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リチウムイオンの火災
                            A1-57   13’01/20 

 1, リチウムイオン電池
 
   二次電池の中のリチウムイオン電池は、このホームページの電気火災の「電池の火災」に記す
 ように、東京では、1989年カメラ用リチウム電池からの火災端緒として、PC内蔵のバッテリー火災など
 が発生している。カメラ用電池などの火災に対しては、リコールとして1990年に新聞紙上にも取り上げ
 られている
  そして、製品の内蔵バッテリーとは別に「廃棄物」としてのボタン型電池からの火災としても幾つかの
 火災があり、2007年9月の松下電器の電池工場の火災がある。
  年代的には。
   1980年代後半からのデジカメやノート型パソコンの内蔵電池として使用され、充電性能などから広く
  使用されるようになった。
   1990年代からニッケル水素電池とリチウムイオン電池が二次電池の主流となり、合わせて、体積あ
 たりの高エネルギー密度化の要望が大きく、開発企業間の技術力も違ったものとなってきた。
 そして、ニッカド電池、ニッケル水素電池よりも
リチウムイオン電池がエネルギー密度として最も成長した
 製品となつている。  
 角形のリチウムイオン電池の構成。

  円形のものを長方形に押しつぶしたような形態
  となる。構造的には、同じ。
  内部にPTC素子を組み込むものもある。
 
  
  リチウムイオン電池は、一般的には、負極に「カーボン」、正極に「コバルト酸リチウム」を使用し
 電解液の溶媒に「有機溶媒」、溶質に「六フッ化燐酸リチウム」を使用している。
 消防としての課題が、この
溶媒にあり、他のニッカド電池やニッケル水素電池が溶媒に「水」を使用してい
 ることとの相違がある。
  このため、昨年、2012年12月に消防庁から
  「リチウムイオン電池に係る危険物施設の安全対策のあり方に関する検討報告書」が発出さ
 れている。また、蓄電池設備とうに係る火災予防条例の見直しにかかわる全国消防長会からの提言も
 なされている。
 ★ 電解液
  電解液は、メチルエチルカーボネート(4類2石非水溶性)、ジメチルカーボネート(4類2石非水溶性)、
  及びプロピレンカーボネート(4類3石非水溶性)等を主成分とする混合液で、第4類第2石油類(引火点
  約23℃、非水溶性)に該当する。
  消防では、この電池のまま外部の火炎で熱する試験を実施している。かなり、強く燃焼する。
  
安全対策
   リチウムイオン電池の発火事故などを踏まえて安全対策が講じられている。
   - 事故が主に、
過充電により、直列接続されたセル間の電圧がバラツクと一部の電池間にひずみが
   生じ、その電池の電圧が高い過充電状態となり、危険性が高まることがわかっている。-
  これらのことから、製品には、大電流の制御としてPTC素子を装填するなどの対応とともに、セル、組
  電池等の総合的な 対策として、電子技術産業協会・電池工業会から2007年4月に
  「ノート型PCにおけるリチウムイオン電池の安全利用に関する手引書」が発表された。 
  これらの対策に対して、2007年11月には,電気用品安全法が改正され、電気用品として新たに「蓄電池」
  が追加された後,関係する政令・施行規則が2008年5月に公布され,2008年11月に施行された。さらに,
   これらの法律に関連する技術基準としては,従来からの
JIS C 8712「密閉型小形二次電池の安全性」
  に加えて,2007年11月に
JIS C8714 「携帯電子機器用リチウムイオン蓄電池の単電池及び組電池の安
  全性試験」が発行され,リチウムイオン電池をより安全に使用するための法的環境が整備された。
   JIS C 8714は、その前の8712に対して、「発火」を考慮して、通常温度での充電後の試験に加え、上下
  限(10℃、45℃)での上限充電電圧試験を行うなどの付加的要素を加えている。これは、充電電圧が
  高くなると、正極の「コバルト酸リチウム」の結晶安定性が低下することからおこうこととしている。
  また、この時期に、ユーザーベースの対応もなされ、NTTでは、2009年6月「小形リチウムイオン電池の
  最新安全性試験技術と安全性試験サイトの構築」と題したリチウム電池の安全性試験など手引きを出し
  ている。  
 携帯電話に使用されているリチウム電池の
 膨張変形した様子。Do Co Mo の携帯。
 2013年1月のボーイング787の火災では、右の
 リチウムイオン電池の機器が問題視されている。
 (2013年1月19日現在)
2, 火災事例

  
電池の火災」としてボタン型電池は、すでに、そのコーナに記載されている。
   

 2009年11月全国消防技術者会議で、神戸市消防局山本忠昭、柏原隆志の両氏から
  発表された「
リチウムポリマー電池から出火した火災の調査活動」を紹介する。
  
  ラジコン飛行機のバッテリーとして、リチウムポリマー電池を充電した際に出火している。
  (リチウムポリマー電池は、リチウムイオン電池の改良型である。)
  出火原因は、当該リチウムイオン電池が、8セル型のものであったにもかかわらず、
 充電する際、誤って充電器の設定10セルとし、さらに、充電器とリチウムイオン電池間に
 バランサーを介在させていなかったことから、過充電となり電池間バランスが相違して、出火し
 たものと判明した。
  ★ セルは、バッテリーないの電池の数。8セルは、電池が4セル束ねたものが2個あるもの。

バッテリーパック内の概念図
  また、通常は、バランサーを、充電器とリチウムイオン電池の間に接続する。
  ★バランサー: は、 リチウムイオン電池は自然放電しにくいため、充放電を繰り返すと充電時に
  各電池間の電圧のバラツキが生じることがある。このため、バランハーにより、高い電圧の電池は、
 自動的に放電させてそれぞれの電池の電圧を一定にするために充電時に介在させる機器。
  
実験の映像 ⇒ ビデオ 
 この映像から、かなり激しい出火の様相がわかる。
 なお、この内容は、神戸市消防局山本・柏原の両氏の発表内容を参考資料として引用しております。
  詳しくは、本文を参照して、確認してください。
  
                    
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