物語の始まり



        告  知

        

        (誰かが髪を撫でてくれてる? 気持ちがいい)
        目を開けるとユウナがの頭を撫でていてくれた。

        「ユウナさん・・・・私・・・・」

        起きようとするをユウナは止めた。

        「駄目だよちゃんは突然、倒れたんだから。もう少し寝ていて」

        「倒れた、あっ皆は? スタジアムは?」

        「大丈夫よ。シーモア老師の召喚獣のお陰で殆ど被害がなかったの」

        「召喚獣・・・・あのとても悲しい咆哮で鳴いていた・・・・」

        「ちゃん?」

        「ユウナさん、私は大丈夫だからお兄ちゃんにも、皆にもそう伝えてね」

        「本当に大丈夫?じゃあティーダに知らせてくるから」

        ユウナは隣の部屋で心配しているティーダに知らせるため部屋を出て行った。

        ユウナが出て行く後ろ姿を見つめながらは小さなため息をついた。

        (あの男の子にもう一度会いたいな。あの子は誰なの? どうして私だけに話しかけるの?)

        そんな事を考えていたの耳に聞きなれた足音が聞こえて来る。

        (お兄ちゃんったら隣の部屋なのに)

        ドアが勢いよく開いて心配そうな兄の顔が覗く。

        「・・・・大丈夫か?」

        「うん・・・・・あの・・・・私・・・・」

        「いいよ、お前が元気になってくれたら。アーロンも心配してた」

        「うん。ねえ、お兄ちゃん、ユウナさん達とザナルカンドに行くんでしょ」

        「まだ解らない。お前を一緒にっていうのは頼めそうにないし・・・・・。でも! お前を置いて行くなんて絶対にしたくない」

        「お兄ちゃん・・・・有難う」

        はそう言うと勢いよく起き上がった。



        ティーダの止めるのも聞かず、はベットからおりるとドアに向かって歩き出した。
        隣の部屋のドアまで辿り着いたは、大きく深呼吸するとドアをノックしてそっとあけた。

        「皆さん!! ご心配をおかけしました」

        は入るなりペコリと頭を下げた。

        「おーいきなりなんだよ。もう大丈夫なのかちゃん?」

        「はい。色々迷惑かけてごめんなさい。皆の旅は急ぎの旅なのに・・・・」

        の言葉にルールーが少し困った表情で

        「ちゃん、私達も今日は疲れていたから気にしないで」

        「でも・・・・」

        「気にするな

        「キマリ・・・・・」

        そんなにアーロンが近づいてきた。

        「、ティーダ。俺はユウナのガードになった。そして条件としてお前達を連れて行く」 
  
        「えっ!!」

        「ちょっと待てよ! 勝手に決めるなよ。如何するかは俺達が決める事だろ」

        「このスピラの事も解らずに暮らしていけるのか」

        「なっ!なんとかなるさ! 俺はまだ行くとは決めてないからな」

        ティーダはそう言うと部屋を飛び出していった。

        「ティーダ!」

        「ユウナ、ほっておけ。頭が冷えれば戻ってくる」

        アーロンはそう言うと黙ったままのに視線を向けた。


        「は良いな?」

        「アーロンさん・・私はユウナさんの役に立つの? 足手まといになるのが目に見えてるよ。皆もそう思うでしょ」

        「ちゃん・・・」

        ユウナはの言葉になんと言えばいいのか言いあぐねた。

        「、お前は解っている筈だ。選択の時期が来ている事が・・・・」

        「アーロンさん! どうしてそれを?」

        「お前は父から召喚士としての能力をそして母から魔道士としての能力を貰った。
        お前はどちらを選ぶ?逃げるなお前の運命は動きだしているんだ。
        お前の物語はシンに飲み込まれてここに戻って来てから始まっている」

        「私の物語・・・・。少し頭を冷やしてくる。お兄ちゃんも連れ帰ってくるよ」

        はそう言うと部屋を出て行ってしまった。


        「アーロンさん! 今の話はどうゆう事ですか!?ちゃんの父親が召喚士って」

        「の両親はシンの為に亡くなった。はジェクトの娘として育ったが生まれはこのスピラだ」

        「でも見習いもせずにいきなり召喚士になんて」

        「ルールー、お前やユウナには解っている筈だ。の魔力の高さが」

        「でも! ティーダが許す訳がないもの。ちゃんを危険な目にあわすなんて」

        「それはの決める事だ。ユウナ、お前はシンを倒すのだろう? ナギ節をこのスピラにもたらすために」

        「アーロンさん・・・・」

        「二人の事は気にするな。腹がすけば戻ってくる」




        は浜辺に座って海を見ていた。
        アーロンの言った事、あの少年と同じように選べと言った。

        「私が召喚獣を召喚出来るって? どうやってやれっていうのよ!」

        は大きな声で叫んだ。

        「やり方だって解らないのに・・・・・」

        (僕を呼んで・・・・)

