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2001年7月1日(日)
http://www7a.biglobe.ne.jp/~tuckf/Diary/20010701~.htm#Day01読了報告のみ。MDのことは、暫く忘れます。
確か木曜日に読み終えていたのだが言及することさえ忘れていた神坂 一『トラブルシューター シェリフスターズSS mission02』(角川スニーカー文庫/角川書店)。未確認生物に不可解な依頼と冒険物の定番を辿っているが果たしてSFかこれ。書き下ろし長篇シリーズ『MS』に較べると若干安定感があるか。
そして今日は涼元悠一『青猫の街』(新潮社)を読了。中盤の暗号解きからミステリを期待すると極端に方向の違う結末だが、不思議と裏切られた感はなく、全編を彩る一種の侘びしさが深い余韻を残す秀逸な作品。それにしても、作中で語られているPC事情のうち、インターネット絡みの部分は意外なほど変化は見られないものの、ゲームを巡る環境や登場するパソコンの名称、CPU、グラフィックチップなどに既に時代を感じてしまうのは何と言ったらいいものか。ミレニアム、というチップの名前を耳にすること自体久し振りの気がするんだが……だが、そういう時代の経過にどうしても引きずられてしまう部分を差し引けば、もっと読まれていて不思議のない作品でしょう。やっぱりあれ実現できませんか>某氏……よくよく考えると、ここ暫くの日記は時候の挨拶をする余裕すら失われていた。暑いとか蒸すとか思い煩っている余裕すらないというのは一体。でも実際はそれなりにへばってます。何せ自宅でコーラフロート作ってるぐらいですから。取り敢えず、コーラもちゃんと冷やしておこうと反省。溶ける溶ける。
軽く実験をしてみる。これでちゃんと転送が出来れば、来週末もいつも通りに更新が行われます。駄目だった場合、金・土はなし。あさて。
無事成功。というわけで、別の理由で潰れてでもいない限り来週の金・土は旅先からお届けする予定ですいえー。……燥いでいる場合ではない。それまでにする事の多さを未だによく理解していない節がある私であった。
更にそれから、涼元悠一『あいつはダンディー・ライオン』(コバルト文庫/集英社)を読了。逃避してるんじゃないぞ、と言っても聞いてくれないだろうな。ちっ。非常にオーソドックスな学園青春もの、人物配置まで定石を踏んでいるが展開の安定感と自然な語り口で標準を上回る出来。格別に主張する部分がないだけ損をしているとも言えるが、「安心して読める学園もの」という少女小説のニーズの一つには満足以上の答を出している。……続き、読みたいですね、確かに。
2001年7月2日(月)
http://www7a.biglobe.ne.jp/~tuckf/Diary/20010701~.htm#Day02切羽詰ま詰ま。真夜中に半ばチャット状態でメールを遣り取りしたりしつつ、漸く『Air』を一人、バッドエンドまで鑑賞。カーテンの隙間から覗く空は、……既に白々としていた。
一眠りし、職場にて月曜日の常として全くする事がないのを確認してから軽くゲームを挟みつつ作業。食後に一個だけデータ出力をしてまた『Air』、初めてエンディングテーマ付の結末を見届ける……伏線が多すぎて、キャラ攻略の上ではいまいち「終わった」という感覚がないのがやや辛いが、全体を見せる作品であるらしいのは既に承知のことなので気にはならない……換言して、キャラクター攻略(或いはキャラ固有のシナリオ)を重視するユーザーには評価が難しいかも知れない、などと雑感。
帰宅後、最初に攻略したキャラクターが何故バッドエンドになってしまったかのかを検証しつつ最初から遊び直してみる……気づくと有無を言わさずキャラ攻略にすらなっていないバッドエンドに辿り着いていたり、メインヒロインのシナリオに突入していたりする。何故だ、と自らに課していた禁を解き攻略サイトを確認する……どーでもいいと思っていた選択肢が実はそのキャラのストーリーに於ける最後の選択肢で、そこを替えればトゥルーエンドになると判明。……異存はないのだが、個人的趣味で言うと選択肢と展開との間にもーちょっと伏線なり合理的帰結なりが盛り込まれているとより高く評価できたかな、と。あとは、冒頭の不自然ささえ何とかなっていたら、こんな長いこと放りだしておいて直前で慌てることもなかったのに、というのはあからさまに逆恨みです、はい。ちなみにいま、これを打ちながらノートで最初のキャラのトゥルーエンド確認中。今年の夏の電力消費は凄まじいぞ、と笑っている場合でもない。本日のお買い物
1,桐生祐狩『夏の滴』
2,吉永達彦『古川』(以上、角川書店)
3,高橋しん『最終兵器彼女(5)』(BIG SPIRITS COMICS/小学館)
1と2は迂闊にもこの時期に刊行されることをすっかり忘れていた、角川ホラー小説大賞受賞作。1が大賞受賞長篇で2が短篇賞。
確かこの辺で終わるような話を最初にしていたような気がする3……続いてますね。ペース配分が計算されているようで、単行本ごとの区切りは巧いんですけど。
他は、土・日と書店に寄らなかったために購入できなかった定期購読誌を数冊。『メガフリーク8月号』も買ってきてしまいました(しまいました……我慢できずに)。お目当ては竹本泉氏の新連載――しかも嬉しいことに、個人的に氏の最高傑作と捉えている『アップルパラダイス』と世界観が重なってそうな設定と内容。そもそも『アップル〜』の恵理子が登場しているというだけで変ぶりが常どころでないのを期待させられてしまう。しかもタイトルは『ブックスパラダイス』で主な舞台は図書室だっ。どーだこれで読まずに済ませられるかっ?!
