幻の都


            
            ワッカ達の所に戻ったユウナ達はリュックが仲間になりこまま同行する事を皆に伝えた。
            ティーダは命の恩人であるリュックが仲間になる事を反対する筈もなくとても喜んだ。

            「リュックこれからよろしくな」

            「うん、また一緒に行動できて嬉しいよ」

            喜ぶ二人にホッとしながらルールーとユウナはチラッとワッカを盗み見た。
            しかしワッカはリュックをアルベド族とは思わなかったようで
            すんなりリュックを受け入れた。
            ホッと胸を撫で下ろしたのも束の間、アーロンがリュックに話しかける。
            そして2人は仲間から少し離れた所で、お互いの様子を窺った。
            アーロンはジッとリュックの顔を見つめていたが突然フッと笑った。
 
            「あっあの・・・・・」

            「好きにしろだが戦えない者は置いていくからな」

            アーロンはそう言うと歩き出す。
            仲間達もその後を追うように歩き出した。
            そしても気が抜けたリュックに声をかける。

            「よかったねリュック。一緒に頑張ろうね」
 
            「そうだね。あたし皆の役に立つように頑張る」

            そんな2人にティーダから声がかかる。

            「2人とも早く来いよ!置いてくぞ」

            「「は〜い」」

            2人は微笑み会うとティーダに向かって走り出した。



            *****
   


            一行が次に向かったのはシーモア老師の故郷であるグアドサラムだった。
            そこは召喚士の旅にとっては通過点に過ぎなかったが、他の場所にはない物があった。
            それは死者が向かう場所とされる異界と繋がる場所があったのだ。
            スピラの人々は亡くなった自分の親しい人と会うために
            時々グアドサラムを訪れるのである。

            一行がグアドサラムに着くと入り口にはシーモア老師の執事であるトワメル=グアドが
            一行を出迎え、ユウナにシーモアが話しがあるからと強引に館へと案内した。
            
            「何か嫌な感じ・・・・」

            「あっもそう思う?あたしもだよ。
            だけどワッカ達には言えないね。メンバーから追い出されちゃう」

            「リュックったら・・・・」

            2人でコソコソと話していると豪華な扉が開きシーモア老師が現れて
            一行をある部屋に案内した。
            そしてシーモア老師が手を翳すと部屋全体にスフィアの映像が映しだされた。

            「えっ!?」
 
            「ザナルカンド!!」
    
            ティーダの叫びに一同は驚きの声をあげる。
            部屋に映された街並みはとティーダがほんの少し前まで暮らしていたザナルカンドと寸分違わぬものだ。
            
            「この映像は1000年前のザナルカンドです」

            「そんな、これは俺達の住んでいたザナルカンドじゃないっていうのか」

            ティーダはそう言うとさっきから何も言わないを見る。
            はそんな兄の視線にも気付かずにじっと部屋に映し出される街を見ていた。

            「?どうしたんだ?」

            「・・・なんでもない・・よ」

            「そうか・・・・」

            「うん。大丈夫だからだよ、突然こんなの見せられて驚いただけ」

            は自分を心配するティーダを安心させるように微笑んだ。
            シーモア老師はそんな2人を横目に見ながら、ある女性の話を始めた。

            「ユウナレスカ・・・・『シン』を最初に倒した召喚士。彼女はこの街に住んでいました」

            そう言って手を翳すと部屋の映像が変わった。
            そして1人の美しい女性が映し出される。

            「あれがユウナレスカさま・・・・」
    
            驚き固まる一同の中でとアーロンはそれぞれ違う反応を見せる。
            それは勘のするどいルールーとリュックだけが気付いた事であり
            2人はだいぶ後までその事を話す事はなかった。

            シーモア老師の説明でその場所は彼女の部屋だとわかる。
            そして次に現れた人物が彼女の夫ゼイオンだと説明される。

            「・・・・・あの人・・・・あの人は・・・・」

            「?どうしたの・・・・」

            の異変を感じてリュックが声を掛けるが、は一心不乱に映されている二人を見つめていた。
            リュックが仲間達にの事を話そうとした時だった。
            リュックの視界にユウナに何か耳打ちするシーモア老師の姿がはいった。
            そして次にユウナの顔が見る見るうちに真っ赤になり
            何事が有ったのかと驚く仲間達から離れテーブルに向かうと
            そこにあったコップの水を飲みほした。

