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収れん火災
                             A3-03  改 11.01.02 転載を禁ず

  1, 収れん火災とは。
  2, 絵で見る収れん火災のさまざまなケース。(凸レンズ系と凹面鏡系)
  3, 「収れん火災」が冬型と言われていること。
  4, これからの「収れん火災」は季節感のないステンレス製ボールから火災が増えている。
  5, 収れん火災での焦点とは。
  6, 収れん火災の事例
  7, 太陽の高度と方位角について。

                   1,収れん火災               転載を禁ず
 
 ★ 収れん火災

  「しゅうれん」とは、光の束が一点に集まること、との意味があります。
  火災原因調査上のもっとも大きな特異点は、「火源が出火箇所にない。」ことです。
  似た例に「漏電火災」もありますが、漏電点はなくても、出火箇所に「出火点」があります。
  その点、「収れん火災」は、「発火源と出火箇所」が異なる唯一の火災原因とも言えます。
  このことから、出火箇所に、こだわりすぎて「原因を誤る」ことも多いと言えます。例えば、
  鏡台付近の出火で、「外出前の化粧時に吸ってタバコの火種が落ちたもの」と判定したら
  その鏡台から少し離れた所に置かれていた“凹面鏡が原因だった”て、ことがある。

  「収れん火災」と言われている火災は、経過分類の「9 その他」に放火等と一緒に分類されています。
  中身は、「太陽光」がレンズ等により集束した時に発熱する現象ですから 「3 熱的原因で・・」に分類されて
  もよさそうな原因です。
  現象面から「収れん」するためには、凸レンズか凹面鏡の2つに分類されます。
  実態としては、凸レンズは少なく、凹面鏡が多くあります。
  ① 凹面鏡 ②ステンレスボール ③水晶(ガラス)玉 などです。
  他にも、偶然的に発生した事例として、④水入りアレー、⑤ブロックガラス、⑥ワインビンやペットボトルの容器などもあり
  ます。 
  また、改良され、「現在はない」のですが、昔の「⑦レンズ付き虫かご」などです。


 
      
   このようにイロイロな対象があるので、例えば「ガラス玉」とか名称で発火源にしたいところですが、
  発火源としの名称は、2つだけの、凸レンズと凹面鏡だけで包含することとなっています。
  太陽光でない収れん火災事例
 ★ 火災の原因として、太陽光が収れんして「火災」を引き起こす原因の一つとして、「収れん火災」と呼んでいます。
  では、「太陽光だけか?」と言われるが、一応「太陽光だけ」にしている。そんな中で、非常に近い事例を一つ。

    ダウンライトの火災

 長尺の扉を取り付けた、新築住宅での火災事例。
 扉を開けた状態で止まった、ところ、天井のダウンライトの集光により、扉
 の上部が焼損した。
 この場合の光は、「ハロゲン光源電球」で集光させたのは「ダウンライト」
 の傘だった。取付業者が、扉は建具屋、ダウンライトは電気屋でどちら
 も、まさか、「火災」が起きるとは、思わなかった取り合わせだ。
 この場合は、発火源ば「ダウンライト」なので、電気火災として分類され
 た。「光」が収れんしての熱エネルギーが結果なので、「収れん火災」のよう
 な気もしないでもない、火災事例だった。


         2,どんな「収れん火災」があるのか? (絵で紹介します。)    転載を禁ず
             = 凸レンズ系 =

 もっともわかりやすい
 のが、凸レンズだ。
 平行光線に対して、
 “焦点”を明確に作っ
 てくれる。
 小学校の理科実験で
 使用します。
 いわゆる“虫メガネ”だ。
 ビニールハウスに
 溜まったた水レンズ。
 凸レンズ系の中で、自然
 界の現象として見られる。
 農家のビニールハウス
 で夏場に発生します。
 ただし、ハウスが燃え、水
 が無くなるので、原因不明
 で処理される場合がある。
 
