火災調査探偵団   Fire Investigation Reserch Team for Fire Fighters
Title:「焼死者の統計からのデータ -2 」転載を禁ず
B3-17   08’04/06 →19'08/18      .   

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1,「火災による死者」の統計⇒月別、時間別の特徴
 月別、時間別のデータがれ(2006年現在)    
    「火災による死者」が発生した「火災」には、一般的な火災とどのような特徴的な側面があるのか?と言うことから、統計的な側面を見て
   みることから始めます。まずは、発生した月と時間です。  

図1 全国の月別の「火災件数」と「火災による死者」数
  ☆ 図1として、2006年中の全国の「火災による死者」の統計を、まず、月別件数として
  見てみた。 火災件数と比較すると、明白なのが、月別の件数との相違で、火災件数は
  春・夏の5月~9月はやや少なくなるとは言え、そんなに大きな変化は無いが、
  「火災による死者」では、12月~3月の冬場に極端に多く発生している。
  「火災による死者」の発生は、火災全体の発生傾向と比較して、「冬」に集中する傾向が
  あると言える。
 
★ 冬季(12月~3月)に、焼死者火災が集中する。
  図2 全国の一日の時間別「火災による死者」数

  時間別に見ると0時から5時の「夜中」に集中して発生している。
  特に1時と2時台は、火災発生と同時に「火災による死傷者の発生」を前提とした、
  消防活動が求められると言える。「深夜に多い」と言う、傾向が、「火災による死者」
  の発生要因の特質を物語っている。
 
★ 夜中(0時~5時)に、焼死者火災が集中する。

  「火災による死者(焼死者)」で、高齢者の占める割合が多いのは、既に多くの統計でしめされている(消防白書等)。
 
 1990年(平成2年)の論文で、東京消防の1988年(昭和63年)の「火災による死者」の中で、高齢者が占める割合が74人中30人
   と40.5%となったことから、「非常に高い数値だ」と述べられているが、12年経った1990年で、当時から15ポイントも高い、
   6割となり常態化しつつある。 その当時の「火災による死者」の要素は。
       ①高齢者   ②寒くなり始める11月から3月   ③病弱者ひとりぐらし    ④たばこ・暖房・調理器具の原因 
    を上げている。2016年も東京消防では、高齢者が約60lを閉め、その半分は後期高齢者(75歳以上)となっている
    2018年(平成30年)では、全国で、住宅内の「火災による死者」926任のうち高齢者652人(70.4%) と住宅火災では約7割
   となっている。
   ★ 
    1991年(平成3年)のUSAのNFPAジャーナルで「火災と高齢化社会」と題して論文あり。
    → 1990年10月ブッシュ大統領が「火災予防週間の開始」を宣言し、USAでの火災予防の取り組みを、特に、高齢者・幼児
       の対策を打ち出した。住宅火災における、年齢別の比重として、65才~74才では死者全体と同程度で、75才~84才で
        は3倍、85才以上だと4倍になり、高齢者の火災に対し極めて弱い立場となつている。
       特に、タバコの火災の対策、寝具類の防炎化を強調し、タバコの火災予防として、「煙感知器」の設置促進を上げている。
2, 高齢者の火災による死者の実態  転載を禁ず
 様々なデータから見た「火災による死者」
 左図 全国と東京の年代別男女別焼死者数
  全国の2006年(平成18年)の「火災による死者(自損を除く)」の年代別数値と
  東京消防の平成8年~17年までの10年間の同様の統計を、左図のグラフにした。
   全国の統計では、男性は50歳代から急増し、女性では70歳から急増する。
  男女の年代別比率は全国と東京ではだいたい同じ傾向で、女性は60代を過ぎて
  急増する。次に、全国と東京を、男性で見ると、最大値が全国では70歳代だが、
  東京では60歳代となり、女性ではどちらも80歳以上が一番多くなる。
   (年代別人口との比率を見ると、65歳以上の高齢者比率は他の年代に比べて、
  極めて高くなる。)
   上図 高齢者と成人の「出火前の状態」の比較                        
   図は、東京消防の2002年(平成14年)~2006年(平成18年)の5年間の焼死者436名の中から、65才以上の高齢者と5才以上の成人
   の中で、出火前にどのような状態であったかが、分かっている場合だけを取り上げてた。
   「高齢者」では151人、「成人」では110人の出火前の状態を100%比率で示したが図です。就寝の次の区分は「避難」です。
          「高齢者」では、就寝(54)・避難(10)・休憩(8)・家事(5)・消火(5)の順となる。
          「成人」では、就寝(72)・避難(13)・休憩(1)・家事(2)・消火(6)の順となる。
   この表では、高齢者は就寝中は成人に比べて18ポイントも低く就寝していない時に発生した火災により亡くなっている。
   つまり、起きてはいても、気付くのが遅く逃げる機会を失ったり、身体的に逃げられない健康状態だったり、していることが見られる。
左図 高齢者の世帯像
  図は、東京消防の2002年(平成14年)~2006年(平成18年)の5年間の高齢者で、
  世帯数が分かる焼死者255人を調べた。
  一人暮らしが44%を占め、次いで、高齢者のみの家族32%、そして一般的な
  成人等と一緒の家族形態が24%であった。
  世帯とは別に、出火時に「一人であった」高齢者が64%であった。
  このように、高齢者の一人暮らしが、4割を超えていることは、単に、「火災予防
  に気をつけよう!」だけのPRではない、社会構造的な陥穽を示している。
  これを、古い文献から調べると、1984年(昭和59年)~1988年(昭和63年)の5年間の
  調査結果として、全体の185人の中で「一人暮らし・高齢者」は、65人の35%
  あったことが報告されている。この約20年間で、「一人暮らし・高齢者」の増加は、
  火災に遭遇して亡くなる人の率から見て、35%から44%と9ポイントも増加している
  ことになる。 
4,住宅火災における焼死者の火災の特徴
 死傷者の発生しているデータ
 左図 東京の建物火災の「住宅」の占める割合
 東京消防の1989年(平成元年)から18年間の1,629人の「火災による死者」の
 出火建物を見ると、住宅火災による死者が85%を占めている。
 2006年(平成18年)の全国統計では、住宅・共同住宅の住宅火災による
  焼死者が、90.5%となっている(消防白書)。
 住宅火災が、ほとんどと言っても良い数値を示している
 左図 住宅火災全体と焼死者火災の“出火箇所”別の比率
 この表は、少し古く、1991年の東京消防の年間統計とそれ以前の
 108件の焼死者火災の統計から取っている。
 住宅火災全体では、居室・台所・玄関等となり、居室と台所の差異は少ない
 が、焼死者火災では、居室が8割を占め、次いで14%を台所となつており、
 この2つで、93%とほとんどを占めている。
 火災の発生としては台所も大きい要因であるが、焼死者の発生する火災
 としては、少ない、ことになる。。
  左図 住宅火災全体と焼死者火災の“出火原因”別の比較
   出火原因となるとグラフの形が大きく相違する。
   住宅火災全体では、調理器具・放火・タバコ・暖房器具となるが、
   焼死者火災では、タバコ・調理器具・暖房器具・火遊び等となっており、
   かなりの相違がある。
   焼死者の発生する火災は、
    ・「居室」が中心で、原因としてタバコ・暖房器具があり、
    次いで、「台所」としての調理器具からの火災がある。 
  左図 焼死者発生時の主たる要因
   東京消防の1996年(平成8年)~2005年(平成17年)までの10年間の
   住宅火災の焼死者816人について死傷に至ったと想定される「要因」
   を推定した統計結果。
    これによると、「発見の遅れ」が最も多く、379人の46%を占めている。
    もっとも、これは、「たぶん、そうだろう推定される要因」であり、実際の
    所は亡くなっているので「わからない」のが正確な答えではある。
   次に、焼死者の14%が避難困難であり、これは、病気や身体不自由など
   の健康状態であったことによる。そして、着衣着火の12%が上げられる。
   「逃げ後れ」は同居人が火事ぶれして、気付いていたり、消火作業をしてい
   て、煙に巻かれるなどして、逃げられなかった人である。 
     
