戦 い
翌朝
ユウナ達は寺院に向ってキーリカの森を歩いていた。
「へえーちゃんは、ブリッツが出来るのか」
「へへワッカさんが感心するほどは上手くないよ。
お兄ちゃんの練習にちょこっと付き合うくらいだもん」
「いやティーダの練習に混ざれるならこいつ等とも戦えるよ」
ワッカはビサイド・オオラカのメンバーを見て笑った。
「へへじゃあ今度練習混ぜて貰おうかな。体鈍っちゃって」
そんな二人に先にユウナ達と歩いていたティーダから声が掛かる。
「おいワッカ!前方にでっかいモンスターがいて、道を塞いでるんだ。
ユウナが島の人達のために除けてやろうってさ」
「でっかいモンスター?」
ワッカとは首を傾げながらティーダ達の所に向った。
「ひょえー何これ・・・・大きい」
は怖がる様子も無くモンスターを見上げた。
「、危ないから下がってろ」
ティーダはの腕を引っ張って後ろへと遠ざけた。
「はぐれオチューか・・・・やっかいだな」
ぼやくワッカに
「そんな事は言ってられないわ。行くわよ」
ルールーの合図と共にティーダ達は戦闘モードに入った。
「ファイラ」
ルールーは火の魔法を唱えるとオチューは苦しそうにのたうった。
「今度は俺の番!」
ティーダは叫ぶと大きな剣を振り上げて向かっていく。
「お兄ちゃん頑張って!」
「任せとけって」
さらに攻撃を加えるが巨体のオチューは中々倒れない。
「ワッカさん、召喚します。少しの間引きつけておいてください」
「分かったユウナ。ティーダ!行くぞ」
「了解したっス」
ティーダとワッカはオチューに向ってなんども攻撃をしかける。
は後ろに下がったルールーに
「あの・・・・召喚って?」
「口で説明するのは難しいわ。見ていてちょうだい」
は言われた通りにティーダ達の後ろで何かを唱和しているユウナを見つめた。
すると突然光がユウナの周りに集まり形を成していく。
「ワッカさん、ティーダ」
「任せたユウナ」
ユウナの声に二人は達の所まで下がってきた。
そしてユウナの側には大きな翼を持った、召喚獣が浮かんでいた。
「アレが召喚・・・・」
は心臓がバクバクとなっているのを感じ自分を抱きしめた。
「?どうした?びっくりしたか」
ティーダはを気遣って声を掛けてきた。
「ちょっとだけ驚いたけど大丈夫だよ。お兄ちゃん」
は自分の言動を嘘だと感じながらもそう言うしかなかった。
(私はアレを知っている。召喚を知る筈も無い私がどうして?)
そんなの目の前では召喚獣の攻撃で段々と弱っていくオチューに最後の一撃が加えられた。
跡形も無くなったその場所に、何処からか兵士らしき人間が近寄ってきた。
「ルッツさん」
「ユウナちゃん、有難う。困っていたんだ。はぐれオチューに道を阻まれて」
「いいえ。これも私の役目です」
「ルッツ、お前ら俺達を当てにして隠れてたのか」
「おいワッカ、それはないだろ。あまりにも巨体だから応援を呼んでいたんだ。もう必要もないげとな」
そんな話をしていたルッツはふと顔を上げるとに気が付き
「君は?見かけない娘だけど?」
「あの私は・・・・」
「俺の妹だ。って言うんだ」
「そうか!よかったな知っている人物に会えて。これで家に帰れるな」
「まあな・・・・・」
ティーダは頭を掻きながら言葉を濁した。
「ユウナちゃん寺院に行くんだろ。ここの怪物を倒せば後は楽に行けると思うけど気をつけてな」
「はい、ルッツさん。それじゃあ」
ユウナはペコリと頭を下げると先に進んでいるワッカの後に続いた。
その後をティーダにも続く。
「お兄ちゃん、さっきの人と何処で知り合いになったの?」
「俺が流れ着いたビサイドの住人なんだ。ワッカ達の幼馴染」
「ふーん」
「心配すんなって。悪い奴じゃない。あいつらはシンを倒すために島を出たんだ」
「シンを?でも昨日の話では召喚獣じゃなきゃ倒せないって・・・・」
「それでも居ても立ってもいられないんだろ」
二人がそんな話をしている内に森の出口になったのか、辺りが明るくなってきた。
「ここの階段を登れば、寺院に到着だ」
「うえっ此処を登るのか!」
「ブリッツの練習だと思えばいい。行くぞ!」
ワッカの掛け声と共にオーラカのメンバーは行きよいよく駆け登って行った。
「あーずるいっス。待ってくれよー」
ティーダは慌ててワッカ達を追って登って行った。
「まったく・・・・・子供なんだから・・・・」
「クスッ。そうですね」
「ちゃんだっけ。さっきは驚いたでしょう?