 
 昔、流行した
 「虫メガネ付き虫かご
 月日、時間にあまり
 関係なく発生している。
 
 現在は市販されていな
 い。


 凸レンズの中で、
 水晶玉、ガラス玉、そ
 して、この水アレー
 水球がある。
 ペットボトルやワイン
 ビン
もある。

            = 凹面鏡系 =
  代表格の「凹面鏡」
 顔を見る時に見やすい
 ので作られている。
 片方が普通の鏡、裏が
 凹面鏡となっているも
 のが一般的だ。

 
 ステンレスボールには、台
 所の水切りに使用するもの
 やサラダボールとして使用
 するものなど調理用器具と
 して多品種のものがある。
 
 このタイプの類似に、道路
 の凸面鏡が割れて、その反
 対側の取付部が凹面となる
 こともある。

 
 凹面鏡による火災現場写真

 左1は、テーブル上の凹面鏡により、窓際のカーテンから
 出火し、室内が焼損したもの。

 左2は、室内の凹面鏡が収れんした箇所が、姿見の引き出し
 で、赤丸部分が焼損している。発見が早く、ぼやですんだ。

 左 建物の外装ミラー(熱反射ガラス)
 
 ステンレス製のミラー外壁を取り付けると、その部分
 がゆがむと、太陽光で焦点を結び、隣棟などの物を
 燃やすことがある。
  また、建物の外壁の形状が球形をもちいていて、
 外壁に反射ガラスを用いると、球形の鏡となって
 収れんを起こす。

 上左から太陽光⇒ 建物外装ミラーで収れんし⇒
 下左に収れん光が届き → 右図の飲食店のれん
 が、燃えたもの。 のれんの赤い筋は、右下から焼損
 線ができ、左上で大きく燃えた。

  このように、かなりの種類がある。
  水晶球と同じ凸レンズ系として、ペットボトルやワイン瓶なども湾曲部が凸レンズの作用をして、後方に
  焦点を結んで出火している。 ただし、{窓ガラスに付けるアクセサリーの吸盤}による火災は、あり得ない
  ことで、当時間違った判定が、そのまま継承されているが、間違いです。

  いずれにしても「太陽光」が決め手なので、光の入射の具合で、(偶発的)に発生する。
  再現時には、できる限り近い日の同じ時間(太陽の高度と方位角が同じ)に同じ場所で行う必要がある。
  時間により太陽の高度が変わり“焦点”を結ばないことになる。


   3, 収れん火災は冬型と言われたこと?
 ★ 統計から見た「収れん火災の発生状況」
 
 
 左表は、年代別の月別の収れん火災
 件数1975年(昭和50年)から、2008年
 (平成20年)

 これらの合計を月別のグラフとしたの
 が、右図です。
 右図から言えば、11月から2月の「冬」
 が多いと言えます。
 しかし、1980年~1989年の10年間の
 統計数値が大きいことが、要因となっ
 ています。
 現在(2007年)では、夏が多いのです。
 では、なぜ、そんなことになるのか?
 太陽は、昔から変わらないのに??
 「収れん」の仕組みが、変わって来た
 
 ★ 凸レンズと凹面鏡の中身
    1975年(昭和50年)頃の種類      凸レンズ ⇒ 虫かごのレンズ5件、虫メガネ1件
                              凹面鏡  ⇒ 凹面鏡7件、 ステンレス蓋1、鏡の壊れたもの。
    1980年(昭和55年)頃から10年間    凸レンズ ⇒ 虫メガネ2件、虫かご、フラスコ、水晶玉、水アレーなど
                             凹面鏡  ⇒ 凹面鏡12件、サンルームの屋根、反射ガラス、ステンレスボールなど。
    2004年(平成16年)から5年         凸レンズ4件。
                             凹面鏡15件。
                             反射板 3件。

  この原因となった物件を見ると、1980年頃の10年間では、凹面鏡そのものが多数を占めています。
  現在の統計でも、凹面鏡ですが、1980年のソレは「鏡」でしたが、最近の夏場の凹面鏡は、ステンレスボールです。
  このため、収れんとしては屋外に放置されやすい、夏場に起こることが多くなってきました。 



 
 ★ 収れん火災の多くが凹面鏡であった。
           このことが、「冬型」の原因であった。

  統計的に見て、最も多いのが凹面鏡であったことが「収れん火災は冬型
  とした原因です。
 その原因は、左図に平均的な日本家屋の矩計図(かなばかり図)です。
  東京(東経139°44' 、北緯35°39' )。
  冬至は12月22日頃で、そのときの南中には、太陽の高度は、30.95°

