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『SNOW』プレイ日記

SNOW
Studio Mebius / 2003年01月31日発売 / Windows98・Me・2000・XP対応ゲーム / 18禁 [amazon購入ページ・CD-ROM版DVD-ROM版]

[ゲーム概要]
 かつて陵辱ゲームで一名を馳せたソフトハウス・Studio Mebiusが制作告知から数年余を経て2003年にようやく発表した最新作。ある哀しい出来事をきっかけに、一年中雪に覆われ続ける龍神村。出雲彼方は従姉が女将を務める旅館の手伝いのために十年振りに村を訪れる。とある災難をきっかけに数人の少女たちと出逢うところから、物語は始まるのだった……従来のメビウス作品とは大幅に趣を違えた、コメディチックな恋愛物語。

2003/02/11
 まずはインストール作業。CD-ROM版だから時間がかかるのは覚悟の上
 ………………………………………………………………………………かかりすぎ。
 待っている間に、再読とは言え守護月天二冊とも読み終わって更に時間が余るのはどうしたことか。我が家のパソコンがロートルになっているせいもあるのだろうが、本当にCD-ROM四枚も要るのか。音声もないのに。
 どーにかインストールを終えて、本編に着手。
 キャラは立っている。非常に良く出来ている。が、状況の不自然さが極端すぎる。倒れている人間にパンツ覗かれたと怒ること自体かなり異様だが、普通死亡を認定したら包帯巻いたままにはしないだろうし増して訪問先で勝手に葬儀をあげるなんて真似をするはずがない。それに年がら年中雪が降っている、という設定のはずなのに、雪中では役を為さない台車なんてものを使わせているのもおかしい。雪の中で荷物の運搬をするなら橇を使った方が合理的なのだから、当然そういったものを常備し使わせるのが道理だろう。敢えて台車を使わせるのなら――ただの意地悪だろうそれは。ツッコミまくりでそれ自体楽しいと言えば楽しいのだが、行き過ぎの印象がある。
 やや頭痛気味だったのとインストールだけで疲れてしまったのとで、ひとまずさわりだけを遊んで就寝。キャラクターがよく動いているのでひとまず楽しんではいるのだが、……冒頭を見る限り、あまりにも他の作品を意識させるキャラクターの組み立てとかがどうしても鼻についてしまい、楽しんでいないわけではないのだが若干、引いている。
 それと、これだけ容量を費やしているのにあまり意味のあるCGや演出がない、という印象を持たされるのがなんとなく不愉快。CGの仕上がりについては、先日まで遊んでいた『モエかん』の方がいい。『SNOW』はどうもジャギーが残っているような感覚が強いのだ。
2003/02/12
 先に進みません。なんでかというと、しょっちゅうフリーズするから。
 どうも、フルスクリーンの状態で遊んでいるとき、ゲーム画面が動作している状態で画面上部のメニューバーを呼び出してすぐにクリックすると(特にウインドウ画面への切り替えの時)、命令が正常に実行されないのか画面が硬直してゲームは一切命令を受け付けなくなる。その都度ゲームを強制終了させて、元に戻っていない解像度を修正して……などとやっているうちにどんどん苛立ってきた。そうでなくてもAVGとしては無駄な処理が多いようで動作が重く、内容以前のところで苛立ちを感じさせられているというのにこれ以上煩わせてほしくないのだが。
 肝心の内容も、主人公のバイト内容が明らかに異常で違和感ありあり。普通に考えたらこれは悪意に満ちたいじめそのものだろう。だって、往復に一日かかるような作業を毎日やる必要があるとしたら、バイトを雇う以前から専従者がいてこなしていた仕事のはず。専従者がいるのなら確実に車など運搬手段に何らかの考慮が為されているはずで、それを徒歩でやらせるような仕事内容は労働者虐待そのものだと思う。ちゃんと事情があったら説明しろ、さもなきゃ訊け主人公。
