作法な輩がいる。

 女子供相手にケンカを売るやつ、

 少なくとも軽蔑されるだろうが、もはや、後戻りが利かない海賊もいる。

 もちろん、こういった場所に出入りするのだから、

 それ相応の力を見せ付ける必要もある。

 見掛けが弱そうな場合は、現実に見せ付けなければならない。

 アルサ・ミエルは、数回にわたって海賊仲間に力を見せ付けて儲けていた。

 しかし、見かけを裏切っていると、やはり、試しに・・・と思う連中が湧いて出る。

 アルサ・ミエルと某海賊船長が酒場の外で睨み合う。

 賭けた物は、船。

 背中に背負っている長剣も、腰に下げている銃も使う気になれない。

 デタラメに強い気と増幅器を使う。

 相手も気が強く。増幅器もあるが圧倒・・・・

 相手の気力をズタズタにしてしまう。

 しばらく、睨み合うと銃を向けている海賊船長はガタガタと震え、膝を屈して許しを請う。

 彼は、しばらくの間、廃人状態になるだろう。

 普通なら撃ち合いになるところも、気の力で差があると、こんなものだ。

 喝采が起こる。

 これでしばらく、ケンカを売る者は出てこない。

 この辺にいる海賊で自分と良い勝負なのは数人しかおらず。

 互いに争いを避ける。

 自分より強い者にケンカを売るのは、スポンサー欲しさで売り込みに焦っている場合が多く。

 焦ると負ける。

 ある程度強く、余裕があれば、そんな無茶はしない。

 用心深くなり、

 勝てる相手としか戦わない。

  

  

 海賊たちといくつかの契約を結び、

 賭けた船を見ると、イスカンダルの小型輸送艦。

 この船も人気があった。

 波動エンジンは見つかりやすい、

 しかし、まっとうな貿易商人をやろうと思えば、まずこれだろう。

 どうやら、まっとうな貿易商人だったが契約違反で海賊にまで追い込まれ、

 この船では、上手くやれないと焦ったのだろう。

  

  

 アウトローの溜まり場だと、極悪な内容も生々しく。

 時折、耳寄りな話しも聞くことがある。

 ラートゥルの反乱。

 人工進化の手段の一つとして、

 ナノマシンを体に寄生させ融合させたグループで、

 異端のあまり迫害されたりもする。

 それでも、力がある者がでてくる。

 心身とナノマシンが上手く融合したグループで彼らがラートゥルで反乱を起こすという。

 海賊や密貿易商人に情報が流れるのは貿易商人の力を利用していることだ。

 そして、南銀河では、それが当たり前になっていた。

 これをネタに儲けようとも思ったが既に手遅れらしい。

  

  

 ラートゥルの反乱は、失敗に終わる。

 問題は、反乱軍が最新の要塞ラグナロクで逃亡。

 アマテラスの方に向かっていることだ。

 そう、旧アトラス帝国で。要塞といえば、・・・・・・・白色彗星。

  

 須郷は、イライラと行き来する。

 当然、第一通報者に当たりたくもなる

 「アルサ・ミエル。彼らがアマテラスに向かっているのは、何か、理由があるのかね」

 『あら? 先行して、航路の確保のはず。後方は、契約にないわ』

 「・・・・・・・・・・」

 『・・・・・・・・・・』

 アルサ・ミエルが契約を守り、

 余勢で、あれこれ、稼いでいるのは、暗黙のうちの了解。

 そして、契約自体。履行可能な範囲で抑えるのが常識。

 「・・・・・・・・・・」

 『・・・・・・・・・・』

 「わかった。今後とも、いまの仕事を継続して欲しい」

 『了解』

 「ラートゥル要塞の目的がわかったら、査定に応じて賞金を払おう」

 「特Sね」

 「・・・ああ、特Sだ」

  

  

 アマテラス 司令塔

 古代提督、藤堂提督は、状況の変化に迷う。

 「・・・ラートゥルの要塞は、ラグナロクというらしい」 古代提督

 「神々の黄昏?」

 「確かにこんな要塞が近付いてきたら黄昏たくなるな」 藤堂提督

 「しかし、何が目的だ」

 「ラートゥルは、なんと?」

 「なにも・・・反乱の混乱で回線が遮断されている」

 「反乱軍に艦隊が付いているのだろうか?」

 「3個機動部隊とも、4個機動部隊とも言われている」

 「そりゃ 圧倒的に不利じゃないか。寄せ集めでは勝てない」

 「相手が正規艦隊になれば、海賊も及び腰だろうな・・・」

 「採算割れしてしまうからね。それに命の保証もない」

  

  

