管理人自己紹介

第1回:『クハ・モハ』ってなに?

2005.3.13 開講
2005.4.11 訂補

 ようこそ、通勤通学者のための「小てつ」講座へ。
第一回目は、利用されている電車の車体に書かれている文字や記号を見ていきたいと思います。

電車に乗る時にいろいろな文字や記号が電車の車体に書かれているのを見て、「あれ何だろう」と思ったことはありませんか?。注意して見ると多くの種類の記号が書かれていますので、何回かに分けて取り上げてみたいと思います。
それでは今回のテーマは・・・コレ
武蔵野線や埼京線だと1両に片側4つ扉がありますが、その2番目と3番目の扉の間の下の方に写真のようなペイントがなされています。
そもそもこの記号の意味は何なのか、そこから見ていきましょう。

まずは、この記号の意味を大別していきます。
下の表を見て下さい。
車種 形式   車号
クハ 103 815
モハ 204 5001

大きく3つの意味を持っています。
それでは、この表にある3つの意味を順に見ていきましょう。


1.車 種
  レールの上にはいろいろな目的を持った車両達が走っています。
  例えば・・・
架線に流れている電気を使って自走し旅客(人)を運ぶ「電車」【EC】
架線の無い区間をエンジンを使って自走し旅客(人)を運ぶ「気動車(ディーゼルカー)」【DC】
自走できないので機関車に引いてもらいながら旅客を運ぶ「客車」【PC】
自走できないので機関車に引いてもらいながら貨物を運ぶ「貨車」【FC】
架線に流れている電気を使って自走できない客車・貨車を引いたり押したりする「電気機関車」【EL】
架線の無い区間をエンジンを使って自走できない客車・貨車を引いたり押したりする「ディーゼル機関車」【DL】
架線の無い区間を蒸気機関を使って自走できない客車・貨車を引いたり押したりする「蒸気機関車」【SL】

  ここで言う「車種」とは上記の1〜3で使われているものです。
  今回の講座では、まずは初級編と言う事で武蔵野線、埼京線に走っている「電車」に絞って見て
  いきたいと思います。

  まず、「車種」で使用されている文字ですが、カタカナで今まで私が知っている限りでは2〜5桁
  の文字を組み合わせて使用します。2文字ならば「クハ」「モハ」、5文字だと「クモハユニ」なんて
  感じです。ちなみに武蔵野線、埼京線では現在、人を乗せて走る電車はすべて2文字、武蔵野
  線では過去に3文字が存在していました。

  では、その1文字ずつの意味を見ていきましょう。

(1) (2) (3)

  (1) 運転室があるか?
    電車の両端には通常運転室があります。武蔵野線ならば1号車と8号車、埼京線ならば1号
    車と10号車です。つまり、今記述した4つの号車の車種には必ず「」が付いています。
    なお、湘南新宿ラインの15両編成や中央線快速電車のように途中で切り離して編成が短く
    なる列車や、1編成が途中で別れて別々の行先となる場合などは、切り離される車両にも
    運転席があるので、列車の中間にも車種に「」が付いている車両が連結されている場合が
    があります。

  (2) モーター(主電動機)は付いているか?
    電車は架線から電気を得てモーターの力で走っていますが、実は最近の電車は全部の車両
    にモーターが付いている訳ではありません。ですからモーターが付いている車両なのか否か
    をこの車種で判別します。
    まず、「」が付いている場合は、その車両にはモーターが付いています。
    それではモーターが付いていない車両は?と言うと、運転室がない車両の場合は「」を付
    けています。
    では、モーターが付いていなくて運転室がある車両は・・・(1)の「」を付けます。この時は
    「」を付ける必要はありません。但しモーターが付いていて「」が付いた場合でその車両
    に運転室がある時は・・・(1)の「」を付けます。従って「クモ」になる訳です。

  (3) 車両の「等級」は?
    現在の等級としては、普通車かグリーン車、寝台車だとA寝台、B寝台とかいろいろ種類が
    ありますが、この記号を制定した時代では「1等車」、「2等車」、「3等車」とがあり、それぞれ
    「」「」「」を付けていました。
    現在身近にあるのはグリーン車(寝台車A寝台)の「」、普通車(寝台車B寝台)の「」で、
    「」はJR西日本で所有している昔の展望車の「マイテ」のみと記憶しています。武蔵野線・
    埼京線にあるのはもちろん「」だけです。

  ・その他の記号
    ここまでの内容では「まだへっちゃら!」だと言う人や、調べている記号がまだ見つからない
    と言う方は こちら をクリックしてみて下さい(別ウィンドウ)・・・中級編です。


