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首都圏でのサラリーマン生活の後、 30年振りにUターンしたとき、故郷十勝の情景は、全てが新鮮に目に映りました。中でも凍てついた冬のある朝、少年時代よく遊びに行っ
た札内川の雪原を見て感動をおぼえました。感動が醒めないうちにと一気に書き下ろした60号 [氷雪の朝」を、はるばる郵送にて示現会展に始めて出品しましたところ、諸先生方の目に止まり、
いきなり入選しました。私と雪との付き合いはここから始まりました。
示現会の二作目は雪の浜辺に引き上げられた古い中型の鉄船でした。この作品を本展のあと、地元のグループ展に再出品したところ、
作品の前にしばし佇む中年の婦人が居りました。私が作者と知り彼女は感想を言いました。「この船を見ていると、長い間北海の荒波の中
で働き、疲れと傷を癒しながら、次の出漁に気力を振り絞る老航海士の魂が感じられる」と。感動させられたのはむしろ私のほうでした。
それ以来私は老船をメインテーマに描くようになりました。
老船はいまや私にとって、単なる構造物ではありません。老船には心があり魂を感じます。その形は荒波を蹴って船員の安全を守る船体 の機能的な設計があり構造があります。その船腹のラインの形には必然性があり、理想があります。機能上の完全さを追求した果てに究極
の美学があると思っています。 2006/7/20
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