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A1-10 08.01.01
1,総務省消防庁の「製品火災の調査結果」の公表内容 | |||||||||||||||||||||||||
一昨年、平成18年中の「製品に起因するおそれのある火災」5,286件が国(総務省消防庁)から公表された。 製品情報としては、電気用品、自動車等、ガス・石油等燃焼機器が該当し、区分は次の3つに分類されている (消防技第79号平成19年12月27日消防庁消防技術政策室長)。 @ 製品欠陥によることが明らかなもの ⇒ 174件 A 製品欠陥によるものか否か不明なもの ⇒ 719件 B 製品欠陥によらないことが明らかなもの ⇒ 4,393件 ここで「製品欠陥」は「製品の設計及び製造過程における不備」とし、その因果関係において調査した1年間の結果を公表している。
ここで、電気用品を見ると、@の106件は、全て社告等がなされている。 燃焼機器の@の50件の内1件が、「株式会社コロナ製石油給湯器」で「欠陥によるものことが明らかなもの」と されているが「社告」がない。 次に@+Aの条件のものを取り上げると、電気用品では464件、燃焼機器では106件をメーカ名と製品名のリストとして 公表している。しかし、製造番号などが入っておらず、例えば○○社テレビ、と言った項目のみで、結局のところ漠然とし てものとなつている。@+Aの中で、電気用品の中で、死者の発生が発生しているとしているのは、「荏原シンワ製湯浴 活性循環器」と「日本ピネガーボトラーズ製電気ストーブ」である。 ここで、この表を見た時、@とAの考え方の違いは、どこにあるのかが分かりにくい、例えば「日立アプライアンス製 電気こんろ」は@で6件、Aで2件あり、「東芝キャリア製エアコン」も@で5件、Aで3件の発生となっている。この違いは、 ア) 製品そのもの(デザインなどを含めて)が違うことによるものなのか、 イ) 火災原因調査の結果として火災との因果関係において1)と判定できないためにために2)となったのか、 ウ) 焼損により社告品である確証が得られなかったから2)となったのか、など、分かりにくいものとなっている。 また、@と判定されて、社告等がなされていない「コロナ製石油給湯器」に対しては、消防庁の責任において、再発防止上、 製造番号などの詳細情報の開示が、将来の課題のように思う。万一、この機種から死者のでるような火災が起こることを 想定した場合には、公表の中で「欠陥である」とされていることからも開示するものと思われる。 さらに、経済産業省の公表のそれは、企業側から提供した“資料”をもととして、その内容を公表したたげのもの、が、消防 庁のそれは各消防本部が火災調査した“原因判定結果”である。この違いは、大きいように思える。つまり、その公表内容の 責任度において、欠陥としてるのが行政庁の意志表示としてなされているからである。 また、この中の「製品欠陥によらないことが明らかなもの」と分類された4,393件の中に、将来、社告品が出てきたら、その区 分の厳密な意味で説明責任は、分類公表した国なのか、調査結果を判定した各消防本部なのか。たぶん、各消防本部にな るものと思うが、原因調査の説明責任を突きつけられた形となる。 |
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2、新聞記事から見た「製品からの火災」の考え | |||||||||||||||||||||||||
新聞記事から
見出しは「介護ベッド出火 83歳死亡==一人暮らし モーター火元か」とある。 このキャプションとカラーの写真からは、電動式介護ベッドのモータから出火した「製品からの火災」と誰でもが思って しまう。記事の内容も横浜・磯子警察署の調べ、とはなっているが、ほぼ確定しているかのような記事構成となつてい るし、{現場写真}がこのように公表されているのは、{原因が確定したことから提供された}ものと思ってしまう。 しかし、普通に考えて、この種のモータは短時間しか稼動させないため危険性が低いはず、そして、何よりも写真から 見て、モータ部とは異なるベッド上部から燃えている感じで、この記事読んで、「ホントかな」と思ったが。 