D、[新ガイドライン]後の危険な動き

1、岩国港を米軍が日常的に使用
 (1) 新ガイドライン合意直後米軍が使用開始
 1997年9月、日米間での新ガイドライン合意直後、10月7日、米韓合同演習フォール・イーグル97のために米軍チャーター船が岩国港県営埠頭岸壁に接岸、軍用物資を積み出し、韓国ポハン(浦項)に向け出向しました。
 岩国港の軍用使用はそれまで12年間なかったことです。そして、99年10月までに米軍使用は9回にのぼり3回目からは米軍地位協定(5条)によって入港料を支払わず、積荷リストも提出せずに入港を繰り返しています。
 山口県の港湾条例は「爆発物その他取り扱い上危険を伴う物件を荷役し、または貯蔵すること」を禁じています。
 山口県は米軍に対して県条例の尊重を求め、積荷リストの提出を要請しており、渉外関係主要都県知事連絡協議会(渉外知事会)も7月29日「地位協定に港湾条例の趣旨を十分尊重する旨明記する」よう政府に要求しました。
米軍による県営岩国港の使用状況(別項、ここをクリック)
 
(2) 危険にさらされる国道二号線
 米軍が使用した県営埠頭岸壁は、岩国基地から約2.5Kmのところにあり、国道で結ばれていますが、軍用物資の輸送によってその道路の安全も脅かされています。米軍は岩国港の使用にあたって、推進10mの新しい県営埠頭岸壁を使用しており、「便利で費用効果もよく岩国港の使用はベストな選択」(1998年4月15日朝日新聞)とのべています。
 
(3) 積荷に疑惑、米軍リスト公開を差し止め
 99年4月と8月の入港に際して、米軍は県営埠頭岸壁に隣接する野積場を一時使用しましたが、地位協定では野積場の使用を規定しておらず、地位協定を適用するわけに行きません。山口県は県港湾条例にもとづき、(国道2号線を走る米軍輸送車両)
周辺事態法に関する解説書案には「協定内容については、米軍のオペレーション(作戦行動)が対外的に明らかになる」ことを理由に[公開を許さない」としています。

(1999年11月14日岩国港へ入港したケープ・ノックス)
周辺事態法に関する基本解説書案から
問い 協力内容について情報公開することは構わないのか
 国以外のものが協力要請を受けて協力を行なった場合、その事実につき公表することを禁止するものではない。他方、協力の内容によっては、これを公表することにより、例えば米軍のオペレーションが対外的に明らかになってしまうといったことが考え得る。このような場合については、必要な期間、公表を差し控えていただくよう、協力要請の段階で、あわせて依頼を行なうことを考えている。

 周辺事態でもないときに、公開を許さないと言うことのは、まさに戦争法の先取りが岩国で行なわれていることになります。6月17日、タイから帰ってきたマースク・コンステレーションが岩国港に積荷をおろしましたが、そのなかには、行く時4月には見られなかった機関砲の弾帯とミサイルの懸架装置などが剥き出しになっていました。
 山口県に対して米軍が事前に行なった連絡では、「今回は4月に入港した際の積荷を下ろす」となっていたのに、実際の積荷は明らかに食い違っていました.この積荷に対して山口県の問い合わせに米軍は「危険なものではない」としかこたえませんでした。

