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津波による火災

                                     A8-49   11.06.25~07.03      改12.03 
  津波火災」はPDFの原稿となっています。(2012.06/30) 旧版(2012.03/10)

 津波についての火災とは別のコメント

津波について
  津波の視点
 火災の前に津波の被害を概括する。
 津波の地域を、[日本地理学会津波防災マップ]を引用
 する。
 気仙沼市内から南三陸町にかけての湾内低地には津
 波の被害が一面に広がっている。
  特に、その破壊力により、JR気仙沼線の橋げた、国道45号線の橋げたが落ちている。
 本吉町のJR・気仙沼線 陸前小泉駅の北側の陸橋の落橋部。 手前にレールごと落ちている
 歌津の町の海岸線を走る国道・歌津バイパスの橋桁。海岸の方向を見た状況
 このように、高架となっている所のコンクリート製の橋桁が、脚柱から落ちる破壊力は、眼を疑う
 ような光景だった。
 これらの被害は膨大な対象があり、建物の被害などを観察すると多数で、また、その方面の知識
 も乏しく、建物に注目すると相違点が見つかり難いことから、同じ物で、比較しやすい「電柱」に着
 目してみた。 
 
 地盤面からの電柱の折損は、左・写真のように
 地盤直上部の付け根のコンクリートが剥離脱落
 して折れ曲がっている。
  左・写真の気仙沼市街地内の電柱の折損部は
 付け根のコンクリート剥離部分は60cm~100cmで
 であった。
 
 左・写真は、南三陸町の電柱の損傷部で、コンクリート
 剥離部分は200cmを超えている電柱も見られた。
 また、地盤から抜けているような電柱も見られる。
 津波防災マップでもわかるが気仙沼市街は岬などに囲
 まれた湾内となっているが、南三陸町は外洋に直接面し
 ていることから影響が大きかったのかと思える。
 電柱の地盤面との付け根で、これほどに大きく損傷させ
 る力が津波により働いている。
  さらに、折損の多くは、地盤の付け根部分で折損しているが、中には、内の脇地域と朝日町地域の電柱に見られ
 るように上下の二か所の折損がみられる電柱がある。 
 地上部の折損部は、ほぼ同じような所で、地上から6m程度である。
 砂を巻き上げてくる「津波による圧力」で、電柱に力が加わり、支点となっている地盤面の付け根付近で押し倒
 されるのは理解されるが、上下部の二か所の折損では、始めに上部が折られないと2ケ所の折損は生じないこ
 とから、上部が先に折損して、次に全体がなぎ倒されたこととなる。
 ⇒  ⇒
 上部の折損は、トランス・電線に砂を巻き上げて来た「波の圧力」
 がかかり、最も弱い上部の箇所が折損する。
 津波は、先に、上部の先端部が強い圧力をかけ、その後に圧
 倒的に大きな全面的な力が加わることになるのではと思えた。
 波全体の全面的な力には、波以外に波がもたらす「砂など」が
 圧力に加わっているのではと思える。 

 そのことは、残存している耐火建物内部を見ると、建物の1階と
 2階の床面に多量の砂や海藻などがみられる。 始めに波の先
 端部から力が加わり、そのことにより電柱の上部の弱い所で折
 損し、次に波全体の力で、電柱全体が地盤面から折損したよう
 に、思える。つまり、津波の「高さ」は電柱上部の高さとなる。
 さらに、南気仙沼駅では、線路のレール枕木がズレて、動いており、この部分では、津波が「川の流れ」のよう
 なある筋に沿った方向性をもっていたようにも見える。津波の潮流が幾筋かできて、その流れに抵抗するところ
 は破壊力が大きいのではと思える。 河川は、逆に抵抗がないので、潮流し対して上流方向へ向かうので海岸
 に近くても破壊力が弱いように見える。 
 
  JR・気仙沼線の南気仙沼駅西側付近の枕木がズレて、動いている。
  矢印の方向から押されたような力が加わっている。
  一部の場所では、地盤面にも圧力がかかっているようだった。
 これらは、損傷等を見た感じで、記述したもので、専門外なので、どのような作用なのは分からない。
 
