2001年6月下旬の日常

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2001年6月21日(木)
http://www7a.biglobe.ne.jp/~tuckf/Diary/20010621~.htm#Day21

 久々に残業。しかも帰宅途中呼び戻しのおまけ付き。たまにはいいが何もこんなときにでなくても。そもそも明日掲載予定の広告のタイムテーブルが直前でまた大幅に変わるというのも凄い。

 ……奇特にも御期待の向きがあるかも知れませんが、もう『アンビリーバボー』杉沢村特集に突っ込むことはしません。何故なら、言うことはと同じだから。しかしよりにもよってこんな忙しいときにまた馬鹿をやらかしてくれるとわ……。取り敢えず、あのディレクターを何とかしませんか。せめてあと少し合理的思考と想像力を具えた人間使おうよー。続くインターネット越しのロマンスがエピソードとしても番組としても優れていた分、余計にダメダメ具合が際立ってます。……そもそも、一番最初の杉沢村伝説の内容をちゃんと覚えてます? 覚えてたら絶対に手出ししないような可能性しか検証していない気がするのだが……

 本日のお買い物
1,京極夏彦『ルー=ガルー 忌避すべき狼』(徳間書店)
2,鯨 統一郎『九つの殺人メルヘン』(光文社・カッパ・ノベルス)
3,矢崎存美『刑事ぶたぶた』(徳間書店・デュアル文庫)

 1は数年前から読者より設定などを公募していたSF長篇。しかし『続巷説〜』すら未読なのだね……。八月頃、全てがひと段落したらそれらも含めて一気に読むつもりです。……しかし、ハードだ。
 2のデザインは最早カッパ・ノベルスのフォーマットが殆ど残っておりません。でもいい感じだ。内容? 言及している余裕ありません。

 多分、長篇は締切を延ばしていただかなければならないでしょう。しかしそれはそれとして、急がねばならないことに変わりはない。淡泊な日記を暫くご勘弁下さい。大丈夫、きっと週末は騒々しいですから。


2001年6月22日(金)
http://www7a.biglobe.ne.jp/~tuckf/Diary/20010621~.htm#Day22

 締切についてご相談しようと思って電話をかけたら、担当氏は休暇中でした。月曜日に連絡をいただけるようお願いする。……それまでに著しい進捗があったら、なしにしよっと。無謀な夢としか思えんが。

 本日のお買い物。久々に多いぞ。
1,東野圭吾『超・殺人事件 推理作家の苦悩』(新潮社・新潮エンターテインメント倶楽部SS)
2,城平 京・水野英多『スパイラル 〜推理の絆〜(4)』(ENIX・ガンガンコミックス)
3,植芝理一『夢使い(1)』(講談社・アフタヌーンKC)
4,監修+絵+実例・植芝理一/『Web現代』編集部&高松義明・編『植芝理一「CGイロハのイ」』(講談社)
5,『刑事コロンボ 完全版 Vol.1&2セット』
6,『 同 Vol.3&4セット』(以上、CIC-VICTOR Video・DVD Video)
7,『シックス・デイ デラックス版』(Pioneer LDC東宝東和・DVD Video)

 1の帯には「日本推理作家協会、除名覚悟!」とある。……そういう内容だったのか。初耳だ。店頭で悩むつもりだったがインパクト抜群の文句に騙されて購入。2は城平氏のあとがきがなくなったのがちょっと寂しい。
 4は、『ディスコミュニケーション』を描き続けてきた植芝氏が殆どゼロの状態からCG作成を学び『アフタヌーン』誌の表紙を飾るまでを描いた、ドキュメントタッチの入門書、らしい。乗せられて買ってしまった。
 5と6は待望、世界初のDVD化だそうな。シリーズ化以前の第一作にパイロット版、スピルバーグが映画界進出以前に監督した『構想の死角』を含む。考えてみると、私はこの辺の作品を見た記憶が殆どないのだった。そういう意味でもやっぱり待望。……但し、BGVには向かない。ので、傑出した出来だとは思わないが、一度劇場で観てその映像感覚と音楽の出来は高く評価していた7を一緒に購入したのであった。

 自宅のデスクトップはまだ当分現役で務まりそうだし、反対に職場で執筆に使っているノートには限界が見えてきた。出先で執筆を進めるのにも役立つ。というわけで、本気でノートPC購入を検討する気になってしまった。……稿料と併せて考えると足が出るが、まあいいの。多分に趣味だし。
 で、日中買い物の途中に上野の某家電店へ寄る。秋葉原に出入りしているくせに何故かそちらで本体を買おうと思わないのは、多すぎて迷うからという理由にならない理由があるがそれは兎も角。当初、メーカーとして割と贔屓にしているNECかSONYのどちらかに決めるつもりだったのだが、サイズはB5程度、なおかつ出来ればCD-ROMかDVD-ROM搭載・同梱のもので、メモリはある程度積んでおり……と条件を厳しく設定していくと、意外にもこの二社では納得できるものが少ないのだ。で、店頭で見回りながらパンフレットを複数収穫し、職場に戻って作業に飽きたときに眺めていると、どうやら一つだけ、こちらの求める条件にほぼ完璧に合致するものが見つかった。
 ただ一つ問題を挙げるなら、私は数年前のある出来事からそのメーカーを忌み嫌っていた、ということである。……まあ、いい加減許してもいいんだろうか、という気にはなっている。予算の問題もあり、何処かで折り合いをつけなければならないのも事実なのだから。


