2000年8月中旬の日常

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2000年8月11日(金)

 本日のお買い物
1,稲川淳二『稲川淳二の最新・超怖い話』(角川書店・ザテレビジョン文庫)
2,阿刀田高・編『ショートショートの広場11』(講談社文庫)
3,栗本 薫『試練のルノリア』(早川書房・ハヤカワ文庫JA)
4,『別冊シャレード vol.46 竹本健治特集 弐』
5,『別冊シャレード47号 鯨 統一郎特集』

 来週辺りから印刷会社も取次もどこもかしこも盆休みであるという関係上、一部の雑誌はいつもより発売が早まっている。例月14日発売の『Jazz Life』も、そんなわけで早くも手許に届いた。第一特集はドラマーだが、第二特集は『ジャコ・パストリアスの肖像+2』の発売に合わせた特集だ。聴き始めてから一年近く、流石に見慣れた記事も多いが(『ホリデイ・フォー・パン』は本当に信じて買っていいのかいな、という疑問も湧いた)、トリビュート・アルバムへの言及や、メセニーのデビュー作『Bright Size Life』から表題曲をジャコの演奏を中心に取り上げたスコアの掲載などもあって読み応えあり。それにしても行きたかったんだよー仲宗根かほる&デイヴィッド・マシューズ・トリオのライブーーーうううう。

 首尾良く二時前に仕事を片づけることが出来たので、素早く自宅に戻ってそこから電車−ゆりかもめと乗り継いでビッグサイトを訪れる。到着した段階で半ば茹だってしまった私である。人混みと折からの熱波で会場は尚更に暑い。既に三時を廻り、既に売り尽くしてのんびり寛いでいるサークル、見切りを付けて店終いを始めたサークルも見受けられ、一通り予定したところを廻って買えたのは上記4と5のみ……もう何冊か買っても良かった、とあとで思う。元バイト先で知り合った方にご挨拶したあと、ぐるぐると会場を巡り歩き、頃合いを見計らって撤退する……が結局閉場の時刻と重なってしまい、乗車待ちのさなかも車内でも人に揉まれながらの帰宅はひたすらに疲れた。
 明日は朝からこれである……覚悟を決めねば。

 ……あああああ、『神の灯』――!!!!!!(一部の方だけ察してください)


2000年8月12日(土)

 訳あって今日のコミケレポートはリスト形式。

 本日のお買い物、上のリストの中身も含む。
1,犬上すくね『WORK BOX』(ラポートコミックス)
2,『教育実習生2』(Grace・たぶん18禁だろう)
3,あこがれかずら『SINGLES』
4,紫 陽花『(ま)症候群マニュアル』(以上、サークル「魔法使いのおぢさん)
5,竹本 泉『トランジスタにヴィーナス イーナス・コレクション』(発行元不明……たぶんメディアファクトリー)
6,同上『竹本 泉のいろいろの〜と&いろいろデスク』(ソフトバンク・SB COMICS)

 というわけで1は頂き物。凡そ七年前に出ていた、犬上すくね最初の単行本である。大感謝。
 2が同人ソフト。これはアリスソフトで配布しているSystem3.8というプログラムを利用した作品だそうな。ぐるぐるさんはある理由から当初よりチェックしていたらしい。理由は秘密。例によってまだ手もつけていないが、私はいつも通りに裁く予定
 3、4は何とさだまさしの同人誌。素朴な出来でした。
 5は原寸フルカラーのイラスト数枚を収めた画集。原寸故脅迫的に大きく、紙袋を購入しなかった自分を呪った。6はサターンマガジンとドリームキャストマガジンに連載されたシリーズを、スケッチブック風の凝った装幀で纏めたコミケ限定版単行本。ふわふわもくもくの部分に綿を張り付けてあり、あとあと破損が怖い作りではある。

 そして私はまだ作業の途中。


2000年8月13日(日)