 バナジ貿易商

 南銀河最大のバナジ貿易商

 その勢力は中規模恒星間国家を上回る。

 ボラー人の当主 アシュモフは状況を静観していた。

 手を出すべきか、出さざるべきか。

 ラートゥルで反乱が起こることは知っていたが政府軍の味方をする。

 結局、世の中、金。

 戦乱は、一時的に利益になっても相対的に商業の力を弱めてしまう。

 そして、現ラートゥル政権との繋がりも大きく。

 貸しを作っておいて、悪くない。

 問題は、反乱軍が要塞を奪って逃げ出したことにある。

 計算より反乱軍に力があった、ということだ。

 これでは、制御圏外になる。

 しかし、あの要塞を奪うのは悪くない。

 移動式カジノと工場にすれば、利益も上がる。

 中間補給基地にすれば、さらにいろんな収入も得られる。

 いくつか、金になりそうな宙域が思い浮かぶ。

 ガルマン・ガミラスに売ろうか・・・

 力自慢の反乱軍では、こういったノウハウはない。

 からめ手で行くか、それとも・・・20から30ものアイデアが浮かぶ。

 そして、良さそうなもので矛盾しない5つか、6つを並行させる。

 一つのアイデアしか浮かばず、それに固執する凡人と

 いくつものアイデアが浮かび、良さそうなものを取捨できる能力の差。

 貧乏人と、お金持ちの差だろうか。

 反乱軍の事情と状況をある程度、知っている者と、そうでない者の差でもある。

 「アシュモフ様。ラートゥル、ハイデラ、シャイブル」

 「フィリア、ジャスタン、チタームの大使が面会を願っています」

 「そうか・・・・ハイエナどもめ・・・」

 「それとアトラス教団。イスカンダルのランカシャ貿易商。ガルマンガミラスのエッシェン貿易商」

 「ガトランティスのマンチェス貿易商が独自に動いている模様です」

 アシュモフが、ニヤニヤしながら、なにやら計算している。

 超お金持ちは、度し難いほど。いやらしい。

 「・・・スゴシュ貿易商は?」

 「反乱軍に対する情報は知らないかと思われます」

 「今回のプロジェクトでかなり儲けたようです」

 「もちろん船の大半は、こちらの船を使いましたので、利益還元もありますが」

 「成り上がり者だが我々への利益還元を忘れなかった時点でプロジェクトの半分は成功しているよ」

 「しかし、反乱軍の事情がわからぬとは、死活問題ですな」

 「ふっ・・・ふふふ・・・無知は、死の影。須郷という男がどの程度の力と運があるのか見ものだな」

 「ところで、アシュモフ様。遊星ガイアスと、あの少年は、どういたしましょう?」

 「手を出さぬ方が良いだろう」

 「わたしが近付いても、そう思わさせるだけの力を見せ付けた」

 「このわたしに、あれほどのプレッシャをかける存在がある」

 「宇宙は、面白いモノが転がっているな」

 「このまま、反乱軍が、ぶつかれば少年の対応もわかる」

 アシュモフは、勝ち馬にすることも。勝ち馬を当てることも出来た。

 そういう類の能力を持つ者は、世の中面白いだろうか。

 しかし、ガイアスの力は、アシュモフのそれを上回る。

 アシュモフに少しばかり、不安がよぎる。

 勝ち馬がわからず。

 勝ち馬も作れない状況は珍しい。

 それでも、状況をいくらでも有利に持っていくことが出来た。

 ガイアスと、あの少年モアブが気紛れに引っくり返さなければ、である。

 久しぶりに味合う興奮。

 同じような力を持つ貿易商人や国家指導者がいる。

 ギリギリの鍔迫り合いをしても争いは少ない。

 今回は、どうだろうか。

 やはり、ギリギリまで鍔迫り合いをするだろうか。

 金持ちケンカせず。

 その通り、適当なところで、山分けする時もある。

 焦点を弱者に摩り替え、踏み躙るときもある。

 しかし、状況によってはギリギリまで利益を追い求める。

 一種のゲーム。

 このゲームの背景が見えていない小物。

 目先の利益に囚われる小物は、一時的な利益収支で一喜一憂。

 宇宙や世界を知ったつもりで大騒ぎをする。

  

  

 水雷母艦サクラ

 どうしたものかと、アルサ・ミエルは、全天球を見ている。

 ある程度、情報の力を知るようになると、

 独自に転移通信カプセルを天体に仕掛けたりもする。

 つまり自分専用の転移観測ネットワーク。

 もっとも数も、少ないことから当たることは少ない。

 しかし、当たらないなら、その宙域の安全が確保されている。

 水雷母艦サクラが、それほど優れた性能でもないのに、

 高速・航洋性・探査能力に勝る警備巡洋艦から逃げ切る。

 それは、アルサ・ミエルの力と仕掛けている転移通信カプセルを利用しているから。

 まともな艦長は、転移点に重力場を感知すると転移しない。

 水雷母艦サクラは、転移通信カプセルの情報で重力場の安全地帯に転移する。

 アンドロイドメイドがレモンパイとトマトジュースを持ってくる。

 甘酸っぱい香りにアルサ・ミエルの表情がほころぶ。

 憩いのひと時、

 「アルサ・ミエル。ラグナロク要塞を調べるので?」 ガードベルト

 「・・・あのイスカンダルの輸送艦・・・競売にかけようかと思ったけど・・・」

 アルサ・ミエルは、嬉しそうにレモンパイを頬張る。

 「使い道があるかも・・・」

  

  

 

 

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第13話 『ライジングウェー』
登場人物 恒星間国家群 独立恒星系群 銀河勢力図