  以上、(1)(3)その他の記号を組合せて車種にします。
  武蔵野・埼京線に存在している(していた)もので見ると・・・

クモハ 運転室が有り、モーターも付いた普通車(今は存在しない)
クハ 運転室が有り、モーターは付いていない普通車
モハ 運転室が無いモーター付の普通車
サハ 運転室が無く、モーターも付いていない普通車

  と言った内容になります。
  湘南新宿ライン等に2階建てのグリーン車が連結されるようになりましたが、その車両は「サロ」
  (運転席が無くモーターも付いていないグリーン車)になります。
  また、中央線の特急「あずさ」(「スーパー」ではない)や「かいじ」に使われている車両に半分
  だけ普通車、残りの半分はグリーン車という車両がありますが、この場合「サロハ」(運転席が
  無くモーターも付いていないグリーン車と普通車)という組み合わせになります。これは「合造車」
  と言って、1両の車両に複数の違う目的の部屋を持った車両で、上記(3)や「その他の記号
  を組合せて車種にします。(例:クロハ、クモユニ、クモハユニ・・・など)
  ちなみに「ロ」や「ハ」を付けていない車種の車両は、お客さん(人)を運ぶための車両ではあり
  ません。

  ここまで理解できましたか?
  それではここまでの内容を応用して、実際に乗りたい車両を選別する例を挙げてみたいと思い
  ます。

  【例えば、静かな車両を選んで乗りたい・・・】
  この「車種」(車種記号)を見れば、その車両のモーターの有無がわかります。モーターが付い
  ていると言う事は、電車が加速する時や減速する時(モーターをブレーキとしても使っている
  ため)に騒音が発生するので(それ以外にも発生源があります)、静かな電車に乗りたい時は
  「モ」の付いていない「サハ」や「クハ」を選ぶとよいでしょう。
  その選別に必要な編成表(車種ベース)ですが武蔵野線・埼京線では以下のようになってい
  ます。
【武蔵野線】
8 7 6 5 4 3 2 1 東京==>
南船橋==>
(1) クハ モハ モハ サハ サハ モハ モハ クハ
(2) クハ モハ モハ モハ モハ モハ モハ クハ
・ほとんどが (1) になる(最終的には36/40)
・(2)となる編成は、電車と向かい合った状態で運転席窓の左上に「M61」〜「M65」という札が付いている。

【埼京線】
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 大崎==>
新木場==>
(3) クハ サハ サハ モハ モハ モハ モハ モハ モハ クハ
(4) クハ モハ モハ サハ モハ モハ サハ モハ モハ クハ
・(3)の2・3号車は6扉車
・多数は(3)(先頭に「6DOORS」のシール付き)だが、帯の色が「青」の電車全てと、「緑」の一部(前述のシールなし)が(4)になる


2.形 式
  「電車の編成を組むために同じ仕様で設計され作られたグループ」・・・うまく表現するのは
  難しいですね・・・一般の人に理解できるように簡単に言えば、「いっしょにつないで走れる
  グループ」(「てつ」の人ならいろいろ突っこみそう)と考えて下さい(汗)。
  まず「車種」の時のように大別します。

  (1) (2) (3)  
 
 
 

  形式は上のように数字3桁(最近のJR東日本の車両は先頭に「E」を付ける)で構成されて
  いますが、各桁の持っている意味を見てみましょう。

  (1)【1桁目】走れる区間の電気の種類
    電気には大きく分けると「直流」と「交流」がありますが、そのどちらを走れるかをこの桁で
    判別できます。
      1〜3:直流1500Vのみ(直流電車)
      4〜6:直流1500V + 交流20000V(交直流電車)
      7〜8:交流20000Vのみ(交流電車)
    上記のようになっています。
    東京など大都市周辺ではほとんど直流です。これには意味があります。直流の地上設備
    (変電所)などは交流よりも高価なのですが、電車は安く作れることから、頻繁に電車が走
    る区間では直流の方が経済的なようです。これに対し交流は地上設備は直流に比べ安く
    作れますが、電車が高くつくため運転間隔の広い地方向けとされています。
    ただし、運転本数が多くても交流になっているような線区があります。常磐線の取手から先
    の区間はそのケースで、鉄道会社としては直流にしたいのですが、「柿岡」という所に地磁
    気観測所があるため、直流にしてしまうと観測に影響がでてしまうので止む無く交流にして
    います。その影響はJRだけではなく、まもなく開通する「つくばエクスプレス」も一部交流で
    電化し、取手から走っている関東鉄道に至っては電化せずにディーゼルカー(気動車)で運
    転されています。
    武蔵野線・埼京線で考えると両線とも直流電化ですから、それぞれの区間だけを走る電車
    ならばこの桁は『1〜3』でよいと言うことになります(『4〜6』でも走れます)。

