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『モエかん』プレイ日記

モエかん
ケロQ / 2003年01月31日発売 / Windows98・Me・2000・XP対応ゲーム / 18禁 [amazon購入ページ]

[ゲーム概要]
『終ノ空』、『二重影』でハードな作風を確立したソフトハウス・ケロQが、オリジナルとしては約二年振りに発表した最新作。全世界を席巻する超資本国家「萌えっ娘カンパニー」。かつて組織のなかで屈指の資格であった主人公・神崎貴広が所長を務めるメイド育成施設通称「萌えっ娘島」に、極めて旧式のアンドロイド――リニアが派遣されたとき、物語は幕を開ける……従来のハードな路線を踏襲しつつも、恋愛と「萌え」の描写を取り込むことに挑戦した意欲作。

2003/02/01
 冒頭からいきなりいつものケロQ節である。パッケージ裏の紹介文を本気に取った人は絶対戸惑うと思う。そして話が始まると、秘書の霧島もほったらかしで野郎だけでハードな話が進む。台詞がちょっと気取りすぎてるか、という印象が強い。少々長すぎるせいもあるのだが。
 やっとこメインヒロイン(……だよね?)のリニアと霧島がまともに喋り始める。……どうして誰もリニアの髪についた二本のでっかい手に突っ込まないんだろう。この時代のアンドロイドの標準仕様なのか?
 ながーいイントロのあと、ようやく選択肢が登場し始める。途端にタッチが軽くなった。主人公の性格は微妙に『ONE』の彼を連想させるが気のせいか。
 だが、滞在中の野郎(私はこいつが****のよーな気がしてならんのだが)が登場するといきなりハードさが増す。で、その会話の中で微妙に衒学的な描写が出てくるのは間違いなくケロQの味。しかも石川淳にブラッドベリ(しかも原書)とくる。相変わらず随所でコアな真似を。その前には江戸川乱歩の名も出てきたが、読んでいたのは『空飛ぶ二十面相』……。
 よーやくキャラクターが出揃い始めたが、次第に妙な違和感を覚えはじめる。これって一種の『黒い水脈』のような気がしてきた、何故か。誤解を承知で『新本格』的、と言ってもいいが、現時点での印象は『黒い水脈』。どうしてかは面倒なので、というかまだ前半も終わっていないはずなので語るのを止めておく。
 今のところ当たり外れを詮議する段階ですらありません。誤字がちらほらと見つかるのはまあ仕方のないこととして、システム・画質・音質については不満なし。私のPCではウィンドウでの動作がやや鈍重なのだが、これはローカルな問題だろう。
2003/02/02
 ……長いな。
 作中時間が12月に入ったあたりから、ちょっと妙な違和感を覚えている。どうも、登場人物がこちらの記憶にない出来事を前提に話している部分が多いのだ。叙述技法として、前提となる出来事をあえて省略して、その後の言及部分だけを表に出して表現の簡略化や文章的な厚みを演出する、というのはあるが、どーもそういうものではなく、ゲームの中で用意されていながら、こちらが通過していないイベントを前提にキャラクターが喋っている気配があるのである。戻って当該イベントの有無を確認するよりも、ひとまずひととおり終えてしまいたいので、検証はあとまわしになるが……気になる。冒頭はともかく、本編はキャラクター対キャラクターのイベント中心で、従来のケロQ作品よりもテキスト・内容共に軽く楽に読めるだけに、ときどき登場する謎の過去が気に掛かる。
 で、とりあえずメインヒロインであるリニア中心に話を進行させ、どうやら単独シナリオに突入した――途端にただただメッセージを進めるしかやることがなくなってしまった。大した意味はなくても選択肢とかの興味を惹くポイントがないと、人によっては飽きるのではなかろうか。そうでなくともケロQのシナリオは様々な知識が導入され、後半にいくほど内容が複雑化していく傾向があるのだから。尤も、私自身はこーいう展開は好きなのだけど。
 途中、昨日ちょっと触れたリニアの髪から生えた二本の手についてよーやく言及があったが、アンドロイド標準装備かどうかはともかく普通に捉えられている。
 久々の猿状態を発症し、根詰めて作業しているときにもやらなかった午前五時就寝となったうえ、禁を破って日中も一時間ほど遊んでしまったが、それでもまだ終わらない。どうやら裏が見え始めたというのに終わらない。
 スケジュールの進行に合わせて、前に提出した情景描写を繰り返し少しずつ深めながら謎を解いていく、というのは本編に限らずこの類のゲームで頻出する手法だが……最近、こういうのに付き合いきれなくなってる自分に気づいたり。もうちょっと簡略化して欲しかったなあ。
 ともあれ、リニア編表ルート(らしい)は佳境に差し掛かっている模様。今夜中にはひとつぐらいエンディング見ておきたいっす。それにしても、書庫に籠もって延々調べものをする、というシチュエーションお好きですねえひっひっひ。
2003/02/03
 リニアシナリオ(正編……だと思う)クリア。
面白かったですか?