 もしそうした裏の事情がなかったとしても、本編のタッチが多分にコメディチックなので、その枠内で受け入れれば受け入れられなくもない、が……根っこから一切合切が狙い澄ましたような印象のある『モエかん』を先に遊んでいただけに、果たしてどこまで自覚的なのか余計に気になるのだ。仮に無自覚だったとしたら、正直救いがありません。判断はもうちょっと進めてからしますけれど。
 前述のトラブルが不安なため、ウインドウの状態で遊んでいる。……昨日触れたジャギーは、この画面サイズ(1600x1200)にこの小ささであればまだ気にならないのだけど……なんか寂しい。発売から10日以上経って未だに差分も出ていない、ということは私自身の環境に起因する現象なのかも知れないが、どっちにしても遊びづらいのに変わりなく。けっこう手こずりそうな予感。
2003/02/13
 芽依子がいちばんお気に入りなんですけど駄目ですかそうですか。ちっ。いやねえ、実はこういう人外の者がいちばん嵌るのだ私は。
 ようやく一人目のシナリオが佳境に入ってきた兆候。当初あんまん娘の話に流れ込みそうになったのだが、風の噂でこいつからだと話の意味が解らないと聞いた記憶があったので一旦回避、ある意味いちばん危険な線から始める。
 相変わらずバイトの趣旨が意味不明だしそもそもこの旅館まともに経営できてんのか、と思うような異様な業務態勢に首を傾げつつも、だんだんその雰囲気に馴染みつつある。シナリオの勘所となる部分は、個人的にもうこの類のネタは封印してくれないだろうかと感じている代物らしいのだが、日常描写がなかなか楽しめるので思ったほど気にはならない。漠然とながら軽めだと想像していたエッチシーンも、なかなか書き込まれておりそちらの方面の欲求にも応えうる仕上がり――辿り着くのに時間はかかるが、それもまた一興(何が)。
『モエかん』のときよりだらだらと、のんびりと話を進めてます。
2003/02/14
 日和川旭シナリオ終了。
『モエかん』でも登場した、あるシチュエーションの変奏である。故に、こちらからアピールできることが限られていることがもどかしくて堪らないくらいで、正直感動も感慨も乏しい。立て続けだったせいもあるが、プレイヤー側で何も出来なかった、主人公も実質何もしていないうちに話が終わっているのが、個人的にはいまいち。旭の変化などがあるべき法則に従っていたりと細かい配慮を窺わせながら、人物の動きが単調になっているのが物足りないのだ。
 途中で垣間見える過去の出来事は恐らく他のキャラクターで補うだろうことが窺われるので、まあひとまず評価は保留するところだが……この推移だと誰より芽依子というキャラクターの存在意義に謎が増えてしまうのだが、いいのか。どう考えても彼女は何か知っていたはずなのだけど。
 まあ、佳境に入るまでのキャラクター造形や細かな日常描写は楽しませてもらったので、言うほど不満は抱いていない。ただ、ゲームとして見ると、あまりに主人公が消極的にならざるを得ないのはどうかと首を捻ってしまうわけで。お話としては、『モエかん』の某キャラのシナリオ同様、あるテーマに対する新たな回答として評価するにやぶさかではない。
 引き続き、別のキャラクター攻略へ進む……が、立て続けに三度バッドエンドへ真っ逆様。対象キャラクターが登場する場面は全て押さえたはずなのに、ある日になるとつぐみさんが「大変よ〜」と駆け込んでくる。これ以降の展開で、やっぱり舞台となる旅館の経営が無茶苦茶であることは解ったものの、どうして話が途切れるのかが理解できない。仕方なく、既にだいたい出揃っている攻略ページを参照してみる。チャートのいちばん上の記述を見て……ちょっと愕然とした。
 ……澄乃を攻略しないと、ほかふたりも攻略できないの??