  夏至は6月22日頃で、そのときの高度は、77.75°
  太陽の高度は夏と冬で、約31°から約78°もの違いがあります。
  日本家屋は、軒先の張出によって、室内への「夏の暑い光を遮り」、逆に「冬は
  暖かい陽光」を室内(4.5畳間)にまんべんなく差し込むようになっている。

  このため、軒先により、夏場は気にしなくても良い「日差し」が、冬には、室内に
  入り込むため、「室内に置かれている物」に陽光が当たる。室内に入り込む光の
  奥行きが夏と冬では格段に異なる。
 
  この室内に深く入り込む陽光が凹面鏡にあたると、焦点を結ぶことになる。
  このように、「何気なく、室内に置かれる凹面鏡は、冬の室内に入り込む陽光に
  よって、発火源」となる。また、凹面鏡の焦点の計算式(後述)からも、太陽の
  入射角度が影響するため、「冬」に発生します。
  しかし、最近、1980年頃に各家庭で見られた「凹面鏡」も「鏡台」とともに姿を
  消しつつある。
  鏡台の姿見と対比する手鏡としての「凹面鏡」は、座って使用する鏡台が無く
  なり、かつ、椅子使用のドレッサーも次第に姿を消しつつあることから、凹面鏡
  そのものが無くなりつつある。

  4, これからの収れん火災は季節感のない、
      ステンレスボールの火災が出てきている。
    ステンレスボールの火災事例と実験
 ステンレス製水切りボールの収れん火災  実験 :自宅で使用しているボール  ボール内に入れたタオルの発火
 
 このように、ステンレス製ボールは、利用目的・全体の大きさ・湾曲部の形などによって、つさまざまな品物が市販されて
 いる。それだけ、各家庭内での数も多くなり、ベランダや窓際などに置かれることが多くなつてきたことから、このステンレス
 ボール火災が多くなりつつある。
 サバイバルではないが、点火装置がないときは、ステンレスボールがあれば、たやすく「火を起こせる」。
 
 増えつつあると言っても、「収れん火災」全体は、東京で1年間に平均して5件程度なので、別に、「増加」と言えるほど
 火災ではない。(「天ぷら油火災」のほうが、けが人の発生状況などから見て、より危険性の大きい火災である。)

 また、この種の収れん火災は、延焼火災となることはほとんどない。ボール内のゴミなどが燃えるだけで終わっている。
 ステンレス製ボールの収れん火災の事例

  ステンレス製ボールによる火災が、2009年3月17日12時ころ、世田谷区内の住宅で発生した。
 マンションベランダのクーラ屋外機上に置かれていた、ボール内の雑巾等の物件が焼損し、あわせて
 その側に置かれていた植木のプランターも焼損した。出火に気づいた居住者が消火した。

 左写真から。
 水切り用のステンレス製ボールで大き
 さが、50cm程度ある。
 焼損物は捨てられていたことから、
 変色したボール側面の状態から、
 中に入れられていた雑巾、ブラシなど
はかなりの物があったものと推定される。

 翌日の同時刻、同場所で“再現実験”を
 行った。右写真のように、焦点ができ
 直ちに、発煙を始めた。


 この火災では、3月17日の12時は、太陽の高度が約50°
 方位角が180
°となり、直南から入射した太陽光により、
 ボールの側壁の湾曲部により、収れんが発生する。

  図示すると、左図のようになる。
  太陽の角度50°で、真南からの高度しては、やや低い
  高さの高度の時に、底部に入れられた物件に焦点が
  できる。

  水平面では、湾曲部の円弧の“焦点は、中心点と側壁と
  の中間にできる。

                  5, 収れん火災での“焦点”とは       転載を禁ず
        = 凸レンズ =
 凸レンズの焦点距離
  一般的な凸レンズの焦点距離fは、両球面の半径をR1、R2とする時の
  近似式は次式になる。  
     R1、R2と同じなので、
   
f を求める式に直すと、   
   
 
は、屈折率で、ガラスは1.5なので、結局 半径Rの1/2となる
  つまり、局面の半径がわかれば、その1/2の距離が焦点である。
   逆に、凸レンズでは、焦点を実地試験して、その2倍がレンズの半径。

 球体の焦点の簡略式
  球体の焦点距離
 凸レンズ2枚と異なり、球体では屈折率によるひずみが大きいことから、
 近似式では、焦点距離にズレが出て、この簡易式では、誤差が大きくなる。

