cinema / 『あずみ2 Death or Love』

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あずみ2 Death or Love
原作:小山ゆう(小学館・刊) / 監督:金子修介 / 脚本:水島力也、川尻善昭 / 製作総括:近藤邦勝、森 隆一、亀井 修、坂上直行 / 企画:濱名一哉 / プロデューサー:山本又一朗、中沢敏明 / 共同プロデューサー:佐谷秀美 / ラインプロデューサー:大里俊博、青木弥枝美 / 撮影監督:阪本善尚,J.S.C. / 美術:稲垣尚夫 / 照明:大久保武志 / アクションディレクター:中村健人 / CGIスーパーバイザー:都築正文 / 音楽監督:川村栄二 / 制作:セディックインターナショナル、トライストーン・エンタテイメント / 出演:上戸 彩、石垣佑磨、栗山千明、小栗 旬、北村一輝、遠藤憲一、宍戸 開、神山 繁、高島礼子、平幹二朗、根岸季衣、前田 愛、伊藤 俊、増本庄一郎、坂口 拓、謙吾、野村祐人 / 配給:東宝 / 配給協力:日本ヘラルド
2005年日本作品 / 上映時間:1時間52分
2005年03月12日公開
公式サイト : http://www.azumi2.jp/
日比谷シャンテ・シネにて初見(2005/04/04)

[粗筋]
 多くの屍を乗り越え、加藤清正(竹中直人)を討ち果たしたあずみ(上戸 彩)は唯一生き残った仲間のながら(石垣佑磨)とともに最後の標的である真田昌幸(平 幹二郎)を目指して旅を続けていた。だが、主君を殺された怨念を糧とした井上勘兵衛(北村一輝)の執拗な追跡の果てに断崖へと追い詰められる。海に飛び込むことで窮地を脱したふたりだったが、手傷を負ったながらは身動きできず、かつて連絡のために使っていた廃寺に彼を寝かせると、食事を調達するためにあずみは街道へと赴く。
 あずみが酒場を訪れると、突如夜盗の一群が押し込んできた。頭領の金角(遠藤憲一)は自分たちが世直しを志す集団であると言い張り、そのための資金を募るという名目で客から金をむしり取っていく。あずみは相手にせず店を出ようとするが、金角に「かわゆい」と目をつけられてしまった。にわかに殺気を帯びたあずみだったが、遅れて店に入ってきた夜盗のひとり・銀角(小栗 旬)を見て愕然とする。銀角の容姿は、かつて同じ刺客として育てられた仲間の一人であり、最初の試練で彼女自らが手にかけた、なち(小栗 旬・二役)に生き写しだった。しばし言葉をなくしたあと、あずみは逃げるようにその場を立ち去る。
 廃寺に戻ると、そこには忍の一群が待ちかまえていた――服部半蔵(宍戸 開)率いる伊賀忍者の一党は、あずみとながらを南光坊天海(神山 繁)のもとへと導く。天海こそ、小幡月斎(原田芳雄)に徳川幕府に対する翻意を抱く武将たちを討つ生粋の刺客を要請する命を下した張本人であった。九度山に十年近く蟄居させられ、鬱屈の念から甲賀忍者と通じて戦を画策しているのは既に疑いのない真田昌幸に対して、手練れとは言え僅かな刺客を送るのは死者を徒に増やすだけ、と案じる天海はあずみたちに引くよう命じるが、ふたりは肯んじなかった。既に使命のために幾つもの命を犠牲にし、ほかに生きる術も知らないふたりに、新たに選択するべき道などなかったのだ。その姿に感銘を受けたらしい半蔵配下の一人・こずえ(栗山千明)はふたりに九度山への道案内として同道することを申し出る。
 道中、三人は異様に荒廃した村に迷い込む。そこで待ち受けていたのは、昌幸に取り入り配下となった井上勘兵衛の指示により遣わされた討っ手と――彼らにより雇われた金角・銀角以下のあの夜盗たちであった。迎え撃つ態勢に入った三人だったが、真田昌幸が討伐を命じた刺客があずみだと知るや、銀角は即刻寝返り、金角も仲間共々追随した。
 金角の配下も大勢命を落とす大乱戦の末、どうにか討っ手を一掃した三人は、金角らのねぐらに招かれる。そこには戦争によって孤児となった子供達と、彼らの面倒を見る千代(前田 愛)やよね(根岸季衣)がいた。あずみたちに屈託なく接触する金角や銀角と異なり、所詮「人殺し」でしかないあずみたちに千代らは冷たく当たる。
 結局すぐさまあずみたちは金角らと袂を分かつことになるが、この“出逢い”がやがて悲劇を呼び寄せる。昌幸に取り入り、戦を唆す甲賀衆の女忍者・空如(高島礼子)の策略によって……

