火災調査探偵団 Fire Investigation Reserch Team for Fire Fighters
Title:「火災種別」-02
B1-01   17’03/10,     転載を禁ず            .   
火災種別 < 用語の解説  <火災損害調査 <ホーム:「火災調査探偵団」   .
 §1 「火災種別」の疑問を考える。
 質問

  住宅車庫内の車両のエンジン部から出火し、車両だけしか燃えていないのに 
  火災種別が「建物火災」は、おかしいのではないか?
 
    
この質問は、火災種別コード(車両火災⇒建物火災)だけでなく、出火個所コード(4010機関部⇒1610車庫)も違ってくるため、
    火災原因を考える時に違和感があり、疑問となる。さらに、火災損害額が、車両火災損害としてではなく、建物火災損害と
    して計上される。
            「火災種別は、わかりにくい。」
            「火災種別の区分は“取り決め事”とは言え、理屈が良くわからない。」
    こんな質問が寄せられる。⇒  この質問に対し、火災調査に長く関わっている人は「そんなことは疑問とはならない。つまり、コレコレこうだ・・・。」と
    解説される文章もよく見かけます。 しかし、疑問を持たれる人が多い、と言うことは、そもそもこの“取り決め事”に「論理性がなく」 適当に見過ごされ
    て来て、かつ、中途半端な決め事に固守される人が居ることから、新しい火災調査員から「わかりくにい」と言われる所以かと思う。
  1-1, 疑問の一端を検討
 Q1.  「建物火災」で対象とする「建物」は、建基法の建築物とも消防法の防火対象物とも違うような「扱い」となって
       いるが、どのように考えるのか? 
   Q2.  建物火災の建物の「収容物」は、どのように考えるのか?

     この2つの質問に対しは「正解はない」のではないかと思える。
       と言うことは、正解があるようでも、ないようであり、つまるところどっちでも良いと言えるような疑問だからである。
 
  1-2,事例から見た建物火災の対象                  
   わかりやすく実際の事例から見る。  
 Aのケース  Bのケース
事例 -1
解説  東屋(あずまや)。 休憩所としての役割と柱に囲まれて
   いることから、「建物火災」として扱う「建物」。
 × 傘型屋根の建造物は、開放性が高く従来“床面積”
    も算定しないことから「建物」として扱わない。
事例-2
解説  手水舎(ちょうずや)。これは柱が4本あり、屋根を持つ建造物
  として「東屋(あづまや)と同等」にとえられることから「建物」となる。
 その下にある物は「収容物となる」。
 × 柱が2本だけで、門型の建造物となり、「屋内的用途がない」ことから建物とは見なされない。その下にある物は「収容物ではない」。
  この事例1と2に、AとBの2つのケースを示した。
  A,B ともほぼ同じ用途に使用され、事例1は規模もほぼ同じ建造物です。 このA,Bのケースで、建物火災の有無(〇・×)とその解説を入れましたが、
  たぶん従来の解説でもこのようになるのかと思うが、ホントにそれが「建物火災」の区分なのだろうか? どこにその違いがあるのか? と疑問を持たれる。
  特に、事例1のAとBでは、どちらも同様に扱われるのが、普通の判断かと思います。事前に、解説等を知っている場合は別にして。
  そこで「疑問を考える」このコーナでは、事例1,2のAとBは全て「建物火災」であるとし、でも、事例2のBは規模的に「建物火災でない」として考えて
  みたいと思います。
  
  1-3,「建物火災」の判断はどのような経過で、形成されて来たのか?               転載を禁ず
   (1) 曖昧な出発点 
   火災種別の「建物火災」等を区分した際、「建物」「車両」「林野」は、漠然としており、それこそ社会通念上に視点を置く対象としての区分判断であった。
   そのことは、例えば、現在も「1.5㎡以下」や「人が出入りする高さを有しない」建造物は「建物火災ではない」としていることに通じている。また、廃屋や
   廃車なども厳密な取り決めはともかく、見た目で判断される要素が多分にある。
事例-3
 
