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ライターによる火災
                        A3-40   09.12.05 -10.02.21 

  1, ライター
 
 ★ ライターは、喫煙、特に紙巻きタバコの点火用器具として、また、ガスや石油機器など
  の点火にも用いられる。
  ライターにはいくつかの種類があり、その用途によって使い分けられている。
  
  ・ヤスリ式の携帯用簡易ガスライター
   通常、100円ライターなどと呼ばれ、その中でも、発火ヤスリを親指で回転させて、発火石の
   火花により、噴出しているガスに着火させる。
  
  ・電子式携帯用簡易ガスライター
   圧電装置により火花を発火させて、ガスに着火する。
   その中で、ノズル部分が長くガスこんろなどの点火に用いるものを通常「チャッカ・マン」など
   と呼んでいる。このチャッカ・マンには「チャルドロック」用のスイッチが取り付けられている。
 
 ・ターボ式簡易ガスライター
  ターボ式は、内燃ライターと呼ばれ、通常のライターの火のように自然の中で空気と混合して
  「炎」となるのに対して、燃焼筒内で空気の取り入れ、予混合による完全燃焼の「炎」に
  している。通常は、口金に白金などの線を取り付けたカタライザーを取り付けて、「炎」を見や
  すくしている。強風下でも使用できる。反面、山などの気圧の低い所では点火できない。

  
ライターの分類表記

  ★ ガスの充填・補充の分類
    注入式ライター           燃料(ガス又はオイル)を再充填して使用できるライター
    ディスポーザブルライター  燃料の再充填のできないもの。使い捨てライター、と呼ばれる。

  ★ 燃料による分類
     ガスライター  と  オイルライター

  ★ 着火方法による分類
    フリントライター     フリントとやすりをこすり合わせ、発火した火花で燃料に着火させる。
    電子ライター      衝撃を与えると高電圧を発生する圧電装置を使い、火花放電で燃料に着火させる。
    電池ライター       内蔵された電池(ボタン型電池)を使い、火花放電で燃料に着火させる。

  ★ 燃料方式による分類
     プリミキングライター   あらかじめ燃焼に適した混合ガスを生成し、燃焼筒内部で完全燃焼させる仕組み
                    のライター。ターボ、フレームレスなどと呼ばれる内燃ライターやジェット・バーナー
                   フレーム式ライターのことを指す。フレームレスの場合は、炎の中に金属線を入れて
                   炎色反応で色をだしている。使用時に風などの影響を受けない。ただし、高山の低気圧
                   着火斉が悪い。
    ポストミキシングライター  ターボ等以外の通常の製品。 ・ライター内のガス

    ライターの流通
  
   国内のライターの流通量は、平成20年で、輸入が88%、国産が12%となっており、
  
輸入[千個] 国内生産[千個]
注入式 70,489 363
ディスポ 493,962 77,080
  合計 641,894

   平成20年の(社)日本喫煙具協会の「国内需要動向調査報告」によると、国内で約6億4200万個のライターが
  流通して使用されていることになる。 1億人の国民から平均して、誰もが6個近く持っていることになる。

  ・ 国内流通品には、(社)日本喫煙具協会の「型式確認適合品」のきシールが貼付されている。
   しかし、これは業界団体の自主規制のため、登録事業者が貼付しており、約半数は対象となつていない。
   自主基準は「シガレットライター安全基準」と「携帯要簡易ガスライターの認定基準」がある。

 ★ USAの基準
  消費者製品安全委員会が、チャイルドレジスタンス機構(幼児安全基準)を平成6年に策定し、製造・輸入品に対して
  基準を守らせている。
  例えば、要件としてい、「試験において幼児パネルの85%について、ライターの完全な作動を防止しうるもの
                となつている。 幼児パネルとは、42~44ケ月の幼児約30人、45~48ケ月約40人
                49~51ケ月約30人の子供の集団100人に使用されせた時の条件である。」
  つまり、大まかに言うと、「4歳の85%が、ライターを自分では使用できない。」と言うことになる。。     
  
 EUも平成14年に同様の基準を設けている。

 ★
  ガスは、n-ブタン、イソブタン、プロパンが充填されており、メーカによって異なり、また、寒冷地
  などでは沸点の低いプロパンを多く含有するなど、差異がある。