2、空母コンストレーションの艦載機、岩国で着艦訓練
 
(1) 朝鮮沖銃撃戦で電子戦機部隊を岩国に
 2000年7月6日から9日まで、米海軍の電子戦機EA-6Bプラウラー4機が、抗議の声を無視して夜間着艦訓練を強行しました。この4機のプラウラーはアメリカ本国のサンディエゴを母港とする空母「コンステレーション」の艦載機です。これまでの着艦訓練は日本を母港とした空母の艦載機の着艦訓練でしたが、この訓練は米本国を母港とするものでした。それはいままでなかったことで、戦争法成立後アメリカへの協力体制に、岩国基地が一掃深く組み込まれ始めたといえるでしょう。
 空母コンステレーションは2000年6月、朝鮮半島沖での韓国と北朝鮮の銃撃戦直後、極東に展開したもので、その艦載機EA−6Bプラウラー(電子戦機)が岩国に急遽派遣されたことは、岩国基地が特に朝鮮半島有事に際して深いかかわりをもつことを示しています。
 電子戦機EA6Bプラウラーは現代戦で重要な役割を果たすもので、これがなければいわくに配備されているホーネットもハリアーも相手国の防空網から逃れることが難しく、事実上作戦が出来ないともいわれています。
 (2) 中止要求押し切って着艦訓練
 プラウラーによる着艦訓練の通告に対して、山口県や岩国市は再三岩国基地と在日米軍司令部、そして日本政府にも訓練の中止を要請しましたが、米軍は[相互防衛と地域の安定のためには必要な訓練」(読売新聞7月7日付け)とこたえ訓練を強行しました。
 訓練時間については岩国市と米軍との間で午後9時までという確認事項がありますが、米軍はこれをやぶり深夜10時までと通告し強行しました。おりから高校生の期末テストの時期でも有り、市民がこぞって反対する中での訓練は、米軍の横暴を際立たせるものでした。
(1999年11月ケープ・ノックスから下ろされる軍用車両)
3、「有事」にそなえ米軍がトラック1370台、クレーン車114台と交通統制を要求
 新ガイドラインは[周辺事態」にそなえて「相互協力計画」 − 作戦計画を立てていますが、それは「有事」のさい、直ちに実行されることになります。
 2000年3月、暴露された自衛隊統合幕僚会議の極秘文書によれば「周辺事態」の最米軍の陸上輸送を支援するために、沖縄の海兵隊と岩国基地でトラックなど1370台クレーン車など114台コンテナなど岩国基地で228個を要求しています。
 そして、道路の優先使用、交通統制を行い、民間の輸送業者を大量に動員することを明記しています。こうして「周辺事態」のさいには、民間の空港や港湾を米軍が「基地」として使用し一般道路を武器、弾薬などを満載した車両が突っ走ることになります。最近、県営埠頭岩国港を米軍が日常的に使用し始め、横暴な着艦訓練を強行していますが、それはこの「相互協力計画」に沿って進められているものです。

自衛隊統合幕僚会議 極秘文書より

対日支援要求の「軍種」と「問題点等」第七艦隊司令部
● 海上自衛隊基地(八戸、厚木、岩国、鹿屋、那覇)を米海軍P-3C分遺隊(3機)、が使用することについては、駐機場の確保および整備、宿泊、警備、運用(ASWOC支援)、情報に関する支援要請について、海自で事前に検討する必要がある。
第3海兵機動展開部隊
○ 沖縄の海兵隊キャンプおよび岩国基地において多くの車両(トラック・トレーラー×計1370台)荷役機材(クレーン、ホークリフト×計114台)を要求しているが、民間での対応の可否および民需への影響等について、運輸省等と事前調整しておく必要がある。また、要求の一部を自衛隊で支援することも検討の必要がある。
○ コンテナおよび同輸送要求(沖縄×865、佐世保×240、岩国×228)については所要量が多いため民間での対応の可否および民需への影響等について、運輸省と事前に調整しておく必要がある。
軍事海上輸送軍司令部
●海自基地に隣接する米軍基地(横須賀、呉、岩国、佐世保、那覇)については、民間等による支援に支障が生じた場合に備え海自による港湾支援等について検討する必要がある。
● 港湾地域における事務所(宿泊・給食機能付)確保については、運輸省等との港湾管理者と調整する必要がある。海自に隣接する米軍基地(横須賀、呉、岩国、佐世保、那覇)については、海自基地内事務所提供について検討する必要がある。
 また2−4−b化の処置(注)について事前に検討する必要がある。
輸送支援
○ 米軍の艦船・航空機(民間調達を含む)の国内港湾・空港の優先使用等
○ 国内陸上輸送(USARJ−在日米陸軍司令部、VMEF−第3海兵機動展開部隊等)のため道路の優先使用、交通統制等
注 2−4−b化の処置とは、
 日米地位協定2条4項(b)にもづいて、日本の特定の施設や地域を、新たに「合衆国軍隊が一定期間を限って使用すべき施設及び区域」として使用するということ。