  (2)【2桁目】車両の用途
    「用途」とはどんなものか以下の表にまとめました。

2桁目 従来 最近のJR東日本  
通勤形 通勤形 ほとんどが4扉で、横長のロングシート(椅子)が用いられる
1〜3 近郊形 通勤+近郊形 従来は通常3扉で、ボックスシートが用いられたが、近年は4扉
ロングシートが主流
4〜6 急行形 急行+特急形 従来、急行形は2扉ボックスシート、特急形は1扉で向きが変わ
ったり(転換クロス)や背もたれが後ろに傾く(リクライニング)
シートだったが、昭和48年以降、特急形で2扉も存在する
7〜8 特急形  

    JR東日本では新形式について今までの枠組みをはずし、以前ならば「急行形」となる形式
    を「特急」として使用しています。その例が651(スーパーひたち)、E351(スーパーあずさ)
    251(スーパービュー踊り子)、253(N’EX)などです(2桁目が「5」)。
    また、通勤形も現在の新形式はE231で、今までの近郊形の機能も併せ持った新しい区分
    を誕生させています。
    武蔵野線・埼京線を現在走っている電車は「0」の通勤型ですが、今後新車が入るとすれば
    E231のような形式になると思われ、その場合この桁は上表の「1〜3」に該当します。

  (3)【3桁目】通し番号
    この桁の説明が一番難しいところです。基本的には先に説明した「上2桁」固有の通し番号
    です。ただし、「形式」に大きく2つの意味があり、「シリーズ」(系統)としての形式か、車種を
    含めた「詳細」な形式なのかによって、この桁の表現が変わってきます。
    武蔵野で走っている形式(シリーズ)10系は10系の後継形式で、その後105、107系
    が誕生しています。でも通し番号なのになぜ1つずつ間が開いて奇数になってるの?、と思
    われるかもしれません。
    これは形式を「シリーズ」として見た場合のルールで、なぜそのようなルールが存在するの
    か見ていきたいと思います。

    「シリーズ」としての形式ですが、形式が3桁になってからは末尾に奇数を用いています。
    1つの「シリーズ」を例として以下の表にあらわします。
シリーズ:205系(鶴見線、南武支線、川越・八高線用を除く)
・クハ205 ・クハ204 (上り・下りなど、向きによって異なる)
・モハ205 ・モハ204 (それぞれ搭載している装置が異なり、必ずペアを組む)
・サハ205 ・サハ204 (前者が4扉、後者が6扉)

    これを見て分かるとおり、シリーズとしては奇数ですが、車両(車種)毎にみると機能などの
    違いにより奇数・偶数を使い分けています。このことから、通常「車種」を頭に付けない「
    式
」とは「シリーズ」を指して奇数のみとなり、偶数の形式を言う場合は大抵「車種」(クハ
    など)が付きます。
    但し、シリーズとして車種別に必ず奇数・偶数が存在しているとは限りません。その例として
    103系を以下の表にあらわします。
シリーズ:103系
・クハ103 (向きは、「車号」で判別できるようになっている)
・クモハ103 ・クモハ102 (上り・下りなど、向きによって異なり、搭載する装置も異なる。但しクモ
ハ102は地下鉄東西線用と川越・八高線用のみ。必ずクモハ103+モハ
102または、モハ103+クモハ102のペアとなる)
・モハ103 ・モハ102 (それぞれ搭載している装置が異なり、必ずペアを組む。組み方として
モハ103+モハ102、クモハ103 + モハ102、またはモハ103+クモハ102
のいずれかになる)
・サハ103 (4扉のみ)

    この表のとおり、クハとサハには偶数の「102」が存在していません。特に形式で機能を区
    別する必要がなかったためです。

    この桁にはこの他に特殊な区分を持たせていました。
    その内容は こちら をクリックすると表示されます(別ウィンドウ)・・・中級編

  かなり説明が長く複雑なものになってしまいましたが、もう一度整理をすると「形式」は、以下の
  3つの要素で構成されています。
  (1) 走れる区間の電気の種類(直流なのか交流なのか、または両方なのか)
  (2) 車両の用途(通勤用なのか特急用なのか等)
  (3) (1)+(2)の通し番号(但し「シリーズ」の「形式」は奇数のみ)

  このことから、武蔵野線・埼京線で走っている「205系」は、「2:直流用」で「0:通勤用」で先頭
  に2が付く通勤用としては201、203系に続く形式で奇数の3番目「5」・・・をつなぎ合わせた
  式
と言うことになります。