 左が電子ライター
 
 意匠性の高い
 ライト付きの電子ラ
 イターで、遊び心の
 ある物が多くなって
  いる。
 電子ライターの構造
 (写真と上下逆

 電子ライターは
 レバーを下げるだけ
 で、点火・着火がで
 きる。
 
 上の写真は、従来の回転ヤスリ式の簡易
 ライター。
 
 電子ライターと異なり、点火・着火させるのに、
 コツがいる。小学校低学年では、少し難しい構
 造となっている。
  この電子ライターの構造で、今は「電池ライター」が幅広く利用されている。
  電池ライターは、電子ライター以上に容易に着火させることができる。
 
 
 
   2, 子供の火遊びとの関係

 ライターでもっとも「火災」に影響しているのが、子供の火遊びだ。
 平成16年(2004年)から20年(2008年)までの5年間の「子供の火遊び」の発火源を調べる。
 5年間で833件の「火遊びの火災」がある。 

 左図のように、5年間の833件の中で、不明が44%あるが、
 全体の43%が「ライター」と判定されている。
 
 火災原因調査では、明確に立証できえない現場では「不明」
 と処理されるので、このライターの43%は行為者の子供の
 供述または、第三者の目撃があるもの限られている。
 その中で43%は、大きい数字で、実態としては「不明」を除い
 た場合の77%が、全体の火遊びの火災で、火源がライター
 によるものと推定される。

 同様に、10年前の平成6年(1994年)の「火遊び」の発火
 源は、ライターが全体の31%、マッチが11%であった。この
 10年間で、12ポイントも「火遊び」でのライターの占める割合
 が増加している。

 これを、年齢別に調べてみる。
 (但し、平成16年から18年の3年間の統計しかとれなかった。また、14歳以上は「火遊び」でなく
  「放火」に分類されるので、必然的に行為者は14歳未満となる。)


 
 平成16年から3年間212件のライターを
 もちいた「火遊び」で行為者の年齢を調べ
 るたグラフ。
 
 このグラフでは、
 6歳未満      21%
 6歳から12歳が   52%
 12歳から14歳が  27%  となる。

 電子ライターの「使いやすさ」が6歳未満の
 子供でも扱える物となり、これだけ大きい
 割合となっている。

 
 さらに、平成21年8月に出され、11月に都の生活安全課で報道対応がなされた数字を掲載する。
 
 平成11年から20年までの10年間の「火遊び(12歳以下)」における火源が判明している711件
 を調べる。(14歳以下だと744件となるが、子供の対策が主点なので12歳以下の統計となった。)
 (いずれも東京消防庁「火災の実態」からの提供数値)

 
 ライターを使用 その他の火源を使用
 511件  (72%)  200件   (28%)
 12歳以下の子供の火遊びによる火災は、1999年から10年間で511件発生している。
 火遊びの火源が判明している火災の実に72%を占めている。

 平成11年から20年までの10年間の「火災による死傷者の発生率」をピックアップする。

原        因    死傷者発生率
   ライターによる火遊び       行為者年齢
      5歳未満
 79.6%
行為者年齢
5歳以上12歳以下
  33.2%
 原        因 死傷者発生率
たばこ 21.0%
ガステーブル等 46.3%
花火 5.2%

 この数値は、もっとも一般的に発生するガステーブルによる火災(天ぷら油火災など)は、火災時の
 火災による死傷者の発生が多いとされているがそれでも火災1件あたり46.3%である。
 しかし、5歳未満の子供「火遊びでライターを用いている火災」は1件あたり約80%で「死傷者が発生」
 している。
 そのほとんどが、行為者となっている子供自身が負傷者である。

 チャイルドレジスタンス
  子供が簡単に操作できないようにするもので、例えば2つ以上の操作を同時にしないと
  点火・着火できない工夫である。
  (その点では、昔のヤスリ式の簡易ライターは2操作を必要としていたことになる。)
  しかし、それも単に「スイッチ機構」では、通常誰もが「ON」にして使用するので、置いてある
  ライターを子供が容易に「点火・着火」できるこになる。その都度、2動作を必要とする装置に
  する必要がある。
  ・USA
    94年 5歳未満の基準策定  
  ・ヨーロッパ
    02年 USAと同様に策定
    06年 EU加盟国では基準外のライターの販売を禁止
  ・オーストラリア、ニュージーランドなどもEUに準拠