  そこで、球体レンズ(半径R)では、「光線追跡法」により求める。
  中心線(法線)から、近傍の10°の光束の焦点のみを算出して、求める。
           入射角   φ=10°
           屈折角   

  焦点距離
f=
Rsin(2r-φ){tan(90-2r+φ)+tan(90+2r-2φ)}
 
光線追跡法での計算と簡略式との差は、2桁目で少し違う程度です。
 (つまり、光線法だと86.3mmとなった数値が簡略法だと85.2mmとか。)
 
 
 ここで、この計算式を簡略化した右の式を用いる
 事例としては、直径9.5cmの水アレーであれば、r=4.75 n=1.33
 を入れると
  f=9.57cmが焦点距離となる。
  


 
 水アレーやペットポトルなどの「水」球の
 場合。
 入射角度30度の条件で、太陽高度が
 起きる時期は、

 冬至12月21日の南天の、11時と
 12時30分頃で、
 この冬至の前後40日ほどのお昼前
 後の限られた時間だけである。
 図の日の時刻の実線上の時だけ。

 
「球体の収れん火災の出火点」早分かり
 左のように、図式すると sinφ=r/f
 =r/nr/2(n-1) =2(n-1)/n  
となり、結局、球体の大きさに関係
 なく、入射角度が一定となる。
 水 n=1.33 だと、sinφ= 0.496  φ= 約30度 となる。
水晶玉 n=1.54 だと、sinφ= 0.70  φ= 約45度 となる。
 ガラス玉 n=1.47 だと、sinφ= 0.639  φ= 約40度 となる。
 
ガラスの屈折率は、メガネガラスや板ガラスなどの材質によって、
 屈折率は、1.42~1.63までさまざまである。
 つまり、直径15cmの水晶球の焦点は、Φが45度の所にできるの
 で、球が水平と接する点から、半径7.5cmと同じ離れた「所」となる。
 水球だと、直径15cmで、角度30度だから7.5×√3 =13cmで
 球の接地点から13cmの所が「出火点」となる。

 ここで、東京消防「新火災調査教本」第6巻の「収れん火災」の中に、
 火災事例5「水晶球の火災」が例示されているが、火災時の「太陽
 入射角度」が、40度なっている。水晶の屈折率は一定で1.54である
 事から、45度の入射角以外で「出火」することはない。
 つまり、この玉は、水晶と偽っ「ガラス玉」ではないかと思う。と、
 思って良く見たら、座布団の上に置かれていた、つまり、球体が沈む
 ので水平線がズレて、入射角40度でも焦点の位置が水平線より5度
 ズレて、焦点を結ぶことになります。
 ★ 左の図のように、水球の場合は、30度の入射角の太陽光は、
 冬至前後の冬場の限られた[月日・時間]しか起こり得ない。
 
         = 凹面鏡 =


 凹面鏡の焦点は、作図するとわかるように、
 球面の直径の中間点(半分の所)に焦点が来る。

 
f=r/2 となる。
 
 そして、太陽光の入射角度が球面の光軸とずれると
  
f=r(1-1/2cosθとなる。
 θが0に近いと無視できるが、
      θ=30度で0.42
rθ=45度で0.3r、
      θ=60度では、焦点が存在しなくなる。

 f=r{1-cosθ/2cos(a+θ)}  
 f=r{sinθ/2cos(a+θ)} のズレを出す式もある。
  

 
火災現場での凹面鏡の見分
 火災現場で凹面鏡を見分する際には、直径2bと深さを測定する。
 f=(b)/4a =/4a
 

 直径が12.2cm、深さ0.11cmの凹面鏡は、f=(6.1)2/4×0.11 =84.6cmとなる。
 だいたいの凹面鏡は、80cmから90cmの焦点距離が多い。


                6, 収れん火災の事例            転載を禁ず
  凹面鏡のもっとも一般的な事例 
 
 11月 9時40分頃に出火し、パネルヒータに掛
 けてあった毛布が焼損した。

 凹面鏡は、直径15cm、深さ0.15cm。
 焦点距離は、f=(15/2)2 /(4×0.15) =94cm

 ( 鏡の光軸が太陽入射角に対して、30度程
  度であると、f= 188×0.42=79cmとなる)
  鏡から燃えた毛布までの距離は約80cmとなる。

 実験では、白い綿布では発煙せず、
 白黒模様の綿布を使用すると、黒色の所で発煙し
 綿布の下の毛布が、3分20秒後に発炎した。
         1986年2月 月刊「東京消防」主任調査員からの報告No49から
 
