笑顔の裏で
ムスッと後ろを歩いているティーダをユウナがチラチラと心配そうに振り返る。
それを見ていたはティーダの許に駆け寄ると
「お兄ちゃん!! いい加減にしなさいよ。
気持ちが解らないでもないけどユウナさん心配してるよ」
「判ってるよ・・・・でも」
「判っているなら笑顔だよ。お兄ちゃんはユウナさんのガードでしょ」
そう言うとはティーダの頬をつまんだ。
「痛いぞ」
「笑う練習だよお兄ちゃん」
がそう言うと後ろで2人の話を聞いていたキマリが近寄って来た。
そして旅の10大事件その1である事柄をしたのだ。
そうユウナの為にしているというキマリの笑顔の練習である。
キマリの笑顔にコメント出来ずにティーダはユウナの許に逃げて行き、だけが彼の許に残った。
「キマリって凄いね」
「そうか?」
「うん、やっぱり落ち込んだ時には大好きな人の笑顔が一番に心が休まるものね」
の言葉に満足そうに頷くキマリ。
そんな2人にあいつらは天然だとユウナを除くメンバーは思うのだった。
キマリとのほほんとした会話を楽しんだは、少し元気になったようなティーダを見て少し安心する。
そして1人でいるアーロンに近づいていった。
「アーロンさん、アーロンさんはどうしてガードになったの?」
「なんだ突然?」
「アーロンさんって、家族の話って全然しないし、もしかしてシンに?」
「ああ、ずっと1人だった。そんな俺にまた守りたいものをくれたのがブラスカだった」
「ユウナさんのお父さんだね」
「じゃあ、どうして私達の所に来たの?」
「・・・・・」
はため息をつくと
「いいよ、旅の中で私が知るべき事の一つなんだね」
アーロンはフッと笑うとの頭をポンポンと叩いた。
そんな2人の耳にティーダの声が聞こえて来る。
「まったく煩い奴だ」
「良いんじゃない? 落ち込んでるお兄ちゃんなんてとっても邪魔だしユウナさんも嬉しそうだし」
はそう言って騒いでいるティーダの許へと駆けて行った。
「お兄ちゃん如何したの? また何か大発見?」
「いや、どれくらいでザナルカンドに着くのか聞いてみたんだけど」
「まだまだ遙かな道のりって感じかな」
「おっす・・・・」
また落ち込みかけたティーダをは無視してユウナに言う。
「ユウナさん、迷惑かけちゃうけどヨロシクお願いします」
「ちゃん、私の方こそ」
「私ね、ユウナさんにきちんと挨拶してないなって思って」
「ちゃん・・・・・」
「暇な時にスピラの話を聞かせてね。私の故郷の事、知りたいんだ」
「もちろん」
「じゃあ、これ友情の証だよ」
はそう言うとザナルカンド・エイブスのマークを象ったペンダントをユウナに差し出した。
「これは・・・・」
「これを持ってると絶対に勝てるんだよ。あとね護符みたいなもの」
「そんな!大事な物もらえないよ」
「ユウナさんは絶対に負けられないんでしょ」
「ちゃん・・・・」
「旅が終わったら返して貰うから、それ私のお気に入りだから」
そういってはユウナの首にそのペンダントを掛けるのだった。
「ありがとう」
「いえいえ、如何いたしまして」
そんな2人をアーロンは哀しそうに見つめていた。
******
ジョセ寺院への道のりはユウナ達一行にとって辛いものだった。
街道の端でうずくまっているミヘン・セッションに生き残った兵士達。
彼らはユウナの姿を見ると、傷付いた体を起こしてユウナに敬礼した。
そんな兵士達を満足に治療も出来ずに少しの言葉だけを残し去らなければならないからだ。
辛そうに歩いているユウナを見ていたたまれなくなったとティーダ次第に歩く速度も遅くなる。
そんな2人にアーロンは言う。
「ユウナにはシンがジェクトだと言う事は伏せておけ」
アーロンの言葉は2人には十分過ぎるほど解っていた。
それに言いたくもなかった。自分の父親がスピラの人々を苦しめているのだから。
寺院に着くとそこにはさらに多くの負傷兵がいた。