……何故ここまで興奮しているのか解らないが兎も角当分これだけを理由に定期購読するのは間違いなさそうな勢いであった。他の連載作品にはまだ全てに目を通していないが、猫娘とオヤジ娘が結構好き。……いつもの趣味か?
……ついでに『電撃G'sマガジン』の『シスタープリンセス』カラーイラストの一枚を見て、軽く凹む。……絵に出てくるノートパソコン、俺のと全く同じ機種だった……
2001年7月3日(火)
http://www7a.biglobe.ne.jp/~tuckf/Diary/20010701~.htm#Day03これを迂闊と言わずして何と呼ぶ。昨日、バッドエンドを一人、通常エンドを一人見た、と日記に書いてから午前三時半までほぼぶっ通しで遊び続け、『DREAM』『SUMMER』『AIR』まで完全クリア。そこで寝ればいいものを更に未回収だったCGもきっちりと見つけだし、CGモードのパーセンテージを100にしてしまう。……馬鹿だね。
作品自体の総評は……細かく言えば切りがない。幾らでも疑問や異論は出せるが、それすらも踏まえた上で、数ヶ月も放りっぱなしだったのを悔やんでおります、と。取り敢えずそれだけに留めておきます。訳あって。本日のお買い物
1,『菊次郎の夏』(バンダイビジュアル・DVD Video)
2,Thomas Newman『ペイ・フォワード [可能の王国] オリジナル・サウンドトラック』(WARNER MUSIC JAPAN/Culture Publishers/VOLCANO RECORDS・CD)
3,原田知世『Flowers』(FOR LIFE RECORDS・CD)
4,坂田靖子『イソップ扁桃腺』(潮出版社・希望コミックス)
5,丹沢 恵『パパTheライバル』(芳文社・まんがタイムコミックス)
突如として北野映画。見てかなり唖然。その理由はいつか明らかとなるだろう、いやもしかしたら既に有名なのかも知れないが。何にしても、必要に迫られて購入・鑑賞したのだが、幸運でした。私、何が好きってこういう話・表現が何より好きなのだ。基本はごくありきたりなお話だけれど、それを淡々と丹念に、ひたすら美しく切り抜いたような作品が。
それは兎も角、本作で一番気になったのは、主人公の少年が何処に住んでいるのか、である。冒頭の舞台であり、少年の住む町である筈の浅草界隈は私にとっても生まれ育った町なのだけれど、冒頭、少年が友達と一緒にどこかから帰る)ランドセルを背負っているし、直後のシーンを素直に受け取れば学校で終業式を終えて帰る途中だと思うのだが)シーンの移動ルートがひたすら変。ひさご通りから六区の手前で左に曲がり伝法院通りを抜ける、まではいいがそこで敢えて浅草寺境内を通り、次に桜橋を越えて、漸く自宅に戻るのがよく解らない。ひさご通りから六区に入ろうとした辺りから推測するに、彼らの住居は旧仁丹塔付近からその向こう側にあるのだと思うのだが、そちらから九十度東に向きを変え墨田区に行ってしまっているというのが……一体この子は何処から何処に通っているのだ?更に言えばラストシーン、どう考えても普通に車が入ってくるような場所ではないところにバンが停まっているのも奇妙……まあ、言うほど気にしてはいないんだけど。
2は今年はじめに鑑賞した映画のサントラ。何故今更、と思われるだろうが、映画を見たときから音楽とエンディングに挿入される歌『Callimg All Angels』に惹かれていたのだ。そこへ来て、何故か必要が生じてしまったのでこのついでに購入。改めて、独特な楽器編成を採用したジャジーな音楽が非常に刺激的(少なくとも、この音楽そのものには「癒し系」という表現はそぐわない、と思うのだが……?)だし、『Calling All Angels』はあの美しいラストシーンを思い出させて思わず涙ぐみそうになる。近々DVDも発売されますので、気が向いたら一度御覧下さい。あざとい、と感じる方もありましょうが、それでもあのエンディングは一見の価値があります。
3は、収録曲『T'EN VA PAS』ひとつが目当て。これ、深夜番組隆盛当時に生まれた名番組の一つ『文學ト云フ事』エンディングテーマとして使用されていた当時から気になって気になって仕方なかった曲なのだが、他に原田知世の曲に惹かれるものが思いつかない、というだけで今まで購入に踏み切れなかったのだ。ちょっとポイントが貯まっていたのと、このアルバムが2300円と手頃な価格だったこともあって、レジに運ぶ。曲自体はリアレンジしたものだが、やはり名曲である。惜しむらくは、訳詞を挿入して戴きたかった点のみ(フランス語は何となくの何となくぐらいにしか理解できません)。アルバムを通して聴くと、原田知世の歌声は私にとって女性ヴォーカルの一つの理想型であることに気づき、その意味でも収穫あり。他のアルバムも買うか……いや、その前にまだオリジナル版『T'EN VA PAS』も欲しいぞ。