――面白かったっすよ。微妙に色々なもの思い出しましたが。『空気』とか『心』とか。
感動しましたか?
――それなりに。基本的に冷淡なもんで。いちばん感激したのは、ある予想が半分当たって半分外されたことでしょうか。そーきたか、てなもんで。
いちばん驚いたことは何ですか? やっぱり真相?
――エッチシーンなしで本編が終わったことに決まってんだろうが。
 ……そんな感じです。
 ベースは完璧にいつも通りのケロQ節、ただしオーソドックスな美少女ゲームの雰囲気を盛り込んで、ちゃんと染みる結末を用意したあたりはお見事。最大の悪役らしきものが意外と詰まらない形で消えてしまったあたりで、微妙に空気が変わっていますが特に問題はなし。願わくば事件後の彼らの苦心を窺わせるためのパーツを、エピローグ以前にばらまいておいてくれるとより良かったのですがそれは高望みしすぎでしょう。
 早速リニアのおまけシナリオに着手……いきなり大笑い。しかしこの舞台設定なら「愛い奴め」ぐらい言ってもイイではないか神崎貴広。つくづく詰めの甘い男だ。
 あと、昨日追記するつもりがすっかり忘れていたことひとつ。昨晩付でパッチが公開されました。
 Moekan_V101.zip (103kb)
 ムービーの高速化のみ施したもの。が、効果は覿面なので遊んでいる方・これから遊ぶ方は予め導入されたし。
2003/02/04
 霧島香織シナリオ・朝霧かずさシナリオクリア。
 前者は意外な展開……が、霧島に絞って話を進めていた限りでは、これといった伏線もなくいきなりとんでもねー展開になってしまい、その経緯には驚いたけどクリアしたという感興に乏しい、という印象になってしまった。きついことを言うようだが、ここで終わらせたらゲームとしても単なるお話としても拙い。なんとゆーか、ジャンプの十週打ち切り漫画の最終回でいきなり衝撃の事実が判明し、また主人公がどっかに赴いてしまったところで話が終わって、この高揚感というか中途半端な心境どーしてくれんねん、という感じである。
 彼女はほかのシナリオでの位置づけが絶妙なだけに、却って彼女本来のシナリオが蛇足となってしまっている印象だった。本編のどこに置いていいのか解りにくいおまけも、なんだかあの場面のために無理矢理付け加えたという雰囲気しかなくマイナス。18禁ゲームとしては正しいけれど、だけど。リニア編では登場しない大物が活躍しているわりには、リニア編のあの人物のインパクトに遠く及ばないのも残念……尤も、パッケージイラストにも登場しないキャラをそこまで描き込め、という私が無茶なのかも知れないけど。
 後者は、ある有名なテーマをケロQなりに咀嚼して新しく組み直したエピソード、といった風情。恐らく意識していたであろうアレに対して、私が個人的に抱いていた不満に応える形となっているので、シナリオの出来以前に興味深い話だった。ただ、こっちも伏線がもうちょっと欲しかったところ――かずさ側ではなく、神崎の周辺に。
 かずさのおまけシナリオは若干条件がシビアだったようだが、ケロQのお家芸を無理無理に入れようとした挙句、本編から乖離してしまった印象が否めない――個人的には、きちんと本編で描かれたかずさの個性を踏まえているため問題はないと思うのだけど、本編の綺麗な結末を見た一般的なユーザーにはそうとうショックな内容だろう。おまけとしてゲームの外側に置くよりは、ゲーム本編の支流として別エンディングに繋がる形で処理した方が納得できたのではなかろうか。
 以上のふたりはリニア編ほどのヴォリュームがなかったので、無理な夜更かしをせずに済んだ。が、それで実感したのは……やっぱりリニアの話が長すぎる、という一点。もうちょっとエピソードを集約して簡略化するか、尺に合わせてもうひとつぐらいキーポイントを入れたほうがバランスは良くなったような気がする。翻って、本日のふたりにはもう一筋ぐらいヴァリエーションがあっても良かったのではなかろうか。
 本日の感想はちょっときつめだが、リニア編の仕上がりを見て若干高いレベルから論じてもいいだろう、と感じたからである。全体としてはハイクオリティだし、私自身充分に楽しんでいるのは確か。終盤のシリアスな話よりも、あいだの細かなイベントに施した微妙な捻りが巧妙で楽しいのだ。この楽しさこそ従来のケロQ作品と一線を画するもので、それだけに強い意欲を感じさせ、遊び倒す気にさせてくれる。
 冬葉はちょっと前の方からやりなおさないといけないので、次はゴキブリ娘、もとい、鈴希攻略に着手。霧島は設定年齢がはじめから高いからいいとして……こいつは微妙だと思うんだが、どうなんだろう……?
