戸 惑 い 2



        マイカ老師達がスタジアムへと行ってしまうと、船着場に集まっていた人々も彼方此方に散って行った。

        「よし俺達も行こうぜ」

        ワッカの声でビサイド一行も歩き出した。
        一番後ろにいたは隣にいたキマリに声を掛ける。

        「ねえキマリ、グアド族って皆、あんな感じなの?」
        「・・・・?」
        「気のせいだといいけどユウナさん値踏みされていた気がする」
        「キマリはグアド族の事、よく判らない。
        しかしエボンの老師はスピラでは敬われている」
        「エボンか・・・・どっかで聞いた事があるんだけどなー」
        「スピラに住む者なら誰でも知っている」
        「うーん、そうだね・・・・・」

        は何かが違うような気がした。
        しかしそれはキマリに言っても理解されない事だと解っていた。

        スタジアムに着くとティーダ達ビサイトオーラカのメンバーとやユウナ達は二手に別れた。
        「あれ?ワッカさんは控え室行かないの」
        「俺か?俺は今から試合の抽選に行くんだ。俺ってくじ運がないんだよなー」
        「あっ じゃあ私が引いてあげる。私って運がすごく良いんだよ」
        「ほんとか!じゃあちゃんにはオーラカの控え選手になってもらうぞ」
        「やったー!!ユウナさん、ルールーさん、キマリ、待っててね」

        ははしゃぎながらワッカの後に着いて行き抽選会場へと消えて行った。



        「よかった・・・・」
        「何が良かったのユウナ?」
        「ちゃん、朝から元気が無かったから。
        やっぱりキーリカの事を気にしているのかと思って聞いたけど何も言ってくれなくて・・・・」
        「そう・・・・・」

        ルールーは昨夜の事をユウナに言える筈も無かったので頷くしかなかった。
        
        「さっきのティーダを見て誰か知り合いの人が来てくれればいいのにね?」
        
        「そうね・・・・」

        ルールーはそう相槌を打ちながらユウナが何かいつもと違う気がした。

        「ねえユウナ、貴方、ティーダと何かあった?」
        「えっ?ルールー如何してそんな事急に聞くの」
        「貴方がいつもより機嫌が良い様に思えたから」
        「そ・そんな事ないよ!気のせいだよ、気のせい」
        「そう?そういう事にしといてあげるけどユウナ、分ってるわね」
        「・・・・うん。大丈夫、心配しないで」

        ルールーの問いにユウナは、ティーダには見せない表情をみせるのだった。



        暫くして抽選の終わったワッカとが戻って来た。

        「皆!!やったよ。シード権獲得♪」
        「ほんとう!?ちゃんすごい」
        「えへへアルベト・サイクスって所に勝てば決勝進出!やったね」
        「は偉い」