× 電話ボックスは「建物」とは見なされない。
   建築面積も1.5㎡以下であるものが多い。
事例-4
 
× 廃車として捨てられている車両。
   内燃機関は稼動するかもしれませんが、廃車として判断され、
   火災種別は「その他の火災」となる。
   昔の基準では「ナンバープレート」のない車両は、その意味で
  「車両火災とならない」とされた時代もありますが、今は、自動車
  展示上の火災などで、ナンバープレートで判断するのは、単なる
  陸運上の手続きであるとして、実態から車両なら「車両火災とな
  る」こととしています。
   しかし、この写真のように「廃車」と判断されれれば、「その他の
 火災」です。
   ここで、建物の規模を1.5㎡以下としたのは、「電話ボックス」の火災の扱いで考えられました。
   昔、電話ボックスの下半分以上が不透明で、この中に入って、座り込んで、暖をとる人がおり、度々火災がありました(燃え草の電話帳もあったため)。
   で、「建物火災とするのはどうも変だな」となり、「電話ボックスの火災」から1.5㎡を居室の最低基準として除外している。しかし、最近は車椅子利用の
   ボックスは1.5㎡を超える広さですが、やはり「建物火災とはしない」ことで扱っている。
    廃車、廃屋は、それぞれの法律に照らせば、廃車届出や滅失登記を出さない限り、たぶん車両、建造物となり得ますが、社会通念としての大枠で
  捉え、廃車・廃屋等は「その他の火災」に区分しています。つまり、他の法令に拘束されるものではなく、
消防判断が本来の基準です。

 
(2) 火災保険に準拠した考え 
  その後、火災統計との関連性を重視して「火災保険の引き受けにおける建物」を視点の対象として取り込んでいる。
  この名残は、「渡り廊下で接続した2棟の建物」は、建基法の取扱いや消防通知の「渡り廊下の基準」と離れ「別棟」と判断し、また、母屋に付属する
  下屋建物なども本体建物と離してとらえている。
  保険約款は「建物」の用語を用い、「建物」とは「土地に定着し、屋根および柱または壁を有するものをいい、門、塀、垣、井戸、物干等の屋外設
  備・装置を除きます(建基法の建築物の定義てば門等も含まれる)。」 とされ、消防の「建物火災」もその意味を一致させている。基本的には
  この“火災保険の考え方”が最も支配的となっており、それは国内統計ばかりでなく、アメリカなど欧米諸国の火災統計との整合性からも適切
  なものとなっている。

 
(3) 建基法とのつながり 
   その後、消防法と建基法との関連が強いこともあり、次第に建基法よりの考えを取り入れている。その中で、比較的わかりやすく受け入れや
  すい考え方で、かつ、消防用設備等の設置時にも参考したことから「床面積の算定方法について」建設省住指発第115号 昭和61年4月30日
  
通知)を基にするようになった。今でも消防同意事務の中でこの通知を記載されている例も多く、消防的にはもっともなじみのある通知である。
   この関係で、この通知から判断することが、「火災調査を長くやってきた人と言われる人」の根拠となっている。(もっとも「根拠」と言うより我田
   引水に近く、自分で考えることを棚に上げた他力本願で、そのため「まともな質問に答えられなくなってしまう」ことも多い。) 
  1-4,前3(3)の建基法通知から見た建物火災への適用
  通知文からの一例
    ▼ 床面積の算定。
     (1) ピロティ
        十分に外気に開放され、かつ、屋内的用途に供しない部分は、床面積に算入しない。
     (2) ポーチ
        原則として床面積に算入しない。ただし、屋内的用途に供する部分は、床面積に算入する。
     (3) 公共用歩廊、傘型又は壁を有しない門型の建築物
        ピロティに準じる。
     (4) 吹きさらしの廊下
        外気に有効に開放されている部分の高さが、1.1m以上であり、かつ、天井の高さの1/2以上である廊下については、
        幅2mまでの部分を床面積に算入しない。
     (5) バルコニー・ベランダ
        吹きさらしの廊下に準じる。   ▲                                                 等         
   この床面積の算定通知の(3)により、傘型、壁を有しない門等は「建築物ではあるが、床面積が存在しないもの」となっており、結果、柱や壁で囲まれる部分のない傘型や
   片流れ屋根等の建築物は「建物」とは見なされないこととなっている。この考えが、始めに例示した事例1Bの「傘型や東屋は建物ではない」と解説されている理由である。
   同様に、その屋根の下に置かれた物は、「収容物としても扱われない」となる。
  その理由として「・・外気に開放され、屋内的用途に供されない部分」と言う説明が行きわたって、「建物火災における収容物の理由づけ」とされている。
  この代表的な傘型に近い事例は、下写真の片流れの「バス停留所」等である。  
事例-5
 