 別のキャラクターの話を見ないと理解できない裏事情があるくらいは構わない。構わないのだが……それはちょっと、どうかと思う。あるキャラを攻略しないと別のキャラのシナリオに進めない、という組み立てには『痕』という前例があるが、あちらはキャラクターのシナリオ、というより全体の構想が先に立っているうえ、ひととおり見たあとでないと登場しない選択肢があり、進行が不可避なのであまり問題とは捉えられない。しかし、この『SNOW』のようにキャラクター攻略の側面が押し出された作りでは、却って反感を買うのではなかろうか。
 まあ、何にしてもひととおり攻略してみないことには評価できないことも確か、なので頭からやり直す面倒くささを堪えつつ、澄乃攻略に移行。横で珍妙な歌を口ずさみ始めたところで、眠気で朦朧としてきたので中断する。
 ちなみに日が変わったあとで、某氏から「攻略順違ってます」という指摘があったのだった。
2003/02/16
 本当はやるつもりじゃなかったんだけど気晴らしのつもりで起動したらそこそこ進んでしまったんで『SNOW』日記5日目。
 といってもあんまん娘のエピソードはまだ終わる様子を見せません。風雲急を告げたものの、単に新しい日常が始まっただけでした。その傍ら、実にこまめにその手のシーンが挿入されるのが意外と言えば意外、自然といえば自然。忘れかけていたがあのStudio Mebius作品だもの、このくらいの頻度はあっても良かったのだな。
 話が進むに従って、舞台となっている旅館を巡る環境の異常さがいよいよあからさまになっていく恰好だが、それ故に澄乃シナリオが佳境に入っていくに従って「あ、これで普通なんだよな」と思わされてしまうのが却って怖かったり。
 いったいどういう決着に持っていくのか興味を抱きつつ、やっぱり芽依子はいい、と叫んで5日目終了。
2003/02/18
 ようやく雪月澄乃シナリオ終了。延々とこのまま半サザエさん状態でどこへ向かうのだ、もしかしてこのいちゃいちゃが延々続くのか、と思っていたら急転直下の展開。なるほど、と思いつつ、個人的にはこのモチーフで感動させるのはあまり好まないので、若干腰が引けてしまったというのが正直なところ。
 話に聞いていたとおり、普通の感覚ならこの決着では意味不明なだけである。が、追加されたシナリオによって多分明確になることだろうし、今のところ問題は感じない。強いて言うなら、澄乃シナリオのなかではほとんど伏線が張られていないため、巧く繋がるのかに不安を抱かされるくらいか。
 今夜は試写会に行くことが決まっているので、感想も書かねばならない都合上またしても一日お休みを頂きます。クライマックスまでの道はなお険し。
2003/02/20
 長い長いおまけシナリオ、中盤手前くらいまでだろうか。……正直、間延びしてます。そもそもゲームというシステムなのに言い訳程度の選択肢もなくただただクリックするだけというのもどーかと思うが、なにより話にいまいち波がない。神の定義とか巫祝との差違とかいう問題はおいとくにしても、先に設定があってあとから埋めこんでみた過去です、というような匂いがして、本編でだいたい察していたこちらにはいわば繰り返しでしかない気がしてしまうのが拙いらしい。
 唯一の驚きはアレが「」だった、という箇所だがそれだけでは最後まで興味を引っ張ってくれそうもない。しかも折角のサービスシーンの機会もむざむざと見送られてしまった。早くここを乗り越えて本編に戻りたい。本編の芽依子に逢いたい。しかしこれじゃ絶対に攻略できねーんだろなあ畜生。
2003/02/25
 ……とにかく芽依子萌え。裏事情の無茶ぶりを知った上で尚更萌え。ついでにスカイフィッシュに似た赤ん坊萌え。そこの会話部分だけ詳細なテキストがあるなら誰か横流ししてください。てか、リアルに俺を混ぜろ。置き去りにするな。それは俺の本領だぁぁぁぁぁ
 ……激しく道を踏み外した世迷い言はさておき、ようやっと長い長いおまけシナリオ終了。でようやく北里しぐれ……おまけ見たあとだとこの名前自体に違和感抱くが……の話に突入するが、相変わらず雪国の常識を弁えぬ言動が目立つ。あのなー、年がら年中雪が降っている土地じゃ間違っても傘なんか差しません。重みで潰れるだろが。コートか合羽だけなんです、普通は。確かに、話の都合上雨に変わった場面があったので、使うことはできたわけだが。
 とりあえず、おまけシナリオはあくまで本編の補強というか裏打ちだと解ったので言うことはなし。ちょっと悲劇としても描写がくどすぎるとか、ある段階から急に方向性が変わってるぞ、という嫌味はあるが、終わってみればそれほど気にはならなかった。どー考えたって趣向がアレの焼き直しなんだが、アレよりは収拾がついているのでかなり解りやすくなっている点は評価したい。ただただ、折角あのシーンを必然性をもって挿入できたのに省いてしまったのが納得できないだけで。