2001年7月4日(水)
http://www7a.biglobe.ne.jp/~tuckf/Diary/20010701~.htm#Day04金曜日に休みを取るようにしてしまったため、仕事の入り具合が気懸かりでしようがない。そういうときに、昼頃届いたデータを手掛けようとした直前に写真から作り直しのため差し止め、という連絡が入りやきもきする。夕方から明日朝頃に届いて明日渡しという形で構わないと言われても、そうすると必然的に私は明日一日で水・木・金の三日分のデータを手掛けるのと同じ労力を要求されるのでかなりしんどいのだ。
――が、夕方になって相手方の勘違いと判明、入稿そのものは明日で構わないのだが作業だけは済ませておこうと作業を行う。……明日、ほんまに大丈夫か。これでデータが一つ明後日進行になってもパソコン弄れる人間が一人もいない私の職場は。本日のお買い物
1,泡坂妻夫『斜光』(扶桑社文庫・昭和ミステリ秘宝/扶桑社)
2,イアン・ワトスン『オルガスマシン』(コアマガジン)
3,津田雅美『彼氏彼女の事情(11)』(花とゆめコミックス/白泉社)
4,あずまきよひこ『あずまんが2』(Pioneer LDC/CD-ROM付書籍)
やはり買わなければいけないでしょう、でも二冊同時に買うのはちょっと危険を伴うので、取り敢えず同時発売のうち1のみ。しかし同じ日に2を買うのはどうだろう私よ。イアン・ワトスンの、本国では未だ発売されていない幻の処女長篇だとか。非常に珍しいところからの出版だが、これとてイアン・ワトスンが『A.I.』の原型となるアイディアを提供した一人であり、恐らくその辺とも絡む内容でなかったら日本でも未だ出版が難しかったのだろうな、と怪しげな芳香を放つ表紙に口絵を眺めつつ思うのであった。
4は……なんか、結局乗せられてしまったという感じ。前作のような変形版ではなく、CD-ROMに各アニメーションのオフィシャルパロディを纏めたもの、単行本化されなかった連載作品を纏めたもの、それに完全書き下ろしの短篇とそれぞれを分冊にして、箱に収めたデザイン。メディアワークスから発売された『リサイクル』と異なり、オリジナル作品の解説がないのでごく一般的な読者層には幾分敷居が高いかも知れないが、やっぱり面白い。なお、4だけは秋葉原のよく行くソフトウェア専門店で購入したのだが、発売当日にも関わらず、ちょっと驚くくらい安かった。4を買うついでに、大阪行き新幹線のチケットを受け取ってくる。更にとあるテレホンカードを頂戴するという余禄があったりして。……なんか、実際の仕事を挙げる前に随分特をしている気がして、えらい申し訳ないんですけど。いいのだろうか。
『オフレコ』という番組で心霊写真及びトイレの花子さん特集をやっていたので見る。以前、この番組で幾つかの心霊ビデオに関する科学的説明を試みており、そちらはなかなか説得力があったので今日も点けてみたのだが……テレビ局のスタッフがやる検証って結局みんなこうなのか。あまりに掘り下げが足りない。実地にトイレで呼び掛けて現象を確認する、という姿勢は正しいものの、そのあとで提示される科学的根拠は、あくまで番組が録音できた、と伝える「人のすすり泣くような声」の正体に一つの説明を与えるもので、学校で子供達が聴いた声全てを説明するものではない。学校の階段で聞こえたという「すすり泣くような声」、トイレで番組スタッフが録音に成功した「すすり泣くような声」の正体は番組内で言ったように、校舎の建築構造そのものに起因する(開け放たれた窓や空調ダクトを介して伝わってくる空気や人の声という説)という解釈で充分だと思うが、実際にそれらの音を聴いた、という子供達の証言通りの状況を再現した上で検証できなければ全てに合理的解釈が為された、ということは出来ない。で、それらについては専門家のそうした説明で納得しているくせに、番組が「花子さんの原点である」と認定した殺人事件の現場と思しい廃校舎で収録された、低く泣くような声については「解明できていない」と言ってしまう辺りに、いよいよ彼らの限界が浮き彫りになっている。問題の廃校舎は地方の山間にあり、都会や町中にある学校とはまた別の形で、余所で響いた音を吸収し反響させやすい環境下にあると考えられる。であれば、先述の解釈から敷衍して、余所で立てられた音や空気の流れが、たまたますすり泣く声のように聞こえた、と捉えるのが正しいと思うのだけど。本当の意味で「検証」を行うのであれば、疑いようもない彼女からの返事、「はーあーい」、「なーあーに」などといった意味の理解できる声を収録できてから本当に科学的検証を進めるべきだ。それらしいものが録れただけで満足するんじゃない。
