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オーブン粘土の火災
                               A1−28   08.08.17 

  1,オーブン粘土
 
 ★ 陶芸用の粘土
  各区市町には、住民センター・学習センターなどがそれぞれ地域ごとに設けられて、その施設で、さまざまな文化・教養
  サークルが活況を呈しています。その中で、おばさん達のパッチワーク講座に対して、おじさん達の陶芸講座が人気です。
  また、幼稚園・保育園での情操教育の中で創作「陶芸」が盛んに行なわれています。
  今回の話題は、その中でも、人気の「オーブン粘土」に係わる火災です。
 
 
★ 粘土には。
  
@ 硬くならない粘土
      “油ねんど”など、一般的によく用いられ、「粘土」と言えばだいたい、この粘土が一般的です。
      硬くならないので、何度でも、つぶして、また、作ることが出来ますし、翌日でも作り直すことも出来ます。
  A 乾燥する粘土
     “紙ねんど”、樹脂ねんどなど、作って、置いておくと、水分がなくなって自然に硬くなり、その上から
     色づけしたり、製品として完成品にしあげることが出来ます。それに、安価で、無害なものが多いので
     幼稚園などでよく用いられます。
  B 焼く粘土
     本格派の使用する粘土です。窯で焼いて仕上げます。耐久性などの点では、これが本物です。
     また、高温で焼く時に使用する釉薬(うわぐすり)の独特の感触と発色が、好まれるところでした。

  さて、ここで、B焼く粘土は、昔なら、「本格派」で、焼く温度も900℃〜1100℃と高温にするため、窯、もしくは
    高温槽の「窯」が必要で、少し小形の窯でも電気的には動力配線がないと、できないものでした。
  しかし、  
オーブン粘土
   
高温でなくても、焼ける粘土として、登場したのが“オーブン粘土(陶芸用ねんど)”です。
    今や素材屋さんに行けば、必ず置いてあるのがこのオーブン粘土です。
    品物は、基材の「土」と少量の「樹脂(ポリマー)やコーンスターチ」などを添加したもので、着色されたものもあります。
    乾燥粘土と同じ要領で型づくりをして、⇒ 乾燥して固める ⇒ オーブンで焼く ⇒完成です。
    「オーブンで焼ける。」ことが、売り、で、家庭や区市町・幼稚園など、家庭用オーブンがあれば「手軽に」出来ます。
    オーブン温度を120℃〜180℃に設定し、20分〜90分で焼けます。
    感触は、高温で焼く本物には劣りますが、見栄えからは上々の物ができます。
    で、今や、街の「陶芸教室」の主流品となっています。
    「製品」により、「温度設定」はさまざまですが、いずれも、手軽に加熱できて「焼き上げ」られます。
    別売で「釉薬」なども売っている商品もあり、数種類が数社のメーカから販売されています。

   
(この写真はインターネットから)
     左写真のように、成形して乾燥し、その後にオーブンで、温度・時間設定して「焼く」だけで
     思いの作品を作り出す事が出来ます。

  
   2, 火災事例 
   ★ 
   火災は、一般住宅の台所で発生しました。
    幼稚園の先生が、オーブン粘土で作られた園児の作品を、自宅で「焼く」ために、オーブントースタで、加熱したため
    オーブントースタ内の陶器が燃え上がって、火災となったものです。
    発見も早く、消火できたので「ぼや」火災で済みました。
  ★
   
 問題点は
    @ 「オーブン・レンジ」で使用するとあるが、「オーブン・トースタ」を使うことがあり得る。
     A 乾燥した「粘土の陶芸品」なので「燃え上がる」との認識が、メーカも含めて低い。
     B 示差熱分析器などによる「発火点」測定では、かなり高温でないと、発火しないような測定結果がでるため、
        トースタの温度で「燃え上がる」とは考えていない、ところがある。
    3, 火災実験
   ★ 
   このオーブン粘土のほとんどの主たる成文が「ねんど」なので、「燃える」と言う印象が薄いことから、消防署内で、
   メーカの関係者立ち会いのもとで“実験”をすることになった。
   ★ この製品自体を、ライターで「燃やして」みるが、燃えませんでした。
  手作りして、乾燥した湯飲みを入れる  16分18秒後に、庫内温度が焼く320℃
 となった時に、湯飲みの縁あたりに「炎」
 がでる。
 
 しばらくすると、燃え始めたため、
 トースタのフタを開ける。
 
      
  そのままにして置くと、「炎」が50cm
 近くまであがり、単に、「焦げて燃える」
 でなく、「燃焼物」の形態となり、粘土と
 は思えないほどの勢いとなる。
  全実験は、火災現場でのソレを使用
 したが、再度、別のトースターを使用して
 同じように「燃える」かを実験した。
  火災現場での焼損状況
      
   
 ★ 実験から
  
実験から、「すごいな!」と思ったのは「燃え上がる」状態で、粘土に添加されている“樹脂”材の割合が少ないわりに、
   よく燃えて、高く炎を上げることでした。
   着火するときの状態は、中央写真のように、湯飲みの中で可燃性蒸気が形成されて、それに「火」が着くように「湯飲みの縁」
   に発炎して、全体に広がっていく、感じです。
   なお、トースターのメーカの種類によって、こんなに高い温度にならないものが国産品では多いし、また、温度ヒューズが
   働いて着火にいたらない、トースターも多いと言えます。
   後日、メーカは製品の表示で、「オーブン」とあるが「オーブントースタは、使用できません。」との明確な表示をだすことや
   製作上の“注意”などのソフト面の説明を力を入れていく事となりました。

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