 12月 14時45分頃に出火し、ソファー
 座布団・クッション当が焼損した。

 テーブルの上の凹面鏡は、直径12.2cm
 深さ0.11cm。焦点距離 f=84.6cm
 
 実験では、白い布カバーでも発煙はした。
 60cm距離で、黒布地を使用すると、
 7秒で発煙、26秒で煙が活発となり、その
 後継続して、背面に達し、42分後に発炎し
 た。
 (60cmなので45度程度のズレがあった
 ものと推測される。)
   1990年2月 月刊「東京消防」主任調査員からの報告No108から
  他に、 1990年夏 N0.21 「消防科学と情報」 「収れん火災」がある。これは私が書いたので、分かりやすい。
  他に、 1999年12月7日11時44分頃 港区 窓際のテーブル上の凹面鏡(焦点距離42cm)が
   寄せられていたカーテンに太陽光を収れんさせて出火し、居室が焼損した部分焼火災が発生している。  
 
   凸レンズの火災事例 

雨水の凸レンズは、燃えると「無くなる」
ので、火災原因の判定が出来ず
火災事例としての報告が少ない。

実験では、計測値はないが、
焦点距離が85cm、水容量1,000?から
直径27cm、深さ3.4cmと計算される。
 2010年4月3日 13時15分頃出火し、家庭菜園のウドとその覆いを
 焼損した。

 家庭菜園内のウドに伏せこみと言う、ゴザとビニールシート囲った中で栽培
 していた。覆いのビニールシートに溜まった雨水により太陽光が収れんた。
 実験では、水1000m?により、焦点距離の85cmの凸レンズを作成し
 焦点距離を85cmにして実施、
 中に敷かれた、オガ屑が無炎燃焼し、「送風したら」発炎した。
 太陽高度は、57度前後。(水たまりの大きさ・深さの測定はない。)
 (半球体の水レンズを想定すると f=r/0.33 となり、
  水凸レンズの焦点を85cmでは球体半径はr=28cm となる。
 水の体積が1000ccなので半月球体の体積に代入すると、水たまりの
 半径と深さが算出できる。
 月型球体の体積はV=π(3r-L)L2 /3 なので、r=28、V=1,000で、L=3.4cm
 つまり、水たまりが月型球体に近いとすると、直径27cm、深さ3.4cm。)
 
   2010年10月 第58回 全国消防技術者会議 北九州市消防局 「収れん火災の調査について」から

球体レンズの火災

 1990年2月 10時00分ころ出火し、居室内のジュウタンの一部を焼損した
 
 出火の原因となつたのは床面に放置されていた「ウォータアレー」と言う
 スポーツ用具で、プラスチックのアレー型容器の中に、水又は砂などを入れて
 重さを調整して、使用する用具である。
 球体部の直径は9cmで、全体長さが28cmである。 
 球体レンズの焦点距離を、この場合は「光線追跡法」により算出している。
 その計算により、焦点は f=8.97cmである。
 つまり、直径4.5cmであることから、長辺9cm、短辺4.5cmの鋭角30度の三角形となる。
 
 6.収れん火災での焦点、の「球体の収れん火災の出火点」で算出しているように、水球体で
 は、太陽入射角が30度でないと、有効な焦点とはならないことからも、計算どおりとなる。

 火災時の出火当日の午後10時の太陽入射角は「30度」であった。
  1991年4月 月刊「東京消防」主任調査員からの報告No123から
 類似事例: 
 2010年12月 火災誌No309 [火災発生事例]
         「ぺットボトルが太陽光を終息し発生した収れん火災」から

  このペットボトルは、S社製のProteinWaterと言う飲み物で、包装シールを外して、水を入れて、上の事例の
 ように水アレーとして使用していた。火災は、2010年1月8日11時40分頃に床に置かれたペットボトルの収れん
 により出火した。容器の包装紙を外して、水を入れて「水アレー」として使用していたものである。

