祈り子様




       は落ち込んでいた。
       ユウナはティーダを慕ってくれているのに可愛くない態度を取ってしまった。

       「謝ってこようっと」

       はスクッと立ち上がると寺院の入り口に続く階段へ向かう。
       階段を途中まで上ると

       「!貴方どうしてここにいるの?」
       「あっ ドナさん、バルテロさん」

       は二人の側に駆け寄った。

       「、何かあったの?家で待っていてと言ったのに・・・・」
       「ごめんなさい。でもね邪魔しに来たんじゃないの。昨日ね、連絡船が着いてその船に私の兄が乗ってたの」
       「そうなの!よかったわね。それを知らせに?
       よく一人で来れたわね。モンスターとか出なかった?」
   
       「出たよ!巨大なモンスターにシンのコケラだっけ?下の広場で暴れてた」
       「シンのコケラが!?とうして・・・・」
       「・・・・昨日シンが現れて・・・島は津波で・・・・」
       「そんな・・・・バルテロ!戻るわよ。早く戻って異界送りをしないと島の皆が迷ってしまう」

       バルテロは無言で頷いた。

       「あっ・・・・あのね。異界送りはユウナさんが昨日の内にしたっていってた」
       「あの子が?」
       「ドナさん中で会ったんでしょう?何も聞いてないの?」
       「・・・・・はユウナと知り合いだったんだ」  
       「知り合いっていうか、兄はユウナさん達に助けられて、それで一緒に此処に来たんだ。
       だから今も寺院に用があるから一緒にって」

       「ふうーん。ねえもしかして貴方の兄さんて金髪の髪に青い目の男の子?」
       「うん、そうだよ。ティーダって言うの」
       「ごめん、すこしアンタの兄さん困った事になってるわ」
       「えっ?如何いう意味なの?」
       「ちょっとあのユウナって子を困らせてやろうと思ってあの子達を待ってる貴方の兄さんを
       試練の間にほうり込んだの・・・・」
       「嘘!試練の間って迷路になってるってワッカさんが言ってた」

       はドナの言葉に走りだそうとした。しかしその手はバルテロに捉まれた。


       「バルテロさん!放してお兄ちゃんを助けなきゃ」
       「ちゃん、一人では危険だ」
       「それならなおさら助けなきゃ」

       バルテロは駄目だと首を振る。 
 
       「貴方には申し訳ないけど、我慢して皆が出て来るのを待っていて。
       時間がそんなにたってなかったから、きっと皆と合流してるから」

       「でも・・・・」
       「ごめんね。貴方と一緒に待っていてあげたいけど、島の事も気になるし
       それに今日中に島を出なきゃいけないから」

       ドナはそう言っての不安そうな顔を悲壮間漂う瞳でみつめた。

       「ドナさんは召喚士でシンを倒す為に旅に出なきゃならないんだよね。
       ドナさん心配しないで行って下さい。兄の事は心配だけど私待ってますから。
       それから助けてくれて本当にありがとう」

       はペコリと頭を下げた。

       ドナはそんなにに微笑むと何も言わず階段を降り始めた。
       バルテロは何度かの方を振り返ったがは安心させるように笑いながら手を振るのだった。



       はドナとバルテロの姿が見えなくなるまで見送ると慌てて寺院に向って走り出した。

       「お兄ちゃん待っててね」

       は寺院の中に入ると僧官達がいないのを見計らって試練の間の扉を開いた。
       中に入ると突然床がガクンと鳴ると下に下がり始める。

       「エレベータ?機械は禁止じゃなかったけ?」

       はドナの言葉を思い出しながら
       (これだからお役所仕事は)
       と思うのだった。



       は床が完全に止まったのを確かめて微かにみえる扉に向った。

       「うーん、これはすぐには開かないかな。きっとこの扉のも横の穴に何か入れるのよね」

       は辺りをキョロキョロと見回した。

       「お兄ちゃんってこういう謎解き好きだったよね。
       確かこういう祭壇の何処かにあるのよね。あっ!あったこれ」

       は祭壇に埋め込まれていたスフィアを取り出し壁に埋め込んだ。
       すると突然扉に刻まれた線のような紋様に火がつきそれが燃え尽きると
       次に進む通路が見えた。