2001年6月23日(土)
http://www7a.biglobe.ne.jp/~tuckf/Diary/20010621~.htm#Day23

 今日は『ギフト』か『g:mt』を見る予定だったが、ふと冷静に考えるとここ暫く血腥かったりアクション満載だったりと見ていて疲れる作品が多かったので、あまり精神的に重圧にならないだろう雰囲気があって、そのうえ上映時間も短めなら言うことなし、と思って突如変更。今日付けで小屋が変わったばかり、ジュゼッベ・トルナトーレ監督、エンニオ・モリコーネ音楽のマレーナ』(GAGA-HUMAX・配給)
 1940年、英仏に宣戦布告し沸き立ってはいるが少しずつ暗黒の時代へと移行しつつあった当時のイタリア、シチリア島。12歳のレナート・アモローソ(ジュゼッベ・スルファーロ)は漸く買って貰った自転車を駆り、少年たちのグループに仲間入りする。そのとき、グループの少年たちが見つめていたものは、暫く前に結婚したばかりの美しい女性――マレーナ・スコルディーア(モニカ・ベルッチ)だった。彼女の姿を初めて見た瞬間にレナートのズボンが膨らみ、去る彼女を先回りしその後ろ姿を見つめている間に、レナートは完全にマレーナの虜となった。
 一旦火が点いてしまった少年の煩悩は留まるところを知らない。仲間入りした少年グルーブのひとりが語った逸話に自分を重ねて、玄関先で自分を誘惑するマレーナの姿を夢想する。夜中に彼女の家を訪れ、鎧窓の穴から夜着を身に纏ったマレーナが、レコードの音楽に合わせて遠方にいる夫の写真を抱いて踊る一幕を目撃し、明くる日にそのレコードを買い求めて聴き耽る。しまいにマレーナが庭先に干していた下着をかすめ取ってそれを顔に被ったまま寝入ってしまい、事情を知った親に軟禁されたり。しまいには、誰かの家に足繁く通う彼女の姿に情人の影を垣間見たりしたが、それが彼女の父でありレナート自身の教師でもある人物の家だと知って一安心してみたり。
 そうして遠巻きに彼女を見つめていると、町の人々の彼女を見る眼差しが如何に悪意に満ちたものなのかを次第次第に気づいてゆく。マレーナは結婚から僅か二週間で夫が戦場に赴き、無聊を託っていた。婦人達からは際立った美貌への嫉妬もあって、既に愛人を作っている、陰でこそこそと密会しているなどとあることないこと言い立てられ、男性達からは老若の別なく色目を使われ、はなから淫売扱いに近い。やがてマレーナの夫が戦死したという公報が届き、彼女が追悼集会に欠席し父の家でひとり涙に暮れている姿を目の当たりにしたレナートは、ある決意を胸に宿す。自分が彼女を守るのだ、と。そして教会へ、自分が大人になるまでの間、マレーナを守って欲しい、という願いをかける――
 だが、マレーナは次第に抗えない運命の波に呑まれていく。軍人である恋人がマレーナの家からの帰り際、彼女に懸想する歯科医と喧嘩になり、歯科医の夫人から歯科医共々不貞の罪で訴えられた。脂ぎった弁護士の助力で罪こそ免れたものの、弁護料が満足に払えないところにつけこまれ否応なく弁護士の愛人にされる。やがて弁護士とは別れたものの、父に勘当され生活に窮したマレーナは、髪を染め身なりを淫らに変え、軍人相手の娼婦に身を窶す。そんな彼女の姿を前に、何の手助けも出来ないレナートは気絶するほどの衝撃を受けるのだった……
 と、書いているうちに結末まですんなり描出してしまいそうな気がしたので手を止めます。
 はっきり言って、一番評価の言葉に困るのがこういう映画である。アクション物なら弾薬の数やその行動の非現実性、或いはその描き方などを突破口につつきまくることは幾らでも出来るし、むやみやたらに人を感動させようとするドラマならば、その筋回しややはり非合理的な展開に対して異を申し立てるなり、その点で否定できる部分がないという理由で評価することも可能だ。だが、本編は絶対的にアクションなどを主体にした娯楽作品でなければ、ラストに観客の涙を誘おうと画策した作品でもない。正しく、手を触れることはおろか話しかけることすら出来ない意気地なしの、それでいて生涯に一度出来るか出来ないかという最高の片想いを、時系列通りシンプルに追っただけの作品である。しかも、その過程を映像的にもストーリー的にも、完璧に描いているのだ。完璧と言うのが駄目なら、せいぜい音楽までひっくるめてあまりにも美しい、というのが限界である。
 であるから、せいぜい作中の、職人気質とも思わせる細やかな表現を抽出して讃えるぐらいしかできない。物語はレナートが12歳となり、自転車を買い与えられ少年グループに属し大人というものへの階段を登り始めたところから始まる。そしてマレーナと出逢ったところから、戦後のエンディングまで成長していく姿を描いている。この成長の描き方が、非常に自然で分かり易い。最初は自転車を買い与えられるのが精一杯だったレナートは、マレーナとの一方的な邂逅から大人になることへの憧れを加速させる。冒頭では半ズボンであることを理由に屡々子供扱いされ、理髪店でも小さな別の席に座らされていたレナートが、ラスト近くでは理髪店でひげ剃りを頼み、長ズボンで自転車に跨りながら煙草を吸っている様を見ると、思わず笑みさえ浮かべてしまう。こと、長ズボンを父親に認められるに至るエピソードは出色と言えよう。最初は父親のズボンを着服し勝手に仕立て直させて怒りを買うが、そのときに冗談交じりに父親が行った提案「ムッソリーニの頭が真っ二つになったら考えてやろう」、レナート少年はこれをある場面で逆手にとって念願の長ズボンを入手するのだが、これは劇場なりビデオなりで確認していただきたい。
 また、作中でレナートの行為もマレーナの行動も一切美化していないのもまた巧い。自慰はする白昼夢は見るおまけに怪我をしても覗き見を止めないレナート、望む望まないとに関わらず次第に堕ちていくマレーナ、どちらもそのままではかなり辛いものを、基本的にレナートの視点から随所にユーモアを交えることで深刻にさせず、寧ろその飾りのなさで美しい記憶に昇華させてしまっているのだ。モリコーネの音楽も効果的だ。悪意や俗な行為をこれほど爽やかに、美しく魅せた映画作品というのを、寡聞にして私は知らない。
 ラストも素晴らしい。結局レナートはマレーナに触れることも話しかけることも出来ず、一度は失意の彼女を駅で見送ることになるのだが、最後僅かに振り絞った勇気で、間接的にマレーナを海辺の町に連れ戻し、ささやかな幸福を提供する。そして、偶然の契機で一瞬言葉を交わすと、後ろを振り返ることなく自転車を漕ぎ続ける。いわば失恋の物語であり、決してハッピーエンドでも感動的な結末でもない。しかし、それでも異様に胸に沁みてくるのだ。
 確かに、これはまたとない最高の片想いの物語であり、時代設定と緊密に結びつきながらとても普遍的な感情を描いた、珍しいタイプの名品。幾ら言葉を尽くしても、整理のつかないままの思考では喩えきれない。とにかく絶品、と最後に添えておくに留めよう。お願いだから断片的な行動を評してストーカーだとか言わないでね。

