アルベド族の少女
ジョゼ寺院を出た一行は次の目的地に向かう為に幻光河に向かった。
そこはティーダとには感嘆の声を出さずには要られない場所だった。
「すごいっス!!」
「綺麗〜こんな場所があるなんて」
「ジェクトも同じ反応をしていた。
お前達に見せてやりたいとしきりに言っていた。
ジェクトがスピラで唯一気に入っていた場所だ」
「親父が・・・・」
「お父さんはアーロンさんに私やお兄ちゃんの事、色々と話してたんだ」
「最初だけだ・・・・」
「えっ?それって・・・・・」
アーロンはのその問には答えてくれなかった。
暫く岸辺に浮かぶ幻光花の放つ光を見ていた一行だっだがのんびり出来る旅ではなかったので出発の声がかかる。
「もう出発か、もう少し見てたら駄目っスか?」
しかしティーダの提案に賛成する者は以外いなかった。
「無理みたいだよお兄ちゃん」
「そうだよな。遊びに来てるわけじゃないし。
よし、じゃ『シン』を倒したらまたここに来て皆でじっくり見るっス。
なっユウナ、」
しかしユウナは少し寂しそうに微笑むだけで何も言わず、他の者も何も言わなかった。
そんな仲間達には何か自分と兄だけに教えない何かがあるとそう思うのだった。
だいぶ後になってその理由を知った時、は自分の無知を呪った。
少しの気まずさの中、出発した一行の前にルカの街で会ったロンゾ族の2人が話かけてきた。
2人はジョセ寺院で聞いた召喚士が消える話を持ち出しキマリに次はユウナ番だと言い嘲笑した。
去って行く2人を見送りながらアーロンが言う。
「どうやら気を更に気を引き締めた方が良い様だ。ユウナ・・・絶対に俺達から離れるな」
「はい・・・・」
ユウナは素直に頷いた。
対岸に渡るためにシパーフ乗り場に辿り着くとティーダとは見た事もないその生き物に声を失う。
「こ・これに乗るの?」
「でかい・・・・・」
「これしか対岸に渡る方法がないのよ。少し出発まで時間があるから少し辺りを見てきたらいいわ」
ルールはそう言うとユウナとワッカと一緒にその場を離れキマリも何処かへ行ってしまい
アーロンとそしてティーダだけが残った。
「お前達は行かないのか?」
「俺はいいっス。迷子になりそうだし・・・・」
「そうか、ではジェクトの失敗談を話してやろう」
「親父、何かやったのか?」
「ああ、泥酔してあのシパーフに切りつけた」
「げっ!」
「嘘・・・・」
「本当だ。お陰でブラスカは持っているお金を全額支払った。
俺はあの時、ジェクトをここに置いて行こうと思ったぞ」
「あちゃーお父さんやば過ぎ・・・」
「その後、ジェクトもだいぶ反省してその後は酒を全く飲まなかったがな」
「親父、禁酒できたのか・・・・」
「ふーん、よっぽどブラスカさんに悪いと思ったんだね。お兄ちゃんが言っても全然聞く耳持たなかったのに」
「ふん、親父は痛い目に遭わないと解らないんだ!!」
「お前に似てるな」
「なっ!?」
アーロンの言葉に言い返そうとしたティーダだったが、ユウナ達が戻って来たので口をつぐんだ。
シパーフの用意も整い次々と乗客が乗り込むのを見ていたティーダ達のもとへ戻って来た
キマリが警戒したほうが言いと忠告した。
「何故か油の匂いがする。気をつけたほうが言い」
アーロンはキマリの報告に何か思い当たる事があったようだが、ティーダ達には何も言わなかった。
神経を研ぎ澄ましながらシパーフの背に乗ったとティーダだったが
初めての体験にやはり期待を膨らませた。
シパーフが幻光河を渡り初めて少したった頃、ふと河の底を覗いたティーダが声をあげた。
「街、街が沈んでる?」
「ああ、それは1000年前に沈んだ街だ。機械に頼りきった人々に罰が下ったのさ」
ワッカのその言葉にティーダは反発しそうになるがルールはそんなティーダに
1000年前の機械戦争の話をする。
黙って聞いていたティーダだったがその戦争を終結させた原因が『シン』であった事に驚き