×
 歩道上の片流れのバス停留所
 公道上にあり、すべてが外気に開放され、屋内的用途は全くない
 ことから「建物」とはみなされない。
 ベンチ上の物が燃えても「建物収容物」とはならないで、「その他
 の火災」となる。
事例-6
 
×
 母屋に付随した下屋で、ピロティと類似しているとされると壁等の外
 であり、下屋の下は、床面積の算定とはならず、収容物とはならな
 い。(神社社務所の下屋の休憩所)
   この通知は、消防法との関係から理解しやすいこともあり長きに渡たり「建物火災」の考え方となっている。
   しかし、近年、様々な建物形態に対応するために、建築面積を積極的に算定する方向に動いており、下図では、外部に開放されている
   片流れ屋根の建造物は、庇から1mは除かれるが、それ以外の部分は、床が地盤面となっていても「建築面積」を算定する図である。
 「建築面積の算定について」(平成5年6月24日建告第1437号)国土交通大臣が高い開放性を有すると認めて
 指定する構造。最終改正平成12年12月26日建告第2465号
 玄関ポーチ、テラス、バルコニー等についても、「その部分」に該当する場合は建築面積の算定を次の通り取り扱う。
 
   このように、開放性が高い建築物も「建築面積」が算定されることからすれば、個々にケースバイケースで考えることもあり得る。
  例えば、次のような駐輪場の取扱い。 
                    A                        B
事例-7
 片流れ屋根の自転車置き場。
 建物と見なさなければその下の「自転車」は、収容物では
 なくなる? 右のBと規模の違いだけで、建基法での取 扱
 いを遵守すると現場的には混乱しやすいものとなる。
 片流れ屋根の自転車置き場。
 規模が大きいことから、建築面積でとらえられ「建物」となる。
 自転車は「建物の収容物」となる。
 従来の片流れ屋根を建物とみなさないと「その他の火災」となる。
事例-8
  専用住宅に付随する車庫(小規模車庫)
  床面積とは算定されなくても、建築面積として算定される
  部分であり、右図の「車庫」との構造上の相違点は少なく、
  「車庫」ととらえると「建物火災」となる。
  現在、このケースの車両の火災は「その他の火災」として
 は扱われなくなってきている?
 それ自体が車庫で、消防法・建基法ともに用途建物としている。
 建物用途として「車庫」であり、車両は建物の「収容物」として
 建物火災となる。
 開放性や地盤面であることからすると、Aの建物と同じ条件となる。
  この事例7と8では、現在、現場により混乱しやすい対象となっている。
  つまり、従来の昭和61年通知だけを拠りどころとしていると、現在の建築物の扱いとズレが生じることとなる。 なお、建築面積に対する考えに
  対し、「床面積」は従来どおり(115号通知)を取り扱うこととなるので、床面積にとらわれない、全体としての建築物の扱いの中で、「建物火災」
  を考えるのが、今の傾向となりつつある。
  1-5,従来からの「火災種別」の考え方
 (1) 「火災種別」を考える際の2つの原則
      ① 大枠で捉えて、端的に言い表す。
    
② 人の生活実態から見る。

   この2つが原則となっています。
   具体的に説明すると 「車両の火災で車両しか焼損していない」とは言え、車庫の中にあれば、車庫全体を見て「建物火災」と判断したほうが
   分かりやすいと言うことです。このように、焼損した「物」にこだわらず、つまり、原因や損害がどこにあるかではなく、「その物」が所属してい
   る全体をとらえます。大枠で捉えることにより端的に表現されることを優先します。
   次に、「建物のベランダ」の洗濯物などは、床面積に算定される部分となる建物内にある物ではないですが、生活実態から言えば「住居内の
   物」となりますので「建物火災」としています。逆に建物に設置されている公告用看板は、建物と言えずに、それ自体として「看板」となります
   ので、建物と切り離して「その他の火災」の区分とします。
    さらに、「建物」と「隣接している車両」の両方が燃えた時は、その火元や原因は別にして、被害の大きい方に人の眼が向かいますので、
   「生活実態」からの取り方として、損害額の大きい方を火災種別として扱うことにしています。