2001年7月5日(木)
http://www7a.biglobe.ne.jp/~tuckf/Diary/20010701~.htm#Day05この期に及んで言うべき事は何もない。あとはただ明日の本番を待つのみ。……来週ももう一個あってしかも次の週末にはあっちの締切も待ちかまえているが、後で考えよう。うん。更新は多分休みませんので明日・明後日も覗いてみてください。時間帯は不明瞭ですが。というかグロッキーで殆ど何も書かずにアップする可能性もなきにしもあらずですが。しかし直前になって一番苦労したのは、二日目のスケジュール設定であった、というのもどうかと思う。そこは仕事じゃないだろう。
本日のお買い物
1,花見沢Q太郎『電動侍』(Daito Comics/大都社)
2,野間美由紀『カレイドスコープ -万華鏡の絢爛-』
3,野間美由紀・原作/上田愛子・作画『キャベツ畑で夢をみて -ライナスの子守歌-』(以上、HLC Silky/白泉社)
4,岩井志麻子『夜啼きの森』(角川書店)
野間美由紀氏二冊同時刊行、といっても一方は完全に他の方の作画で、2にも一篇ながら別の方の作画作品が収録されてますが。2はB6判で第一巻が発行されていたものが、シリーズ全体の判型変更に伴い揃えて新書版で刊行、しかしこの状況でいきなり説明もなくシリーズが始まっているのは不親切だろうという判断からシリーズ第一作が再録されているという、初心者には親切だが前巻もきっちり所有している者には複雑な配慮が為されている。何にしても、私は野間氏のシリーズではこの『ライナスの子守歌』が一番好きだったりするので、あまり気にならないのだけど。
4は岡山弁を駆使する怪談作家初の長篇、しかもテーマは『八つ墓村』でもお馴染みのあれだ。自ずと期待も高まろうというものだが……いつ読むのかしら。
2001年7月6日(金)
http://www7a.biglobe.ne.jp/~tuckf/Diary/20010701~.htm#Day06in 大阪・初日。約束通り現地にてアップロード致しますが、内容が内容なのでほぼダイジェストとなります。行間は、てきとーに想像して補ってください。
興奮していたのかどうなのか、――多分ただ寝苦しかっただけだとは思うが、十二時ちょい過ぎに就寝して目醒めたのは六時前。余裕たっぷりに荷物を再確認し、山手線経由で東京駅まで。どっちかが遅刻した場合に、と切符をお預かりし座席で合流という形をとったが、編集担当のWinter氏も問題なくいらした。
車中ではインタビュー内容の確認と雑談の合間に、私はこの為に用意したノートパソコンでしこしこと書き続ける。それなりに進んだが、やっぱり高速移動する乗り物の中で動かない画面を見続けるのはかなり気持ち悪くなる。まして横にいるのが担当者とあっては尚更だ、という訳で思ったほどには進まず……まあ、昨日までの停滞から較べれば多少はましというところか。
午前十一時半に新大阪駅に着き、そこからタクシーに乗って宿泊地へ。チェックインだけ済ますつもりだったがまだ受付可能な時刻ではなく、大荷物だけお預けして――と言っても馬鹿でかい荷物を抱え更にノートパソコンまで持ち寄ったのは私だけで、Winter氏は慣れたもので軽い手荷物だけ、必要な書類・テレコはブリーフケースで別途運べるようにされていて、切実に荷物を置いていくべきは私だけだったのだけど。その後ホテルすぐ横のバーミヤンで軽く食事を採っていざ出陣。ホテルから目的地は徒歩圏内なのでさっさと到着する――はずが、私が半ば洒落で持ってきた帽子をバーミヤンで忘れるという馬鹿をしでかし一度来た道を戻る。雨模様で幾分空気が涼やかだったのが唯一の救い。