 ……結局三日連続。交通費だけでも馬鹿にならない。

 初日同様ゆりかもめを利用することにした。JR新橋駅からゆりかもめの改札に続く道のあちこちで一日乗車券を売る人とそれを買い求める人が群を成している。恐らく休日の人出を見越した営業手段であろう。券売機の前に連なる人の数は尋常ではなかったが、いざ駅まで着くと思いの外整然としており、一つ便を見送っただけでさしたる問題もなく乗り込めた。その全てがコミケに向かっているはずもなく、国際展示場正門駅に着いた頃には立っている乗客も少ない。
 会場に入るまではスムーズだったが、まだほんのちょっと前までの行列の名残が、そのままホールまでの通路に犇めいているといった風情。昨日一昨日よりも遙かに過ごしやすい気温だったが会場内の熱気に変わりはない。ぐしぐし押し揉まれながら目当てのサークルを巡る。まずお知り合いが関与し委託販売物として出品した『中山鳥あーとわーくす Vol.1』(ピンクトルコ)と、委託先で出していた(厳密には委託先と共同出店らしい)同人誌『JUNK SPIRITS』(AQUA NEIL)を買う。ちなみにピンクトルコのリンクが表示されなくてもそれはリンクミスではありません。事故で開設が遅れているらしい。後日ちゃんと見られる筈なのでリンクしておく。
 次に隣のホールへ向かい、某大手サークルを捜す。が、こちらは既に撤収したあとだった。惜しい。再度元のホールに舞い戻り、こちらも駄目で元々と大手でチェックしていた処を探すと、こちらはまだ出店しておりしかも列も短め。躊躇わず向かい、さいとうつかさ『さいとうつかさ短編集 YOROZU!』(備後萬屋)を購入する。
 最後にもう一度お知り合いの処へ顔を出し、ついでに一冊購入する。『宮脇俊三の世界』(とれいん工房)。今日買った中でこれだけカラーが違うぞ。
 その後、昨日に引き続きお会いしたぐるぐるさんから『Kanoso64 うぐぅ来訪者』(いつものところ)という同人ソフトを譲って貰う。伝説の『Kanoso』の続編……って前作まだ入手してないんだった。
 この辺りで体力的にも時間的にも限界が来たので、12時半を潮に会場をあとにする。まだ帰路の混雑もさほどではないだろうという読みと、両親が昨日だか何だかに買ってきたというラーメンが昼食の予定だったので、せめてまだ「昼食」と言い張れる時間帯までに帰宅したいという思いもあったからだ。案の定、往路の2/3程度の混雑で済み、快適な道のりだった。三日間通い詰めたお陰で体がこの無茶な移動に慣れたのか、疲れもさほどでなく課題に着手する……

 ……やっぱり疲れているのだった。昼寝で多少恢復したものの、0時を廻った頃激しい眠気に見舞われた。もう無理。寝る。折角買った同人ソフトも殆ど手付かずのままだが、今日は兎に角駄目。
 結局またずれこんでるし……


2000年8月14日(月)

 これが多分最後の存在証明。……というか結局日記は普通に書き続けられたので、存在証明として持ち出す意義は途中から失われていたんだが。ともあれ、これがギリギリまで着手していたお絵描きの縮小版。

……夏だねえ。

 今日は職人さんが一人お休みである。今年は盆の時期も仕事が五月雨状に入ってくる予定だったので、休暇は交代で取ることになっている……が、果たして私は休みを貰えるんだろうか。お願いだから操作を覚えて誰か。本当にぼちぼちマニュアルを作らないと駄目のようだ……課題が多すぎる。

 本日のお買い物
1,高木彬光『霧の罠』(光文社文庫)
2,香納諒一『雨のなかの犬』(講談社文庫)
3,川原由美子『前略・ミルクハウス(4)』(朝日ソノラマコミック文庫)
4,永久保貴一『生き人形』(ホーム社漫画文庫)
5,『IN POCKET 2000年8月号』(講談社)
6,Tuck & Patti『taking the long way home(邦題:家路)』(windham hill/BMGファンハウス)

