火災調査探偵団 Fire Investigation Reserch Team for Fire Fighters |
Title:「飛び火火災」 |
A3−25 08’ 05/24 →17' 11/04 飛び火火災 < (微小火源の火災) <火災原因調査 <ホーム:「火災調査探偵団」 |
1,「飛び火火災」の解説 | ||||||
「飛び火火災」は、大火の火災の研究から発している。 飛び火火災は、「大火(たいか)火災」の主たる原因として、最も大きく取り上げられ、そして、気象との関係で、議論された経緯がある。一般人が大火火災 に遭遇して、感じる話として適切な著作「本」としては、菅原進一先生「都市の大火と防火計画」(共立出版)に記載されている。 そして、理論的な記述は、火災便覧に山下邦博先生が「火災と気象」の中で記述されている。 さらに、この研究過程で、瓦屋根の「さん瓦」の重ね合わせのすき間に、「飛び火」が入り込んでルーフィング・野地板を燃やして「延焼」すると言う研究 が実験的に示されて、強風時の「飛び火火災」では、瓦屋根であっても危険性がある、とも言われている。 いずれにしても「飛び火火災」は、1件の建物火災に端を発して、消火活動の頭越しに「延焼する」火災であり、現在では「火の粉」として捉えられるもの ではなく、消防戦術を含めて、捉えるものとなっている。そのため、事例として、一般の建物火災だけでなく、阪神淡路大震災地に見られた「延焼拡大」す る火災として取り上げた。 火災統計からの側面 昔は、「飛び火火災」が多くあり、特に「煙突」「汽車」からの「火の粉による火災」としも取り上げられており、、昭和30年代の統計ではかなりの件数があり、 「風呂屋の煙突」だけでもそれなりの数字が計上されている。 このため、「火災報告取扱要領」の「発火源分類」では、番号4301「固定煙突の火の粉」から4316「パン焼器の火の粉」など十幾つが「発火源」として扱 われ、経過分類として45「火の粉が散る、飛び火する」が該当するものとしている。 しかし、東京消防庁では、平成7年の改正で「発火源」としての物件類と、「経過」分類との重複をさせないとする統計分類の基本な考え方としたことから、 発火源番号に「経過」が含まれるものは努めて「抹消」したため、分類番号43コードは国の統計分類の44コード(火花)を入れ、さらに国の44コードに64コード (再燃火源)を入れて、整合性をとることとしている。その中でも国の統計分類4307(炎上家屋の火の粉)は、個別の「発火源」とならないため、4コードの49 「その他」の中で、「炎上家屋の火の粉」としている。 これは、例えば、「たき火の火災」で、国の統計では、発火源4303「たき火の火の粉」となり、経過43 「火の粉が飛ぶ」となることかる、もともとの発火源4103「たき火、焼却火」による「火の粉が飛ぶ」と重複統計となるためである。また、発火源の「固定煙突 の火の粉」では、何の「煙突」だか分からないため「炉」なのか「かまど」なのかを、発火源の3分類のコードから取り込む必要があるためにおこなっている。 「飛び火」のこと 飛び火火災は、「大火(たいか)火災」の主たる原因として、大きく取り上げられ、気象との関係で議論されている。 一般に「大火火災」に関して分かりやすい読本は、菅原進一先生「都市の大火と防火計画」(共立出版)があり、理論的 な記述は、火災便覧に山下邦博先生が「火災と気象」の中で記述されている。昭和32年の火災学会誌のNo25(1957年 11月)特集号として取り上げられている。 また、東京消防庁の昭和24(1949年)〜27(1952年)まで4年間の火災311件について「煙突と飛火の距離」の散布図を、 塚本先生「火災原因調査ノート」(東京法令出版、昭和61年版)に掲載されている。 大火時の「飛び火」の原因考察の一つとし、瓦屋根の「さん瓦」の重ね合わせのすき間に、「飛び火」が入り込んで ルーフィング・野地板を燃やし「延焼」するとプロセスの研究が実験により示され、強風時の「飛び火火災」は、瓦屋根 であっても危険性があるとされている。 瓦屋根への「飛び火」の延焼例・糸魚川広域火災 飛び火による「瓦屋根の出火」が、2016年「糸魚川広域火災」の事例として報告されている。 <平成29年5月「糸魚川市大規模火災を踏まえた今後の消防のあり方に関する検討会」> 2016年12月22日糸魚川広域火災は、30時間燃え続け、147棟、約40,000m2が焼損した。午前10時に平均風速約12m/s 最大風速13.9m/s、午前11時の最大瞬間風速では27.2m/sを記録しており、延焼中の平均風速10m/sを超えていた。 フェーン現象が起き、強風注意報が発表されていたと報じられている。このように、強風は延焼において強い影響をおぼ すが、それは、風下側への火炎の伸びによる影響とあわせて「飛び火」も発生する二重の要因が取り上げられる。
屋根からの焼損事例が写真を踏まえて良くわかるものとなっている。 出火原因としての「飛び火」火災 昔の火災統計では、発火源「煙突」又は「汽車の火の粉」で調べると、経過は「飛び火」がほとんどとなる。 塚本先生の「火災原因調査ノート」では、「煙突が低い」と風の影響が少なく、一応煙突高さ15m以上の場合として、次の経 験式が提起されている。 統計結果から [X=1.9y+4z−26] (X;飛散距離、y;煙突の高さ、z;風速) この式だと、木造二階建ての建物火災で、火炎高さy=15mとすると、風速が10m/s だと、飛散距離]=42.5mとなり、街区 程度の飛び火が起きることとなる。 次に、火災便覧掲載、山下先生によると「煙突から出た火粉の散布」は大気汚染濃度分布式にあてはめて考察されると して、地上の汚染濃度の最大距離は、 [X=h/(√2*√v2 /U) ] ( h :煙突高さ 、U:平均速度 v2 :風速変動の自乗平均 √v2 /U :風の乱れの強さ) 東京の消防署の望楼を使って調べたところ、市街地の風の乱れの強さは √v2/U=1/4=0.25に近い値がえられたことから、 煙突(8m〜12m)の風速(5m〜12m/s)では、近似式 X=2√2×h=2.8hの近似式となる、と示されている。 つまり、煙突高さ(h)に2.8倍した水平距離が最も影響しやすい距離となる。 h=15mであれば、X=42mとなり、[h:15m、v:10m/s]の条件では、塚本氏とほぼ一致するが、煙突高さ等の条件による 両式の違いは大きい。 これらは、「火の粉」の微笑火源に着目した際に、火災原因を考える辺地域の範囲を立証上の必要条件とする場合 に有用となる。 |