そして漸く目的地、Visual Arts本社に到着。インタビューのお相手は、同社の最大レーベルKeyが昨年初秋に発表した『AIR』におけるシナリオスタッフの一人・涼元悠一氏である。なにしろ初めてのインタビューというお仕事、今日までに涼元氏の作品やWebサイトなど、予め可能な限り調べてきた中で、かなりお話ししやすいのでは、という印象を受けていたのでさほどではなかったものの、やはりそこそこ緊張していたのだが、氏が非常に熱心にお応えしてくださったのでかなり濃い内容になった――この辺りの詳細は、9月4日発売予定の新雑誌上で公表する予定なのでご興味がおありの向きはそちらをお待ち下さい。……但し、結果的に五時間を越えたインタビューの内容及び展開からしてかなり切り貼りされる筈ですが。何にしても、この間交わされた議論と『AIR』に隠された多くの企みに関する言及を戴き、充分鑑賞に耐えうる内容になったという自負はあります。発売日をご期待下さい――尤も、テープリライターが強いられる苦労を思うと同情を禁じ得ないが。
しかしこの日の個人的ハイライトは寧ろこのあとである。涼元氏を連れ出し、梅田にてらじ氏と合流、とある居酒屋にてインタビュー内容の延長上で果てしなく過激な話題を展開し続けるのであった――この日耳にした話の中で、ここに書き出せるようなものは多分一割もない。濃密で至極愉しい時間を約四時間ほど過ごし、タクシーに便乗して途中でお別れした。
……肉体的にも精神的にも疲れはかなりのものがあったが、今日一日でも大阪来訪の意義は充分あったと感じております。ふう。それにしても世の中本当に狭い。
2001年7月7日(土)
http://www7a.biglobe.ne.jp/~tuckf/Diary/20010701~.htm#Day07in 大阪・二日目七夕。精神的にも肉体的にも相当疲れている、はずなのにこの夜の睡眠時間は実質三時間程度だった。朝食バイキングも午前七時の開始早々に済ますと、暇を持て余してチェックアウトまでの間小説の続きを書きーの昨日の日記で端折ったリンクを追加しーのと時間を潰す。実の処この段落も、その段階に記しているのだ。Keyがゲームメーカーリンクに用意されていなかったのに愕然としたが、これは帰京後に追加することにして一旦見送る。滞在中は日記のみ更新。だってアドレス確認して表示の仕方確認して、とやっているとどんどん電話代が嵩むから。……と言いつつ、ちょっと関係者のHPや掲示板は確認して回ってきたのだけど。今からPHS料金の徴収が怖い。
……そこまでは良かった、の、だが。
午前中の空き時間が拡がってしまったので、Winterさん共々チェックアウトすると地下鉄経由で「誰もに行けと勧められた」日本橋へ。取り敢えずの目的は某所にある巨大な4コママンガを確認することだけだったが、某ソフマップで『Windows ME』期間限定アップグレードパッケージが2000円足らず(本体)で売られているのを目の当たりにして、二人して購入してしまう。……大阪まで来て。その後、4コマを確認すると東京へ戻られるWinterさんとお別れし、私はなんば駅まで歩いて、梅田駅に移動し泉の広場方面へ。――きっとあそこにはあの人がいたんだろうなーなどと思いつつ(暈かしすぎで意味不明だが名前は出せない)。
この時点で既に発汗量がピークに達したのか、時々汗が完全に引く瞬間が出てくる。と共に、腹部にも危険な気配を感じ始める。だが、この時点までは本当にあそこまでやばいことになるとは思っていなかったのだ。
正午ちょっと前に泉の広場で内田竜宮丞さんと初対面の河井つぐのすけさんのなむぅコンビ、U村さん(って今はどのハンドルだ)、まぬぅさんと合流、若干遅れてひでむらさんも登場し、予約済みのイタリアンレストランへ。この移動の間はまだ普通に話す余裕もあった。食事中まったりと会話が始まった辺りから私の口数は急激に減少している。そこからどー話が展開したのか、まず地下街でU村さんがあずまんがスイングのガチャガチャで一個だけ残っていた中身を見事に詰まらせ、更に階下の中古レコード・CD売場を散策する。地上に出ると、暫し喫茶店で息を吐くものの、間が悪いことに夕方までの店終い直前に入ってしまったため程なく追い出された。今度は信長書店に向かうと誰かが言い出しついて行ってみればまあアンダーグラウンド。……という具合におちゃらける余裕は既に私には残っていなかった。店を出て暫くした辺りで、遂に私はギブアップを宣言した。
翌日に冷静に考えると、そうなる原因は前日から幾つもあったのである。着替えなどを詰めたボストンバッグは元々長距離持ち歩くのに向いていなかった、雨の予報に反して薄曇り→晴れと推移した気候、そういう気候条件では最も不適当な黒い蒸れやすい帽子、五時間の長丁場インタビューに続く飲みと寝不足、そしてこの日午前中の日本橋探訪と、とどめの移動オフ会。……これだけ積み重なれば明瞭だろう、疲労に暑気中りでもう動く気力も無くなっていたのだった。