 映画鑑賞の帰り道、昨日訪れた家電店にてノートPCと必要なオプションとの合計金額を試算して貰い、月曜日再訪するという約束の許に取り置きをお願いした。キャリーバッグだけが幾分時間がかかりそうな気配だが、あとはいずれも滞りなく揃いそうだとのこと。ああ、月曜日が楽しみ。……と同時に、非常に不安を感じていたりもする。メーカーがなぁ……

 本日のお買い物
1,北森 鴻『蜻蛉始末』(文藝春秋)
2,和田慎二『ピグマリオ(1)』(メディアファクトリー・MFコミックス)
3,『To Heart コミックアンソロジーVol.11』(スタジオDNA・DNAメディアコミックス)

 1はチェックしてませんでした。泣きながら購入。
 2は飛ばして3。よく続くよなとかそういう話はおいといて、いつか誰かがやるだろうなと思っていたがとうとうアンソロジーに出てきたよ『先行者』ネタ。あんまり活きたオチではないが。
 ちなみに今日の買い物で今月分の資金が底をつきましたので、案の定というか新耳袋ライブは断念。くそー。夏の間にもう一回ぐらいやってくれんだろうか。


2001年6月24日(日)
http://www7a.biglobe.ne.jp/~tuckf/Diary/20010621~.htm#Day24

 本日のお買い物
1,多岐川 恭『落ちる』(東京創元社・創元推理文庫)
 bk1で予約注文。直木賞受賞作、名編の誉れが高いにも関わらずこれほど入手困難な状態が続いていた作品も珍しいと思う。あとは、……『黒いトランク』だな。

 都議選の投票に行ってきました。行ってきただけ、と添えると私の態度は何となく察して戴けるのでないかと。

 先日購入した『刑事コロンボ 完全版 Vol.1&2セット』(CIC-VICTOR Video・DVD Video)より、第一巻の一本目、シリーズ開幕以前のパイロット版『殺人処方箋』を見る。
 犯人は精神科医のフレミング(ジーン・ハリー)、お金目当てに結婚した妻を持て余し、恋愛関係にある若く美しい女優の卵を共犯者として妻の殺害を画策する。結婚十周年パーティの翌日、二度目のハネムーンに出かけると見せかけて妻を殺害、合わせて変装してやって来た女優を妻と見せかけて、空港で喧嘩の演技をして女優を妻の屍体の待つ自宅へと戻させ、証拠となりうる衣類を予めドアの外に出して置いたクリーニングの袋に詰めておく。一方精神科医は、犯行時に物取りに見せかけるために持ち出した金品などを海に捨て、ひとりバカンスを楽しんだ振りをして帰宅する。だが、帰宅してみると妻はまだ病院のベッドで生き長らえていた。捜査担当の刑事・コロンボ(ピーター・フォーク)との静かな戦いが始まる。
 パイロット版、と呼んだのは、本編がシリーズとして始まる4年も前に作られているからである。この作品が好評を博したことからシリーズ化が計画され、一巻二本目として収録された『死者の身代金』が生まれる。これまた評判を呼んだことから、満を持してシリーズ本格スタートの第一作・『構想の死角』(あのスピルバーグ監督作品)が放映された訳である。話は戻ってこの『殺人処方箋』、最近の凋落ぶりに慣れていると不気味なほどのクオリティが高い。コロンボシリーズの重大な弱点として、二時間あるうちコロンボ登場から追い込みのかけられる終盤手前までに、どうしても中弛みが起きてしまうというのがあるのだが、バカンスから戻った段階でまだ妻が存命であったり、共犯者の女優の動揺が誘う危機、そして精神科医としてのフレミングとその患者のふりをしてみせるコロンボとの対決場面などなど、飽きさせる部分がなく最後まで惹き付ける。クライマックスの罠も、第一作だからこそかも知れないが圧倒的なものが用いられ(しかしすれっからしのミステリ読者なら読めるだろうけどね)、その余韻も凄い。パイロット版と言いつつ、既にコロンボシリーズの常套手段は悉く提示され完成されていると言っても過言ではない。コロンボ自身の造型には、例えば髪型が違う、レインコートをあまり着ていない、上司がシリーズより彼に理解がありすぎる気がする(これは勘違いかも知れないが)、そしてあのボロボロのパッカードに乗っていないという具合に若干の差違が認められるが、既にキャラクターの雰囲気は完成されており新しいファンにも違和感はないだろう。
 ちょっと驚いたのが、小池朝雄吹き替えのコロンボと現在の石田太郎コロンボ、意外なほど雰囲気が違う。別々に、特に小池氏の死によりバトンタッチした直後ぐらいに聞いた限りではそっくりだと思ったのだが、最近の石田コロンボに慣れた耳でいきなりここまで戻ると、やっぱり別人なのだった。だがしかし、もっと驚きなのは、今回のDVD化に合わせてアフレコを追加した部分(放映時にカットされた部分を再現したのか、他の理由があるのかは定かではないが)があったそうなのだが、その箇所のコロンボの声は銀河万丈氏が当てている。それが何処なのか、全く解らないのだ。ところどころ注意が散漫になっていた所為もあろうが、どうやら完璧に溶け込んでいる模様。確かに、実は声質など彷彿とさせる部分はあったのだけど、そこまで似せられるか。具体的に何処が追加収録だったのか御存知の方ご教授下さい。