 6を買いに行ったとき、本当は某同人ソフトも探すつもりだったのだが、肝心の同人ソフトを置いている店の場所を記憶しておらず後日に回す。
 このアルバムはT&P初の完全オリジナルアルバム。最初から狙ったわけではないらしいが、日本盤のみ収録のボーナストラック(エリック・クラプトンの『Tears in Heaven』)を除いて全曲パティ・キャスカートの作詞・作曲・編曲となった。元々その才能にも恵まれていた彼女だが、今回は特に秀逸の印象が強い。二曲目『Ready to Love』は本気で涙ぐみました私。タック・アンドレスの人間離れしたギターテクニックも健在。前々から何とかしてコピーしたいと考えているんだけど……。そもそもどうやって弾いているのかが理解できないのだった……。


2000年8月15日(火)

 素直に今日休み取っていれば良かったと思う。でも午後は豪雨に見舞われたからこれで良かったとも思う。……どっちでもいいか。

 長篇のプロットが佳境に突入するも、勢いのみで書ききってしまうのに不安を覚えてちょくちょく手を休める。暫くお絵描きをしていた分、鬱憤が溜まっていたらしく書き始めると思考を乗り越えて筆が暴走するのだった。筆休みの意味も兼ねて、買い物に出かける。
 秋葉原のいつも寄る店の脇にある路地を暫く進む。この一帯は表通りこそ小綺麗だが、裏に一歩立ち入ると怪しげな構えの店が文字通り犇めいている。目当ての店も、はっきり言って外観は極めて怪しげなビルディングの二階三階に収まっていた。商品が同人作品であることを除けば、客層も店の雰囲気も他のソフトショップと大差はないのだが、陳列された作品を眺めて廻ると流石にたじろぐ。当初購入予定だったソフトは幾ら探しても発見できず、その代わりに先日のコミケに於いて私が訪れた段階で既に店終いしていたサークルの最新作がごく普通に店頭に並んでいた。ので、躊躇なくそちらを購入する。『既知街2 大虐殺』(犬大工ねこバナナ)タイトルが素敵。そして漏れなく添付されるガイドブックに、参考文献及び非参考文献として友成純一の『獣儀式』とかラヴクラフトの作品集とかの名前が挙がっているのがナイス。しかしまだ遊んでいる余裕はなし。八月中はゲームやっている場合じゃなさそうである……某氏は某ゲームのために月末締切を自ら前倒しにする計画らしいが。DQ7のことじゃないのがミソ。

 昨日からフジテレビで『踊る大捜査線』を一日二話のペースで再放送しているのが嬉しい。実は最初の二・三話をずーっと見落としたままだったのである。テレビを見ながらではプロット作りも捗らないが。ついでにスペシャル版も一緒に再放送してくれるともっと嬉しいんだけど、無理か。

 帰宅後は他人様の作品のモニターをしながら、昨日までに完成させた画像を程々のデータサイズに加工し直す。ついでに先日、下絵のCG取り込みを行う場合に私の理想に一番近い方法をあるサイトで見つけたので、それを一続きのアクションとしてPhotoshopに登録、作成したCGの核となる線画全てに処置する。この間同時にテレビを眺めたり、手を止めて風呂に浸かったりしたために思いの外時間を費やしてしまった。結果、今日仕上がったのは僅か一ページのみ。フォーマットは完成したので、残り作業の総量はさほどではない……筈、なんだけど。この仕事についてはいまいち自分のペースが把握できないのだった。
 ……その合間に、ふと情熱が抑えきれなくなって、ある短篇の冒頭だけ一気呵成に書き綴ってしまう。半時間程度で四枚強。圧倒的ではないにせよ、ブランク明け、しかも他の作業の合間にしては我ながら異様なペース。因みにその短篇のタイトルは、

『LOVEマシーン』

 投稿には使えない。万一HPにアップするにしても18禁。そもそも本当に最後まで書くのか私は。期待などしないで待て。

 ――なお、上記の『既知街2』以外に買い物はしてません。盆休みで出版社も取次も休みなのよう。


2000年8月16日(水)