とろとろと大阪駅の窓口に向かい、六時十七分の新幹線指定席のチケットを購入すると、そのあとに芦辺さんと落ち合う約束をしていた新阪急ホテル内ラウンジに行き、私はしゃがみ込んで待つ。バイトが近いため離脱したひでむらさんとほぼ入れ替わりにやってきた某氏(諸般の事情からハンドル未定・本名公表不可)も含めて他の方々が雑談している中、私は四時近くまで潰れていた。ゆきりんから電話の入った頃に漸く小康を取り戻しちょっとだけご挨拶と雑談に混ざると、芦辺さんが来られる時間近くにお別れした。
が、芦辺さんがなかなか見えない。元々芦辺さんがシナリオ学校で行われる講義を挟んでゆっくりとお話しする予定で、そうした油断から忘れ物などで到着が遅れられたらしい。それでも喫茶店から私が荷物を預けたコインロッカーまでの移動中と、芦辺さんに当初お聞かせしてくださる予定だった諸々のことを駆け足で説明していただき、梅田駅改札近くで慌ただしくお別れする。
大荷物を提げて新大阪まで、息も絶え絶えに急ぎどうにか新幹線に無事乗り込むも、出発早々から吐き気を覚え、約三時間後の東京着までひたすら耐える。自宅に着き、予め連絡しておいたので用意されていた夕食を流し込み、風呂に浸かって汗を拭うと、日付が変わる前にどろどろの眠りに就く。そしてこの項を書いているのは翌日正午過ぎである。まだ躰の節々は痛み気力も半分程度で復調しているとは言い難いが、まあ空調もある室内に籠もって、7日はその後まるで手付かずだった執筆に専念するつもりなので問題はないだろう。――ともあれ、7日お会いした皆様には心よりお詫び申し上げます。ご迷惑お掛けして申し訳ありませんでした。次の機会こそゆっくりと。……ああしかし芦辺さんの講義お聞きしたかった内田さん突っつきまくりたかった。過去ログへの収録、触れ忘れたけどちょっと仄めかしたい話などはまた8日夜の更新で触れるとします。……兎に角休んで、10日に予定されたもう一つのインタビューと短篇執筆を無事に終わらせなければ。
2001年7月8日(日)
http://www7a.biglobe.ne.jp/~tuckf/Diary/20010701~.htm#Day08そんなわけで、予定に反して特に何もない日曜……が、息子が熱中症でグロッキーなら母親は先週来の腰痛がピークを迎えてガタガタ。先日から訪れている診療所ではなく、自宅近所にある鍼灸院にて応急処置をしてもらったところ、どうやら治りかかっているための痛みであるらしく、対症療法が限界なのだそうだ。そんなわけで治療後もあんまり芳しい状態ではなく、親子揃って依然不調。一人だけ元気な親父がもーちょっと動いてくれれば楽なんだが。
この二日間で一番辛かったことはもしかしたら本を買えなかったことかも知れない。母の治療が終わったところを見計らって合流するはずが若干遅れていたので、その合間を縫って近所の本屋で翻訳物文庫に的を絞り三冊ほど購入する。というわけで本日のお買い物
1,サマンサ・ワインバーグ『「四億年の目撃者」シーラカンスを追って』(文春文庫/文藝春秋)
2,J.ウォリス・マーティン『鳥だけが見ていた』
3,ルチアーノ・ヴィンセンツォーニ『マレーナ』(以上、角川文庫/角川書店)
1は資料目的の衝動買い、2は以前書評が褒めていたよーな記憶があった、3は映画が非常に良かったので――但し、ざっと見るとあまりいい文章ではないようだが。大阪滞在記拾遺。
涼元悠一さんへのインタビュー、と言いつつ脱線すること屡々。或いは私のことをかなりのお調子者ではないか、と思われたかも知れないが、その通りなので問題なし。お陰で八月以降も退屈せずに済みそうです。なんのことやら。誰にしても、顔見知りになったあとで一度やってみたくなるのは秋葉原なり日本橋なり夏冬の有明なりで大声でお呼びすることなのだなと思ったり。……無論絶対やりません。大体自分もただじゃ済まなかろう。今日になって涼元さんのHPが久々に更新されていたが、実はこれもインタビューの際に話題になった点なのだった。
しかし何度考えても、その後のらじさんを交えた飲み会での会話はインタビュー時のオフレコ話題に輪をかけて凄まじいものがあった。あのときの会話をインタビューにも利用したMDで録音していたら、どーなったやら。尤も居酒屋の喧噪の中なのでまともに録れていたかも不明だが。なお、このときらじさんからは涼元さんのコパルトノベル新人賞受賞作を収録した文庫本と、らじさんが頻りに薦められていた噂の『sense off』をお借りする。……小説は兎も角、ゲームの方はやっぱり今の長篇脱稿してからでないとおちおち出来ません。暫くお待ち下さいー。