記事[右]は、翌日の31日の同社の小さな記事。 コンセントに電源プラグが差し込まれていなかった、普段使っていないとの証言が得られた、との、ことで、モータから の出火を否定している。いともあっさりと。 が、この新聞の扱いは、チョツト問題あり、では。 大きなキャプション入りで、「電動式介護ベッドからの火災」で死者がでた、かのごとく“目一杯危険性”を取り上げてお きながら、翌日の「否定」記事から読むと、ほとんどまともな取材しないで、書いていることになってしまう。 写真から、読者に訴えかける内容は「製品からの火災」以外には捉えられないような構成を作り出している。 しかし、翌日、ちょっと調べたら「間違い」でした。では、一体、新聞社の記者が考える「製品からの出火」は、日常性の 中に潜む危害製品への警告と言うより、「話題づくり」が思考の中で先行して、出たとこ勝負の記事づくり、のような感じ をうける。 このように、“知性あふれる”新聞社の記者が、執筆者・デスク・編集などの大勢の人の「間」を記事が経由していながら、 次第に「事実」そのものよりも、社会性の話題を中心に捉えて、「危険をいち早く取り上げた、その中身は知らないが・・」 と、取り敢えず伝えました。となる構図は、大勢の記者が、そのような感覚で仕事しているのかな、と思ってしまう。 このように「製品からの火災」は、ある面、その発生した原因の経緯や被害内容よりも、「知っていたか」とか「隠したか」 とか、モラルハザードの視点が強調されすぎるようなところがあるのではないかと思う。 今回のこの新聞記事は、その点では貴重な問題提供の材料ではないかな、と思う。長い残すべき記事かな? |
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3,「製品からの火災」の視点 | |||||||||||||||||||||||||
東京消防の2004年から2006年の3年間の製品からの火災を取り上げると、電機設備機器では年間 平均して1,022件、 ガス設備機器が706件、石油設備機器が71件となる(「火災の実態」から) 。 グラフ1(左)が3年間3,065件の電気火災の内訳です。電気機器で30%を占めている。 グラフ2(中)が3年間2,417件のガス関連機器の火災の内訳で、大部分が厨房器具でガステーブルなどです。 グラフ3(右)が3年間212件の石油関連機器の火災の内訳で、暖房器具が70%を占めている。 このように、東京だけでも電機・ガス・石油関連で、年間平均して1,800件にもおよぶ火災件数となる。 これを単純に、火災件数から全国規模に換算するとその約10倍となることから全国で約1.5万件となる。 総務省消防庁の「製品に起因するおそれのある火災」とは、定義の意味が異なるため、その言葉の意味で統計をとると 平成18年は約5000件となったものと思われるが、機器に関連することの「意味」は、見方により異なる事になる。 例えば、「電熱器具の電気ストーブが布団に接触して火災」となった場合、器具には「何ら、問題がなかった。」と捉えると 関連火災には計上されないが、「電気ストーブの全面ルーバの間隔が広すぎたことにより、布団類の接触が生じた」或いは 「OFFになっていた電気ストーブのスイッチが容易にONになりやすい構造で、飼い犬が乗りかかった時にスイッチが入った ことにより、接触していた布団が燃えた」では、スイッチ位置・構造に問題があったためとなり、「関連火災」として計上される。 いずれにしろ、火災となった「問題点」をどの視点で見るかによって、統計数字に開きがでてきてしまう。 この膨大な「件数の数字」を見ると「製品からの火災」としての視点を、どの立場から見るかによって、年間百件程度の 火災事例が出てきてしまうことになる。つまり、製品を製造販売する企業にとって、「製品からの火災」に関して言うと、 どのような「視点」で製品が捉えられているのかによって、かなり厳しい現実が待ち受けている。 と同時に誤解されるケースもその中にはある、とも言える。 もっとも、この課題は、各企業にとって、すでに平成7年の製造物責任法(PL法)が施行された時点から、対応していること ではあるが、今回の消費生活安全法に定める10日までの報告要件の「火災」事故のとらえ方は、さらに、厳しい環境を提 起したと言える。 ☆さて、そこで、「製品からの火災」を考えてみる。 電気設備機器からの火災と言っても、電気ストーブのような暖房器具では、布団類が接触して火災となったものや電気 コンロによる天ぷら油火災など、その機器を使用したことによって引き起こされた火災も含まれるため、火災統計上からだ けでは、その機器本体により生じたものと言えないものが入っている。しかし、その機器本体から発生したものではないが、 その機器が関わったことにより発生した火災もある意味「製品からの火災」として捉える事はできる。単純に「コレコレの ケースに該当した場合だけを火災とする」と言った定義がなされている訳ではないので、考えるべき視点をある程度整理 しておくことが必要となる。 ☆ 昔、テレビからの火災では、真空管の下のシャーシ内の抵抗やコンデンサーへの配線がごちゃごちゃと焼損した中 で回路図と見比べて、火災の端緒となつた抵抗を探して、「何で火災に」と、メーカ技術者と検討し火災原因を考えた。ま た、芯上下式の石油ストーブやアラジン製ストーブなどでは、実験などをして立証して究明してきた。が、時代とともに火 災原因も変化し、今は、テレビや石油ストーブなどでは、シーケンスの基盤を読み取って、火災の端緒の動きを解明し、 車両火災でも電装回路と焼損箇所との関連性を読み取る、作業となる。 そして、確実に発火源も変化しており、昔のガス風呂釜・アイロン・マッチの火災件数は、激減し、替わりに、製品等を含 めて電気配線と配線接続に関連した火災が増えている。製品は、一般的には、工業用・家庭用を問わず、それを使う人の ため生活の利便性を向上させるものである。その利便性向上のために"エネルギー"を内在させ、より合理的な方向に消費 する仕組みを本来有している。しかし、ある条件下で局部的な偏りができると「出火」に至るシステムを作り出し、火災を引き 起こす。その条件下{雰囲気(atmoshere)}の偏りが、幾通りにもおよぶ複雑な課程を経由する。ゆえに、単純に「ある製品 からの火災原因」として決めつけられないケースが生じる。 しかし、過去から火災全般の流れを、大雑把に「製品からの火災」に着目して見ると、時代を超えて共通した要因がある。 |
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4,「製品からの火災」の3つ要因と現場 | |||||||||||||||||||||||||
昔から、常に「製品からの火災」は存在し続けている。 なぜか? 出火の要因には3つケースがある。 @製品の原料部品の品質評価に対する"しきい値" A製品の設計・組立て・接合時の"技術知識の不足と技量の不足" B製品が使用される生活現場に対する"検証不足" この順序に沿って、現場的に火災原因を見てみる。 ☆(1) 原料部品の品質評価に対するしきい値 @は、最もオーソドツクスな「製品からの火災」そのものである。 通常は、このケースだけが問題とされやすい。製品の本体、あるいはその部品の中に不具合品があって火災となる ものである。実際のケースでは、この場合、その部品の不具合の発生率をどこまで容認するかに関わっている。部 品の中の1つが10万個に1個の不具合が有る場合もあれば、千個に1個かもしれない、この値が“しきい値”となる。 宇宙開発では100万個に1個の不具合、シックス9がしきい値とも言われている。その意味では本体の部品数を99万 個以内に抑えれば、不具合の発生はほとんどないことになる。これが日常生活では、どこまで、許容されるのか。企 業の品質管理担当者にとって「判断」のつかない次元でもある。
2007年夏、猛暑で、火災により問題が再浮上した「三洋電気製扇風機」は、製品が流通した当時から火災があり、 特に、7年、8年と経つにつれて、火災が増加した経緯がある。これは、扇風機のコンデンサーの部品の不具合による ものである。平成4年頃の各電気メーカのテレビのフライバックトランスからの出火に起因したリコールもほぼ、同様の ケースである。 写真中央は、当時のテレビのフライバックトランスからの火災事例である。メーカによって、発火に至る部位は少しづつ ことなるが、いずれも製造工程上の不具合により、不良品が混じることから発生している。写真右端は、1991年リコール した全自動洗濯機とその部品の排水マグネットである。