        ワッカはとても豪快に笑うとの頭をポンポンと叩く。

        「じゃあティーダ達に早く知らせないと」

        ユウナの言葉に一行はティーダ達の待つ控え室へと向かう事にした。



        ユウナやルールーに本当に嬉しそうに話すワッカを嬉しそうに見ていた
        はふと視線を背後から感じて振り向いた。

        「アーロンさん!!」

        は突然叫ぶと走り出した。

        「アーロンさん?」

        の叫んだ名前に驚き振り向いたユウナ達の目には、人ごみの中に消えていくの姿が見えた。

        「ちゃん!待って」

        ユウナは慌てて追いかけようとしてキマリに止められる。

        「ユウナ、お前はティーダに知らせろ。キマリが追いかける」

        キマリはそう言うとの後を追った。




        その頃ティーダは久しぶりのブリッツの試合に臨むべく気持ちを高め精神統一をしていた。

        「ワッカさん・・・・遅いなー」

        オーラカメンバーの一人ダットがそう誰にでもなく言ったと同時だった。

        「ティーダ!!大変なのちゃんが!」

        そう言いながらユウナが控え室に飛び込んで来た。

        「ユウナ?がどうかしたのか!」

        「ここに来る途中に突然アーロンさんの名前を呼んだと思ったら人込みの中に・・・・」
        「アーロン?アーロンがいたのか?」

        ティーダはアーロンの名を聞きユウナに聞き返した。
   


        「落ち着いてティーダ。アーロンさんの姿は私達は見ていないのよ。今キマリがちゃんを追いかけてるわ」

        ルールーがティーダをそう言って宥めたが

        「俺、を捜しに行く!」

        ティーダはそう言い部屋を出ようとしたがドアの前で立ち止まった。

        「ワッカ・・・・試合・・・」

        「任せとけ!ちゃんのお蔭でシード権を取れた。
        アルベドにはお前が居なくても勝ってみせるから捜して来い」

        「ワッカ・・・・ゴメン。試合までには戻る」

        ティーダはそう言うと駆け出した。

        「待ってティーダ!!私も行く」

        ユウナはそう言ってルールーの止めるのもティーダを追って行ってしまった。



        二人がスタジアムを出るとキマリの姿が見えた。

        「キマリ!!」

        二人はキマリに駆け寄った。

        「は?」
        「済まない・・・・見失った」  
        「そうかの奴、何処に行ったんだ」
        「ティーダきっとアーロンを捜してるんだよ。 
        この人込みの中でちゃんを捜すのは大変だけど、アーロンさんは知られているから聞いてみよ?
        ちゃん側にいるかも知れないし」
        「ユウナ・・・・」
        「キマリ、カフェでアーロンの噂を聞いた」
        「カフェで?行ってみようよ」

        ティーダも頷き三人はキマリが噂を聞いたと言うカフェに向かった。
  


        カフェに着いた三人はアーロンを見たと言う者を捜したが見つからず
        カフェ周辺を手分けして捜す事にした。

        「・・・何処に行った」

        ティーダは辺りを見回しながら呟いたがの姿は見当らない。
        とそこに人々の歓声が聞こえた。

        「おっブリッツの試合が始まるぞ」

        そう言って人々は近くにあるスタジアムを映し出したスクリーンに集まりだした。
      
        「拙いな・・・早く戻らないと」

        ティーダはそう言うと近くに居るはずのユウナの姿を捜したが先程まで居たユウナの姿が見えない。

        「ユウナ?キマリの所に行ったのか?」

        ティーダはユウナがカフェに居るはずのキマリの許へと向かったと思い急いでカフェの中へと入っていく。
        しかしユウナの姿は見えずかわりにキマリがロンゾ族の昔仲間に絡まれていた。

        「キマリ!!ユウナがいない!」

        ティーダの言葉にキマリは仲間の不意をついて殴り倒すとカフェを飛び出しティーダもその後を追った。

        「ユウナ・・・・」

        キマリとティーダはブリッツ大会の開幕を宣言するマイカ老師の声を
        遠くに聞きながらユウナの姿を捜したが彼女の姿は見当らない。
        そこにティーダの姿を見つけたルールーが血相を変えて駆け寄って来た。

        「大変よ!!ユウナが攫われたわ」
        「なっ!誰にだよ?」
        「アルベト族よ、試合に負けないとユウナは返さないって・・・・」
        「なんだって!!八百長をやれって言うのかよ」
        「ええティーダ、キマリ。試合の事はワッカ達に任せて早くユウナを見つけましょう。
        さっきユウナらしき娘をアルベド族のサルベージ船が無理に乗せようとしていたらしいの。港に急ぎましょう」

        ルールーの言葉に二人は頷き、三人は急いでアルベドの船を見かけたというポートへと急いだ。



        「何とか間に合った!!」

        船はいかりをあげて出航しようとしていたが三人は思いっきりジャンプすると船に飛び乗った。

        「ちっ」

        アルベト族の若者はティーダ達を見て舌打ちすると
        いきなりマシーンのエンジンをかけて船の中へと姿を消した。

        「おい!待てよユウナを返せ!」

        ティーダは追いかけようとしたがいきなり動き出したマシーンに阻まれた。

        「ティーダ!私が雷を落とすから動きが鈍くなったと同時に攻撃して」
        「了解!!舐めた真似してくれるぜ」

        ティーダは大好きなブリッツを汚された気がして怒りが頂点に達していた。
        ルールーの魔法でマシーンの動きが鈍ると必殺技を繰り出して致命傷を与えた。
        最後の止めを繰り出そうとしたが、それはキマリの一撃の方が早かった。

        「キマリ、俺がヤルつもりだったのに・・・・」
        「キマリも怒っている・・・・・」

        その言葉に苦笑いしていたティーダの目に突然甲板の床が開いた。