 出火時の太陽高度が、32.1度。 第1回実験時26.9度、第2回実験時29.3度、とある。
 第1回実験時の条件では有効な焦点が形成されないはずである。 このため、実験では、球体の静置した状態
 でなく、着火物を焦点のある所に動かして実験している。 収れん火災の再現実験は、出火した状態で再現実験
 するのが基本です。
 
 500ccペットボトルの収れんの起こる条件は、下例のように、他にもある。  
  火災誌の火災事例で紹介されている以外にも、K社の球体3つタイプのペットボトルが市販されている。
  自宅で実験したみた、11時すぎの太陽高度30度になると、床面に収れんができて、発煙を始める。
  黒い布が、発煙が分かりやすい。
収れん火災の原因と
なったS社飲料水ボトル
 K社のフルーツパンチの容器
包装紙を外して、水を入れる。
 焦点のところに黒い紙・布を置くと
 発煙を始める。球形に近い形。
“猫除け用のペットボトル”により収れん火災となった事例
 この火災は、当時、新聞報道されたことから、一般に理解していただき、以後の火災予防へとつながった。
 東京新聞、産経新聞、日刊スポーツなどに取り上げられ、TVでも放映されている。
 1994年(平成6年)11月1日12時52分頃、江戸川区南小岩のブロック塀の上に置かれたペットボトルが
 太陽光を収れんさせ、その後ろにあった廃材が出火し、建物に燃え移る前に近隣者により消火された火災
 である。
 
 
 猫除け用のペットボトルは、
 光の乱反射で猫が嫌がる
 と言う口コミが広がり、ラベル
 を剥がした、ペットボトルに
 「水」を入れて、猫の通り道
 に並べることが流行っている。
 
 
 再現実験では、太陽の入射角度34度の時に、ボトルの後ろ約3cmの所に焦点をつくる。
 後ろに置いた廃材は、焦点を結ぶと同時に発煙し、3分ごには無炎燃焼のオキ火の状態となり、18分後には
 発炎して燃え上がった。
 オキ火状態から発炎は、風などの影響でもっと早まったり、遅くなったりする。
 
 ★ この実験でもわかるが、収れん火災の着火物としては「廃材」が最も効率的に着火しやすい物と言える。
   なお、現在(2010年11月)時点で、先端部が球形状のこのタイプの1?ペットボトルは、存在しない。もっと鋭角
   の形となっている。
 

建物の外壁凹面部の火災事例

   建物外壁の熱線反射ガラスが太陽光を収れんさせ、路上の駐車バイクを焼損させた

 〇印が路上駐車の焼損したバイク。
 外壁面により太陽光が散乱している
 のがわかる。

1994年(平成6年)3月25日14時25分頃
 出火した車両火災。
 大田区蒲田のビル前に駐車していたバイク
 の座席シートが焼損した。
 原因は北東のビル外壁のガラスによる収れ
 ん火災である。

 当日の太陽の位置は
  高度 h=41.8度
  方位角 A=233.7度 (理科年表から算出)

 外壁面の1/4円の半径は、4.55mであった。
 
 外壁面の半径から、焦点距離
 
f=r/2から、
 焦点距離 a=f=2.275m
 
 反射ガラスの外壁は、
 高さ2.54m~4.87mに張ら
 れており、太陽高度から
 反射光の高さは0.5m~2.3m
 の範囲に反射する。
 バイクの座席高さが0.8mで
 反射光に該当する。
 
 太陽と天頂との球面三角法

 三角法による算出では、建物経度139.74
 北緯35.65を入れて算出する。
 今は、ネットで調べられる。
 
 建物が北の方向と少しズレ
ていた。この8度のズレを加
 算した。
 焦点を結ぶのは、太陽が
 建物の南西にぴったりに来
 る必要がある。
 南西は225度で+8度
 233度となる。
 
 
★偶然性
 
 このように、建物の形状から、1/4円形の光軸上にん来ないと、焦点が造り難いことから、太陽の方位角が、
  建物のズレを考慮して、233度付近でなければならない。これにより円形部で焦点2.27m付近で出来る。
 
  次に、ガラス面からの反射光が入射=反射の関係から、太陽高度が40度前後でないと、高さ0.8mの位置に
  焦点を作らない。夏至や冬至などの場合は、高すぎるか低すぎて、座席の位置には来ないことになる。
  なお、ぴったりの位置にバイクを停めない、これも無理である。