余 談
  
 
焼損状況から見た延焼拡大の視点
 昔、阪神・淡路大震災後に神戸市消防局の調査活動支援に
 行き、市街地の延焼拡大規模の現状に驚かされた。
 その拡大の要因に、倒壊家屋が焼損すると通常以上の飛び火
 が大量に発生し、それが、神戸市内特有の風向きの変化により、
 付近一帯に延焼拡大していったことに気づかされた。
 左写真は、地震でずれた瓦屋根の屋根板から燃え下がってい
 る建物火災の状況。 「飛び火」が要因となっている。
 それに対して、今回の気仙沼市街地火災は、動く「燃えた船」が
 要因となっている。
 左写真は、船べりから燃えて、甲板上部が焼失しているFRP製
 の漁船。燃えている時は、熱量もあるので、勢い良く燃えながら
 海上を浮遊し、集落から山林までをも「飛び火火災」のように燃
 やしたことになる。
 
  火災現場で、「延焼している車両」が移動したことがあった。幸い移動後の隣接建物へは消火活動により延焼させ
 なかったが、「火源が動く」ことは、消防隊にとって困難の極みとも言える。
  今回の気仙沼市街地火災は、まさに、「燃える船」が移動して、火災を拡大し続けたことにあり、消防活動で考える
  「困難の極み」を現出したこことなる。 
  道路際の駐車場内で燃えている車両  燃えたまま後方に動いて行って、奥の隣棟建物に突き
 当たって止まった。 
  この車両は、駐車場が道路に向かって、下り勾配であったため、ギヤをバックに入れて駐車していた。
 火災によりサイドが外れて、エンジンがかかりバッテリ容量で自走した。燃えている車両を追いかけて、消火した。
 

 
 ☆ 今回のホームページは、そのほとんどを地元の菊田清一氏と共同で作ったものだ。
   巻頭にも記載したが、このホームページで取り上げた実況見分や資料なども菊田氏の関係者からの供述
   録取をベースにしている。 氏の論文は、「「東日本大震災」気仙沼の被災状況」火災誌、2011年6月号
   Vol, 312で読んでいただければ、より、理解の得るところである。

 
 ☆ 防災マップ  
 既刊の「気仙沼市防災マップ」を見ると、今回、津波で浸水した箇所
 がほぼ明記されている。
  事前に、各家庭に配布されている「防災マップ」も、その情報をどれ
 だけ生かせるかは、難しい課題となってしまった。私も地元の区から、
 荒川の氾濫時の浸水予測の「防災マップ」をもらっているが、今まで、
 関心を持つこともなかった。今回の気仙沼市の被災状況から見て、行
 政側の防災対策の情報提供の浸透について改めて考え直してみた。

  動画の威力
  今回の火災調査で実感したのは、「動画の威力」だった。
  昔、携帯電話などで一般人撮影する「災害写真」が威力を発した。例えば、2001年の新宿・歌舞伎町火災でも
  消防隊到着前の災害現場の様子が一般人により写されている写真が出てきて、驚いたものだ。それが動画と
  なったのは、2010年の杉並・高円寺南飲食店火災で、消防隊到着前からの現場の撮影ビデオがあり、ネット上
  に公開された。その時に、動画の威力を感じたが、今回の調査では、利用価値の高いものとして、改めてその
  威力を見せ付けられた感じだ。

  
 GPSデジカメ
  今回、一眼レフだと、重くてくたびれるので、山登り用として購入した「GPS機能付のデジカメ」を使用して、撮
  影して歩き回った。おかげで、後日、撮影場所の確認に重宝した。一般の火災調査では、何の意味もない機能
  だが、林野火災などの広域災害調査時では大いに便利であると実感した。
  林野火災や山岳救助・水難救助などの多い消防署などでは、購入を検討されてはと思います。ただ、私の場合
  全てに完璧に「場所を特定できなかった」ので、購入時には、イロイロと情報収集と店員の説明をうけてからのほう
  が良いかと思います。

 何かをすると、イロイロと副産物(知識と経験と反省)が得られるもので、今回は、良い勉強となりました。