でもこれがスピラの日常よ。一歩、街や村をでればモンスターに襲われるのは覚悟しないとね」
「・・・・・はい」
は頷きながらも、ちらっとキマリと話しているユウナを見た。
「ちゃんどうかした?」
ユウナがの視線に気付き声を掛けてきた。
「あの・・・あの召喚獣の名前はなんていうですか?」
「彼はヴァルファーレっていうの。私が召喚士になって、最初の召喚獣なの」
(ヴァルファーレ・・・・どうしてだろう?とても懐かしい波動を感じた・・・・)
「ちゃん?」
「えっあっなんでもないです。ユウナさん、彼って言うからには召喚獣は男、えっと牡なのかな?」
「うーん、説明は難しいけど・・・ちゃんが見た姿には性別はないわ。
でも祈り子様の性別で言うとヴァレファーレは女性なの」
「でもさっき彼って・・・・」
「うーん、いろいろあるんだ・・・・・」
ユウナはそれ以上説明してくれなかったがも聞こうとはしなかった。
気まずくなったユウナ達の耳に突然、悲鳴が聞こえ、数人の僧侶らしき人物が階段を転がるように下りて来た。
「何かあったんですか?」
「召喚士様!シンのコケラが突然現れて!」
「キマリ!!」
ユウナはキマリに合図をすると階段を駆け登っていった。
「ちゃん、貴方は下がっていなさい」
ルールーはにそう声を掛けるとユウナ達の後を追った。
一人立ち尽くしていただっだが
(シンのコケラ・・・・シンに関係あるのね)
は直感で行かなくてはならない気がして皆の後を追った。
が階段を登り騒ぎの中心に近づくと、ティーダ達が戦闘状態に入っていた。
「あれは・・・・」
は驚愕した。姿は違うがザナルカンドで自分達を襲った怪物だ。
驚きで動けなくなっているに、隠れていたオーラカのメンバーが声を掛ける。
「ちゃん。危ないからこっちへ。モンスターの事はワッカさん達に任して」
「う・うん・・・・」
は戦いに目を離せないでいたが、その言葉にしたがい後ろに下がった。
苦戦していたティーダ達だったが、ルールーの強力魔法の援護もあり最後はティーダが止めを刺した。
「やったー!!」
オーラカのメンバーはシンのコケラの恐怖が去り肩を抱き合って喜んだ。
「よかった・・・・」
も兄達に怪我もない様なので、ホッとため息を付いた。
そんな達に突然ティーダが叫んだ。
「皆!逃げろ!」
なんと達の背後にシンのコケラが現れていた。
「わぁー!!」
オーラカのメンバーは慌てて逃げた。
しかしは驚きでその場に立ち尽くしていた。
「ちゃん、こっちに」
オーラカのメンバーの一人ダットがの手を掴むと駆け出した。
しかしコケラは達の行く手を阻むように飛び上がると達の前方に立ち塞がった。
「!!」
ティーダの悲鳴にも似た叫びがの耳に届く。
(どうしたらいいのこのままじゃ、やられちゃう)
そんなに
「ごめんねちゃん、俺・・・・君の兄さんのティーダやワッカさんみたいに守ってあげられなくて・・・・・」
「ダットさんそんな事無いよ。だって私を置いて逃げる事だって出来たのにダットさんはそうはしなかった。
私の方こそ、迷惑かけてごめんなさい」
そんな二人にシンのコケラは段々と近づいてくる。
まるで獲物を狙う猛獣のようだ。
その時何故かはブチ切れた。
「いい加減に殺すならしなさいよ!なぶり殺しはたくさんよ」
そう言っては手を振り上げた。
するとシンのコケラにいきなり稲妻のようなものが落ち、大きなダメージを与えた。
「えっ!」