 ところでスカイフィッシュには停止したら消えてしまうという説が(以下略)
2003/02/26
 北里しぐれシナリオ終了。この辺からようやく、無理のあったガジェットがきちんと生きはじめている印象。特に、ここで(伏せ字)過去の反復(伏せ字ここまで)があるのが構成としてもゲームとしても巧い。
 ただ、結末に取って付けたような感覚があるのが勿体ない。いちおう筋道はつけているのだが、どうしても唐突に思えてしまうのだ。最後のパートでもうちょっと伏線が欲しかった。そしてもうひとつ、彼女がどーしてああいう服装をしていたのかが知りたかった。だっておかしいだろう彼女の生活背景からしたら。
 引き続き最後のひとつ、若生桜花シナリオへ。それまでと同じ手順をもういちど踏み直して彼女の話の始まりまで辿り着くのが意外としんどい。ここまでの推移でおおまかに予測していたとおり、別の某キャラの筋に桜花という要素を付け加えて展開する話になっているが、このあたりの差別化はいい感じである。あとはどー決着してくれるか、だが――おにいさんなんとなく想像つきはじめてます。
2003/02/27
 若生桜花シナリオ完了。
 筋自体は思いっ切り読み通りだったが、迂闊にもひとつ、ありがちな仕掛けを見落としていたのが忸怩だった。そのくだりも含めて、全体の処理は巧い。やっぱりディテールで多々問題を感じるが、素材としてどう処理するのが正しいのかは弁えている。ただ、決着に至る過程はちと微妙なのだけど。
 CGとイベントもコンプリートしたので、桜花シナリオへの評価に絡めて総評なんぞ軽くしたためてみると。
 この桜花シナリオによって全ての因果にケリがつくわけなのだが、個人的には、しぐれのほうはともかく桜花の話は長いおまけシナリオを経ずに、澄乃の話を終えただけで提示しても良かったのではなかろーか、と思う。確かにこの順序で攻略することで、いちばん美しい余韻を残せるのだが、その程度の自由はユーザーに残しておいてくれても良かったのではないか。あと、全体にやや日常部分がくどい……と考えるのは、小説読み・小説書きとして日に日にエピソードとしての無駄を省く傾向に来ているせいもあるのだろう。
 そしてもうひとつ嫌味を挙げると、この形で並べると日和川旭のエピソードがとことん損をしている。いかにもとってつけたようで、しかも改めて裏事情全体の構図に彼女の話を嵌めこんでみると、かなり浮いている。決着自体は悪くなかったのに、全体に並べると後味が急に悪くなる。いっそ彼女含め、過去の因縁とは切り離した攻略対象をひとりふたり用意しておくか、もっと緊密に結びついて尚かつ悪い後味を齎さないキャラクターに仕立ててあげて欲しかった……というのは高望みが過ぎるだろうか。
 ともあれ、その程度の高望みはしたくなるくらい、全体の仕上がりは綺麗な作品だった。この日記中幾度もアレと呼んだ某ゲームと重ねて評価してしまっているが、文芸的で決着が拡散しており、ゲームとしては致命的なくらいに遊ぶ場所が狭く、余韻は深いけれども多くのユーザーに不可解な印象を齎してしまったアレに対して、本編はより一本筋の印象を強めた代わりに、一本筋とするためにきちんと選択肢を選ばせる、また別のシナリオと呼応して選択肢を選ぶ必要がある箇所を設けるなどゲーム感覚を与える努力が認められ、かつ決着がより明確になりあとあとまで疑問を引きずらせない、などの理由から、娯楽作品としては上質なのではないか、と思う。
 システム的にはやっぱり2日目に指摘した欠陥が、注意していてもときどき足を引っ張ったため結構苛立たされたし、この規模のAVGにしてはパソコンの処理能力に対する要請があまりに大きすぎた感は否めないものの、トータルでは大した不満は感じなかった。
 あとは、音楽の面で冒険がない、というか私はあまりI've Sonudを評価していない(打ち込みの重ね録りに頼りすぎ、音数が多すぎて焦点が暈けている、などなど)のであまり気分は良くなかった。が、それ故に耳障りになるような部分はなかったので、まあ及第点としておきたい。ただ、テーマ曲・挿入曲共に歌が辛い。特に挿入曲は第一声でこけた。
 と、やっぱりきつめに書いたものの、忙しない状況で切れ切れながらここまで漕ぎ着けたことからも察していただけるだろうが、全体としては非常に楽しく遊ばせていただきました。もう少し大きさや細かな気配りが欲しかった、と言ってみたくなるくらいに、良質の佳作。少なくとも、KeyのやLeafなどあのへんの作りに慣れているのなら遊んでみて損はない。深川お気に入りのキャラクターはしつこいようだが芽依子。この結論だけは動かない。だって(伏せ字)完璧に人間じゃないし(伏せ字ここまで)。
 最後に気になっていることひとつ。大いにネタバレなので伏せ字にて。
 ……芽依子、このあと君はちゃんと歳を取るのか、おい。

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