飲み会のときのお話でも感じたことだが、私と涼元さんとは結構共通項がある。高卒であるとか※※※(これこそやばすぎて深く語れません)とか文章の方向性にも幾つかの共通点があるが、実はゲームの嗜好も結構似ている。オールドファッションなものは別にして、最近のもので一番評価しているのがあれだ、という点で。涼元さんは密かにファンサイトまで作っているほどだが、私もその当時にホームページの知識があったなら、その後も暇があったなら同じ事をしていたかも知れず。お願いだから2以降もPC版で出してくれーとか何故3はPS2で出してしまったのだとか、実はそんな話もしていたのだった。
その後の夜、滞在先のホテルでは期待に反して怪奇現象は何一つ起きませんでした。シャワーから血の雨とか髪の毛が降り注いでくるとか、窓を開けたら昏い目をした少女が佇んでいた(部屋は六階)とか、愉しげなことはなにひとつ。その代わり、タイマーの存在しない空調の扱いに迷い、寝ようかと思っては空調を止め、暑くなって起きて空調を点け、ということをかなりの回数繰り返す羽目になった。どうせ寝られないなら、と執筆を進めたり、電話料金がかかるのも承知で幾つかのサイトをチェックしたり。そんなことをしているから余計に疲れを持ち越してしまったのですな。
日本橋。関西圏において関東の秋葉原と並べられる一帯だが、実見してみて私が思ったのは秋葉原+河童橋道具街。秋葉原には家具専門店とか調理器具専門店といったものはあまりないし、大通りに接した開放型アーケードもない。しかしディスプレイの仕方とか呼び込みとか、何よりイベント展開の雰囲気はほぼ同一。7日付の日記でも言及したがあそこにあの人はいなかったのか本当に。
……何にしてもだ、もうちょっと服装や荷物のことも含めて計画的に動かないと駄目よね。そうそう、昨日購入した『Windows Me』は既にインストール済みです。思った通り、ここ暫く迷惑させられていたトラブルの幾つかはこれだけで解消し、見た目もあんまし変わってません。最初は動作が遅かったのも、常駐ソフトが一つ古すぎたことが原因で、そちらもアップデートを行って問題なし。これでXP発売まで乗り切ってくれれば言うことなし、なのだが。
2001年7月9日(月)
http://www7a.biglobe.ne.jp/~tuckf/Diary/20010701~.htm#Day09短篇もさることながら明日の仕込みをしないといけないんだよな、と結局大阪滞在中は手もつけられなかった『MOON.』を昨晩から漸く始める。所謂マルチシナリオとは微妙に異なる作品らしいので、今日の夜にも終わりそうだが……内心、『ONE』の復習を優先しておきゃ良かったかな、とやや後悔する。間に合わないものどう考えても。
で、仕込み云々は脇に置いても、尻に火が点いているのは相変わらずなので――というより先月より遙かに危険な状態なので、明後日辺りから日記は本格的に淡泊にします。御了承下さい。来月ぐらいからはきっと常態に戻ります……但し、映画評及び粗筋書きと今週末あたりに予定されているオフ会についてはちゃんとレポートを書くつもり。
本日のお買い物
1,佐藤友哉『フリッカー式 鏡公彦にうってつけの殺人』
2,黒田研二『硝子細工のマトリョーシカ』
3,本格ミステリ作家クラブ・編『本格ミステリ01』(以上、講談社ノベルス)
4,CLAMP『ちょびっツ(2) [初回限定版]』(ヤンマガKC/以上、講談社)
5,ポーリーヌ・レアージュ/澁澤龍彦・訳『O嬢の物語』(河出文庫/河出書房新社)
妹萌え小説だという噂を聞いた1。いや、別にそれが理由でなくて習慣で買ったのだけども。
ちょっと問題を感じたのが3。「初出」という表現は、その作品が最初に発表された場を示すのであってのちに収録された単行本を言うのではないと思っていたのだが、本書では例えば『オール讀物』掲載の(……だったよな)加納朋子『子供部屋のアリス』が単行本『螺旋階段のアリス』初出とされ、『メフィスト』初掲載の筈のはやみねかおる『透明人間』が新書『虹北恭助の冒険』初出となっている、という具合。掲載後に加筆訂正が為されている、という言い方もあるかも知れないが、個人的にはここでの書き方は「初出」よりも「底本」の方が相応しいように考えるのだが。……それとも、そんなことまで考慮してなかった?
