過去と未来と
雷平原の出口に近づいたあたりで、ユウナは仲間達を呼び止めた。
「あのね・・・・私・・・・シーモア老師と結婚する」
「ユウナ!」
ティーダは驚きの声をあげたが、他の者達は予想していたのでユウナの次の言葉を待った。
しかしユウナは俯くばかりで、何も言おうとはしなかった。
「本当に結婚するのか?ユウナ」
「ティーダ・・・・・」
ユウナはティーダの問に小さく頷いた。
居たたまれなくなったはチラッとアーロンを見る。
アーロンはそんなの肩をポンと叩くとユウナに近づいた。
「旅はどうする?」
「続けます!結婚しても続けるとシーモア老師には伝えます」
「そうか。では此処にいても始まらないな。行くぞ・・・・」
アーロンはそう言うと歩き出し、一行もそれに続いた。
は納得できない兄がアーロンに文句を言っているのを横目で見ながらルールーに近寄っていった。
「ルールーさんは何でユウナさんに何もいわないの?」
「ちゃん・・・・」
「ユウナさんは絶対にシーモア老師の事を好きじゃないよ!尊敬はしてるかもしれないけど」
「ちゃん・・・・召喚士の役目は『シン』を倒す事、其れだけの為に生きてるのよ。
だからユウナが旅を続けるという限りは、私達に何も言う権利はないわ」
「でも!!」
「ちゃんにも判るときが来るわ」
「待ってられないよ・・・・」
「えっ?」
「真実が判るまでジッとしてるなんて、私の性にあわない。
絶対に聞き出してみせるから。『シン』を倒すという事はどうゆう事なのか」
はそう言うとふてくされてるティーダの許へ走っていった。
****
雷平原を出てマカラーニャの森の入り口でティーダはアーロンに呼び止められた。
は気になりながらもアーロンは自分がいたら言わないだろうと思いさきに進んだ。
少したってアーロンとティーダが追いついた頃、森の奥から見覚えのある人物が駆けて来た。
「バルテロさん?どうしたんですか慌てて」
「ちゃん・・・・ドナを見かけなかったか?」
「ドナさん?いいえ、ドナさんには会ってません。はぐれちゃったんですか?」
「突然見えなくなったんだ。もしドナに何か遭ったら・・・・」
動揺するバルテロにアーロンが声を掛ける。
「ガードのお前が動揺してどうする。ガードのお前の役目はなんだ?」
「俺の役目・・・・」
バルテロはアーロンの言葉にハッとした顔をしたかと思うと
ペコリと一行に頭を下げると走り出した。
「ドナさん・・・・・大丈夫かな。やっぱり召喚士行方不明事件と関係があるのかな?
リュックはどう思う?」
「そうだね・・・・」
の問い掛けにリュックの返事の歯切れは悪かった。
森の中ほどまで行くと急にアーロンが道をそれた。
「アーロンさん!道が違うよ」
「いや・・・・いいんだ。お前達に見せたいものがある」
アーロンはそう言うと前に立ち塞がっている木を切り倒した。
アーロンが導いたのは幻光虫で出来た泉だった。
「ここに何があるんだ?アーロン」
「見れば判る。だがその前にこいつを倒すぞ」
アーロンの言葉と同時に泉に巣くう巨大モンスターが現れた。
苦戦しながらもモンスターを倒し、静寂が戻った泉を見ると水底にキラッと光るものが映った。
「何かな?あれ・・・・・」
は泉に近づき、その物体をすくいあげた。
「これってスフィア?」
「それはジェクトのものだ・・・・」
「えっ!?」
アーロンの言葉にのスフィアを持つ手が震えた。
アーロンはにジェクトがここに置いていった物と説明した。
「2人で見るといい。ジェクトがここに来て何を思ったか解る」
とティーダは頷くとスフイァのスイッチを入れた。
****
最初に現れたのは達が見た事ない人物だった。
「誰かなこの人?」
の疑問はスフイァから聞こえたジェクトの声ですぐに解決した。
「これがユウナさんのお父さん・・・・」
の心の中に何かチリチリとしたものが疼いた。
映像はジェクト、ブラスカ、アーロンの旅の様子がジェクト視点で映っていた。
ジェクトがアーロンに自分達の事を愛しそうに話すたびに
とティーダは父ジェクトがザナルカンドに帰ろうとしているのを感じた。