[感想]
 前作は日本では珍しいアクションと娯楽性重視の監督・北村龍平の手によって、プロットとしてはかなり粗雑ながら破天荒な見所の多い独自の時代劇を築き上げたが、続編となるこの作品では平成版ガメラシリーズで知られる金子修介監督にバトンタッチしたことで、若干趣を違える作品となった。刺客として育てられ使命のために生死を賭す少女が、宿命と感情とのあいだで揺れ動きながら時代に寄り添っていくさまを描く、という大まかなアウトラインは同一ながら、本編では過剰・過激なアクションは幾分なりを潜め、昔からの仲間と新しい仲間たちとの交流と内心の葛藤を中心に物語が進む。
 製作者も出演者も一様にラヴストーリーという側面を強調するが、しかし本編は普通にラヴストーリーとは呼びにくい。確かにあずみと銀角のあいだにはほのかに通い合う想いのようなものが窺われるが、しかしあずみが見ているのは銀角ごしにある“なち”の俤であり、ひいては使命のためとはいえ手にかけた多くの命なのだ。客観的にあずみが時折垣間見せる感情は明らかに幼い恋心だと解るが、しかしこれほど重いものを透かしたものを、一般のラヴストーリーと同一視することは出来まい。恋心はあくまで、あずみの重すぎる宿命を更に印象づけるための材料に過ぎない。
 ただ、前作にしてからがアクションとプロットの均衡を欠いたために、力強くはあるがぎくしゃくした感があったが、本編もまた同様の印象を齎す。その原因は、キャラクターはしっかり立っているにも拘わらず、いずれも充分に活かされたと見えない点にある。最大のキーマンである銀角は“なち”との相似であずみを困惑させて然るべきであったはずだが、言うほどあずみへの影響は窺われず、消化不良のままで終わる。いささか類型的ではあるが明確な特技があり存在感を発揮した真田方の甲賀忍者たちも、その得意技をいまいち活かしきれないまま退場した。著しいのは、ハリウッドを湧かせた『キル・ビルVol.1』以来のアクション映画出演となった栗山千明で、大きな眼が特徴的な面差しで強い印象を残しながらも、物語の中ではろくすっぽ魅力を示さないままだった。
 僅かに気を吐いたのは“ながら”、勘兵衛、金角――いずれも前作から継続して出演した俳優たちであり、そのキャラクター性をいい形で引き継ぐことの出来た人物ばかりである。特に金角はまったく別人のはずだが、細かな特徴を残しつつもスタンスは正反対という設定になっており、前作から引き続き鑑賞する客へのサービス的な役割も果たしている。妙に派手ないでたちもそうだが、あずみを見るなり「かわゆい〜」と脂下がる姿は見事に前作そのまんまで、そのうえ戦闘シーンでは彼女の側に立って格好良く立ち回るのだから、印象は更に強烈である。
 ほかにも、取りあげればかなり印象的な場面も少なくない。とりわけ終盤、あずみが感情も顕わに絶叫するシーンは激しく胸を打つ。が、全体としてキャラクターを活かしきらず、だらだらと平板な組み立てになっていることは否めない。いちおうテーマに対しては忠実を貫いているし、その点を踏まえればラストシーンは悪くないのだけれど、ここも前作から継続して登場する北村一輝=井上勘兵衛がいればこそだろう。唯一あずみが完成されていることを除くと、ほとんどいいところがない。
 前作を観て、欠点も含めてそれなりにあずみに愛着のある人が観ればそれなりに満足はする。私自身、あれこれ言いつつもその方向性は間違っていないとは思うし、ある意味でバランスも取れてはいる。ただ、どうせならもっと踏み込んで、前作の200人斬りに勝るインパクトのある場面を構築する努力をして欲しかったところ。いいシーンやキャラクターも多いだけに、なおさら勿体ない気のする一本だった。

 しかし本編の何がいちばん気にくわないかって、

服部半蔵が弱すぎんじゃあっ!! それでも伊賀忍者の頭領か貴様っ?!

(2005/04/05)


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