        「えっ!? 君は・・・・」

        「僕はバハムートの祈り子。
        君は僕を呼んでくれればいい。心の中で呼んで来れば僕は君を護るよ」

        そういうと少年の姿はバハムートになる。

        「すごいー」

        (僕の手に乗って)

        は臆することなくバハムートの手のひらにのった。
        彼はを肩に乗せると大空に飛び立つ。


        「ねえ、君は誰なの? どうして私には君が見えるの?」

        「僕はずっと君の側に居た。君がジェクトに拾われた時も、アーロンと始めて会った時も」

        「ごめんね、気が付かなくて」

        「いいんだ。僕には実態がないから、幻光虫の集りみたいなものだもの」

        「そうなんだ。私が君を呼んだらユウナさんの助けになるかな?」

        「君は召喚士になりたい?」

        は一瞬、返答に困った。

        「ゴメン・・・・私やっぱり怖い」

        「ううん・・・・いいんだ。でも困ったら僕を呼んでね、必ず君を助けるから」

        祈り子はそう言うと先程飛び立った浜辺へと帰路についた。

        バハムートと別れたはティーダを探すべくブリッツスタジアムへと向かった。
        ティーダはきっとそこにいるは兄の落ち込んだ時の行動は把握済みだった。
        スタジアム前まで行くと入り口近くのベンチに座っていた。

        「お兄ちゃん、何ボーっとしてるの」

        「・・・・お前はすっきりした顔して」

        「うん、私は決めたの。ユウナさんと一緒に行こう?
        ここに来たのも何か意味がある筈だし、お兄ちゃんだってユウナさんの力になりたいでしょ」

        ティーダはすこし顔を赤らめながら

        「そんなの解ってる! ただ俺は勝手に決めるアーロンに頭に来てるだけだ」

        「じゃあアーロンさんにちゃんと聞こうよ。何故こうなったのか、ねっ」

        の意見に渋々頷いたティーダはベンチから立ち上がり

        「戻ろうか。腹減ったし・・・・・」

        「うん」

        はティーダの腕に自分の腕を絡めて彼に言った。

        「頼りにしてるからね、お兄ちゃん」

        


        次の日、アーロンは出発前にとティーダを連れ出した。

        「何だよ話って。納得はしてないんだからな俺は」

        「ティーダ、お前がいくら喚いてもお前の運命は動き出した」

        「それって昨日、アーロンさんが言ってた物語は始まってる事でしょ」

        「物語?」

        「そうだ。ティーダ、・・・・俺は10年前にお前達をジェクトから託された。
        そっと見守るつもりだった。ジェクトの行方を聞かれても俺には答えられなかったからな」

        「親父は死んだのか?」

        「生きているとは言い切れないな。アイツの肉体はこの世にはないから」

        「アーロンさんそれってどうゆう意味」

        「シンはジェクトだ」

        「「っ!!」」

        「お前達も感じた筈だシンに飲み込まれた時に」

        「何言ってんだよ!! 親父がシンだって?このスピラを苦しめていて、ユウナが倒そうとしているシン?」

        ティーダの体は怒りと不安でプルプルと震えていた。

        「アーロンさん? どうしてシンがお父さんだと解るの?」

        はティーダを支えながら泣きそうになっていた。


        「シンの中にはまだジェクトの意識が残っている。
        アイツはこの10年、シンに意識を侵食されながら俺に言っていた。
        いつかティーダをつれて来いとそして自分を倒させろと」

        「なっ!!」

        「そんな! 酷いよ、どうしてよ。お父さんだって分かってるのに倒せるはずない」

        「もう時間がないんだ。
        今はまだアイツの精神があるからスピラは少しの被害ですんでいる」

        (それがなかったら・・・・)

        2人にはその問をアーロンに聞く事が出来ずに立ち尽くした。