 ★熱エネルギー
 標準気象年の晴天日傾斜角度別日射量(東京、方位角南天)で、3月、14時、壁面傾斜角90度の場合、
 w=387k?/㎡h である。
 全体の光エネルギーは、W=387*10*0.14*2/60*0.3 =540? となった。
           ( 0.14は、2cmの受光面積、2/60は日射時間2分間、0.3は熱線ガラスの反射率)
   バイクシートの出火熱量 Q=mcΔt とすると、540?でシートのポリ塩化ビニールの4gを発火点
   454℃に上げることができる。

  1994年8月 火災誌No211[火災発生事例] 「太陽光線の収れんによる火災」から

 
 8,太陽の高さ・方位角について
 太陽の「高度」は、収れん火災で重要なファクターとなっている。
 しかし、それらは、当日の日時が分かれば、ネット検索等によって算出できるので、最も注意を要するのは、
 「現場での計測」である。 始めのところで触れたように、「収れん火災」は、発火源と出火点が、相違する
 極めてまれな火災原因であることから、関連物の位置関係が重要で、「正確な計測なし」には、原因立証
 が難しなる。
  事例の建物外壁ガラスの太陽高度・方位角の計算(球面三角法)は、今や、「過去の話題」となった。
  現在は、国立天文台のネットから、月日時・場所における「太陽の高度・方位角」は容易に算出できる
  「国立天文台」( http://www.nao.ac.jp/ )⇒ 月/日出入りの情報(暦) ⇒ こよみの計算
  「国立天文台・天文情報センター 暦計算室
     (
http://www.nao.ac.jp/cgi-bin/koyomi/koyomix.cgi )
  このページの中で、「暦の計算」の中で、月日時・場所の条件を代入するだけで、「太陽の高度・方位角
 が算出できる。 なお、[太陽の高度、方位角および影の概略値の求め方]は、天文台のH.P内の暦計算
 室のトピックス
 (太陽の高度,方位角および影の位置の概略値の求め方)のPDFで読み取る。

 左の太陽高度の概略図で、大まかな
 高度がつかめる。10時の時刻の高度
 の月日の変化が上の図です。
 立春2月4日の30度から、夏至6月21
 日の65度までの変化がある。
  
  太陽からの放射を太陽放射と言われ、日中の地球大気上端の太陽に垂直な面に到達する太陽放射の
  エネルギーは、1平方メートル当たり約1370ワット(W/m2)である。1.37kW/㎡となる。この中で、
  実際に地面の到達量としては、東京を松本で近似すると、1月の日達日射量は、0.85kWとなる。
  松本 1月0.86 2月0.88 3月0.87 4月0.85 5月0.84 6月0.82 7月0.82 8月0.81 9月0.83 10月0.84
      11月0.83 12月0.82 と測定されている(理科年表)。  
 一日の時間別の日射量の変化(1月の場合)  太陽軸に対する傾斜角度別の量変化(3月の12時)
 月別の変化は少ないが、上図のとおり「時間別の日射量の変化」は大きく、有効な太陽光のエネルギーは、
 12時の前後2時間程度となる。
 そして、「傾斜角度別」では、上右グラフのとおり、3月の太陽高度に最も近い30°の傾斜が光軸に垂直とな
 ることから最も有効方向となる。
 さらに、凸レンズ系と違い凹面鏡系の焦点は、焦点距離が遠いため、焦点が着火物の一定点に留まる
 時間積分
が出火熱量以上となる必要がある。冬至(12月22日)は、日の出から日の入りまでの約580分の
 間に太陽は南天を中心に120°移動し、夏至(6月21日)は870分をかけて270°移動する、その1分あたり
 の移動角度は、冬のほうが遅くなる。 これが焦点の長いと、入射角度に対する焦点長さの変化(cosθ)
 と重複して、影響が大きくでる。つまり、凹面鏡の様な焦点距離の長いものは、冬場のほうが着火物に対する
 太陽光の受熱量がより大きくなる。
 冬の太陽のほうが弱そうだが、直達日射量は変わらないので、焦点距離移動のほうが影響が大きい。
 また、冬場のほうが、東京近郊は「晴れの日」が多く、入射角度30°の条件や焦点移動速度からも、
 
冬場のゆ凹面鏡系の「火災が多い」ことがわかる。
 
       たいへん長い論文に付き合っていただいて、ありがとうございました。

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