製品の出荷前の品質点検の絶縁テストで一部の製品に不具合 が生じ、これが市場にでて溶着によるチャタリングにより出火した。 このように、リコールした製品は、ほとんどこのケースで、先ほど述べたように部品の不具合の“しきい値”をどの程度 に「見切る」かが、その企業の姿勢にかかわっていることと言える。 ☆(2) 設計・組み立て・接合時の技術知識と技量不足 Aの製品の設計・組立て・接合時の"技術知識の不足と技量の不足"のケースで、温風ヒータや乾燥機のリコールに 代表された「セラミックヒータ」の部品の安定特性に引きづられて製品としたものが、過熱暴走を止める手だてや安全装 置の不配置により、火災となったものがなどがある。写真は、その時の焼損物件である。部品の不具合はなくても、設計 上において、局部過熱することを想定しない「造り」となっていたり、接点部の接合方法に安易で簡便な方法を採用した 結果、クラックが発生したりするものなどがある。写真右は、リコールとなったオルタネータの交・直変換器の電装部品の 取付部の不具合による火災である。このように、車両などの部品を多く使う製品は、全体を組み立てて製品化しても、実 際に使ってみると局部的な負荷を設計上見抜けないケースが出てくる。結局は、市場でユーザからのクレームなどから、 メンテナンス修理などで一部設計変更をした対応策をとることになる。つまり、さまざまな部品の集合体である製品は、実 際に使われると同じ条件での実験や試運転が必要であるが、その“見切り”がどの程度かにより、「設計」だけで全ての 安全性を確保できないのが、現実のことである。そして、さまざまな「試験」にはおいても、どうしても、限界はあると言える。
☆(3) 生活現場における検証 最後のBのケースは、例えば、ペットポトルによる収れん火災で、まさか、ペットポトル製造メーカにとって、 注ぎ口湾曲部が正楕円曲線をとりいれたため、焦点を結んで「火災」になるとは、製造技術者も「夢にも思わな かった」と思う。また、このケースの最近の代表例は、「電気ストーブからの火災」で、昔に設計・販売された電気 ストーブは、全面の金枠のルーバの間隔が広く、容易にタオルケットやシーツが入る。このため、マンションの子供 部屋の暖房器具としとして使用される電気ストーブに、ベッドの寝具類が触れて火災になっている。今は、メーカに 働きかけて、網状のものなどになつている。このBケースが以外と多い、床拭き仕上げ用ワトコオイルの自然発火、 システムキッチンの電気こんろや最近では「ゴキブリ氷殺スプレー」などが該当する。 つまり、「製品と人」との関係を深く踏み込んで、"検証"していない製品です。
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5, 「製品からの火災」に対する対策からの視点! | |||||||||||||||||||||||||
3つの要因の対策を考えると、上の3つの火災事例における出火機構を考えてみるとその視点があるものと思う。 このように、「3つの要因」から「製品からの火災」を見ると、それを防ぐ手だては、 @の部品の問題は“コスト”にあり、 Aの設計等の問題は“開発の時間”にあり、 そしてBの使用される現場での検証は“クレーム処理”にある。 つまり、@の部品等に係わる品質保障は如何にコスト面で妥協できるかに多くの課題が依存している。 そして、Aの設計等は出来上がる製品の設計の見直し、接合部の手間、作動実験などの製造開発から販売に至る時間を どこまで使えるかに依存している。 そして、Bは市場に出した製品からのクレームを製品の@やAの不具合からの視点だけでなく、使用される生活現場から 捉えた意外な盲点を感知するお客相談センターに詰めている従業員の資質と体制に依存する。特に、Bは製品欠陥とは 呼びにくいだけに、取扱説明書の書き換えや注意レッテル貼付、或いは、新製品の開発まで放置しておく事となってしまう。 このように、「製品」には、3つの「火災」要因が潜在的に潜んでいる。 そして、その問題の解決は企業の“コスト意識・時間意識・クレーム処理の意識”が、製品にかける情熱の中で培われて、 始めて「安全な製品」にたどり着くのではと私は思う。 |
6, {製品からの事故}から見た、判例 >三菱自動車の社長等に対する判決< |