 物置同然になった一室の中、猫が何かで遊んでいた。さっきまで夏の常で体を床にべーったりと引っ付けて横たわっていたのが、目を爛々と輝かせて、物陰を飽くことなく見つめている――かと思えば、手先でその隙間をつつく。と、甲高い鳴き声が聞こえた。こんなところで狩りをするなよー、と思いつつ、あまり関わりたくないので無視する。近くにあるベッドで仮眠を取るつもりだった。どうせ獲物を捕まえてそこまで上がってくることはあるまい、と高を括っていたのだ。事実、上がってくることはなかったのだが、どうも様子がおかしい。相変わらず獲物をいたぶっているようで、時々じ、じ、じ、と鳴き声がするのだが――そもそも鼠が「じ」などと鳴くだろうか。それに鼠のサイズにしてはやけに声が響きすぎるし、猫のいびり方がやけに執着的なのも気に掛かる。無視しようとしてしきれず、結局身を起こした。既に猫の手(或いは口か)によって移動された獲物の姿を、恐る恐る確かめに行くと。
 蝉が腹をこちらに見せて横たわっていた。
 尚も執拗に攻撃を繰り返す猫。その度に「じ」と短い鳴き声を上げる蝉だが、この有様では逃げることも適わないらしい。鳴き声が切れ切れなのは既に衰弱している証拠かも知れなかった。このままとどめを刺されても仕方がないようにも思えたが、正直うちの猫がこの蝉を食らっている様を想像するのは愉快ではない。私が猫を抱えて遠離けた隙に、母がベランダから蝉を逃がしてやった。あとで見ると壁にへばりついていたが相変わらず鳴く様子も窺われない。精々天寿を全うしてくれることを祈るばかりだった。
 獲物を奪われたうちの猫は、部屋の片隅で拗ねていた。

 あとは画像を張り付けるだけ……と思いきや、画面のデザインを怠っていたために思いの外手こずる。というわけでまだ終わりません。
 その一方、流石に焦りが生じてきたので、佳境に突っ込んだ長篇のプロットを一旦脇に置いて(昨日も置いたような気がするが)某ホラー大賞用の短篇の本文に着手した。といっても仕事の合間を縫ってなので、さほど進んだわけではないが、所要時間に対する進行度は理想的だった。取り敢えずこの短篇だけは最初の予定通りの時期に完成しそうないい予感がしてくる。

 昨日一冊読み終わったことを報告し忘れたが別に言及するほどのものでもないので省略。


2000年8月17日(木)

 嵐山薫さんが遭遇されたATOKのトラブルは、私が四月頃に被害に遭ってのちにユーザーサポートに問い合わせて何とか解決した問題とほぼ同種のものだと思われるのだが、困ったことにその当日、問題のトラブルの解決方法を記したはずの日記が手違いで消えてしまっている。改めて書くのが面倒臭かったので(をい)該当するページのhtmlのみ示して実験されることを勧めてみるつもりだったのだが。確か、辞書ファイルを別のものに変更すれば取り敢えず解決する筈なんだけど……。その際、破損した辞書ファイルから登録・学習させたデータのみを抽出する方法も教わったんだけど……。書くのもそれを実践して試してみる時間も気力もなし。どうすべか。取り敢えず、ただアンインストールしただけでは解決しない可能性も大だとだけ指摘しておきましょう。何故なら設定によっては破損した辞書ファイルをそのまま使い回すことになるから。結局同じエラーが発生する。

『踊る大捜査線』再放送四日目。だが流石に一挙三時間はきつすぎる。休憩も殆ど取っていないからこれを書いている今現在眠くて眠くて。

 本日のお買い物
1,Jaco Pastorius『Jaco Pastorius +2(邦題:ジャコ・パストリアスの肖像+2)』(Epic Records)
 あとは定期購読誌のみ。それにしてもやっぱりこのアルバムは凄いぞ。既に持っているのだが、リマスタリングと未発表テイクのために買い直した。初のリーダーアルバムでありながらジャコというベース奏者・作曲家・編曲家の才能が目映いばかりに鏤められ、そして今に至っても新しく、また越える者の一人とて現れない完璧なベース・スタイルを提示した奇跡的な名盤。デビュー以前からの友人だったパット・メセニーの情熱に溢れたライナーノートが添付されているのも魅力的である。他にも何枚かCDを買うつもりで出かけたのだが、今日は帰宅後これ一枚に浸ると決めて戻った。うっとり。
 ちなみに追加された二曲のうち一曲は『6/4 Jam』と題された完全は未発表曲だが、一方は収録済みの曲『(Used to be A) Cha-Cha』の別テイク。『Kuru / Speak Like a Child』と並んでピアノ(ハービー・ハンコック)との絡みが魅せる楽曲である。発表済みのものに較べると、元がリハーサルのような状況で録音されたためか纏まりを欠く演奏だが、その代わりハービーとジャコとの宛ら真剣勝負のような即興演奏が随所に聴かれ、特に中盤は異様な緊張感に満ちている。取り敢えず私はこれが聴けただけでも大満足。改めて、瞬く間に彼岸へと駈け去ってしまったこの才能を惜しむ。『Word of Mouth』の当時には既に川を越えてしまった、という証言も多く、つまり一番純粋だった頃のジャコの演奏はこのアルバムでしか聴けないも同然なのである。勿体ない、つくづく、勿体ない……