       「なるほど・・・・」

       は壁からスフィアを取り出して通路を進む。



       「ドナさんやお兄ちゃんは危ないとか言ってたげど何も無いみたい」

       しかしの考えは直ぐに撤回された。

       「とっても拙いかも武器も持たない私にどうすれって言うの!!」

       は逃げ道をモンスターに塞がれ壁に追い詰められた。

       「えっとーさっきのコケラの時どうやったけ?たしか手を振り上げて怒鳴ったような・・・・・」

       しかし手を上げても何も起きない。
       モンスターはが反撃してこない事に気付きに飛び掛ってきた。

       「きゃあー」


       の意識はそこで途切れた。





       その頃ティーダは何とか試練の間に辿り着いていた。

       「お前!どうやって此処に来た。あれ程上で待ってろって言ったろ」
       「仕方ないだろ無理やり放り込まれたんだから。それよりユウナは?」



       「今は祈り子様に呼びかけているわ。
       ビサイドの時は大分掛かったけど今度は二回目だしユウナなら大丈夫よ」
       「そうスっか。ルールー聞きたいんだけど祈り子様ってのはどうして寺院にいるんだ?
       それに召喚士しか扱えないなんて不便だろ。皆が召喚できればさ・・・・」
       「馬鹿言わないで!!召喚士になるには大変な努力の末にごく僅かな人間しかなれないの。
       だからこそシンを倒せる力を授かるチャンスを貰えるの」
       「召喚獣が扱えるだけじゃだめなのか?」
 

       「そうよ、祈り子様はシンを倒すために自らを捧げた召喚士。   
       その祈り子様に認められてこそ召喚士と言えるのよ」

       ティーダはルールーの言葉に何も言えず押し黙った。  

       「ルールーそれ位でいいだろ。コイツは本当に何も知らないんだよ」

       ワッカがティーダを庇ったためルールーの怒りはワッカに向いた。

       「もうワッカは。いい?ガードでもないティーダがビサイド寺院に続いてキーリカの試練の間に来てしまったのよ」
       「しょうがないだろ来てしまったものは!今更ここから一人で戻す訳にもいかないだろ。
       いいかお前もユウナが出て来るまで大人しくしてろ」

       ワッカの言葉にティーダはこれ以上ルールーに睨まれるのも嫌だったので即座に頷いた。



       それから一時間程たった頃

       「ティーダ・・・・」
       「なんスかキマリ?」
       「お前の妹はお前がここに入るのを知っているのか?」
       「知らないと思うけど。アイツ大丈夫かな」

       ティーダはが心細い思いをしているだろうと思い落ちつかない気持ちになり辺りをウロウロとし始めた。

       「ティーダ。落ち着きなさい。いくらウロウロしたってここから出れる訳ないんだから」

       「・・・・解ってるっス」

       ティーダはルールーの言葉に立ち止まるとユウナが出てくる筈の扉を見つめた。






       ティーダにはとても長く感じた時間はそれから直ぐに終わる事になった。

       「あっ扉が開く!!」

       ティーダは思わず扉に駆け寄った。
       部屋から出て来たユウナは疲れきっていて足元がふら付いていた。
       今にも倒れそうなユウナをキマリが支えた。

       「ありがとうキマリ。大丈夫だよ。ティーダ?どうしてここに?」

       ユウナの言葉にティーダは頭を掻いた。

       ユウナは一息つくと

       「皆もう大丈夫。外にでよう、ちゃんも待ってるだろうし」
       「ユウナ、ゴメン。疲れてるのに気を使わせて」
       「ティーダ、そんなに謝らないで。休むなら上に戻った方が落ち着くし、それにちゃんときちんと話したいんだ」
       「そっか。あいつ・悪気はないからさっきの事は許してやってくれ」
       「うん!」

       そんな二人にワッカが声を掛ける。

       「よし!それじゃあ行くぞ」

       五人は祈り子の置かれていた部屋を出て行く事になった。
       先頭はワッカ次にルールとユウナその後ろはキマリが続くティーダは少し遅れてそれに続こうとした。

       何か声を聞いたきがした。そして懐かしい歌が聞こえてくれる。

       「なんだ?」

       ティーダは振り返った。
       しかし何も見えない、ただ懐かしい歌だけが聞こえて来る。
       ティーダは部屋に戻るとユウナが出て来た扉の前にたった。
       扉はティーダの力ではびくとも動かない。

       「ティーダ如何した?」

       ティーダがついて来ないのを心配して、皆が戻って来た。

       「ワッカ!この奥から歌が聞こえるんだ」
       「歌?どんな歌だ」

       ティーダはワッカ達にそのメロディを口ずさむ。

       「えっ?祈りの歌どうして誰かが祈り子様に話しかけてるの」
       「祈りの歌?なんだそれ」
       「召還士が祈り子様と対話しいている時に、聞こえるのよ」
       「えっだけどユウナ。君の後にはだれもはいってないはずじゃ・・・・」
       「うん。ルールー確かめようよ。何か遭ってからじゃ遅いもん」

       ユウナの言葉にルールは頷いた。
       キマリはティーダの側に寄って合図をする。
       重い扉は少しだけ開いた。
       もう少しあけようとした時、扉の隙間から小さな足が見える。
       それはティーダの見慣れた靴。

       「まさか!?」

       その言葉にいっせいに仲間の目が扉に集中した。
       その時、突然扉が開いた。
       そして中から出てきたのは意識が朦朧として自分が誰か解らなくなっている
       そのひとだった。