4……ええ馬鹿ですよ。どーぞ罵ってください。どーせ開封もしないんだふん。
5は以前bk1で紹介されていたときにちょっと興味を惹かれ、買い物かごに入れて暫く放置してあったもの。巻末に訳者・澁澤龍彦によるあとがきが収録されているが、この終盤に記された言葉が凄まじい。30年も前にこの記述があったという事実が、だ。そういえば一昨日のこと。どこかしら微かな話し声がずっと聞こえていて、日中は何処かでつけているテレビかラジオの音が聴こえてきているだけだろう、と高を括っていたのだが、流石に夜が更けてからも聞こえてくると薄気味悪くなってくる。こんな時間まで、余所の家に聞こえるような音量でテレビだラジオだを点けているところがあるとは思えない。――その時になって、ふと思い至った。
インタビューの際に、予備として使用していたMDが、何かの拍子で作動していたのだった。残量ゼロに近くなったバッテリーがそのことを如実に物語っている。一日充電器に差して誤魔化すのだった……。
2001年7月10日(火)
http://www7a.biglobe.ne.jp/~tuckf/Diary/20010701~.htm#Day10例外的お仕事第二弾本日午後三時より遂行。諸般の事情がありまして今回のお相手や内容など細かいところは伏せますが、掲載されるのは先日のと同じ9月刊行予定の雑誌ですので、興味がおありの方はそちらをご確認下さい。というか、いま日記の記述にまで神経が配れない状態だと自覚したので、その辺の危険なゾーンは当分切断せねば。
今日はこの仕事の関係で本業は午後をすっぱり空けてもらっており、妙に暇な時間が出来てしまい午後二時前に一旦現地へ顔を出すと、辺りの店であれこれとお買い物。職場近所の書店では定期購読しか買っていないので、本日のお買い物は全てこの時のもの。
1,John Coltrane『Giant Steps (+6)』(ATRANTIC/WARNER MUSIC JAPAN・CD)
2,桑田佳祐『波乗りジョニー』(TAISHITA/Speedstar Records/VICTOR ENTERTAINMENT・CD)
3,デイヴィッド・ピース『1974 ジョーカー』(ハヤカワ文庫HM/早川書房)
1は以前注文した際に「廃盤」と言われて愕然とした、コルトレーン代表作の一つ。ただただ、タイトルチューンをオリジナルの演奏で聴きたかったのである。ジャコ・パストリアスのライブでの演奏と佐山雅弘のホーンを従えたソウルフルな演奏が印象深く、その所為でブラスセクション或いはビッグバンドの楽曲というイメージを勝手に抱いていたのだが、実際聴いてみるとやはりトレーンの眩暈のするような早吹きが凄い。フレーズ自体に特殊な吸引力があるのは言うまでもないが、ホーン一本で表現されると余計にテクニックの優劣が出る楽曲なのだ。あのマイルス・デイヴィス『Kind of Blue』と相前後して録音されており、コルトレーンの脂ののり具合も素晴らしい。
2は……内心踊らされているよなと思いつつやっぱり桑田佳祐のこういう曲は捨てられない、と購入。私は桑田佳祐が最初に個人名義で発売したアルバム『Keisuke Kuwata』を生涯の愛聴盤として挙げるような男です。その後のどの方向性よりもあれが一番好きでした。ゲストを起用した贅沢なシングル・カップリング曲二曲(今回のシングル発売に合わせてオリジナルのままの形でCD復刻されている)も含めて、私はこの当時の桑田佳祐ほど愛着のあるシンガーもいないのです実は。今回のシングルには当時の匂いが仄かに感じられ、どうも期待せずにはいられなかったのであり。
今月購入予定に入れていた本の中で一番楽しみだったのが3。現在日本に居を構えるイギリス人作家のデビュー作である暗黒小説。馳 星周の讃辞、黒を基調に禍々しさを演出するカバー、そしていかにも危険な粗筋。どれを取っても魅惑的で、仕事を放り出して読み始めたいぐらいだが、無論耐える。最近こういうタイプのものから幾分離れていたので、余計に楽しみなのである。この辺を原動力に執筆がスムーズに進まないものか駄目か。うわーい、新潮文庫以来復刊の兆しがなかった鬼貫シリーズ最後の長篇『死びとの座』が光文社文庫のシリーズに加わってるー!
『MOON.』終了。なるほどなるほど。非常に粗いが魅力と迫力は感じる。問題は冒頭の不自然さと、終盤に登場するキャラクター(モチーフ)の扱い方に一番顕著であるように思う。何にしても、これまた当時に取り漏らしたことを悔やみたい作品。……あ、終了と言ってもバッドエンドは回収していないので、CGモードは未完成です。だが流石に暢気に埋め立て作業している場合ではないのだなこれが。
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