2000年8月18日(金)

 今日は一日香取慎吾が気になって仕方なかった。昼の某生放送にはバックダンサーの子供達だけが登場したらしいし、そのあと『踊る大捜査線』再放送のインターバルに於いて生で新曲を披露したときには、登場こそしたものの顔はむくみ濃い隈が出来、それを化粧で必死に誤魔化してはいるものの死相もどきの顔色は隠し切れていない。流石にこのあとは休養を取らせるだろう、と思ったらテレビ欄に「慎吾ママ」の字を見いだし、よもやまさかと時間になってチャンネルを合わせると、しっかり出演していた。昼間よりはまだましな状態に見えたが空元気という可能性もあるだろう……何にしても今週ちょっと働き過ぎじゃないか香取慎吾。見ていて危なっかしすぎるぞ。

 ……あ、阿部寛、雪○牛乳をパックからじかにがぶ飲みしてる……何リットルも(inドラマ『トリック』)。

 本日のお買い物
1,遠藤淑子『狼には気をつけて(2)』
2,山田南平『紅茶王子(11)』
3,中条比紗也『花ざかりの君たちへ(12)』(以上、白泉社・花とゆめコミックス)
4,北条 司『F・COMPO(13)』(集英社・オールマンSC)
5,MR.BIG『Deep Cuts -The Best Of The Ballads-』(east west japan・CD)
6,Jim Hall『Concierto[邦題:アランフェス協奏曲]』(KING RECORDS/CTI Records・CD)
7,Herbie Hancock『Sunlight』(SME Records・CD)
8,熱帯JAZZ楽団『熱帯JAZZ楽団IV 〜La Rumba〜』(VICTOR ENTERTAINMENT)
9,モーニング娘。『LOVEマシーン』(Zetima・CD)

 ……何か引っかかるところでもおありでしょうか。
 先日聴いたビリー・シーンのソロプロジェクト「ナイアシン」のアルバムがなかなかのクオリティだったので、ビリー・シーン本来のバンドであるMr.Bigにも興味を持った。ので、丁度最近発売となったこのバラード・ベスト・アルバムである5を購入してみた由。まだ通して聴いてみてはいないが、ロックとしてのクオリティこそ高いと感じるものの、やはり「ナイアシン」ほどのスリリングな演奏ではなく、そういう意味でちょっとだけ寂しい。
 ジャズ雑誌を定期購読するようになって名前だけは知っている、また名前しか知らないがその内容に非常に興味があるというグループやアーティストが増えた。8の熱帯JAZZ楽団もそのひとつ。これまた最近の新譜だということもあってのセレクトだが、選曲もまた私好みだったのだ。クインシー・ジョーンズのメドレー、ジャコのワード・オブ・マウス・ビッグ・バンドで(取り敢えず私は)お馴染みの『Invitation』、極めつけは『Lupin the Third』。オリジナルも含めたこれらの楽曲をまさに南国的なアレンジとハイレベルの演奏で聴かせてくれる。これはいい。
 6と7は定番からのセレクト。まだ全曲聴いていないが不安は全く感じさせない出来。
 ……えーと、こんなものか。え? ……何か残ってます……え?