気に病むユウナをルールが諭していると突然地響きが起こった。
「なに!?」
「ちゃん心配しないで。きっと祈り子様との交信が成功した召喚士がいるのよ」
「そうなんだ。えっとここにいる祈り子様って?」
「イクシオンって言うの。雷を操るんだ」
「ほんと! ラッキー私って雷好きなの」
「ちゃん?」
はユウナとキマリに雷の壮大さ、そして稲光の素晴らしさをうんちくし始めた。
「あの子変わってるわね」
少し呆れ気味にいうルールーに
「俺もそうおもうっす」
とティーダはうな垂れた。
なかなか話の終わらないを黙らせて一行が試練の間のある建物に入ると
先程、試練の間に入って交信を成功させた召喚士一行がちょうど出て来た所だった。
一礼して中に入ろうとしたユウナにその召喚士が声を掛けてきた。
「召喚士が行方不明?」
「ええ忽然とガードの前から消えたそうです」
「そんな・・・」
心を痛めるユウナにティーダが元気付けるように声をかける。
「ユウナは大丈夫。俺達がいるんだから」
「ティーダ・・・・」
ティーダの言葉にその召喚士はフッと微笑み、そして一礼すると去っていった。
とティーダにはユウナのガードになって初めての試練は案外すんなりといった。
部屋に掛かっているトラップはが殆ど解いてしまいアーロンとティーダを抜くメンバーはの以外な才能に驚くのだった。
ユウナが祈り子と交信している間、控えの間で待っていると扉が開きドナとパルテロが入って来た。
「ドナさん、パルテロさん!!」
「!? 貴方どうしてここに?」
「えっとお兄ちゃんがユウナさんのガードになったのそれで一緒に」
ドナはの言葉に近くにいたルール達に冷たい視線を向けた。
部屋の雰囲気に気まずくなったはティーダの側に戻ると
「あいつらお前の知り合いなのか?」
「うん、キーリカで倒れてた私を助けてくれたの」
「そうか」
「あっもしかしてキーリカでの事を怒ってる?」
「当たり前だろ! 俺はルールーに冷たい視線を向けられるし、お前だって危ない目にあっただろうが!」
「でもあの時はドナさん達はお兄ちゃんが私のお兄ちゃんって知らなかった訳だし・・・・」
「そうだとしてもあの態度は気に入らないぞ」
そんな事を話している時だった、アーロンを見たパルテロの体がプルプルと
震えているそしていきなり彼はアーロンに近づいて行った。
「えっあのパルテロさん?」
焦るの横を通り過ぎるとアーロンの前で止まった。
「・・・・」
「・・・・」
2人とも無言で相手の出方を探っているのかと周りの者達は固唾を呑んだ。
その沈黙を破ったのはパルテロだった。
「あのアーロンさんですよね。ブラスカ様のガードの・・・」
「ああ・・・・」
「あの・・・俺・・・アーロンさんを尊敬しています。握手してください」
パルテロはそう言って顔を高揚させながら右手をだした。
アーロンはフッと笑うと手を差し出した。
「プクク・・・」
皆があっけにとられている中でが笑いを堪えていた。
ドナは一瞬不機嫌な顔をしたが有名なアーロンに文句を言える訳もなく
嬉しそうに戻って来たパルテロに文句を言った。
パルテロのお陰で一触即発の雰囲気がなくなりホッとした頃、ユウナが祈り子との交信を終えて部屋から出て来た。
「ユウナ! 大丈夫っすか」
ティーダは心配そうに駆け寄った。
「うん大丈夫だよ。皆、待たせてごめんない」
他の仲間達もホッとした表情で近づいてきた。
ユウナは仲間達に安心させるように微笑む。
「退いてくれない?」
「あっ・・・・」
すれ違い様にドナはユウナに何か言ったみたいだったがが後で聞いてみたが教えてもらえなかった。
「行こうか?」
ドナが入って行った部屋を振り返って見ていたをティーダが呼ぶ。
頷いて歩き出したの耳に祈り子の歌う祈りの歌が微かに聞こえた
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