2001年6月25日(月)
http://www7a.biglobe.ne.jp/~tuckf/Diary/20010621~.htm#Day25

 ……地味〜に忙しかった一日。いや、本業はまったく暇そのものだったのだが。

 まず、昨晩から話をしよう。
 その後コロンボ鑑賞が止まらず、シリーズ開始を前提とした二本目のパイロット版『死者の身代金』に、シリーズ開始直後の『構想の死角』『指輪の爪あと』までノンストップで見続けてしまう。『死者の身代金』は『殺人処方箋』同様、ミステリ読みなら予見できるような種類の罠が結末の鍵を握っているのだが、こちらも全体としてはなかなかのクオリティ。ラストの洒落もなかなか効いている。対して、シリーズ化以降の二作品はやや出来が温い。スピルバーグ監督の『構想の死角』は犯人の見落とした点を突く結末だが、陥落させるには弱く思えるし、パイロット二作と同様に最後に仕掛けた罠で犯人を追い詰める『指輪の爪あと』も、犯人側の反応に御都合主義が見えてしまっているのが痛い。だが、全体としての完成度はやはり最近のシリーズと較べるべくもない。
 執筆をちょぼちょぼ進めながらそんなことをやっていると、午前二時頃だったろうか、かなり大きい地震があってやや慌てる。だが、特に室内で崩落が起きた様子もなく、そのまま鑑賞・執筆を続けたのだった。地震のお陰で『指輪の爪あと』の妙なシーンが記憶に刻み込まれてます。
 ――そうそう、昨日の日記で「解らない」と嘆いた銀河万丈氏による吹き替え追加分ですが、その後見た数作では、多少注意深くなったからか何ヶ所か発見することが出来ました。いまこれを記しながら『二枚のドガの絵』(シリーズ第四作……つまり既に第三作も鑑賞済みです)を観ているのですが、これなど両者の入れ替わる瞬間さえ一目、いやさ一聴瞭然でした。犯人役の美術評論家にコロンボがある絵画を見せるシーンの直前で、ほぼ同じ場面ながら最初の収録時にはカットされていたと思しい箇所が復元されたようで、ここだけあからさまに音響も異なり、コロンボの吹き替えの響きも明らかに銀河氏のそれに変わっている。

 翌朝。出がけに両親の車を追い越したのだが、そのとき私は更にウォーキング途中の林家こぶ平をも抜いたらしい。事実関係未確認。
 職場に到着するも特にデータ仕事は入っておらず、両親の車に積んでもらった本を元住居の空き部屋にある段ボール箱に詰める作業をまず片づけよう、と元住居の二階に上がってみると、
 ……大雪崩の起きたあとだった。
 昨晩の地震はこんなところに被害を齎していたわけである。半泣きになりながら取り敢えず持ち込んだ本を仕舞い、続いて崩れた大量の漫画とそれに混ざった書籍類を、シリーズごとにざっと揃える。私のことだからとても午前中に終わる量ではない。途中一旦切り上げて本屋などを見てくるが特に買うものなし。ゆらゆらと帰還し、昼食の時間までちょっとだけ執筆を進める。
 昼食の途中で電話が鳴った。先週捕まえ損ねた担当氏である。締切延長のお願いをするが、既に別の方がかなり前の段階で七月末まで延ばしておられるという情報を得ていたので頭を下げながらあんまりその点では遠慮していなかったりする。全体像はほぼ掴めているので、多分来月までには何とかなる、筈なのだが……。

 午後も黙々と本の整頓。週刊誌連載の長い長いシリーズを集めているのに整理をサボっていたものだからまあ手間のかかること。三時頃まで労働したところで、まだまだ片付いてはいないものの一旦切り上げる。一息つき一服する(煙草じゃなくてアイスコーヒーです念のため)と、仕事場の方はその間に仕舞っていた。ので、給料を受け取ると帰宅する。
 帰り道で銀行のクイックロビーに立ち寄り大幅な出し入れを行い、自宅にバイクを置き電車に乗って上野まで。駅で降り不忍口に向かっている途中でPHSが鳴るが、喧噪が激しいので暫し無視。出たところで、交差点の雑踏もガード上の騒音もそれほど響かない地点を探し出しPHSの液晶を確認……芦辺拓さんだった。慌ててかけ直す。来週末の大阪訪問について、芦辺さんの方でスケジュールにちょっと変化があったためそのことでご連絡を戴いたのであった。三分ほどお話しして切る。
 そして漸く今日の本命。某家電店へ足を向け、土曜日の段階で取り置きをお願いしていたノートパソコン――FMV BIBLO LOOX T7/63』(富士通)と専用大容量バッテリを購入するのだ。取り置きを頼んだとき、あちらの処理の都合から予約という形を取ってもらい、引き取りのための伝票を頂戴したのだが、これが非常に詳細に書き込んであって、パソコン本体とバッテリはその時点で店にあったものをそのまま保管してもらい月曜引き取り、もう一つお願いしていた専用キャリングバッグは注文のため入荷次第連絡する、という約束がきちんと明記されている。そこまで念を入れたのは当日の担当者が今日休養を取ることになっていたためで、つまりざっと目を通せば私の用件は理解できるはずだろうに、伝票を手渡した店員――別に名札に研修中とも書いていなかったから、一応は正社員なのだろう――は「電話は差し上げましたでしょうか?」と訊ね、続いて肝心のパソコンとバッテリを探しに行ったのだが、よくよく見るまでもない、私が彼に伝票を手渡した目と鼻の先の棚にそれと思しい伝票付き商品の箱が並んでいるのにそれを通り越して奥でごそごそ探し回っている。別の店員が姿を見せたので、かなり苛々しながら指摘する。説教モードにすり替わった私にその後店員は平謝りしっぱなしであった。同時に、前の来店時には注文しなかったFMV謹製のUSB接続FDDユニット、加えてUSB経由でLANを構築するためのケーブルを購入する。
 見慣れない数値にまで上った会員カードポイントを、PC売場の裏に位置するソフト売場で早速消費する。というわけで、PCハード類を除いた本日唯一のお買い物
1,『MOON.』(AIS/Tactics・Windows対応ゲーム・18禁)
 何故今更敢えてこれなのか、はいつか解ります。……しかし、来月上旬まではゲームもノルマだよ実質。

