物語の始まり









         プロローグ


         「ユウナ!!」

         「ティーダ! ルールー! キマリ!」

         「ユウナ、怪我はないみたいね」

         「うん、そんなに乱暴な事はされなかったから・・・・・」

         「ユウナ! 誘拐事態が乱暴な事だと俺は思うけど?」

         「そっそうだね」

         「ユウナ? 何かされたっスか?」

         「心配しないで本当になんともないから、ねっ!」

         困っているユウナにキマリが助け舟をだした。

         「ティーダ・・・・ワッカが待っている」

         「あっやばい! もう前半が終わる」
   
         「あっ試合! ごめんねティーダ私の為に・・・・・」

         「ユウナの所為じゃないっス。アルベト族の奴ら卑怯な事をしやがって!! ルールー! 頼むっス」

         「了解」

         ルールーはサンダーの魔法を空に向かって放った。

         「これでワッカ達が思う存分戦えるっス」

         ティーダはそう言いながらスタジアムに向かって走り出し、ユウナ達もその後に続いた。
     


         「あっ花火?」

         はやっと見つけたアーロンの側で空を見上げた。

         「花火にしては華やかさが無いなー」

         「・・・・ティーダが探しているんじゃないか?」

         アーロンがそう聞くと

         「お兄ちゃんは今ブリッツの試合中」

         「・・・・・・・・いい加減に放して欲しい」

         「むー逃げたりしないアーロンさん?」

         「ああ別に逃げていた訳じゃないからな。少しこの世界の状況を見てただけだ」

         「私とお兄ちゃんをほっておいて?」

         は頬を膨らませた。 

         「顔が戻らなくなるぞ」

         「いいもん! もとから膨らんでるから」

         「そうか・・・・そうだったな」

    
         同意の言葉を言ったアーロンには更に膨れ面をした。



         そんなに苦笑しながらアーロンは、街頭のスクリーンに目を向けた。

         「? ティーダが出ていないようだが」
         「えっ!? なんで!」

         は驚きスクリーンに駆け寄った。

         「ほんとだ! それに何かワッカさんの動きも鈍いみたい。何か遭ったのかな?」

         「怪我をしているみたいだな」

         「えっ? そんなー! アーロンさん早くスタジアムに行こう」

         はアーロンの腕を引っ張って走り出そうとしたがアーロンは逆に反対の手でを引き止めた。

         「アーロンさん?」

         「ティーダに会う前にお前に話しておきたい事がある」

         「お兄ちゃんには言えない事?」

         「アイツにも関係があるが、その前にお前に知っていて貰いたい事がある」

         アーロンはそう言うとの目を見つめた。

         「お前はジェクトが海で拾った娘だと言うのは知っているな」

         「うん、そのままお父さんが私を養女にしてくれたって・・・・」

         「お前は自分がどうして海に浮かんでいたのか考えた事があるか?」

         「・・・・・少しはあるよ。でも止めたんだ・・・悲しくなるもの」

         「何故?」

         「事故で投げ出されたとかだったら探してくれただろうし、メディアに載ったりするでしょう?
        でも誰も探してなかったみたいだし・・・・捨てられたのかなって」

         「違うと言ったらお前は信じるか?」

         「アーロンさん?」

         「お前が海に浮かんでいたのは愛されていたからだ」

         「愛されていた? 誰に・・・・」

         「一人はお前の産みの母親だ。そしてお前の大事な者達にだ」

         「私の産みの親・・・・アーロンさん!! 私のお母さんを知っているの? どうして?」

         「・・・・今は全てを話せない。しかしこれだけは知っていて欲しいんだ。このスピラはお前の故郷だ」

         「えっ?」

         「お前は赤ん坊の時に母親と一緒にいてシンに襲われた。お前の母親はお前だけでも助けようとした。そしてその願いは叶えられた」

         はアーロンの言葉に倒れていた時に見た夢を思い出していた。
         愛しそうに赤ん坊を抱いていた金髪の女性、確かに彼女は「」と言っていた。

         「あの人がお母さん?そんな・・・そんな・・・・」

         「・・・・」

         「じゃあお母さんはシンに殺されたのね。ユウナさんが倒そうとしているあの化け物に・・・・」

         「ユウナにあったのか?」

         「うん、お兄ちゃんが助けられたの」

         「・・・・そうか」

         アーロンは何か物言いたげだったが、自分の出生を知り気をを取られていたはその事に気付かなかった。

        

         そんな二人に大きな歓声が聞こえた。

         「ビサイドが勝ったぞ!! すげえな」

         「まぐれだろ? まっ次はルカ・ゴワーズだ、いい夢が見れたってとこだろ」

         そんな観衆の声にはむかついた。

         「アーロンさん、お話はまた後でたくさん聞くよ。だけど今はスタジアムに直行!」

         はそう言うとアーロンを置いて駆け出した。
         そんなの後姿を見ながらアーロンはポツリと呟いた。

         「あの立ち直りの速さと、脳天気な所はどっちの父親に似たのだろうな・・・・」