 それにしても、BLASTERHEAD氏の音楽は曲調も楽器の使い方も洗練されていて、いい。テクノ出身だというが、一部の曲を除いて電子音特有のわざとらしさがない(一部、はたぶんわざとだろう)。ここまで高水準のBGMってあんまり他に思い出さないぞ。
2003/02/05
 鈴希シナリオ・実相寺冬葉シナリオクリア。
 後者から語ろう。
 ぶらぼーっ!!!!!
 18禁としてはどうかと思うが、ゲームとして、物語として見事な展開と着地。一部主人公の行動が曖昧だったり、他のシナリオと登場人物同士の関係性に違和感を覚えるほどの違いがある(顕著なのは、他のシナリオでは名前も顔も知っているはずの医師と初対面の会話をしていたこと)が、ここまでかっちり仕上がっていると些細な問題である。シナリオの厚みの点からも唯一リニアに匹敵し、それでいて膨らましすぎてはみ出したところがない。規模と迫力ではリニア編に及ばないものの、シナリオとしての完成度は凌駕している。なるほど、SCA−自氏が公式ホームページで自信を匂わせただけのことはある名品でした。特に、「やさしさ」という手垢の付いたテーマの処理が秀逸で、今後お手本にされそうなくらい上出来。リニア編同様その手のシーンが本筋では登場せず、おまけシナリオでフォローする恰好となっているが、こちらもリニアほどのあざとさがないので余韻を壊さずに済んでいる。
 で、あとまわしにした前者だが、こっちはあるキャラクターが自身のシナリオでの設定を敷衍しながらまったく違う立場でフォローする、という歪さと、超自然的なアイテムを多く登場させておきながらその背景をまったく明示しない点でどーしても緩さを感じさせてしまう。ちゃんとエッチシーンはあるが取って付けたようにしか見えない(ちなみに、通常のクリアルートにエッチシーンがあるキャラで、いちばん自然な成り行きだったのは霧島編)。が、クライマックスの演出は有り体ながら丁寧で美しかったので良しとしよう。でもラストシーンはちょっとやりすぎだと思う。その半分ぐらいにしておきなさい、せめて。
 これで、いわゆる凌辱ルート以外は全キャラ攻略したことになる。細かい難癖は付けられたものの、ここまででも充分に堪能できるいい出来でした。『二重影』のような悪戯な長さもなく、キャラクターを別々に攻略していく上で同じ筋が頻出することもないので、飽きが来ることもない。後半の選択肢が少ないのはやはり気になるが、このくらいなら許容範囲でしょう。現時点でも太鼓判を押していい傑作、と断じましょう。とにかく冬葉シナリオには素直にやられました。
 ……が、前述の通り、まだリニアと冬葉については凌辱ルートなるものが残されているそうなので、もうちょっと寝不足の日々が続く模様。他人様の書く凌辱ものは苦手なのだが(自分で書く分には大丈夫らしい)、どう話を進めるのか興味があるので、もーちょっとコマを戻して再開。
2003/02/06
 実相寺冬葉シナリオ陵辱編(と書くとテレ朝系の刑事ドラマのようだ)クリア。
 リニアは簡単に陵辱方面へ行けそうもなかったので、分岐が解りやすかった冬葉を優先してみた。
 もっと悲痛なシナリオと結末を予想していたので、さほど衝撃は受けなかったのだが、過程は筋が通っていて違和感がない。ただ、通常のシナリオとほぼ同じ背景があるはずなのに、そちらをほったらかしで冬葉が堕ちていく姿だけを描いている、のは若干どーかと思わなくもない。他のエピソードできっちりと関わってくる本社の意向が、このシナリオでは発端にはなっているものの最終的にあまり影響を感じさせない形で終わっているのが勿体ないのだ。ついでに、折角これだけエロを描いたのならもーちょっと踏み込んで欲しかった、という嫌味も付け加えておく。