驚くの顔面をブリッツのボールらしき物がかすめ、コケラに当たりコケラは
バタッと倒れると動かなくなり、光となって消えていった。
「!大丈夫か?」
「うん・・・・お兄ちゃん。今のって魔法だよね?ルールーさんが助けてくれたの?」
「いいえ、違うわ。魔法を放つには遠すぎたわ」
ルールーはそう否定した。
「じゃあ誰が?」
不思議そうに皆を見回すに
「ちゃん、魔法使えたんだね」
「えっ!ユウナさん何を言うの?私・・・・魔法なんて使えないよ!」
「でも・・・・さんから魔法が放たれたよ」
「そんな・・・・・」
はティーダを困惑したように見つめた。
「お前は器用だからルールーの技を見ていて、まぐれで出来たんだ」
「そんな簡単に出来るわけないよ」
はティーダの発言に恨めしそうに呟いた。
「と・ともかく、ここで考えてもしょうがないっス。寺院に行ってユウナ達が 用を足している時に、考えるっス」
ティーダの言う事ももっともなので一行は寺院に向って歩きだした。
深い疑問をに感じながら。
寺院に辿り着くと入り口から数人の男達が出てきた。
「これは万年、最下位のビザイドの諸君。オハランド様に縋りにきたのかな」
「なっ!!」
「まっ無理だとは思うけど頑張ってくれよ」
男達のリーダーらしき一人が、そう言ってティーダ達の横を通りすぎて行った。
「なんだよアレ・・・感じ悪いっス」
「ほんと!ワッカさんなんで反論しないの?」
は憤慨してワッカに問い詰めた。
「・・・アイツ等はルカ・ゴワーズの奴らだ。スピラで1、2を争う奴等だ」
「むーお兄ちゃん。解ってるね!」
「おうよ!」
ティーダはの声援にに大きく頷いた。
寺院に入ると先に着いていたユウナ達が彼らに近寄ってきた。
「ユウナ!待たせっス。俺とは此処で待ってるから行ってきてくれっス」
その言葉を俯きながら聞いていたユウナは突然
「あのさ・・・・ガードお願いしちゃ駄目かな?」
「えっ!?」
「おいユウナ、コイツにガードは無理だって。戦いは素人にはきつい、
ましてシンを倒す為のガードになんて・・・・」
「あのガードでなくてもいいの、そばにいてくれれば・・・・・」
ユウナの声は段々と小さくなっていき、最後の方はルールーとにしか聞き取れなかった。
「ユウナ、俺の事頼りにしてくれるは嬉しいけど。 ちょっと時間が欲しいっス」
「そっ・そうだよね。ごめんねいきなり変な事言って・・・・・」
慌てて謝るユウナにティーダは気にしてないと笑顔を向けた。
その笑顔を眩しそうに見つめるユウナにはピンときたがそれには触れず
「ユウナさん、それはお兄ちゃんがジェクトの息子だから?
ユウナさんのお父さんを守ったっていう、ジェクトの・・・・」
「!止めろ」
「・・・・・それもあるけど、私・・・」
「お兄ちゃんはたった一人の私の家族なの。危ない目に遭わせたくない。
それだけは覚えておいて下さい」
は気まずくなってそれだ言うと寺院を飛び出していった。
「ちゃん」
「大丈夫だから気にすんなってユウナ。それより試練の間に行くんだろ」
「うん・・・・」
ユウナはティーダの言葉に頷くと試練の間に続く階段を上り始めた。
その後をワッカ、ルールー、キマリも続き、ティーダも後について行こうとした。
試練の間の入り口でユウナとドナに火花が散ったのだが、その場にいなかった
には預かり知らぬ事である。
そのトラブルがとティーダに選択の機会を与える事になる事も・・・。