2000年8月19日(土)

 案の定、急性の気管支喘息だったそうだ香取慎吾。新聞記事に併せて写真が載っていたが、改めて痛ましい顔色をしていた。今日ぐらい休めることを切に願った一日。

 黙々と某作業の仕上げを続ける。ふかがわはIllustratorの技術力が上がった! ふかがわは忍耐力が上がった! ふかがわは体力を消耗した! ……せーんろーはつづくーよー、どーこまーでーもー……

 久々に遠くにある方の行き付けのそば屋へ行った……休みだった。そう言えばここは盆の間は無休で営業して、明けた頃を見計らって休みを取るんだった……しおしおと帰宅し、自宅近くのうどん屋で昼食を採った。

 掲示板でジム・ホール「アランフェス協奏曲」に関する質問を戴いたので、その説明のついでに昨日買ったアルバムの一部について簡単な解説と感想をばお届けする。上記の通りまだ切羽詰まっているのであまし推敲せずに書きます御了承下さいませ。

Jim Hall『Concierto[邦題:アランフェス協奏曲]』(KING RECORDS/CTI Records・CD)
 ジム・ホールはアメリカ屈指のジャズギタリストの一人で、フルアコ一筋の落ち着いた演奏が特徴であり、長いキャリアを経てなお瑞々しい音色を奏でながらも派手なところのないアーティストだが、そのスタイルはパット・メセニー、ジョン・スコフィールド、マイク・スターンなどジャズ/フュージョンの第一線で活躍しているギタリストの多くから信奉を受けている。このアルバムはそのジム・ホールの代表作であり、CTIレーベル史上最大のヒット作でもある。
 邦題ではタイトル・チューンにもなっている『Concierto de Aranjuez』を殿に、スタンダード曲『You'd Be So Nice To Come Home To』、ジムのオリジナル『Two's Blues』、ジム夫人・ジェーンの楽曲『TheAnswer is Yes』の、全て主題を短調に統一した四曲でもって構成されている。ジムの後ろにピアノ・ベース・ドラムスのリズムセクションと二管のホーンセクションを置いたセクステット編成で、やはり全編穏やかなタッチが印象的。『Concierto de Aranjuez』以外は各自のソロすら短めだがその中できっちりクライマックスが演じられており、その穏やかさに反してテクニックはシビアでタイト、地味に完成度が高い。
 さて、表題作とも言える『Concierto de Aranjuez』は、掲示板にて指摘があったとおり、スペインの作曲家ホアキン・ロドリーゴによる『ギターとオーケストラのための協奏曲』第二楽章にあたるものである。マイルス・デイヴィスが『Sketches of Spain』においてギル・エヴァンスの編曲とオーケストレーションによりカバーしたことから一躍ジャズのスタンダードとして認知されるようになった。マンハッタン・ジャズ・クインテットやラリー・コリエルなど多数のアーティストが挑んでいるようだが、代表格はこのジム・ホールによる演奏と言われ続けているらしい。
 ――以上、このアルバムに封入されたブックレットなどを参考に知識のみで書いてみた。ジャズ歴精々一年ちょいの私にはこれが限界である。ともあれ、この二日間に数回聴いた印象からすれば、モダン・ジャズと呼ばれるスタイルの核にあるものを美しく表現した作品として『Kind of Blue』『Somethin' Else』などに匹敵する。成る程ギタリストからの信頼が厚いわけだ。

Herbie Hancock『Sunlight』(SME Records・CD)
 一方こちらはエレクトリック時代のマイルスが表現した「ポップ」「ファンク」の路線を、アナログ・シンセサイザーやヴォコーダーを導入したハービーが独自に踏襲し拡大解釈していったものと言えるのだろう。1978年の発表にして80年代から90年代初頭のロック・フュージョンを予見し、しかも未だに通用するクオリティを保っているのが不気味ですらある。自らの声をも楽器として演奏の一部に組み入れた楽曲は重厚かつ洗練された居住まいの美しさを感じさせるが、私にとっての白眉はジャコ・パストリアスが参加したクライマックス『Good Question』。アナログシンセサイザーを極限まで駆使し、シンフォニックな印象を齎しながらもやっていることはアグレッシヴ・ロック並、という怪作である。
 予断だが、ハービーはチック・コリアとほぼ同時期にマイルス・バンドに所属していた経歴があり、コンビによるツアーを行うなど共演経験も多く、同時代にあって非常に似たタイプのピアニストである。しかし完璧主義者のチックに対してハービーの音楽には多少のゆとりがあり、その点でやや一般層向けかな、という印象を受けた。無論優劣の問題ではない。