映像を見終わったはアーロンに疑問をぶつけてみた。
「どうしてここに、お父さんはスフィアを置いていったの?」
「覚悟を決めたんだ」
「覚悟?」
「ブラスカのガードとしての覚悟、そして故郷には帰れないかもしれないと」
「お父さんは帰れないと思い始めたんだね」
「ああ・・・」
「!!そんな事、考えるな。きっと帰れるから」
ティーダはにそう言うとからスフィアを取り上げ走って言ってしまった。
「お兄ちゃん・・・・混乱してる・・・・」
「あいつはジェクトに似て単純だからな」
「でもお父さん、どうして私にもメッセージ残してくれなかったのかな」
「泣きそうになるそうだ」
「えっ?」
「お前が可愛くて仕方がなかったと・・・・だから会えないと余計考えるのが辛くなっていったらしい」
「ふーん、今度会ったら文句言わなきゃ」
アーロンはの言葉にフッと笑った。
****
マカラーニャの森を出るとそこは一面の氷の世界だった。
マカラーニャ寺院がある間カラーニャ湖は氷に閉ざされた場所だったのだ。
寺院に向かって歩き始めた一行の前に突然、シーモア老師の執事トワメルが現れた。
「ユウナ様」
トワメルは一礼すると不躾にユウナに、シーモアとの結婚の返事を聞いてきた。
「私は、シーモア老師の申し込みを受けます」
「やはり!さあシーモア様もユウナ様をお待ちになっております。
私達と一緒に寺院に参りましょう」
「えっ!?でも皆は? 私は結婚しても旅は続けるつもりなんです。
ですからガードの皆と一緒に」
「その事はシーモア様とお話ください。
それとガードの方達はゆっくりとおいで下さって結構でございますから」
トワメルはユウナを仲間達から離すと、強引に歩き始めた。
ユウナは仲間達を振り返りながら不安そうな顔をしていた。
「ユウナさん!!」
「ちゃん・・・・」
「すぐ行くから安心して」
の言葉にユウナは仲間達を一人一人みつめた。
ワッカもルールーも安心させるように頷いた。
そしていつもは何も言わないアーロンも
「ガードはいつでも召喚士の味方だ。ユウナお前の思うとおりにやってみろ」
とユウナを励まし、そしてティーダの背中を押すのだった。
「ユウナ・・・・指笛・・・・」
「えっ!?」
「指笛が聞こえたら俺飛んでいくから」
「ティーダ・・・ありがとう」
ユウナは小さく微笑むとトワメルの後に続いた。
****
ユウナ達が達の目から消えかけた時だった。
突然スノーバイクに乗ったアルベド族達がユウナに迫ってきた。
「ユウナ!!」
「ユウナさん!」
達は慌ててユウナとアルベド族達の間に割ってはいる。
トワメルはこの時とばかり、ユウナを連れてこの場を去ろうとしたが
ユウナはそれを振り切り仲間達に合流した。
「皆!!私も戦う」
ユウナの意思が仲間達に勇気を与えてアルベド族の機械兵器を激戦の上倒した。
「リュック・・・・大丈夫」
リュックの素性をしているは辛そうにしているリュックに声を掛けた。
リュックは戦闘が終わった後、トワメルと寺院に向かったユウナを見つめながら首を振った。
そして
機械兵器から出てきたアルベド族の青年に大声で話しかけ始めた。
達には理解出来ないアルベド語で。
青年が立ち去った後、ワッカが突然、大声をあげた。
「俺は認めないぞ。こいつと一緒に旅は出来ない!!」
「ワッカ!」
「ワッカさん」
とティーダはリュックを擁護するためにワッカとリュックの間にはいる。
「ワッカはアルベド族が嫌いなのは判ってる。
でもね『シン』は機械を使っていないエボンの教えを守っているスピラの人々を襲ってる」
「なっそれはまだ罪が消えてないから。エボンの教えを守っていたらいつかは・・・」
「それはいつ?あと何回『シン』に襲われれば罪は消えるの?そんなのまってたらユウナが・・・・」
「リュック!!」
リュックの言葉は何故かルールーに遮られた。
「ユウナが?なんなのいったい?」
しかしの問にはルールーもリュックも答えてはくれなかった。
そしてアーロンの一言で、ワッカを抜かした仲間達はアルベド族の置いていったスノーバイクに乗り
ユウナが向かっているマカラーニャ寺院に向かった。