  余談ですが・・・
  前述の「1.車種」のなかで「モハは静かではない」という話をしましたが、個人的にはモハの中
  でも205系で言うならば「モハ204」をなるべく避けて利用しています。モハの偶数の形式は「コ
  ンプレッサー」というドアの開閉(最近の電車は電気式)やブレーキ、サスペンション(車体のクッ
  ションの役割:空気ばね)等に使用する圧縮空気を溜める装置が付いていて、圧縮空気の量が
  減ってくるとその装置が作動し、結構な騒音となるためです。まぁこれが耳障りになるかどうか
  は個人差があるかもしれません。
  【武蔵野線の例】
8 7 6 5 4 3 2 1 東京==>
南船橋==>
クハ204 モハ204 モハ205 サハ205 サハ205 モハ204 モハ205 クハ205
クハ204 モハ204 モハ205 モハ204 モハ205 モハ204 モハ205 クハ205


3.車 号
  一番単純な意味では、前述の「車種」+「形式」のシリアル番号(連番)と言うことになります。
  しかし、形式によってはこの車号の番台によって機能の違いなどを表している場合があり、一部
  はかなり複雑なものになっています。
  比較的簡単な例として、武蔵野線・埼京線で走っている205系で表してみます。
205系(鶴見線、南武支線、川越・八高線用を除く)
500番台(501〜) JR東日本・相模線用(ドアに開閉ボタンが付いている)
1000番台(1001〜) JR西日本・阪和線用
100番台(サハ204-101〜) 横浜線用導入した6扉車(サハ204のみの26両)
900番台(サハ204-901〜) 山手線用に試作された6扉車(サハ204のみの2両)
5000番台(モハ20x-5001〜) 武蔵野線用のVVVFインバータ改造車(モハのみ)
その他(1〜) 単純にシリアル番号(クハ・モハには途中欠番あり)

  複雑な例として103系を表してみます。  (2005.4.11 800,910,3000,3500番台追加)
103系(JR東日本のみ)
500番台(〜638)
(クハのみ)
クモハ103用のクハとして製造されたため、全て向きがクモハ103の逆
となっている(偶数向き)
750番台
(サハのみ)
101系から改造されたサハ103
800番台
(サハのみ)
モハの910番台の電装を解除し、サハに改造された車両
900番台 この形式だけではないが、通常900番台は試作車を表している
910番台
(モハのみ)
制御装置に超多段式(55段)のCS30を用いた試作車。最終的にこの
制御装置が使用されることはなかったが、1000番台等に用いられた
CS40に生かされた。
1000番台 地下鉄千代田線への乗入用車両
1200番台 地下鉄東西線への乗入用車両
末尾が奇数
(クハのみ。
500番台を除く)
一般的には下り側に向いている(武蔵野線:西船橋方面)。
但し500番台は末尾が奇数でも偶数の方向を向いている。
(武蔵野線車両の東京乗入れ時等、逆のケースもあり)
末尾が偶数
(クハのみ)
一般的には上り側に向いている。
(武蔵野線車両の東京乗入れ時や188のような、逆のケースもあり)
2000番台
(モハ102のみ)
特に機能的には意味はないが、モハ102-899の次である900が使えな
いため、その続きを2001としたことから、よく2000番台と言われる。
3000番台 仙石線で使用されていた旧型国電のアコモ改造車72系970番台の
車体を流用して正真正銘の103系となり、川越線に投入された。
3500番台 八高線電化開業時に209系増備だけでは所要編成が不足するため、
103系一般車を種車として川越・八高線仕様とした車両。

  なお、103系の先頭車両の向きはこの「車号」だけではなく、車種形式で決まっている場合
  もあります。
  ・クモハ103・・・全て車両が奇数向き(一般的には下り側)
  ・クモハ102・・・全て車両が偶数向き(一般的には上り側)

  「車両の向き」については大変理解が難しいので、機会があれば車両の組み合わせ等と共に
  説明できればと思います。

  車号について、もう一度整理すると・・・
  ・基本的には「車種」+「形式」の通し番号(シリアル番号)
  ・車両の機能や装備によって番台を分けている
  ということがポイントになります。

  なお、この「車号」には前述の900番台(試作車)以外にも特殊な番台があります。
  内容は こちら をクリックすると表示されます(別ウィンドウ)・・・中級編


これまで見てきた「車種」+「形式」+「車号」で個々の車両を(ユニークに)識別できることから、
自動車で言えば「ナンバー」のような使い方を使用しています。
個々の車両には、人で例えるならば戸籍があるように「車籍」が存在し、いつ・どこで・どのような
検査や修繕・修理が行われたか?、また走行距離はどのくらいか?などが調べられるようになって
います。


これで一連の説明は全て終了です。
ものすごい「詰め込み」になってしまったので理解し難い部分、説明不足の部分もあったかも知れ
ませんが、何卒ご容赦下さい。

最後までご覧頂きましてありがとうございました。

内容について、お問合せ、ご指摘等がございましたらお気軽にメールにてご連絡お願い致します。
(送信アドレスはTOPページにあります)