 さあ、これで残すはリニアシナリオ陵辱編のみ。怠慢ぶっこいて攻略ページを参照したところ、どうやらかなりはじめの方からやり直さないと拙いのがちと面倒だが、ここまで来たらコンプリートを目指すとしよう。
2003/02/07
 リニアシナリオ陵辱編。
 作業の停滞が続いているし、あとのことを考えるとそろそろ一旦ケリをつけた方がいいので、チキン野郎と化して最後は攻略ページに依存してみた。
 ……いけない。
 陵辱シナリオに入らない。
 原因は不明だが、一般に流布している選択肢一覧通りに進めると、なにかのフラグが若干足りないのか、一覧表にある選択肢が登場することなく、バッドエンドに一直線で進んでしまう。で、あちこちにある一覧表で、ちょうど分岐のちょっと手前で登場するリニアに関した選択肢を、あえて逆に選んでみたところ、無事に陵辱ルートへの選択肢が出現した。
 あくまで想像だが、ムービー高速化のパッチを公表するさい、若干フラグを見直したのではなかろうか。で、分岐に至るために必要な何らかの数値が若干押しあげられた、と。
 ともあれ陵辱シナリオとその中にある三つの結末を全て鑑賞……っても、いずれも客観的にえげつなく、それまでの伏線(多分意図的に)ほとんど無視していることに変わりはない。この路線変更以後に発生する各種イベントの条件、またどんな行動が決着に影響しているのか、が解りにくい欠点はあるものの、この作品の中では一番ゲームらしい変化に満ちたくだりである。本筋でのソフト路線を覆してしまうような性描写の嵐は、その不足に納得していなかった向きを唸らせるくらいの量と質にある――が、惜しむらくは決着が単純な変化になってしまい、本筋ほどドラマチックな印象はなく、ただ感動もののシナリオにおまけとして18禁らしいエピソードも付け加えてみました、という雰囲気になってしまったこと。折角それ以前に積み上げた多くの伏線があったのだから、陵辱シナリオの中でも何らかの形で活かすべきではなかったか。それこそあの事件の首謀者であったあの人物を巻きこんでみたりとか。
まとめ
 ――以上でほぼひととおり攻略終了である。一般イベントのCGが4枚ほど埋まっていない模様だが、流石にそこまで拾い集めるのは骨が折れるのでこれで終了を宣言させていただく。
 総評、と言ってもこれまでの記述から察していただけるだろう、細かい難癖は付けられるものの、シナリオ面では非常に優秀なアダルトゲームである。本筋におけるその手のシーンが少なく、またややとってつけたような印象があるが、サブシナリオでそれをきっちりと補っているあたり非常に弁えている。本筋の出来については、ほぼ一本道のためゲームを遊んでいるという気分が後半どんどんと薄れていくことぐらいが欠点で、話そのものの出来はいい。個人的にはやはり冬葉のメインシナリオを強く推したい。
 硬軟取り混ぜ丁寧に描き込まれたCG、バランスのいいBGM、緊急回避モードまで用意し気配りの行き届いたシステム、いずれも上質で安心できる。ここ暫くゲームから遠ざかっていた私だが、久々で実にいいものを遊ばせていただきました。
追補(2003/02/11)
 更に新しい修正ファイルがアップされたので、例によってここから直リンク。
 Moekan_V102.zip (103kb)
 非常に特殊な不正処理に対応したものなので、基本的に大勢に影響はないようですが、アップデートしておくにこしたことはなし。

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