 (2) 生活実態から見たとらえかた
   「生活実態」としての扱いは、種別が競合した場合の扱いです。
    種別が「競合した」場合は、損害額が大きい方をとることを「生活上の前提」としている。これは、そのほうがより社会的に見て妥当とされ
   るからです。ただし、「収容」「積載」の包含関係のない、互いに独立した火災種別の競合関係です。
 ・ 屋外のごみなどから燃えて建物に燃え移った場合。ゴミの「その他の火災」と建物の「建物火災」の競合関係となりますが、損害額の大
   きい「建物火災とする」と言うもので、極めて合理的です。
 ・ 路上駐車の車から出火し、隣接した建物が焼損した場合。
  「建物」の損害額が大きければ「建物火災」ですが、建物の損傷が車に比べて軽微であれば「車両火災」となります。
 ・ 山林とその山中にある電波塔が燃えた場、「林野火災」と「その他の火災」が競合しますが、電波塔の損害額が大きい場合がありますが、
  この場合は生活実感から火災そのものが「林野火災」と言われるべきものであれば、損害額に依らなくても良いと言う「例外」解釈を設け
  ています。ただし、帳票入力上はエラーとなるので「OKエラー」で処理します。
   このように、「火災種別」は競合関係も含めて、より「わかりやすい」上位の種別をとります。下位の区分の「その他の火災」は最後の選
  択肢です。

 (3) 収容物と積載物の視点
  ここで、「大枠で捉えること」と「人の生活実態」との間に相反することがあります。その際には、「収容物」「積載物」と言う親カメの上に居る
  子ガメの関係は、大枠の中で捉える際の前提事項となっているので、間違いのないようにしてください。
  ここで、これらの例示を示します。
  1) 建物内に収容されているものとして、「飛行機格納庫」のような巨大な建物内で、飛行機の整備点検中の火災、農家の納屋のトラクター
    の始動時出火した火災などは、「建物火災」です。
  2) 荷台の積載物が燃えた場合は「車両火災」となることから、貨物専用のフェリーで、フェリーの「船舶火災」なのか、フェリーに積載され
    ている「車両火災」なのか、車両の荷台の荷物だけの「その他の火災」なのか、と親ガメと子ガメのような図式となります。これは「船舶
    火災」です。
   3) 路上にあるゴミが燃えており、付近にいたゴミ収集車の従業員に聞くと、車の荷台から「煙が出てきた」ので、収集車に燃え移ると思い、
    路上にゴミを下した。この場合も出火時はゴミ収集車内の積載物であったことから火災種別は「車両火災」です。出火時の実態による
    態様となる。
 注意する2つのこと
  1) 火災原因分類の出火個所コードが変わります。
    車両火災であれば、出火した部位の「出火箇所は4010 エンジン部」となるべきですが、車庫内の車両の火災だと「出火箇所が1610 車庫」
    なります。出火原因コードは車両本体の火災の「発火源、経過、着火物」となりますが、「出火箇所」は火災種別によって大、中分類が
    「拘束される」ことにより異なってきます。
  2) り災申告が変わります。
    この場合、り災申告は、建物(車庫)内の車両火災ですので、り災申告は建物の「動産」となりますが「車両」のり災申告で受け付けるの
    が損害査定では一般です。り災証明は、建物動産としての証明でなく、車両としての証明が求められている場合は、り災者の申し出に
    沿って扱うこととなり「火災種別」に拘るものではないです。しかし、損害の計上は「建物の収容物」として建物火災損害として計上します。
  1-6,収容物に対する扱い                                        転載を禁ず
  「収容物」は、その原則的な扱いがあります。ただし、これも絶対的なものではありません。
A B
事例-9
  建物火災
  ベランダの洗濯物や物件は、居室と連続する場所であることから建物
  の所有物として「建物火災」とする。ません。
 × その他の火災
  居室ではない通路側に置かれた物件は、居室との関係が
  低いことから収容物とはせずに「その他の火災」としている。
事例-10
 ● 建物火災 (1階~3階の場合)
  燃えた物が車両であっても車庫の収容物として「建物火災」
 駐車場の1F~3Fは屋根がある場所で、床面積も算定される
 ことから建物の収容物となり「建物火災」
  × 車両火災(屋上の場合)
  屋上は「車両火災」は建物の収容物ならないことから、
  「車両火災」となる。