 上図 火災発見時の「火災の進展状態」
   途中的な統計ではあるが、東京消防の2007年(平成19年)の1月から11月までの、一般建物火災と焼死者発生火災の「火災発見時」の
   火災の進展状態を比率により、比較した。天井まで火が伸びていない状態を「消火可能」とした。
     建物火災全体では、鎮火していた11.3と、立ち上がりまで75.8の87.1%が「消火可能」の火災進展の時に発見されている。
   つまり、約9割近い建物火災は、人が気付くのは「消火可能」な範囲の時に気付いている、ことが分かる。
    しかし、焼死者発生火災では、「消火可能」な範囲の火災は、47%である。建物火災全体に比較して、40ポイントも低く、約半分以下となる。
    この、火災発見時のタイミングの遅さが、焼死者発生の主たる要因となっている。
  これらの分析として、東京消防が、2007年12月に「火災統計資料=火災による死者の実態」を出している。
  また、2007年2月に「火災による死者発生防止の効果」、2008年2月に広報課から「過去10年間986人の分析」などがだされている。 
  また、「火災の実態」の平成14年から19年版を参考して、集計している統計結果が多い。
 図は、平成4年東京消防「火災による死因の生理学的検討結果報告書」から取り込んだ。同じ内容は、「予防時報」172号の「住宅火災による
 焼死者防止対策」としても掲出されている。
  
その他の参考引用資料。
 「火災」62号 「生活状況し焼死者」塚本孝一
 「予防時報」161号 「高齢者焼死の原因」秋場貞夫
 「防災」284号 「平成6年中の火災による死者の実態」
 「建築防災」’91.1「住宅火災の情況と焼死の現況について」
 「月刊フェスク」’98.10「最近の火災による死者の傾向と死者低減方策についての考察」関沢愛
 ☆ 焼死者の数量化理論第Ⅲ類を適用した分析
  この課題には、「予防時報」127号で東京消防の高橋太氏「住宅火災で死傷者が 多く出るのはどんなときか」として1981年の東京消防の住宅
  火災から分析され、「死者」の場合を3つのパターンとしている。
  「セキュリテイ」1991-1号で、関沢愛氏「住宅防火に関する研究」として、1996年の全国統計から分析され、3つのパターンを抽出している。関沢氏
  の場合は①乳幼児パターン、②健常者パターン(一人暮らし・泥酔・飲酒・就寝中等) ③高齢者のパターン(出火時一人、不自由又は寝たきり、
  病気あり、起床中等)となっている。
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