            「ユウナどうかしたの?」
  
            「そうだぞいきなり如何した?」

            心配そうに訊ねるルールーとワッカにユウナは俯きながらシーモア老師から
            結婚を申し込まれた事を告げる。
            その言葉に一同は驚きのユウナに掛ける言葉を失う。
            しかしアーロンだけは違った。

            「老師はユウナに旅の理由をご存知ないようだな。ユウナは結婚などしない」

            「知っていますよ。しかしこの結婚もスピラの人々の為ですよ」

            シーモア老師の言葉に俯いていた筈のユウナが顔をあげた。
            スピラの為・・・・その為に旅をしてきたユウナにとって
            その言葉はとてつもなく重いものだった。

            「あっあの・・・・」

            ユウナがシーモア老師に話かけようとした時だった。

            「!!」

            突然ガタンと音がしたかと思うとキマリがを呼んでいた。
            その声にアーロンが最初に駆け寄るとじぶんの上着を脱ぎにかけた。
            そして物言いたげにキマリを見つめていた。
            するとキマリはを抱き上げて部屋を出ようとした。

            「キマリ!!を何処に連れて行くんだ?」

            ティーダが慌てて駆け寄るとキマリは何気ない素振りでアーロンの上着で
            を顔まで隠し

            「先に宿屋にいっている」

            「じゃあ俺も一緒に!」

            「ティーダはキマリの代わりにユウナの許にいてユウナを守れ」

            「そんな!」

            異議を唱えるティーダにユウナが気遣うように声を掛ける。

            「ティーダ、ちゃんについて行ってあげて。私は大丈夫だから」

            「ユウナ・・・・」

            ティーダはその言葉に少し俯くと

            「キマリ、の事頼むな」

            キマリは頷くとを連れて部屋を退出した。

            「ユウナ殿・・・・」

            「あっシーモア老師・・・・」

            「今すぐ返事をと言いたいところですが、返事は後ほどという事で」
  
            シーモア老師はそう言って執事のトワメルを伴なって部屋を後にした。


            *****


            シーモアの館から出た一行は、思い悩むユウナを気遣っていた。

            最初に口を開いたのはティーダだった。

            「まったく驚いたよな。でもユウナが結婚するわけないのにな」

            しかしティーダの言葉に誰も答えようとする者はいなかった。

            「なんだよ皆。押し黙ってさ。まさかユウナの結婚に賛成なのか!?」

            「シーモア老師の申し出はスピラの人達にとっては喜ばしいことなのよ」

            「どうしてだよルールー」

            「大召喚士ブラスカ様の娘であるユウナとエボンの老師でグアド族の長であるシーモア老師の結婚は
            スピラにとって明るい話題だもの」

            「だからって!!ユウナは『シン』を倒す為に頑張って来たんだろう?
            明るい話題だからって・・・・おいアーロン黙ってないで何とか言えよ!」

            「俺はユウナが旅を続けるなら、結婚していても構わん」

            「なっおい皆も同意見なのかよ?」

            ティーダの問にルールーもワッカも小さく頷いた。
 
            「でもさ・・・・」

            「ティーダ、私の事心配してくれてありがとう。
            私、異界に行って来る。そして自分がどうすれば良いのか決める」

            「そうね・・・・それが良いかも知れない」

            何か納得できないティーダを残しユウナ達は歩き始めた。
  
            「ティーダ!!行くぞ」

            ワッカの呼ぶ声にティーダも渋々と従った。
            グアドサラムの奥まった場所にその場所はあった。
            
            「なあ、異界って死んだ人間が行くとこなんだろ?そんな所に行ってどうするっスか」
     
            「会いたいと思う心だけでその人物に合えるのよ、異界は。
            ユウナはきっとブラスカ様に会うつもりなのよ」

            ルールーはティーダにそう言うと先に入って行ったユウナとワッカに続いた。
            続いて入ろうとしたティーダの目に入る気のなさそうなリュックとアーロンが映る。

             「2人とも入らないっスか?」

            「ああ、俺はあそこが気にくわない」

            「リュックは?」

            「あたしもパス。いいからティーダは行っておいでよ。何事も経験だからさ」

            ティーダはリュックに背中を押され恐々と異界の入り口へと足を踏み入れた。
            そこでティーダは懐かしい人と再会する。