 1-7 今後の課題としての視点(今は、火災報告取扱上は旧来の考え方(次ページ以降)です。)
  従来 「収容物は、柱、壁に囲まれた空間(床面積の領域)に存する物である」 となっていたことから、ベランダの洗濯物などは「建物火災とは
  ならない」と言う時代が長くあった。しかし、ベランダで燃えていれば「建物火災」と見られるのが一般常識と思われることから、昭和51年に
  「大枠で捉える」と言う考えを入れて変更している。
   ここで、事例8の「住宅車庫と車庫単独」とが同じ扱いとなって「建物火災」とされると、事例9のマンション内の「通路側とベランダ側」は同
  じ扱いとして「収容物」として捉える考えが「今後の課題」と言える。
   また、事例10も同様に同じ扱いで考え、大枠として「建物火災」が優先して区分されるものと思える。
  同様に、百貨店の屋上の「遊具類」「植木」なども燃えていると「建物火災」と考えるのが普通かと思いますが、今は「その他の火災」です。
  火災種別は、その火災を「大枠」で捉えられる時は細かい条件を付けずに捉えることが必要かと思います。
  また、このことは、初期消火が、百貨店の従業員が行い、法8条の防火管理のおよぶ範囲とも一致します。
  同様に、鉄道のプラットホーム上の逆傘型屋根や片流れ屋根の下は、ほとんど歩行者通路と同様として「建物収容物とはならない」となっ
  ているが、火災時の初期消火などは駅員が行っており、決して「道路上と同じではない」エリアです。
  つまり、マンションの通路側の物件や百貨店の屋上や外壁の看板等、あるいは、駅のホーム上の物品(自販機、ごみ箱など)は、その属し
  ている状態(法8条を基準)から建物と密接な関係にある物とし「収容物」として扱い「建物火災」の範疇に入れるのが必要と言えます。
    解釈は、時代により変更させて来ました。
    今の「解釈が正解」などと言う“解釈”は存在しませんので、「統計」とはそれを利用する立場の皆さんの良識で変更させていけば良い
   ものです(統計を単に集計している担当者が解説者ではない)。ただ、全国消防の潮流として確立した上で変更されるようにしたいですネ。

   §2  「火災種別」の取り決め事
  2-1, 「火災種別」の区分
   1 火災種別は6区分 
  火災種別は、6つに区分される。
  [建物火災、車両火災、船舶火災、航空機火災、林野火災、その他の火災]
    消防白書の説明を記載すると次のようになる。
  ①「建物火災」とは、建物又はその収容物が焼損した火災をいう。
  ②「車両火災」とは、自動車車両、鉄道車両及び被けん引車又はこれらの積載物が焼損した火災をいう。
  ③「林野火災」とは、森林、原野又は牧野が焼損した火災をいう。
  ④「船舶火災」とは、船舶又はその積載物が焼損した火災をいう。
  ⑤「航空機火災」とは、航空機又はその積載物が焼損した火災をいう。
  ⑥「その他の火災」とは、建物火災、車両火災、林野火災及び航空機火災以外の火災(空地、田畑、道路、
    河川敷、ごみ集積場、屋外物品集積所、軌道敷、電柱類等の火災)をいう。
    ( 「その他火災」ではなく「その他の火災」です。)
  2 区分のアンバランス 
  種別による区分けの占有比率を見ると、火災件数は概ね次のようになる。
  ①建物-25,000件、②車両-4,000件、③林野-1,500件、④船舶-100件、⑤航空機-1件、⑥その他-15,000件、
   最大の差は、建物火災「25,000件」に対する航空機火災「1件」と言う数字のアンバランスです。どう見ても「統計」として
  横並びに扱われる区分としては不似合で、グラフにはできないしろものです。
   アメリカの統計を2015年で見ると、次の3つの区分です。
     Fires in the U.S.(NFPA)In 2015, there were 1,345,500 fires reported in the United States.  
      ・501,500 were structure fires,
      ・204,500 were vehicle fires,
      ・639,500 were outside and other fires.
   全米で134万5500件の火災があり、建物火災50万1500件、乗り物20万4500件、屋外等その他の火災63万9500件です。
  区分は3つと案外ラフな感じです。
  