そしてだからこそ機械を使ってはいない今、『シン』が現れる矛盾を問うた。
そんなティーダの声を聞きながらはちらっとアーロンを盗み見る。
しかしアーロンはまるで関心がないかのように無表情を決め込んでいた。
は小さく息を吐くと激論を闘わすワッカとティーダにポツリと言った。
「結局、どんなものでも使う人間しだいなんだと思うな」
「・・・」
「ちゃん・・・・」
しかしその後の会話は悲鳴によって中断された。
ユウナが突然、河の中へと引きずりこまれたのだ。
「ユウナ!!」
「アルベド族だ!!誘拐は奴らの仕業だったのか・・・・」
「ワッカ!!早くユウナを助けないと」
ティーダはそう言うと躊躇することなく水中に飛び込みワッカもそれに続いた。
「お兄ちゃん・・・・ワッカさん・・・・頑張って」
は必死の思いで成り行きを見守った。
懸命に水底を見守るの瞳に1000年前の街の廃墟が映る。
(不思議だ、私の知ってるザナルカンドと違うでも懐かしい)
意識が少し飛んでしまったをそっと呼ぶ声がする。
「・・・大丈夫か?」
「アーロンさん?わたし・・・・」
「、今は街の事は考えるな、解ったな」
「うん」
頷くをアーロンはサングラスの奥で哀しそうに見つめた。
一瞬の身体が幻光虫につつまれたのだ。そのまま天にまで昇ってしまうように。
後どれぐらい隠し通せるのかアーロンはいつか来るその時の事を思うと世界を罵倒したくなるのだった。
数分後ユウナを何とか助け出したティーダとワッカがユウナを連れて戻ってくる。
「ユウナ!!」
「ユウナさん大丈夫?」
「ルール、ちゃん、私は大丈夫」
2人に心配掛けないように元気に振舞うユウナをルールは痛ましげに見つめた。
一度ならずも二度までもユウナを攫ったアルベド族にワッカは怒りを隠せずにアルベド族を罵倒した。
そんなワッカをユウナは哀しそうに見つめていた。
それを知ってるのかティーダはワッカを何とか宥めようとするのだった。
******
その後は何事もなくシパーフは対岸へと進んだ。
何とか場を盛り上げようとするティーダだったが、いつもならフォーローしてくれるが
黙りこんでいてさらに一行の気持ちは沈んでいった。
「あっ、もうすぐ到着するっス」
ティーダが元気付けるように対岸を指差した。
シパーフが対岸に着き一行が降りるとユウナは大勢のスピラの人々に囲まれた。
「すぐには出発・・・出来そうにないっスね。俺、ちょっと辺りをみてくる」
ティーダはそう言うとユウナに群がる人々を掻き分けかけて行った。
その後ろ姿をユウナが切なそうに見つめていたのをは見逃さなかった。
暫くしてルールーの機転で人々の群れから解放された一行は、ティーダを捜した。
「お兄ちゃん何処にいったのかな、まったく」
「何かあったのかな・・・・」
ティーダを心配するユウナに
「お兄ちゃんのうるさい声が聞こえてこないから大丈夫だってユウナさん」
はユウナ心をほぐそうとおどけたように言ってみた。
そんなの気持ちをユウナも敏感に感じ取り小さく頷くのだった。
「ん?あそこに立っているのティーダじゃねえのか?誰かと話してるみたいだけどまたトラブルか」
ワッカはそう言うとティーダの許へと走り出した。
「あっ、まってよワッカさん!私も行く」
も慌ててワッカの後を追いかけた。
2人がティーダの許に近づくと、先にティーダと話していた人物が2人に気付き少し身構えた。
「お兄ちゃん!勝手にいなくならないでよ。皆に迷惑がかかるでしょ。
それにその娘・・・・だあれ」
金髪に緑色の瞳、歳もと同じ位の人物はじっとを見つめた。
「あっ、ワッカ・・・いや、この娘はちょっとした知り合いで・・・・」
「「知り合い?」」
「そっ知り合いあたしの名前はリュック。よろしく」
「よろしく・・・私はです」
挨拶したとは対照的にワッカはリュックを探るように見つめた。
「おいティーダ、お前この娘と何処で知り合ったんだ?