 LOOXの環境構築は順調。今後はこれのHDそのものに同期ファイルを積み、パソコン丸ごと持ち運びしよう……と思うと、Zipディスク一枚でデータを移動させていた以前の方が楽だったなとふと気づくが、いやいやこれさえあれば職場でその日買ってきたDVDをすぐに確認することが出来るのだ、それだけでも……メリットに、なるか……?

 ともあれ、そんな感じで忙しかった……客観的にはただ遊んでいただけ、と思わなくもないが、そんななので作業は進まず。担当氏(上記とは別)から待望のデータが届くも、それに関する返信もまだ済ませていない始末。さあ、いい加減戻らないと。


2001年6月26日(火)
http://www7a.biglobe.ne.jp/~tuckf/Diary/20010621~.htm#Day26

 本日のお買い物
1,桜 金造『背筋の凍る話 part III』(リイド社・リイド文庫ETシリーズ)
2,岩本隆雄『ミドリノツキ(上)』(朝日ソノラマ・ソノラマ文庫)
3,大塚英志・衣谷 遊『リヴァイアサン(4)』(メディアワークス・電撃コミックス)

 1は、本としては稲川淳二氏よりも最近面白いのでは、と思っていたのだが……やっぱり、『新耳袋』という怪談の理想型の一つが提示された今となっては物足りない、というより変に物知りぶった文章が混ざるのが鬱陶しくて仕方ないのだな。まだ冒頭二編ほど読んだだけだが題材があまりに有り体なのも気懸かり。こちらももう頭打ちかな……?
 他に、昨日購入のノートPCのためにUSBハブ付の薄型テンキーボードと、富士通謹製の専用ソフトケースを追加する。キャリングバッグが届くまでの辛抱といっても、剥き出しのままでリュックに詰めるのに忍びなかったのである。テンキーボードは、職場で今まで利用していたノートPCを使っているときにもずっと欲しかったもの。数字や計算式の入力にはやはりテンキーが必要でしょう。

 ゲームをやるのもノルマの一部なのだが、そんな余裕はさっぱり。結局日中は昨日の続きのお片づけに忙殺された始末で作業もいまいち進まない――一方、最初から来月半ば締切となっていた短篇は頭の中でかなり醗酵しつつありいい感じなのだけど。せめて日記を書く時間ぐらい削らなくては、ということで本日はこれまで。練習のためにノートPCで執筆しようかなとも思う今日この頃。


2001年6月27日(水)
http://www7a.biglobe.ne.jp/~tuckf/Diary/20010621~.htm#Day27

 昨日の日記をアップロードしたあとの深夜。デスクトップPCの電源を落とし、ベッドの上で寝っ転がったり胡座をかいたり姿勢を変えながら約二時間程度執筆を進める。……まー快調快調。思うに、回線との接続を完全に断った状態でネットに逃避できない、というのが幸いしたようだ。こいつぁいーや、というわけで以後暫く夜間の執筆はこの方法で進めることを決意する。
 その代わり、というのも何だが、自宅でのケーブル接続のみが私のパソコンに於ける唯一の通信手段だったのを、ノートPCのほうにPHSのデータ回線を利用した接続設定を用意することで、日中もメールチェックぐらいは出来るように整備した。ケーブルに慣れてしまうとわざわざ電話料金を支払って接続するのが馬鹿馬鹿しくなるのだが、出先でもここの更新をするとか緊急のメールを点検したいとなれば避けて通れるものでもない。で、職場で暇を見てメールソフトの設定を行っていたのだが……一番最初に使っていたアドレスの設定がまるでわからん。他のものはすぐに記録を発掘できたのだが、一番最初はよもやかくも徹底的に利用するとは考えていなかった所為だろう(大体ホームページなんか作るものか、などと考えていたはずだ、当初は……)、アドレスとパスワードしかメモを用意していないという素晴らしい有様。……だから素人は怖い、と言っていいのか。まあ、問題の最初に使っていたアドレスには、最近あまり愉快でないダイレクトメールしか届いていないので、どーでもいいっちゃいいんだが。

 本日のお買い物
1,岩崎正吾『遙かな武田騎馬隊』(角川春樹事務所・時代小説文庫)
2,七瀬 葵『ANGEL/DUST』(角川書店・100%コミックス)
3,あかほりさとる・別天荒人『源平伝NEO(4)』(角川書店・Kadokawa Comics A)
4,CLAMP『ちょびっツ(2)』(講談社・ヤンマガKC)
5,akiko『GIRL TALK』(verveUniversal Classic & Jazz・CD)
6,熱帯JAZZ楽団『熱帯JAZZ楽団V 〜La Noche Tropical〜』(Victor Entertainment・CD)
7,Pat Martino『Live at Yoshi's』(東芝EMIBLUE NOTE・CD)