 ※日本の2015年(平成27年)の火災件数は、3万9111件(人口1億2700万)です。アメリカ(人口3億1000万)と実に40倍もの
     差があります。人口1億あたりの火災件数は、概略、中国で1万件、日本で4万件、アメリカで40万件となります。
     学者、研究者がアメリカの文献を引用して「火災予防」について論評しているのを見かけますが、「アメリカの火災件数
     を見たことがあるのか?」と思います。もっとも、「火災の定義」が異なっている面もあるかと思います。同様に、「火災
     による死者」ではその定義がかなり異なっており、日本は48時間と言う幅ですが、アメリカはWHO統計を利用し、韓国、
     中国ではもっと短く、日本の交通事故死の扱いと同じではなかいと思われます。 と言うことで、「アメリカの火災予防」
     と言った講演で、アメリカの膨大な火災件数を除外(delete)したまま、アメリカの火災予防制度を強調されるには、
     盛大な拍手を・・・。
  2-2, 「火災種別」の区分の解説                               転載を禁ず
  1 建物火災
 1-1 「建物火災」は、建物と建物の壁、柱に囲まれた部分にある物(収容物)を対象としています。
   建物は、概ね建築基準法に定義しているものと同じですが、さらに、広くとらえ、長屋門などが建物なら、犬小屋なども規模
   により建物扱いとしています。そこで、規模の基準としては、昔から電話ボックスは「建物火災とは呼べない」ことから、
   「1.5㎡の広さがある規模とし、高さは人が出入りできる高さ(約1.8m)」として扱っています。浮浪者のビニールテントは支柱が
   ありますが、高さが低いなどのことから「建物火災」とは扱っていません。しかし、この規模は単なる目安です。
   建物として扱えるようであれば「建物火災」としてください。
   次に「収容物」です。
   建物の外壁に取り付けられた看板やネオン灯、屋上の物件などは建物火災で捉えないことにしています。この「収容物」の
   考え方だと、ベランダ内の物は、外壁の外となり収容物とはなりません。そこで、「居室と一体である」として、1976年に解釈
   変更し「建物火災」としています。
    また、駄菓子屋や八百屋さんで、店舗内と連続して屋外(下屋内)にある場合も「建物内収容物」として扱います。
    では、車庫(建物)からはみ出ている車両は、どうするか。目安として、車両の半分が車庫内にあれば「収容物」とします。
    次に、時系列的な誤りとして、車庫内の車両で、「エンジン始動時に、煙が出て、火災だと気づき危険なので、「車を外に
   出した場合」は、消火行為としての火源移動にあたり、出火箇所は「建物内」となり、火災種別は「建物」とします。
 ☆ しかし、建物設備であっても、外観的な取扱いの考え方から、外壁の「電気積算メータ」だけが燃えた場合は「その他の火災
   (収容物でない)}とします。

  建設省住指発第115号(昭和61年)を基本として説明。
    建物は、「門扉」は含まれませんが、特異な「長屋門」は建物となります。
    日本家屋では、母屋の屋根下に設ける下屋(げや)は、建物内とされないず、同様にポーチ、ピロティも同じように扱われる
  ことが多い。このことから、2本支柱の片流れの屋根を持つ施設を「下屋」と同等として建物に扱わないこととしている。
 