☆犯罪内容 2008年01月16日 三菱自動車の元社長と元役員3名が、業務上過失致死罪に問われて、横浜地裁から有罪の 判決がでた。(報道は翌17日付け) 犯罪は、2002年10月山口県熊毛町路上で発生した、三菱自動車製大型トラックの単独事故により運転手が死亡した 事故によるものである。 事故の主たる原因は、このトラックのクラッチ部品に亀裂が生じ、破損してブレーキパイプが破断し、 制御不能となつたことによって、トラックが地下道入り口の壁に激突した。 この欠陥クラッチ部品の隠蔽に係わっていたことにより、社長以下4名が「その罪」を問われたものである。 ☆ 犯罪の構成 「業務上過失致死罪」は、その犯罪要件として、業務に関連すること、犯罪と密接に関係していること、その事故を事前 に予見できていたこと、事故(結果)に対して回避すべき義務があり、回避しょうとすればできたこと、などの構成要件が あるとされている。 今回の場合は、直接原因となった「欠陥クラッチ」について、4名がどこまでその危険性を知っていたのか、また、 そのことにより回避しょうとしたのか、などが争点といえるものであった。 しかし、現実には、そのことに関しては、社長と「知らなかった。」が、それ以前からあった、さまざな「欠陥隠し」にトップとし て関わり、事実上、「欠陥隠し」を社風として醸成していた。 そのことが、事故に至る「要因」の過程として認識されて、自動車会社社長の責任とされ、刑事罰が加えられている。 [犯罪事実] 1977年から会社として、欠陥を隠し、運輸省への届出を秘匿し二重管理していた。そのことには、被告全員が関与して いた。1990年から2,000年6月までの間に、クラッチ部品に亀裂が生じる不具合を認識し、事故が発生していたが隠して いた。運輸省からの報告にも対応しなかった。社長には、運輸省に対して、正しく報告する注意義務があるが、しなかった。 他の3名の役員は、具体的に「欠陥クラツチ部品」を知っていたが、隠すことにしていた。 [危険性の認識] 2000年にすべての欠陥の報告を求められた際に、対応しなかった。 [過失責任] 欠陥を隠したことから、事故が起きることは「予見」できた。具体的に「知らない」社長にも、さまざまな事故隠しに加担して いることから、予見できる。 [回避措置] 事故の予見が可能であり、運輸省に届けていれば、リコールとして、回避できた。 [量刑] 三菱自動車元社長 川添克彦氏(71歳) 禁固3年(執行猶予5年) 三菱ふそうトラック・バスカンパニー元社長 村田氏 〃 ( 〃) 三菱ふそうトラック・バスカンパニー元会長 宇佐美氏 禁固2年(執行猶予3年) 三菱自動車元執行役員(品質・技術本部副本部長) 中神氏 禁固2年6月(執行猶予4年) ☆ 知らなくても業務上過失致死罪なのか?。 普通に言えば、具体的な事故と直接関連しえない「大会社の社長」が個々の事故に関連して、社内制度が要因 となっていたことにより「罪」が問われるのは、どうか、と言えものであった。しかし、今や、乗り物を作る側に居る 人間が、乗り物の構造的特性から、事故を引き起し、死傷者が出る事は、当然の帰結であって、その責任は 問われると、考えるのが、「一般常識」と言える。が。 例えば、JR西日本福知山線の事故のようにあれだけ大勢の死傷者が出た事故も、元は、この会社が推進していた 教育制度にあり、過密ダイヤの仕組みと、脱線回避の整備設置できたはずだった、とすると、JR西日本社長にも 「刑事責任」があってしかるべきだ、とも、言えそうである。とすると、捜査当局、つまり検察官の意志の如何が この犯罪を犯罪とするかどうか、を、決めてしまいそうな、感じも受ける。 しかし、三菱自動車の場合は、「欠陥」であれば、法令的に届け出なければならない義務が課せられていた にも係わらず、恣意的に、法的規制を無視し続けてる「社内制度を作っていた」ことが、社長として致命的な「犯罪」 であった、言える。 ☆ 「製品からの火災」にも、この判例は適用されるだろうか? 今度は、パロマの裁判判決が出される。が、この場合は、どこに「犯罪性」を探すのか。 修理工事人が違法な工事を行なっていたことを知っていたこと、さらに、そのことを増長させるような事実が あったのか。しかし、東京では、ガス修理工事人は、原則、東京ガスの研修を受けている。 とすると、研修時にこの種の違法修理をどのようなスタンスで、対応していたのであろか、など、さらに、 法令遵守の立場を、「企業風土」に組み込む姿勢がないと、いけないことになる。?? |
