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A1-20      07.08.12

特殊材料ガス(モノシラン)の火災

 
 1,特殊材料ガス
 
半導体やファインセラミック等の製造産業な
 ど工業的な規模で用いられる“特殊なガス”
☆特殊ガス工業会が策定した「特殊材料ガス
 災害防止自主基準」の対象ガス39種。
 その中で、可燃性で、かつ、毒性の強い
 モノシラン等7種類のガスを「特定高圧ガス」
 として規制している。
☆ 特殊高圧ガス(法令対象)
7種(全て、可燃性・毒性がある。
モノシラン・ホスフィン・ジシランは自然発火性) 
  ・モノシラン    SiH4
  ・ホスフィン    PH3
  ・アルシン     AsH3
  ・ジボラン     B2H6
  ・セレン化水素  H2Se
  ・モノゲルマン  GeH4
  ・ジシラン     Si2H6 
共通事項
@ 大気中に放出すると自然発火又は分解
 爆発を生じる。
A 極めて強い毒性と腐食性を有する。
B 化学的に活性で、分解性に富み、
 その他の物質と急激に反応する。 
 2,モノシランの危険性
 
・化学式 SiH4、
 ・外観  常温で無職透明の気体で、臭気は濃度
  により異なり、濃くなると胸を悪くするような不快感。
  ・比重 1.11 爆発限界1.35〜100% 
 ・毒性 吸入により呼吸器を激しく刺激する。
[燃焼特性]   
 大気中に放出されると発火源がなくても常温で自然発火する。自然発火により音響と火災を発する。濃度の高いモノシランを大気中に流出させると、燃焼し、火炎温度は900℃ちかくにもなり、“黄褐色の粉末”を生じる。
 しかし、自然発火は濃度や放出条件により、生じないこともあり、低濃度の場合は放出時の流出速度により自然発火の「吹き消え」が生じる。このため、吹き消え現象により流出して拡散したモノシランが、拡散後に自然発火すると“爆発 ”を起こす
 また、半導体製造時に使用される亜酸化窒素(N2O)と混合すると、爆発危険性が極めて高く、爆ごうが起こり得る。
1928年(平成3年)10月2日大阪府豊中市大阪大学基礎工学部で起きた爆発火災は、モノシランガス・ボンベに亜酸化窒素ガスがバルブ操作ミスで流入したために、ボンベ内で爆発したものと報道されている。 
3,東京都内での「火災事例」
@ 1986年9月 11時
  バルブ操作を誤って、モノシランガスが滞留している領域に空気を入れた為、火災となり、実験棟屋外の除害装置などが焼損した。その他の火災。
A 1989年6月 9時
  排気系のバルブが開放されているのを、確認して閉鎖することなく、モノシランガスは配管内に流出させたため火災となった。ぼや火災
B 1989年12月 15時
 吸引ポンプと配管部に漏れがあり、N2の80%パージにより、低濃度となっていため、流出時に吹き消え現象が起こり、ガスボンベ・ボックス内で滞留したのち、「爆発火災」となった。ぼや火災
 4,火災調査上の視点
 
1) 取り扱われ方

 半導体等の製造工程に使用される。
 工程中のアモルファス製法の気相法に 適しており、半導体用材料として
ドーピングガス・エピタキシャルガス・フィルミングガスとして広範囲に使用されている。工程は、シリコン、ゲルマニュウムのウエハ(基板材料)に砒素やホウ素を微量混入させて、半導体とするが、ウエハの結晶を成長させる際に用いる。これらの中で、特に一般的な方法がCVD(化学的蒸着法)と呼ばれるもの。
 半導体製造の研究所・工場で、火災が発生する。
これらの施設は、内部が、二重三重に空気清浄されており、災害発生時の
“救出・消火”に手間取ることが多い。
火災後は、関係者から、内部の工程等をよく聞いて、毒性ガスの二次災害防止を徹底させて、調査にあたる。
 2) 現場での採取
モンシランの噴出部には“黄褐色の粉末又は塊”があり、これを採取して
 Siを検出し、モノシランの流出と自然発火を立証する。 噴出部に近い所は純白色で、色がついているのは不純物が混じった部分となる。(赤外線分光光度計等により二酸化珪素を分析する。)
 3) 供述内容など
一般的には、流出と同時に、「発火」するため、関係者供述では「パン」と音がして、煙と感知器の音響があった、となる。漏れると発火するため、分かりやすい火災原因調査である。「パン」の音は、配管等の内部で、空気と触れて、発火し、内部で膨張した火炎が配管等を吹き破るためである。
 しかし、 東京の事例Bのように、安全性の上からN2と混合させていると低濃度となり、流出と同時に「発火」しないことから、「爆発」を起こすので、大きな人的被害がでることがある。
 
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