ちゃんが知らないって事は最近知り合いになったんだろう」
「そっそれは・・・」
しどろもどろになるティーダにさらにワッカが問い詰めようとした時だった、
やっと追いついたユウナが声をかけたのだ。
「どうかしたの?皆・・・」
「あっユウナ!いやその・・・・・」
仲間達になんと説明していいか混乱するティーダを押しのけるようにリュックが突然前に出る。
「あたしはリュックって言うの、ユウナさんよろしくね」
人懐こくユウナに挨拶するリュックだったが、にはリュックが緊張しているが解った。
そしてリュックの名前を聞いて僅かだが目を見開いたユウナの事も。
突然のリュックの出現に戸惑いを隠せない一行に、突然ルールが女性陣だけで
話をさせてくれと言いユウナとリュックとを連れてワッカの止めるのも聞かずその場を離れた。
ワッカ達から離れるとルールは少し咎めるようにリュックに話しかけた。
「さあ、どうしてユウナを攫おうとしたの?何が目的なの?」
「ルールーさん、この娘がユウナさんを攫ったって何で解るの!?」
「ちゃん、貴方だって薄々は感じていたはずよ。
ティーダの挙動不審な態度で、貴方アルベド族ね。何故二度もユウナを攫ったの?」
「そっそれは・・・・・」
リュックは俯き中々答えようとしない。ルールが更に問い詰めようとした時だった。
「ルールー待って。
あの・・・・リュック・・・・シドさんは元気なの?」
「あっうん!もう煩いくらいだよ。ユウナにとっても会いたがってたよ」
「ユウナ!?まさかこの娘・・・」
ルールーはユウナとリュックの会話に驚きの声をあげた。
「えっなになに?何の事」
「ちゃん、リュックは私の母方の従姉妹なの」
「えっ!だってリュックはアルベド族でそれで・・・・えー!!」
「ワッカには内緒にしていてね。あの人アルベド族嫌いだから」
「うん、ユウナさんとワッカさんが気まずくなるの嫌だもの。絶対に言わないよ」
「ありがとうちゃん」
「うーん、話に聞いてただけあって、物分かりいいね〜。ティーダの自慢の妹だ」
「あのリュック・・・さ・・ん?」
「リュックで良いよ。ティーダとは海の古い遺跡で会ったんだ。
お腹を減らして倒れそうになっている所を助けてあげたの」
「そうだったんだ。ありがとう兄を助けてくれて」
「良いって、それより!!皆にお願いがあるんだ。あたしを仲間に入れて!」
「リュック!!何を言うの?」
「ユウナ、あたしはたった一人の従姉をユウナを助けたいの。ルールー、お願い!」
「駄目だと言っても貴方は付いて来るでしょうね。 仕方ないわね、ただし条件があるわ。
アーロンさんの許しが貰えたらね」
「任しといて!!そうと決まったら戻ろう」
リュックはそういうとティーダ達の許へと駆け出した。
「まってよリュック」
その後をが追いかけ、そんな2人をユウナが羨ましそうに見ていた。
「ユウナ・・・・」
「ルールーありがとう。私・・・・頑張るから」
健気にそう言って2人を追いかけるため走り出したユウナの後ろ姿を見つめながら
ルールーは”頑張らなくていい”言えない自分がとても嫌になるのだった。
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