厚生省・元生物製剤課長が、薬剤エイズ事件で、刑事罰を受ける。 業務上過失致死罪で、禁固1年執行猶予2年が、最高裁判所で確定した。08'03/04 |
この刑事責任では、「行政の担当者」でも、事故の担当する業務において、適切な対応を していないと、「行政の不作為」が罪に当たるとして、個人が有罪となった。 エイズ事件は、死者が数百人とも言われており、その被害の程度において、厳しく、「責任」 を問われるべきではあるが、直接的には生産にたずさわっていない、立場の行政の管理者 が「不作為」として有罪判決がでた、画期的な裁判判例である。 エイズを感染させる非加熱血液製剤の回収を、危険性があると“認識”していながら 行なわなかった、監督行政庁の担当者としての立場での不作為義務違反である。 と、すると、製剤とは“危険性”において異なるとは言え、「製品」でも類推されるゆえに、 監督官庁の通産省・国土交通省などが「製品・車両の欠陥」にやっきになって、次々と「リコール」 指令を出す状況が作られたと言える。 ・製品の安全性に対する業務上過失致死傷罪の適用では、結果の大きさ(被害者が死者となっ ているなど)によって、波及する「関係者」が多くなる、と言える。さらに、今回の裁判から 「不作為」の罪の取り上げられかたが、必ずしも、従来の解釈から、はみ出ていても、結果に 対する責任において、罪となる、と言えそうだ。 |
2010' 05/15追記
6−2, {製品からの事故}から見た、判例 >パロマ工業の社長等に対する判決< | |||||||||
☆ 犯罪の構成 パロマ工業製のガス湯沸器の不完全燃焼時の死者発生事故に対する刑事事件。 この事故は、1985年(昭和60年)〜2005年(平成7年)の間に、28件の事故が、ガス湯沸器の不完全燃焼が 原因の事故が発生し、21人が死亡している。2006年7月に発覚して、2007年12月に2005年11月の東京都 港区で発生した死傷事故に対して、元社長と元品質管理部長の2名が、業務上過失致死傷罪で起訴された。 事故は、ガス湯沸器には、室内設置型のものは、換気扇等が作動していない時などの充分な換気がない場合の不完 全燃焼を想定し、その対策として、「不完全燃焼検知装置」が組み込まれ、これに連動してガス供給を遮断する構造と なって、安全性を確保している。しかし、問題となった機種が、やや構造的に不完全燃焼を起こしやすいものだったた め、よくガス遮断されて、「使用できない。」との修理依頼があり、その修理に際して、安全装置としての不完全燃焼装置 検知回路に「短絡端子板」という、バイパス回路を作って、検知回路をバイパスさせて、ガス供給させて使用させる、安 易な修理を行っていた。このため、使用し続けると、台所周囲で、不完全燃焼によるCO(一酸化炭素)が発生し、台所 に居る人がCO中毒となる事件だった。 刑事罰としての業務上過失致死傷罪は、@事故の予見性 A結果回避の努力 を問題とする。 弁護側は、@事故報告は受けていたが、修理業者等に不正改造しないように注意喚起するなど対策を講じており、 (今回の死傷事故が発生することは予見できなかった) A 事故商品は、国からの指導もなく、ガス会社の協力も ない中で、(製造会社だけで事故再発防止の有効な手立てとしての)製品の点検や改修など、(事故を回避できる 立場にも、行動環境にもなった。) とした。 判決では@過去の事故情報から、改造された製品を使用すれば事故が起きることを予見できていた。 A 被告の 立場から、(社会全体に対し)注意喚起の徹底と点検・改修が可能であって、それをしていれば事故を未然に防げた。 として、業務上過失致死傷罪が成立するとした。 事故の直接的原因は、修理業者の不正改造にあったとしている。 そして、「・・ガス器具のような生命への危険を伴う製品を提供する企業は、消費者が安全に使い続けられるよう 配慮することが求められる。」としている。 ★ 判決 有罪 元社長 禁固1年半 執行猶予3年 元品質管理部長 禁固1年 執行猶予3年 |