1-2 「建物」の扱い 
 × 門扉は、「建物」としません。
 門扉は、長屋門のような特殊な建造物でない限りは「建物」としません。
  長屋門
 門とは言え「長屋門」と言われる特殊な構造を有することから「建物」となる。門内に居室もある。 
 × 切妻屋根だが、「門」と同じ類型であり「建物」としない。柱、壁に囲まれた部分もない。
 × 電話ポックス。壁に囲まれてはいるが、建物火災に扱わない。1.5㎡以下の建造物としている。  × 床面積は1.5㎡を超えても、高さがないことから、「建物」とはならない。いる。  ● 床面積が1.5㎡以上あり、このような物置は「建物」とします。
  仮設建物が、床面積が1.5㎡以上あり建物とする。  × 駐輪場は、片側支柱の片流れの屋根構造物で、下屋と同等の扱いで「建物」としていない。  ×バス停留所、屋内的な要素がなく歩道上の雨除けのための下屋であることから「建物」としない。
 × 片流れの車庫で、建物としません。   屋根と柱で囲まれた部分があることから、通路として使用されているが、単独の「建物」となる。   手水屋、屋根と柱に囲まれた部分があり、面積も1.5㎡を超えており、「建物」である。 

1-3 「収容物」の扱い
  屋根と柱に囲まれた部分があり、建物全体が車庫の用途として収容物となり「建物火災」。  × 片流れ屋根で「建物-車庫」とならないので、収容物ではない。「車両火災」   建物車庫内の収容物としての車両となり「建物火災」。
 × 建物の下にはありますが、建物の支柱の外側なので、収容物とはならない。なお、現在、この「はね出しバルコニー」は、車庫部分を建築面積と算定されることがあり、建物収容物と扱えるケースもある。  ● 車庫内とみなすか、微妙ですが、どっちでもとりえます。半分程度が支柱内で「建物扱い」。  × 高架が「建物」ではなく構造物なので、その下は収容物とはならない。高架下の車両は「車両火災」である。
 ×建物下屋の扱いで、下屋の下の物は「収容物」とはならない。「その他の火災」   販売所内の物は、建物の内部と一体として陳列されていることから「収容物」となる。例外的な扱いの一つ。  × ゲタ履き廊下の階段の下は、建築面積に該当させる時もありますが、「収容物」としては扱いません。
  ベランダは室内と見なして収容物となり「建物火災」。例外的な扱いの一つ。  × マンション通路は、開放性から建物の「収容物」とは扱いません。「その他の火災」

  これらの扱は、取り決め事ですので、前1で扱ったように、少々異なっていも別段「どうてことはない」です。

  2から, 「建物火災」以外の解説
  2 「車両火災」の扱い
    「車両火災」は、「原動機によって運行する車」とその積載物としています。
   原動機ですから、油エンジン、電気モータ、ガスタービン動くものであれば該当します。また、それが牽引や積載している物も含まれます。
   電車・列車なども含めて、牽引車両、レース場内レースカー、山林内特定地域内工作車両も含めています。登録の有無は問わないです。
   自転車は道路交通法では「軽車両」の扱いとなり、
  人が乗れる車ですが、車輛火災では「原動機」を条件としており、自転車、リヤカーは該当しません。
  ただし、遊具として見られる電気モータ駆動のゴーカートなどは、車となっています。 遊園地内乗り物としてのゴーカードは遊具とされ「その
  他の火災」に入れています。しかし、遊園地と言ってもディズニ―などで利用されている「乗り物」は、明らに乗り物の定義に適うものですから
  「車両火災」として捉えるものとなります。
  また、自動車レース会場での車両による火災も火災種別を「車両火災」としています。
  牽引車両
  原動機が付いていなくても「被牽引車両」となっているトレーラータイプの荷物台車やバイクの付設車両、牽引式キャビグカーも牽引された
  状態だと「車両火災」です。
  積載物について。
  トラックの荷台に積まれた石油ストーブから出火した、ゴミ収集車のごみから出火した。このようなケースは全て「積載物」の扱いで「車両火
  災」です。この場合に、ゴミ収集車で、ゴミが燃えた時に、出火箇所を「6010 道路」としないでください、「4050 荷台」です。