 偏ってるし新規リンクは多いしぶちぶちぶち。解説は簡単めに……と書いても大体終わってみると長かったりするんだよなー。
 まあ兎に角1から。『探偵の四季』シリーズ第三作を昨年漸く発表した岩崎氏の、ミステリではなく時代小説。内容以前に、帯の文章は改行とか句読点とか見直すべきじゃなかったろうか。「滅びていく武田家を/支える真田十勇士を/思わせる忍者集団の/(以下略)」……これでは『真田十勇士』が支えていたのは『武田家』であったように読め、歴史や伝奇ものに興味のない読者に徒な誤解を齎す危険がある。「森村誠一氏・評」とある文章なのだが……果たして。
 2は初のコミックスだそうな。絵のセンスは抜群だと思うが、やはりシナリオ配分とコマ割に難が隠せない。後半は幾分安定してきたが、こういう絵の質で評価されてきたイラストレーターは画質を落としてシナリオの質を安定させる、という技が使えない分不利はあるわな。4は今回も初回限定版があるのだが、入荷は発売当日になる模様。
 5以下は久々にジャズCDまとめ買い。5は鈴木重子のBLUE NOTEデビューに匹敵する快挙、verveからのレコードデビューである。確かに、低めだが色香の漂うヴォイス、安定した表現力など新人離れした実力を感じさせるが、全般にジャズとして標準すぎるのがちょっと今の私には物足りない。何処かで突き破って欲しい、という願いがある所為だろう。だが8曲目『Fly Me To the Moon』後半は捻りすぎ。6も『11PM』に『007 -THE JAMES BOND THEME-』という選曲が面白いのだが、こちらもアレンジり捻りが中途半端、あまりエネルギーが感じられない演奏も多く消化不良気味でした。
 で、個人的に漸く買ったか、の7である。買う前から多分私の波長に合うのでは、と期待していたが、完璧。話に聞くほど奏法にアクは感じず、寧ろ私が「これぞ理想のジャズ・ギターでは」と思い始めていたスタイルそのままで、冒頭の数フレーズであっさりノックアウト、前の二枚をさしおいて堪能しております。まあ、それ以外にもB-3オルガンの音色に妙な愛着がある、というのも理由としてあるのですけど。
 他に、ノートPC専用にと携帯用小型ヘッドフォンを購入した。耳朶にスピーカー部分を引っかけるタイプのもので、そもそもこの選択自体眼鏡愛用者の私には失敗だったのだが、最大の間違いは、ケーブルの長さを確認しなかったこと。0.6mって……足りるわけないやん。
 今週に入って連日お買い物に出かけているが、更にタイミングの悪いことに、今日に限って寄らなかった某家電店からノートPC用のキャリングケースを入荷した、という連絡が入っていた。というわけで、明日もこれとステレオピンプラグの延長ケーブルを購入するためにお出かけする予定です。困ったもんだ。


2001年6月28日(木)
http://www7a.biglobe.ne.jp/~tuckf/Diary/20010621~.htm#Day28

 最初ある方からその話を聞かされたときは驚いて、だがこの方なら有り得るだろうなと納得し、その後も公表される様子はないので特に口にせずにいたのだが、昨日ある件で連絡を差し上げたところその返信にふつーにその事実が書いてあったのに却ってたまげる。考え得る答はふたつ、1・実は秘密でも何でもなかった、2・最初に教えてくださった方経由で私がそのことを知っている事実が当人に伝わっていた、のいずれか。
 ……別にだからと言って特に問題があるわけでもなく。たぶん煮詰まりすぎてちょっと灰汁が浮き始めてるんです私。んでそれを掬って捨ててる、と。でもただ捨てるのは勿体ないからちょっと肥料にしてみたり。……ほら喩えもなんだか意味不明だし。

 二日続けて信じがたい時刻に目が醒めてしまう。猫も開けっ放しの窓際にわざわざ移動して、弛緩した格好で寝ていた。早起きした分を執筆に費やすが、で捗ったかというとこれが疑問だったりする。何故ならすんなりとは眠りに落ちてくれそうもない程度の眠気に邪魔されて升目はなかなか埋まらないし、同じ理由から日中の作業効率も低下するからだ。ところでこの長篇、本当に当初想定していた枚数で足りるんだろうか。

 本日のお買い物
1,土屋隆夫『土屋隆夫推理小説集成3 赤の組曲/針の誘い』(東京創元社・創元推理文庫)
2,連城三紀彦『少女 [新装版]』(光文社文庫)
3,あすか正太『総理大臣のえる! 彼女がもってる核ボタン』
4,神坂 一『トラブルシューター シェリフスターズSS mission02』(以上、角川書店・角川スニーカー文庫)
5,しかくの『爺さんと僕の事件帖(3)』(角川書店・あすかコミックスDX)
6,田中ユタカ『愛人[AI-REN](3)』(白泉社・JETS COMICS)

 2は、ハードカバーを古本で入手しているからいらないと思って、発売当時は外したんだけど……何故か今になって誘惑に屈してしまった。言うまでもなく、このテーマが性に合っているかららしい。3はそのとても馬鹿くさい雰囲気に惹かれて。でも同じ作者が電撃文庫で二冊出しているシリーズと、ヒロインのデザインがそっくりなのは気のせいか?
 今日買った漫画二冊は揃って重い。内容が。5は相変わらず高品位のミステリとなっているのだが(幾つか注文も思い浮かぶのだが、いずれもこのクオリティに達しているからこそつけたくなる種類のものだ)、作品の方向性故仕方のないこととは言えどんどん「本格」からは遠退いているのがちょっとだけ残念ではある。辛辣なようだが、この巻の表題作ともなっている作品で決定打となる証拠が以前にも利用されたものである点が一番の難点ではなかろうか。――しかし、何にしてもミステリ愛好家なら一読の価値あるシリーズであることに未だ変わりはなし。鈴木明日香嬢に拘る理由がいまいち不明だがそれも良し(というか彼女のエピソードが結構救いになっているのも事実なのだけど)。
 6は、どうも『最終兵器彼女』をある軸から逆のベクトルに向けて処理した作品では、という気がしてきた。現時点で『最終兵器彼女』のような、キリキリと迫る息苦しさがない分読みやすいのだがテーマの深刻さ残酷さはほぼ同質なのである。あちらが注目されるのならこっちももう少し評価されていいのかも、と思い始めているところ。

