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A1-08   07.01.20

静電気の火災                        転載を禁ず

★  空気が乾燥する季節で、うっかり、金属のドアノブに触ると「バチッ」と電気がくる。
 実に、嫌な感じで、静電気除去の「放電ペンダント」などを持っておられる人も多い。

 この「静電気」の発生には、摩擦帯電・剥離帯電・流動帯電・噴出帯電などがあり、それぞれで
 様々な火災事例があります。人の体で衣服類の摩擦により帯電する静電気、印刷紙などが引き剥がされる
 時の剥離帯電、石油や金属粉などが送油管内を流れている時の流動帯電、塗装作業現場での塗装物の帯
 電など、により、その付近に可燃性ベーパが滞留していれば、帯電した静電気の放電スパークにより、火災
 となるのが、「静電気火災」です。 一般的に着火物は、可燃性ベーパや粉じん類に限られます。

 静電気に関しては「静電気学会」があり、また文献としてよく利用する「静電気ハンドブック」(オーム社)が
 あり、総務庁・消防研究センターには、石油火災における静電気の分野から研究されている研究者も
 おられるので、原因調査で分からない時や実験指導では教わるとよいでしょう。

 人体が帯電している時に、セルフ給油所などで、静電気火災となるケースの原因調査では。
 まず、ガソリン系ベーパの最小着火エネルギーを概ね[ 250μJ ]として、次に、人体に帯電した帯電量を
 調べます。帯電圧測定器を使用して、電圧測定します。人体の帯電容量はだいたい200pFですから、
 E=1/2*CV2 の式から、測定結果で2000Vだと 200pF代入し、人体の静電気の放電エネルギーは
 400μJ となり、放電すると十分な着火エネルギーとなります。

 しかし、これだと、感覚的に分かりにくいので、だいたいの目安では。
  2000V : 放電したとき、ビシッと指の外側に感じるが痛みなし。
  3000V : チクリと痛みを感じる。針で刺された感じ。
  4000V : 指に痛みを感じる。針で深く刺された感じ。
 などです。つまり、関係者からの供述で、火災前にも金属に触れると「ビシッと指に痛みが走る感じが
 あったことがあります。」とあれば、その人は帯電しやすい服装だったことになり、火災時にも同様に、
 かなりの帯電があったと推定され、炭化水素系可燃性気体が存在すれば、静電気が発火源となります。

 衣類として、ポリエチレンなどの材質のデニム・ジャケット・オーバーオール類のウインドヤッケなど
 を着用した時、もちろん靴はゴム底です。(ユニクロの製品はこんなのが多いですよネ。)
 事例として、ガソリンスタンドの拡販キャンペーンにS.S従業員にポリエンレン製カバーオールを着せた
 ため、その衣類の静電気で火災となったことがありました。
 販売メーカとして、まったく、見識が疑われる事例でした。 
 セルフ給油所での自動車の給油中の火災では、給油口で青白い炎がボット言う感じで立ち上がって、
 驚いて、ノズルを離すので、それで消えることがほとんどです。車両のガソリンタンク内はベーパリッチの
 ため、「タンク中に火が入って、爆発」と言う事は起こりません。ガソリンは爆発範囲が結構狭いので。
 今後、流行しそうなアルコール燃料だと爆発範囲が広く、火災的には、引火対策は必須となりますが。
    
 静電気での放電には、他にコロナ放電・沿面放電・ブラシ放電などがありますが、一般的な火災現場では
 放電エネルギーの計算式に該当する「火花放電」を考えます。
 静電気火災には、大はタンカーや危険物タンク、さらにタンクローリの充てん所での火災もあります。
 ガソリンの入っていた容器類に軽油などを入れるとガソリンベーパが吸収され、容器内が爆発範囲となって
 着火しやすくなり、火災となっている例や、金属類を電導性のある溶剤で洗浄する静電誘導により帯電し
 やすくなって火災となった事例もあります。
 一般家庭では、昔、自宅風呂場内でベンジン等を使って家庭ドライクリーニングをしている時に、火災が
 発生しています。また、灯油用のポリ容器などを持って歩くと、衣類に触れ帯電するため、このポリにガソ
 リンなど入れるた時に「ボット」と燃え上がります。バイクや廃車からガソリンを抜くときに、多い火災事例です。
 
 また、塗装現場での噴出帯電による工場火災としては、1989年11月名古屋の自動車工場火災があります。
 また、ゴム研磨作業所での粉塵を集めるバグフィルタの火災が、昔、静電気により多発したため、静電除去の
 装置を組み込んでいますが、やはり、危険性は高い施設です。
 と、まあ、イロイロと「静電気火災」があります。しかし、冬の乾燥時期よりも、5月〜6月頃の乾燥期のほうが
 湿度が低くて、温度がかなり高い「時」があることから、火災発生上の危険性が高いです。
 危険物週間は、このような気象的要因と火災との関連、従業員がボッーとしたウッカリミスを引き起こしやすい
 ことから、この時季として設定されています。

 静電気の火災は、原因調査上はほんとうに興味ぶかい対象です。仕事であることを忘れて、夢中になって原因
 解明に取り組める事案ですネ、だって、実際の火災を扱っての究明ですから、「文献」どおりにすっきり行かない
 ことも、また、興味深いところです。 でも、静電気火災の発生を期待してはいけませんよ!。
 

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