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雷の火災
                              A1−31   08.08.30 転載を禁ず

 東京の落雷火災の統計分布を調べて見ると。
 足立・板橋・練馬・西東京などの “東京都の北の周辺区市”に多く発生しています。
 世田谷・港・品川などには過去5年間にありません。つまり、都市部で温められた
 「積乱雲」は、荒川の上でどうにかなって、雷を落とすのかな。 と、地勢学的に思ったら。
 「その地域は、建物が低くなつて、相対的に「避雷針設備」が手薄になるからだ。」との意見も出され
 「何だ、そんなことか・・」と何となく納得してしまいました。よくは分かりません?。
 「火災と気象」の領域?

  1,雷の火災統計
 
  ★ の火災
    雷の火災は、2003年〜07年までの5年間で、東京消防管内で58件発生し、年間約12件程度となるが、年によるバラ
    ッキが大きい。年に20件もある年から年5件程度と少ない年もある。都市内のビルの避雷針などの避雷設備の普及で、
    少なくなって行きそうなのだが、落雷等による雷の火災は、以前として、発生し続けている。
    
   2003年から2007年まで5年間の「雷の火災」の月別発生件数

 7月、8月、9月の3ケ月間に集中している。
 時間的には、ほぼ一日を通して発生しているが、13時5件、
 14時9件、15時7件と多く、17時5件・18時5件・22時5件
 となっている。 つまり、午後の夕方の前後が、「落雷火災」
 の多い時間帯となる。
     
 落雷の火災種別は、建物火災とその他の火災で
 その他火災では、積算電力計の単独火災や電柱
 設備などとなっている。
 建物外壁に取り付けられた「積算電力計」だけが
 焼損した場合は、消防の火災種別では、「その他の
 火災」と分類される。つまり、建物に影響しなかった
 付属設備単独の損害が発生した場合などである。
 
 また、積算電力計は、建物所有者の持ち物では
 なく、電力会社の所有物であることからも、り災者が
 電力会社となる。 

 (本統計は東京消防庁調査課の「落雷火災の発生
  状況」から、頂いた。)

    USAのNFPAの統計では、(USA)全米の消防本部は毎年平均して約31,400件の落雷火災に出場している。
    2002年から2005年までの4年間の住宅への落雷火災は16件しかないが、負傷者等がでていると報告している。
    また、特に、落雷を原因とする「林野火災」の損害が大きく、毎年平均して2,104kuが消失したと報告している。
    ( Marty Ahrens   NFPA)
    
落 雷
    
 雷の火災は、火災原因分類では大きく2つに分けられ「直接雷」と「間接雷」である。
       山などの林野火災などの原因として「直接雷」を原因とする火災もあるが、一般的には、「間接雷」がほとんど
       であり、統計分類において、間違いのないようにする。
       よく火災現場で、関係者の供述から『雷がゴロゴロと音を立てていた時に、「ドーン」とすごい雷の落ちる音がし
       て、しばらくしたら、その部分から火が上がって、燃えてきた。」と供述していても、火災の原因は、ほとんどが
       「間接雷」である。
    
 直接雷 @ 側撃雷   落雷は、火災原因
 分類では、大きく2つ
 に分類される。
 「直接雷」と「間接雷」
 
 「間接雷」にもいくつ
 かの分類があり、
 「側撃雷」
 雷の主放電から分岐し
 た放電が建物等に放電
 する。また、高い樹木に
 主放電が落ち、そのため
 高くなった立木から建物
 等に再放電するもの。
 多摩地区などに多い。
 
「侵入雷」

 送電線に落雷したため
 送電線内を高いサージ
 電圧が発生して、建物な
 どで放電する。

 「誘導雷」
 都心部に多く、落雷や雷
 雲により電場が高くなり
 この影響を受けて、放
 電する。
  
 
   A侵入雷          B 誘導雷
 

  
 ★ ここで、注意するのは、A「侵入雷」B「誘導雷」では、電柱のトップ部に架空地線(グランドワイヤ)があり、又、
    高圧線の碍子には避雷器を取り付けて、各電柱ごとにアースをとっているため、容易に「雷放電」を受け易い構造
    となつている。
    このため、電柱による高圧・低圧の配電線は、付近の落雷を受けて、サージを発生して伝搬しやすいと言える。
    関係者の供述の中に「・・・・窓から外を見ていると近所の神社の境内の木の頂上付近が光って、ドーンと大きな落
    雷の音がした。その後に家の前の電線が青白く光って見えた。・・・」などと聞かれることがある。
    