2000年8月20日(日)

 いつもの休日よりちょっと早く起きて、母親と共に開演二日目の映画『ホワイトアウト』を見に行く。漏れ聞く前評判は辛口だったためあまり期待はしていなかったのだが――
 ……面白いやん。
 確かに欠点はある。前半、前振りに当たる町中の描写があざとすぎて、監督がテレビドラマ出身であるが故の臭みが見え隠れしてしまっていたし、原作のとある大仕掛けはやはり映像では咄嗟に腑に落ちない(これを描かないと終盤のどんでん返しが活きないので仕方がないこととはいえ)。特に映画独自の幾つかの仕掛けは偶然に依拠している側面も多く、戴けないと言う向きもあるだろう。
 ただ、エンタテインメント、それも邦画のものとしては極上に属する出来だと思う。ちゃんと登場人物の行動や持ち物、カメラワークにいたるまで気を配った伏線の丁寧さ。ロケを繰り返し徹底的に雪山の酷烈さを再現した映像。仕掛けの一部を映画向け・現代向け(無線などの技術を幾分進化させている)に変更しつつもちゃんと原作のエッセンスを残している良心的な作り。原作が発表された当時に流れた風評――和製ダイ・ハードというイメージがより強まってしまった点、そちらに較べると生真面目なシナリオの所為で緊張感が途切れず見ていて非常に疲れるのだが、それでもなお見る価値は充分にあると思う。
 兎に角他人の言葉に耳を貸す必要はない、ということだろう。自分の目で見て判断するのが最善だ。少なくとも劇場に足を運び、自分で判断するだけでも損はないと思う。私は楽しかった。

 ――ちょっと不真面目かつミーハーな見解。
・織田裕二と石黒賢とが並んでしかもこの監督だとどうしてもあのテレビドラマのタイトルと映像を思い浮かべてしまう。わざとか?
・吹越満って随分いい役貰える役者に育ちましたねー。確か今でもワハハ本舗にいたと思うんだけど……。ロボコップ芸で大成したと捉えているのは錯覚か?
・古尾谷雅人! そんな僅か3分程度の出演でクレジットにでかでかと載るなー! 全然解らなかったじゃねえかー!!!
・……えーと、エンドクレジットでですね、照明助手か何かのところに「泉谷しげる」と書いてあるのを目撃したんですけど……本人だったら楽しいんだけど……。

 ……………………。
 ……漸く、一通りのデザイン作業を完了した。時間かかった……。
 印刷したときの見場の点検と文章の誤字脱字チェックとを兼ねて、久し振りにプリンタを繋いでIllustratorから直に出力してみる。……ぼろぼろ。角度が90度狂っているし、それ以前に文章部分が全く反映されていない有様。これはIllustratorによる精細出力にプリンタが対応できないのかも、と取り敢えず想像して、今度はIllustrator9.0からサポートされた機能を利用し、PDFの単ページファイルの形でデータを作り直し、Acrobat Readerからプリンタに流してみる。……やっぱり駄目。何枚か反古を増産してから見比べて、漸く原因を悟った。
 黒のインクが出てない。
 プリンタウインドウで点検すると黒インクが切れている訳ではない。そこで試しにインクカートリッジのクリーニングなど各種保守作業を一通り行った上、再びAcrobat Readerから出力してみる……何故かハングアップする。挫けず再起動し、残っていたタスクをそのまま流して出力。……漸く正常に印刷できた。我ながら想像以上にいい出来映え。問題は、ちゃんと目的に適った出来になっているかどうかだが、それは某氏のご協力を仰いで追々点検していくことにする。
 これから改めて全てのページを出力し、誤字脱字のチェックと平行して扉+目次のページを作成、それで漸くこの作業は完結する。感慨に耽るのはそれからにしよう。……耽っている余裕などないと思うんだが。


「若おやじの日々」への感想はこちらからお寄せ下さい。深川が空を飛びます(飛ばねえって)
遠くに行きたい……

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