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2, 火災現場で実感した「飛び火火災」 | ||||||
風もほとんどない火災現場での4ヶ所の「飛び火火災」 この火災は、@の火災現場では、5棟500u程が焼損した火災だった。 風が北東から1.4mしか吹いていなかったが、Aの35mのマンション建設現場の資材置き場で燃え、 さらに、そのマンションを超えた地点の3ケ所B〜Dの「飛び火」が見られた。一番遠い所では、120m離れていた(風速1.4m程度なのに)。 炎上している建物は、実は、建築中の建売住宅で、外壁も瓦もない、ただの屋根ベニヤ葺きの柱・床だけの工事中の建物だった。 つまり、このような、言わば屋根も含めて「純木造」に近い建物は、燃えた木切れ(火の粉)が、非常に高く舞い上がることが分かる。 炎上写真からも「炎」高さは10m程度だが、飛び火した距離から、2√2で逆算すると「火炎の火の粉」の高さは44mまで、上がっていることになる。 つまり、炎上家屋は、炎の高さの約4倍の高さまで、「火の粉」を舞上げる力があることになる(少しアバウトだが、もちろん燃えている建物にため、 通常の瓦絵ねでは、屋根が抜けていて、せいぜい2倍程度かも?)。 ☆ 「強風時の飛び火」火災の警戒は当然として。 弱い風の時でも、2階建て住宅の瓦が全て、取り除かれて「炎上」としている時は、風下100m付近までの地域の飛び火警戒が必要となる。 |
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3, 阪神淡路大震災に見る「震災時の飛び火火災」 | ||||||
震災時の「飛び火災」の局面 下左の写真は、震災時に発生した、火災現場から100m以上離れた、庭先で採取した、燃えた木切れ(飛び火)。大きさが6cm以上もある木片もあり、 芝生の庭先に多数落ちていた。 下中写真は、屋根から燃えて、下に燃え下がったと見られる焼損した建物。 下右写真は、屋根の瓦が地震で落ち・ずれて、下地板が露出している住宅。 この下の3枚の写真から、右写真のように、地震で建物が損傷し、屋根瓦がずれて、下地材がむき出しになると、上空から「飛び火」として落ちてくる と左写真のような燃えた木切れ(飛び火)に対して、防火耐力がなく屋根の下地板から燃えることである。そして、結果として、写真中のような、屋根か ら燃えて「焼損した建物」が見られることとなる。 震災は、強い風によらなくても、「大火」を引き起こす。 弱い風によっても、「飛び火」は、かなりの範囲に飛び、そして、屋根の防火耐力のない、建物を燃やす。 消防の活動では、次々と住宅が燃えて広がっていく、印象から、「延焼拡大した」と捉えられるが、実際の火災の個々の「原因」としては、「飛び火による 屋根面からの出火」が地域的に燃え広がり、合流して、始めの所からの「延焼」のように、結果として、見られる現場が十は可なりあるのではと思う。 震災時には、強い風がなくても、「飛び火火災」を引き起こす。 ☆ 「兵庫県南部地震の火災の一局面」として「火災誌No,217」 1996'08 で掲載しています。
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4,「飛び火火災」を増長する、都市型の震災時火災の様相 | ||||||
都市型の震災時の「飛び火火災」 震災時には、耐火建物内部に「延焼」しても、消防力が「面的な防火線」を張ることを主眼とするため、建物への内部進入による放水はなされなく、ある 意味「燃えるに任される。」こととなる。 そのため、ある高さ以上の上層階では、いつまでも「燃え続ける」。燃え続けた「結果」が下中写真の居室内の灰化した「焼損状況」である。 通常の2階建て木造住宅が炎上する際の「高さ」をはるかに越えた高さで、燃え続ける、この上層階からの「飛び火」は、風を受けると相当の広い範囲 まで拡散されることになる。 下左写真の耐火建物火災を見ていた近隣者の話しでは、「夜中に 「ロウソク」が真っ暗の街に灯っているような視覚だった」と言っている。 都市型の震災時の火災は、延焼において、従来と全くことなる「中高層建物火災の高さを踏み台として、延焼拡大「飛び火」と言う、別のファクター」を生 み出す。 単に、関東大震災時の研究者が行ったと同じレベルの「楕円形の延焼拡大・時間別推移」に拘泥していると、延焼阻止線の部隊の後ろ地域から火の手 があることになる。 「震災時には、鎮火しない耐火建物の火災とその周辺にある瓦木造住宅との混在がある限りは、飛び火による火災拡大と言うテーマ」は、新たな消防活 動戦術の課題でもある。 ☆なお、これは、神戸市消防局編集「阪神・淡路大震災における消防活動の記録」の中では、神戸大学の室崎先生(前消防科学研究所長)の「かまど現象」 として記載されている。
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