延焼火災の事例研究01 <(延焼火災) <火災原因調査 <ホーム:「火災調査探偵団」
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1,延焼火災 | |||||
★ 耐火建物の場合の延焼 耐火建物火災での、他の階への延焼は、2008年(平成19年)の東京消防庁管内の火災では39件発生している。 @外壁の開口部 13件 A床の穴(炭出し穴等) 2件 Bダクト 1件 Cその他の階段 1件 Dその他 22件 となっています。(東京消防、平成20年版「火災の実態」) 耐火建物の場合は、火災の出火室の火勢が強く、開口部から噴出する火炎により、上階の可燃物が接炎又は輻射 熱により燃えて、その箇所から広がることが多くあります。 ★ ベランダのスパンドレルを経由して、上階に延焼する事例。 火災学会誌のVol 39 No.1,(178)やVol 42 No.1(196)の事例では、上階に強く延焼拡大しています。 しかし、これらは、垂直スパンドレルを経由してものだした。
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2, 延焼火災事例01⇒ 水平スパンドレルを経由して、強く延焼した火災事例 | |||||
4月の朝に発生した火災で、共同住宅5/0 の3階から出火した。 火災は、上階の4階の室内へも延焼した。5階へは外壁のみ焼損した。
ここで、下写真のように、主として、「火炎の延焼部」となっているのが、台所側であることが、この現場の 特異性である。 |
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現場の状況 | |||||
「ハの字」は、書き加えている。 |
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この共同住宅は、水平スパンドルが全てに渡って 設置されている。 3階が出火した火災住戸の部屋。 上階の4階には内部へと延焼している。 5階は外壁部のみで留まった。 現着時に、外側から「放水」をしているので、 4階まて゜の延焼に留まったことも言える。 |
上図の部屋の平面図を参考にして見てもらえると、 台所側の上階への「焼け」が強い。 特に、手すりのアルミサッシュの溶融が顕著に現れ ており、この部分から水平スパンドレルを超えた 「延焼」が見られる。 |
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3階、火災階のベランダの現場状況。 延焼媒介物として、良く、見られる「灯油缶」など の物件はなく、当日の洗濯物も干されてはいな かった。 そして、著しい焼損物として「全自動洗濯機」が 認められた。 洗濯機は、全体のケースは鋼板ではあるが、そ の部品等のほとんどが合成樹脂で、この洗濯機 を延焼媒介としたことが、強く認められる。 |
さらに、見ると、台所の窓枠のそばから、焼損した カセットボンベが見られた。 或いは、火災の進展の過程で、ボンベからの強い 火炎の噴出があったことも推定される。 |
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★ まとめ このように、上階への延焼媒介可燃物としては、「洗濯機」と「カセットボンベ」の2つが有力視される。 これらは、どちらも、ごく一般的な物であり、今後の火災現場で、再発することもあると思う。 耐火建物の延焼拡大防止策の「水平スパンドレル」ですら、「ごく日常的な生活環境の中での火災で 延焼拡大する」との認識が必要であると言える。 従来は、ベランダからの延焼の要因としては「灯油缶」の置き場、つまり、ベランダの管理不十分として 言われていたが、そのような物でなくても、日常的な物(洗濯機など)も該当するようになってきた。 すでに、防火シャッターや垂直スパンドレルの効用がないことは、火災消火活動の常識ではあるが、 今回のように、水平スパンドレルもごく容易に延焼されてしまうこともある、との認識も持っていただきたい。 上階の洗濯物が燃えての「延焼」もあるが、この場合は、上階のガラス戸が閉まっていると、室内への延焼へと成りにくい のが通例である。 |