 ……眠いよー。

 本日昼頃に35000ヒットに到達しました。フォームからわざわざお祝いのお言葉をくださった方がありましたので、この場をお借りして御礼申し上げます。ありがとうございます。それにしても、ついこのあいだ30000越えたと思ったばっかりだったのですが。次第次第にペースが速まっているのに嬉しいやら驚くやら。


2001年6月29日(金)
http://www7a.biglobe.ne.jp/~tuckf/Diary/20010621~.htm#Day29

 本日のお買い物、今日から発売元・レーベルの表記の仕方をちょっと変えてみます。
1,森 博嗣『スカイ・クロラ』(中央公論新社)
2,和田慎二『Lady Midnight』(ボニータコミックス/秋田書店)
3,Pat Martino『We'll be together again』(MUSE/32 jazz/Pony Canyon・CD)
4,山下達郎『君の声に恋してる』(MOON RECORDS/WARNER MUSIC JAPAN・CD)
5,鮎川哲也『リラ荘殺人事件』
6,式 貴士『カンタン刑』
7,エラリー・クイーン『許されざる結婚』(以上、角川文庫/角川書店)
8,涼元悠一『あいつはダンディー・ライオン』(コバルト文庫/集英社)
9,仁木悦子『冷えきった街』(講談社文庫/講談社)

 ぜーはー。毎日これだけで息が切れるぞ。
 1はそろそろチェックし続けるのも限界かな、と思っていたところへ「装幀が重版分から変わる」という話を聞いて思わず購入。ばか? 2は和田慎二お得意の「夜は別の顔」方式をそのまま題名にしてます。ただ、よりヒーローものの王道に近いのではないでしょうか。確かに医療が絡んでいる分微妙な問題を感じさせるが、出来れば続いて欲しいもの。
 3はあっさり嵌ったことの証明。MUSEレーベルから発売した最後の作品であり、ギル・ゴールドスタインのエレクトリック・ピアノとの競演で固めた唯一の作品。内省的でいて深い情感を漂わせ、僅かふたつのアンサンブルなのに音が厚い。いいぞいいぞ。山下達郎は……やっぱり、スリーブにあった「初回生産限定版」の文字に惹かれての購入。わたせせいぞうによるイラストもあるし、無論もともとファンなのだけどね。山下作品はアルバムで纏めて聴く方が基本的には好きなのだ。
 5から下は某氏の放出本から譲っていただいたもの。『リラ荘〜』は講談社文庫版で読んでいるが、『殺人』が間に挟まっていたときの文章が見てみたくなったから。クイーンは、まさか『ドラゴンの歯』の角川版だったとは知りませんでした。違うものかと思ってた迂闊にも。

 ……メール書いたり腹痛に悩まされたり音楽に聴き惚れているうちに随分時間を浪費して、関東圏に於ける『タモリ倶楽部』が始まる時間になってしまいました。というわけで今日は実質購入報告のみ。明日は『g:mt』か『ギフト』を見に行くつもりでしたが、あろーことか『g:mt』は今夜で小屋を明け渡してしまったようで、強制的に『ギフト』となりました。気が変わるかも知れないけど。


2001年6月30日(土)
http://www7a.biglobe.ne.jp/~tuckf/Diary/20010621~.htm#Day30

 あーもう、またどーしようもない理由から執筆停滞。詳しくは下記にて。取り敢えず、今日もそんなんで短めです。映画解説も短めに……できるか?