  3 思わぬ所からのライターによる火災

 
電子ライターは、ロック機構が無いものがほとんどです。このため、日常の操作性が良い反面、
 使用者等の意図に反して容易にスイッチが入ってしまい、思わぬところから火災が発生する
 危険があります。
 
 ⇒ どんな原因で?
 家具やロッカー等の上に置かれた電子ライターが、気付かぬうちに裏側へ落下し、
 ① 住宅では、引き戸に挟まれたり、
 ? 家具が押されて壁と家具の間に挟まれ、
 ③ ロッカーの上に荷物を乗せたため壁と荷物に挟まれてスイッチが押され、
 ④ ロッカー内やプラスチック収納箱等の荷物を押し込んだ際、中にあった電子ライターのスイッチが押
   されて、出火し、火災となっています。

 車両においても、
 ①座席シートの隙間に滑り落ちた電子ライターがシートレールに挟まれ、シートをスライドさせた際に
  スイッチが押されて、
 ②グローブボックス内に入れていた電子ライターのスイッチがボックスを閉めた際に荷物に押されて
   出火し、火災となっています。

 
引き戸にはさまれて、出火したライター  タンスの間で物にはさまれ出火
  車両事例-1 運転席の背もたれの焼損である。  シートレールに挟まれて、電子ライターの風ぼうが
 認められる。運転者が降りる時にシートを動かした
 際にレールに挟まれて発火した。
 事例-2 運転席横のセンターコンソールが焼損している。  座席を外すと、助手席のシートレールに挟まれた電子ライター
 認められた。
 運転手が、助手席側から降りる際に、助手席シートを下げて
 外ヘ出たため、挟まれたライターが発火した。

 車両火災の中で、駐車中に、運転席付近から出火した原因の多くが電子ライターに
 よるものである。運転手が、停車して数日して、火災を発見している事例もあり、内部で
 自然鎮火することがある。
 また、内部の焼損が強いとライターが火災で焼失に近い状態となり、「原因の究明」が難
 しいことも多い。運転手の「喫煙習慣」があると、タバコの可能性よりも「電子ライターによ
 る火災」が可能性として高くなる。
 

 
 当署管内では、起きたライターに起因する火災。
 喫煙者が、電子ライターとたばこを一緒にして、電子レンジの上に置いていた。
 電子レンジでご飯を温めた際に、置かれていたライターが弾みで電子レンジの中に落ち、それを知らないまま
 電子レンジをONしたため、ライターのガスが噴出して爆発的に出火した。

 爆発出火した電子レンジ。
 上にたばこと灰皿が置かれている。
 出火原因となった電子ライター。
 

 喫煙者にとってライターは必需品。いつでも、どこにで使用できる状態が望ましい。
 電子ライターは、使いやすいし、そして、安価である。今や100円で4個近く購入できる、また
 写真1のように「ライト付き」など意匠性の高い物も多い。

 このような使い勝手の中で、いつでも・どこでも、置かれて・使用されることが「火災の原因」と
 なる、最も大きい要因となっている。 「子供の火遊び」や「誤ってスイッチが入る」などによる
 火災は、電子ライターの持つ「容易な着火性と、どこにでもある」と言う、ことに尽きる。



 ★ 東京都の対応
 2009年11月18日、東京都・商品安全対策会議で電子ライターに対して「子供が簡単に操作できないように
 する対策が早急に必要」とされた。
 これを受けて、東京都では、消費者庁や業界団体に対策を要望する。(新聞報道)

 ★ 国の対応
 消費者庁は、流通や実態調査をした上で、報告書を来春にまとめる。
  (2009’10/30、11/19、11/20 東京新聞等の報道)


 「消費生活用製品安全法施行令」の一部を改正する政令の公布により
 
  改正政令により、「ライターを消費生活用製品安全法に基づく特定製品及び特別特定製品」とされた。

 これにより「使い捨てライター」と「点火棒型ライター」は、チャイルドレジスタンスが付いた製品でなければ
 ならない、とされた。

 公布は平成22年11月10日からで、経過措置後の実施は
平成23年9月27日からとなる。
 以後は、すべての「使い捨てライター」に安全性が確保されたものとなる。


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