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☆ 課題として 直接的には、関与していないことに対して、製品の製造物責任が求められる判決となった。 直接的には、あくまで「不正改造している修理業者」であって、しかも、会社経営全般を担う社長が、その製品事故 の責任を負う、ことが求められた。 確かに、一般的にかい摘んで見れば、おかしな判決とも見える。しかし、2年半に渡る裁判での、さまざまな検証結果 からなされた判決として、業務上過失致死傷罪を構成する要件があったものと思う。ただ、上告されて、さらに裁判が 続くと、話は別だが。 基本的は、原因となつている不正改造に対して、「不正改造によりら死者が発生している事故があり、その不正改造 がなされているいることを知りつつ、なぜ、放置し続けていたのか」が判断されたと思う。 多くの新聞社説が述べているように「安全性に対する配慮の徹底が不足していた」ことになる。 ☆ 「放置することにより製品欠陥となる、環境を見過ごすことは製品欠陥である。」 このパロマ工業の事故を、要約すると「どのような理由(改造や誤った使用など)であり、放置することにより それが製品の欠陥と同等の死傷事故を起こすと認識される時は、その社会的環境を見過ごすこと事態が 「瀬品欠陥」である。」と言うことになる。 ここで、「製品からの火災」を見ると、上段の4,製品からの火災で、 出火の要因には3つケースがある。 @製品の原料部品の品質評価に対する"しきい値" A製品の設計・組立て・接合時の"技術知識の不足と技量の不足" B製品が使用される生活現場に対する"検証不足" としている。 この中のBの製品が使用される生活現場に対する検証不足が、パロマ工業、ガス湯沸器事故の視点である。 つまり、生活現場では、この製品は、不完全な製品であり、換気不足を起こして、たびたび不完全燃焼装置が 働き、結果「お湯が出ない、修理して」の修理依頼に対する、メーカの抜本的対策がないまま「短絡端子板」の 修理を修理業者が行っていることを黙認していたことである。 つまり、「製品の火災」から見れば、はじめから「製品の欠陥」の範疇に入っていたと思われる。 |
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ガス風呂釜の火災から見た、「短絡端子板」の実態 | |||||||||
ここで、具体的な事故原因のイメージが分かりずらいので、消防の調査員の方に説明する。 ★ 下の写真は、ガス風呂釜のガス供給基板部だ。左写真が安全装置の取付端子部だ。
昭和51年の東京都条例により風呂釜には空だき防止のため「過熱防止装置」を取り付けるよう義務 づけたが、この写真のように昭和55年頃に、点火しづらくなった機器の「修理」として、業者間で、過熱 防止装置を飛ばす行為が一般化した。そのため、空だき火災が発生したことから、業界や新聞等で 「火災予防」の見地からと広報し、指導した。 しかし、ガス器具の安全装置を“飛ばす”行為は、このような短絡端子が流通して、一般化していた。 「火災」は、消防がうるさいので、止めたが、湯沸器などのCO中毒は、どこもあまり関心がなく野放し となった。製造会社は、その都度、これらの事故を知っていたと思われる。 |
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>放置することにより製品欠陥となる事例< メーカが回収したもの | |||||||||
☆ 製品の問題なのか、使用者側の問題なのか
このような現場情況の中で、さらに見ると。
コタツヒータ部に覆い被せられた布団と天板が焼損したものであった。ヒータ部の過熱防止装置で、それ以上の 燃焼はなかった。 ★この火災の問題は、この電気コタツの足の取付部が天地逆でも容易に取り付けられることである。 例え、注意書きがしてあっても、構造上、取り付けを誤ることがあれば「火災を起こす」ことが明かな製品となる。 この「電気コタツ」は、メーカとして、この火災から足の取付部のねじ部に天地逆だと、取り付けられないようにし、 製品の改修もしている。 誤った取り付けが「火災」を起こすことを知りながら、放置し続けていれば、この場合も企業姿勢を問われた事案 となった。 メーカは、自社製品が、市場の中で、どのように使用されるか、あるいはどのように改造されるか、と言った 事案(クレーム等)に対して、繊細な感覚で対処する必要があると言える。 |