 で、本日は有無を言わさずギフト』(Amuse Pictures・配給)。銀座まで出向いて慣れない劇場を探すのが億劫な空模様だったので、上野で鑑賞。
 アニー(ケイト・ブランシェット)は一年前に工場の爆発事故で夫を亡くし、以来は生得の霊能力でもって訪れる人々の悩みや不安について、ESPカードを介して相談に乗り、彼らからの贈答物などで自分と三人の息子達の生活を支えていた。だが、一方で息子は父親の死以来アニーに含むところがあるようで本心を見せなくなり、同級生との間に暴力沙汰を起こした。アニーは息子の担任であるウェイン(グレッグ・キニア)に呼び出され、カウンセリングを受けることを勧められるがこれを断った。その場にたまたまやって来たウェインの婚約者・ジェシカ(ケイティ・ホームズ)に紹介されたとき、アニーは彼女の足許に暗い未来を見出すが、それを口に出さぬまま立ち去る――。
 職業上にも悩みはあった。幼い頃に身に降りかかった災難から心に病を得た青年・バディ(ジョヴァンニ・リビシー)は彼女の誠意ある対応でかなり恢復を見ていたが、ヴァレリー(ヒラリー・スワンク)に対する夫・ドニー(キアヌ・リーヴス)の暴力は留まるところを知らず、アニーは常より強い言葉でヴァレリーに決断を迫る。その日の夜、ドニーがアニーの家に押し入り、ヴァレリーへの言動に強烈な憤りを示す。思い込みと誤認識の塊のような罵りの果てに「魔女は火炙りの刑だぞ」という捨て科白を残して彼は立ち去った。その日以来、アニーは不安による悪夢に苛まれるようになった。
 そんなアニーを心配して、リンダ(キム・ディケンズ)は彼女を街のパーティーに誘う。だがそこでもアニーは、ジェシカがダンスに誘った男と化粧室で抱擁し合っている現場を偶然に目撃し、更に酒場の外で一人佇んでいたウェインに、ジェシカと付き合う自分の惨めさを打ち明けられるという具合だった。少し前に、死んだ母がアニーの許を訪れて告げた「嵐」は、それから間もなく彼女を襲った。ジェシカが行方不明となり、捜索に窮した家族と警察がアニーの許に情報提供を求めてきたのだ。警察の敵意ある視線の前ではうまく力が発揮できなかった彼女だったが、その夜、夢という形でアニーは啓示を得る。――それは、ドニーが所有する土地に拡がる暗く澱んだ池であった……
 実に丁寧に組み上げられたサスペンスの佳作。ミステリ的なシチュエーションが用いられるが、解決そのものには伏線も論理的帰結もなく、そういう点で期待するとかなり失望感を味わうだろうが、巧妙に観る側の意表を突いた演出、ストーリー展開が随所に盛り込まれ、全体としては決して起伏に富んでいないシナリオにも関わらずスクリーンから目が離させない手管はお見事。また、具体的な手懸かりがないが為に最後まで犯人が誰なのか予断を許さない分、終盤のスリルは名状しがたいものがあり、あくまでその辺の巧さを楽しむべきだろう。伏線も論理的帰結もないから犯人が解らないか、というと全くそんなことはなく、実の処かなり早くに予想はつく犯人像だし、恐らく意外性としてラストに盛り込んだある要素も、わりとありがちで驚きは少ないのだから。
 何故こんなことを書くかというと、観てから予告編を思い出したりプログラムを読んだりしてみると、例によって非常に誤ったキャッチコピーが目白押しだったから。これは『シックスセンス』や『アンブレイカブル』よりもより定石に忠実なスリラーだし、結末もどんでん返しとやらも決してショッキングなものではない(そういうものが期待できるのは、よほどすれていない視聴者だけだろう)。まして、キアヌ・リーヴスが主演格の映画では断じてない。プログラムにも書かれているとおり、シナリオの出来と監督の才能に惹かれて、らしからぬ役柄を引き受けたというだけにすぎず、あくまで本編の主人公はケイト・ブランシェット演じるアニーただ一人だ。そうした点を誤解したまま観てしまっては、多分却って失望を抱かせる羽目になる。上記二作の名前を並べてそれに勝る出来としておけば客が呼べると思っているなら、映画の広報担当など止めなさい。向いてないから。ついでにプログラムの文章を手掛けたライターも、文章教育受け直した方が身のためです。ひどすぎ。そんなわけで、映画そのものには不満はないのにただただその広報活動に苛立ちを覚えさせられたのでしたとさ。おしまい。

 で、そのあとに来週末の仕事に利用する目的から録音再生対応のコンパクトMDプレイヤーを購入し、ついでにUSBを介してパソコンと接続するためのキットも併せて入手したのだが、……本体は兎も角、接続キットはメーカー名を伏せたくなるほど不出来。接続キットと謳いながらパソコン→MDの一方通行の入力にしか対応していないのはまだいい。そのパソコンからの入力に使用する添付ソフトウェアの出来の悪さといったら。MP3ファイルの再生リストを作成し、その通りにMDに落とそうとしたら、リストの一番最後の曲しかソフトウェアで再生できない仕様で、結局録音したい順に一個一個再生手続を手動で行わないと駄目なのだ。また、USB接続でデジタル録音とくればデータ転送のみでスムーズに行える、と普通考えそうなものだが、データを実際に再生しながら録音する、という形になっている辺り、はっきり言ってアナログと同じ方式である。つまり、レコードを実際に廻して出した音を、カセットテープのレコーダーでその都度拾っているのと同じ事。……デジタルケーブルで繋いでいる意味があるのかこの方式に。唯一、パソコンと繋いでいる間、MDがパソコン側で制御できる点がUSB接続に意味あり、と思わせる部分なのだが、それだけで一万なんぼも払ったと思うとちと悲しいものがあります。というわけで、暫くこのメーカーの製品には進んで手出しをしないことに決めました。だから名前は出さない。……まあ、肝心の会議録音の用途には使えそうなのだから、返品するとまでは取り敢えず言わないつもりですが。
 ……どーでもいいが、初めてMDカートリッジにポータブルレコーダーというものを手に取った訳なのだが……玩具やね、これわ。

 本日のお買い物
1,ひな。『3丁目の回覧板』(蒼竜社・プラザCOMIX)
2,森見明日『drop frame 〜こぼれ落ちた時間』(コアマガジン・HOT MILK COMICS EX)

 ……解る人には解る、「どっから買ってんぢゃおのれ」なセレクト。魔が差した、としか言いようがありません。
 が、1は望外の大ヒット。ここ暫くに読んだ短篇集の中でベストクラスに含めてもいいくらいの出来。10ページ足らずの作品で1話ごとに脇役が主役へ、というスライドを繰り返し最後に第一話に戻る、という着想そのものは珍しくも何ともないが、お約束と意表を突くという二つの手法を交互にすり替えつつ展開し全体できちんと纏まりを演出しているのがいい。シリーズ外の短篇も、何より絵柄とストーリーの雰囲気が一致しているのがいいのです。対して2は……うん、作者が一度は封印しようと考えたのもちょっと頷ける。最近復刻した作品集も消化不良気味のものが多かったがこちらは更に胃にもたれます。独特のセンスは認めるんですけどー。やはり近作の方を読むべきか? が、何故かbk1の検索には引っかからなかったんだよなー。

 ……ああもう、結局いつもと変わらないじゃないか馬鹿。


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