   ★ B「誘導雷」は、付近に落雷した時に、異常に高くなった電場のために、地表面から建物内に侵入して放電することも
    ある。この場合は、関係者供述は「・・・「ドーン」と言う音がしたので、外を見ると、シトシト雨の中で、地面がうっすらと
    青光りしていた。・・」となる。この場合には、落雷の被害が数軒に渡って、広い範囲にでる。特に、動力機器の作業場な
    どの「進相コンデンサー」は接地アース側からサージを受ける為に、絶縁が破壊され易く、この部位から出火することが
    ある。また、一般的には「電話取り付け端末器のアース線」から逆流して、放電する。

   2, 火災事例                                         転載を禁ず
 事例 : 直接雷
 山の中腹にあるお寺の立木に、
 落雷した事例。
 立木の中から煙が出て、落雷に
 より出火して、火災となっている。
 「林野火災」になりやい事例である。
  
 間接雷 (典型的な落雷)  
 最も多い「落雷」による
 火災事例。
 「間接雷」により、配電線
 から侵入したサージによ
 り「積算電力計」の近接
 部が放電して出火する。
 積算電力計の破損により
 建物内へのサージを防止
 しているとも言える。
 単相、三相の別なく発生
 し、最も一般的な落雷火
 災の典型である。
 キュービクル
 
  ★ この例も同じで、
 高圧配電線から侵
 入したはサージを
 有効に避雷器でア
 ースできないため、
 計器用変圧器など
 の機器が焼損した。
   積算電力計への落雷  アンテナの避雷器

  電話集積器のアース端子  右が被雷した物 
 
 間接雷  アンテナに放電したことによって、建物内の複数点の電気器具から放電した事例 
   建物の様々な電気器具類の「放電痕」
  
 このような例は、結構見られる。
 建物内の様々な所で「放電痕」を残すもので、多くが
 アンテナからである。アンテナ線から、この事例では
 「TVコンセント」の端子内の金具台座に放電し、その
 部位から、屋内配線系統へと次々にサージが流れた。
 
 また、アンテナ線にブースタを付けているとこの部位
 から屋内配線系統に流れる。
 このような場合、放電痕は多数見られるが、出火には
 至らないこともある。 (興味のある事例でもある。)

 アンテナ線が単独で、配線されてテレビに引き込まれ
 ている場合は、このような多数箇所の放電痕がなくて、
 単にテレビの避雷器部位付近だけが焼損することがあ
 る。
     
   
 ★ 建物の避雷設備が、有効に避雷したが、建物内から出火した事例
  中層の建物の屋上、避雷針に「落雷」し、避雷設備の接地線により地面にアースされたが、その近傍に、
  建物内の自家発電設備の接地線が埋設されており、この接地線が高くなった電場のサージを拾って、
  アース線から建物内に逆送し、自家発電機の基盤を焼損させた火災事例がある。
 
 
★ 落雷火災の火災調査
  落雷火災は、「落雷音と稲妻の光」を見聞きしている関係者の供述が多く、このため、安易に判定してしまうことがある。
  しかし、落雷なら、地面からの逆放電も見られることから、付近の電話機器類の損傷など、他の被害の実態も把握する
  必要がある。後日のり災証明の発行が求められることから、「落雷」の場合は、焼損した建物以外の付近の聞き込みを
  必ず行なう。
    ⇒ 建物の燃えた箇所(例えばテレビなど)だけに、固執しないで、広く調査範囲を取って、見分をすすめる。
    ⇒ 関係者が落雷音や光を見ていても、一般的には「直接雷の出火」よりも、落雷からの放電による「間接雷」が
      火災原因では多いことを念頭に置いて、調査を進めると、供述の先入観にとらわれなくてもすむ。
    ⇒ サージの放電痕はさまざまな所で偶発的に発生するので、必ずしも、全部の解明に至らない事がある。
      ただし、無理に、機器内部の放電を推論して「出火」につなげる必要はなく、雷を要因とした配電線の電圧異常を
      受けて老朽製品の絶縁性が破壊されることもあるので、出火した製品の状態も良くて吟味して、「雷の放電でない」
      場合も考慮する(つまり、瞬間的な異常電圧によって、電源部が影響されて、少ししてから、普通の使用状態の時に
      出火する)。
  


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