 
3 「船舶火災」の扱い
    「船舶火災」は、船舶、フェリー、釣り船、ヨット、カヌーなど動力は問わず船舶の対象は広いです。
   車両のように原動機の条件はないので、ヨットなどもはいりますが、「湖の手漕ぎボート」は該当しないこととしています。
   この場合、ドッグに入っていたり、台風等で陸に係留されていたり、展示会場で売られていたりしている、つまり「陸上」にある場合がやっかい
   です。「陸上の火災で、船舶火災があった」ことになり、ちょっとピントこないケースとなりますが、船舶火災も登録の有無や水面・地上の場
   所は制限していません。「船舶」であれば良いのです。 ただし、展示品で、未就航の商品で扱われるときは「船舶火災」とはなりません。
   フェリー内の「トラック(車両)」は、船舶の積載物ですので、トラックから出火し、トラックだけしか焼損していなくても「船舶火災」です。

   釣り船。河川に停留されていも「船舶火災」です。   河川に係留されている「手漕ぎボート」です。ヨットなど動力の有無を問わないので、一応「船舶」です。  歓楽地の湖の遊戯施設となる「ポート」は船舶としていません。なお、バイク型のウォータバイクが見かけますが、船の形をしていませんが「船舶火災」の扱となります。
 4 「航空機火災」の扱い
   「航空機火災」は、航空機の他に、ガス装置を付けている気球が入ります。
  ドローンは、200g以上は航空法の規制対象で、それ以下は「トイドローン(おもちゃ)となっており、ラジコン制御の農薬散布用ヘリコプターなども
  航空法規制対象ですが、「航空機火災」とはなりません。
   このように車両、船舶、航空機は「乗り物火災vehicle fires」としての性格から、「人の乗車」を本来的に想定しており、ドローンやラジコンヘリは
  「航空機火災」とはならないです。
   たぶん、この意見に、「人が乗車する」条件がない以上、航空機と言う人もでてくると思いますが、今後の課題です。

 5 「林野火災」の扱い
   「林野火災」は、原野、牧野、天然林、人工林があり、その林野や牧草の他に、山林の下草が含まれます。
  この境界が、やっかいで、畑・農道と林野の境界がはっきりしないケースで火災が起こると、山林下草(「3040人工林」)と考えるか、農道側の枯れ
  草(「6080田畑」)と考えるかによって、異なります。日本の火災統計では「火入れ」と言う火災原因が多くあり、これ自体が、地域により考え方に大
  きな隔たりがあります。一応、立木の一本でも焼損していれば「林野火災」と考えるとわかりやすいものとなります。

 6 「その他の火災」の扱い
   「その他の火災」は、上記の区分に該当しないもので、立て看板、ゴミ、枯れ草など さまざまな対象をひっくるめて扱います。地域によっては、
  「枯れ草火災」を別に区分している消防本部もあります。

  2-3, 火災種別の決定
 火災種別の決定
  このように、発生した火災を、「火災種別に分ける」ことにより「火災予防」的な視点の意味合いで、統計処理の枠に入れています。あくまで、火災
  予防的な意味合いですから、あまり、厳密に拘る(こだわる)と、勢い「その他の火災」に入れたくなります。
  日本の統計処理は「精緻である」ことを求めます。
  ほとんど意味のないような屁理屈で「厳密さ」を求める「統計担当者」が居られます。この担当者は、実は「統計を扱って」いても、火災現場そのも
  のは「良く知らない」人が多く、そのために「文献のドツボに浸りきる」傾向にあります。
    過去にこんな例がありました。航空機が故障し、パイロットが離脱した後に、墜落して、「火災」になった事例です。火災になったのは地盤上で、
    その時には航空機としての機能もなく、人を乗せても居なかった、故に「その他の火災」とされました。しかし、あまりにも一般常識と離れている
    ので、後日「航空機火災」に訂正しています。同様に、高速道路上で側壁に衝突して、大破し、その後「出火」したら、大破した時は車両ではな
    いので「その他の火災」となると言う判断は誤りです。これも「車両火災」です。「その他の火災」に区分するのは、他の区分では説明がつかない
    ケースに適用する、と考えてもらえればと思います。
  はじめに、原則で示した「大枠で考える」と良いと思います。なお、間違っても別段たいしたことではなくので、、エラー修正をすれば足りることです。
  気軽に訂正してください。

 
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