7, 製品に見る、安全性への視点 08' 03/08 | ||||
☆ 製品についての「安全性」に対して視点は本物なのか? 最近は、製造メーカは、製品に対する「安全性」について、十分な配慮をしているものです。 しかし、一体「安全性」とは何か? と、疑問に思える製品にであったので、その内容を紹介します。 |
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オーブントースタを用いて「火災実験」 をした際に、中の「物」が燃え上がった 写真です。 このオーブントースタは、裏面の製品 表示には、「温度ヒューズ216℃」と 明記され、ちゃんと品質保障マークも 貼付されていました。 |
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このオーブン・トースタの分解すると。 ダイヤルつまみと電力調整つまみの後ろの電源配線に、「マイクロテンプの216℃」が直列されてました。 つまり、表示にある「温度ヒユーズ216℃」は正しかったのです。ちゃんと、その温度ヒューズが着いてはいるのです。 しかし、このヒユーズには、「ガラス繊維の耐熱チューブ」が被せられ、かつ、庫内温度の影響の受けにくい部品空間に 浮いた状態で着けらています。 確かに、オーブントースタは「温度制御スイッチ機構」を義務づけられはいませんが、しかし、表示に「温度ヒユーズ」 とあれば、誰だって、庫内又はその近傍で一定温度になれば、電源が遮断する安全性が確保されていると思うもの。 まして、庫内で「物」が燃えるような状態なら、尚更のことと。が、しかし、この製品は、中で「物」が燃え上がっても、 まったく、電源が切れることもなく、石英管ヒータが点灯し続けてました。 ☆ 製品の「安全性」とは、何なのか?と疑問だらけの製品です。
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[通りすがりさんから提供事例] 08.03/20
8, 事例の紹介 地下鉄の自動券売機からの火災(発煙事故) ⇒ 製品の接合時の技量不足? |
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地下鉄の駅改札にある 自動券売機からの火災。 ☆自動券売期からお釣り 等が出ないので、機械 装置を背面から引き出 し所、制御基板の部品 の一つが溶融していた。 |
背面から引き出 した、券売機。 |
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券売機の入り口側上部 の制御基板を見ると、 ICの一つが溶融し、基 板パターンにも溶融が 見られた。 調べると、ICの定格電 圧を超える電圧が印加 されて、焼損したものと 分かった。 |
機器の中央下 部を見ると電源 供給用配線の 一部の被覆が 損傷し、裸線と なって、 機器カバーと 接触していた。 |
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基板内部品が焼損した原因は、部品に定格を超える電圧がかかったものであった。 その原因は、機器本体の基板等への電源供給用配線が、機器のケースの一部と接触して、 被覆が損傷し、裸線となつたために、他の電源線と混触し、基板部品への異常電圧を供給した ためであった。 さらに、メーカ側が調べると、主電源ケーブルの引き込みが、正常なら上段写真左のとおり、 電源供給用配線端子盤の下側に通ることとなるが、接合時のミスで主電源ケーブルを中央 写真のように上から回したため、ケーブルの重みが供給用配線にかかり、そのためケースと 接触することとなつた。機械を引き出したりする操作を繰り返していると、ケースと擦れた所が 損傷を進行させ、裸線となつて、混触したものと推定されている。 なお、メーカは、既に該当機種の全ての点検をしている。また、「火災」でなく「発煙事故」として の処理をしている。しかし、基板内の部品が1個だけ焼損した、だけだが、事故の展開によって は、基板を燃やして、機器本体が燃える可能性もあったので、消防として「火災」扱いしている。 |