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川崎協同病院外科  和田浄史医師

基本的に気管切開創は汚染創です。気道及び皮膚の常在菌がたくさん住んでいます。気管切開をしたばかりで上皮化していない創ですら、 1日1回イソジンをなすりつけても、創を無菌化することなどできません。2時間も経てば、また常在菌がはえてきます。

問題は、それが感染の起炎菌となっているかどうかです。「気切口のまわりが真っ赤で膿の排出もある」という場合は、同部のドレナージをするなり、抗生剤の全身投与をするなりすべきでしょう。でも、そのような創にすら、1日1回イソジンを塗っても意味はないでしょう。
まして、既に皮膚と気道粘膜の間の上皮化も完了し、特別感染の機転もない気切口には、イソジンを塗る意味はないと思います。「食事のあとの唇をイソジン消毒」したり、「排便したあとの肛門をイソジン消毒」したりするのがナンセンスなのと同じくらい、意味がない操作と思います。本当は、気切口の回りの皮膚は、他の皮膚と同様にきれいに清拭するだけでよいのだと思います。

ただ、唇や肛門と気切口の違いは、気切口が人工的なろう孔なので、外部からの様々な物質の進入を防ぐことができないという点にあります。しかし、咳漱反射がきちんとあって気道浄化の機能があれば大きな問題はないでしょうし、気切口の消毒をサポートする材料にもならないように思います。また、Yガーゼは、滲出液やたれこんだ唾液などを吸収する、あるいはカニューレと皮膚が直接触れるのを防ぐ、という意味はあります。浸出液が全くなく、カニューレと皮膚の間のトラブルもなければ、必須のアイテムではないと思います。

さて、かくいう私も、Yガーゼを取り替える時にNsが綿球を渡してくれると、つい、形ばかり消毒するふりをしてしまいます(情けない…)。これからは「きちんと気切口を観察して滲出や感染がなければ消毒は不要である」と、スタッフにも教育しようと思います。気切口の消毒の有無と気道感染合併率をRCTした文献はあるのでしょうか? また、皆さんの施設では、気切口はどのように管理されていますか?




2007年1月撮影
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私は、2007年の6月まで気管切開部分にイソジン消毒をして、Yガーゼを1日に1回の交換をしていました。気管切開をして3年間の間に3回の肉芽切除手術をしました。1回目は気管切開後、1年目に肉芽の手術をしました。それから毎年手術が続きました。その肉芽の原因の一つに、栄養の取り過ぎが上げられます。



その当時、エンシュワを4缶(1,000ml)と野菜ジュース(400ml)を入れていました。肉芽の発達も異常に早く、気管切開口にも気管壁にも肉芽が増殖し始めてきました。手術は気管支鏡で気管を確認しながら行う為に4時間も長い手術になりました。
2006年の4月(3回目の肉芽の手術)後から、エンシュワを2缶(500ml.)に、野菜ジュースを半分の200ml.が1日の栄養源に減らしました。体重は落ちますが、肉芽の発達は著しく遅くなったのは確かです。でも肉芽が無くなった訳では在りません。成長が遅く為っただけの事です。

2007年8月撮影
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肉芽対策として、2007年6月から遣り出した事は、イソジンを使わずに洗顔石鹸で気管切開口を洗い水で洗い流すのです。Yガーゼは使わずにカニューレの羽の部分(カニューレを止める紐を通す部分)に、ガーゼのきり端を折ってカニューレの両端に挟み込む形を取ります。この様にすると肉芽に風が通って乾燥して、肉芽が瘡蓋のように分離すると言われています。 写真は今の私の気管切開口です。
参考として、 川崎協同病院外科  和田浄史医師 のcommentを記載してます。





*2007年8月に撮影。

2007年8月撮影
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この写真は、去年の4月に肉芽の手術から1年と4ヶ月過ぎた状態です。栄養も1日にエンシュワ2缶(500ml.)と野菜ジュース200ml,減らしたお蔭で、首も一回り細くなったし顎の肉も落ちて、気管切開口の肉芽が無くなりました。2007年6月からイソジン消毒から洗顔石鹸による洗浄に変わってイソジン被れも直りました。







*2007年8月に撮影
2007年8月撮影
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2007年8月の時点で、左右の肉芽は無くなり気管切開口の下部に鮮紅色の肉芽が一部出来ています。気管壁にはまだ肉芽は出来て折らず、去年のように気管切開口を覆い尽くす様には成っていない。気管切開の周りの皮膚も以前よりはピンク色に形成しつつある。







*2007年8月に撮影
2007年8月撮影
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この撮影は、カニューレ交換の時に写しました。下部の肉芽の状態が良く撮れています。カニューレを抜く時にこすれて下部の肉芽から出血したのが良く判ります。肉芽は安定方向に向かっています。後は気管切開口の下部にカニューレが負担を掛けない様にする。そうすれば肉芽の増殖も進まないと思います。






*2007年10月に撮影
2007年10月撮影
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この撮影は、カニューレ交換の時に写しました。上記の外部肉芽の状態が、きれいに消えています。あれだけ赤く大きな下部の肉芽が、跡形もなく消え去りました。肉芽は安定方向に向かっています。どの様な方法で、この様な状態になったかと言うと、塗り薬をただ肉芽の幹部に塗って、乾燥させただけで消え去りました。 こんな簡単な事で直る事なら、もっと早くに肉芽に対して調べれば良かったと思いました。
私が調べた所、ステロイド軟膏が肉芽に対しては効果が有ると書いてあり、主治医に相談をしたところ、ステロイドの成分が含まれている軟膏はいろいろ有るけど、リンレドン軟膏はステロイド成分が1%としか含まれず、 特に抗生剤が含まれて効果が薄れるという事で、リドメックス軟膏にしました。リドメックスには、ステロイド成分が3%も含まれており、リンレロンの3倍の効果が有る事で使用しました。薬を塗った期間は、ほぼ1ヶ月にも満たないです。それだけで気管切開部分からの、分泌物が無くなり開口部分が綺麗になりました。 このまま清潔を保てば、肉芽の増殖も進まないと思います。






注意事項

肉芽に効果がある薬品としては、エクラー軟膏塗布とステロイド系軟膏が上げられる。エクラー軟膏塗布は、 大きくなった肉芽に効果を発揮して収縮させる働きがある。しかし、消滅させるまでの効果はない。あくまでも拡大を防ぐ役目の薬だと思って貰いたい。 ステロイド系軟膏は、初期の肉芽(1ミリ〜3ミリぐらい)を縮小させたり、消滅させてしまいます。もう一つ効果が有るのは出血した時に遣うと血止めとして効果を発揮する。 カニューレの交換の時にも使用するといいでしょう。

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