火災調査探偵団        Fire Investigation Reserch Team for Fire Fighters
            Title:「質問調書」       転載を禁ず
B4-14   06’09/24 ⇒ 17’02/17      .
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1,火災調査は、「関係者の供述」が必須の要素となっている。
  火災調査は、「関係者の供述」が必須の要素となっている。
    火災現場だけから「火災原因」を究明しょうとするにはムリがある
   火災調査では、「現場見分」と「関係者の供述」が出火原因を判定する際の有力な要素となっている。火災調査の対象となる火災現場は、
   「焼けてしまった」事実から出発 する。このため「焼けてしまっている」ことから言えば、そこには何の手がかりもないこととなる。そのあた
   り前のことを理解したうえで、火災現場を見て、関係者の供述を追いかける必要がある。「蒲団とその下の畳が深く燃えている」この事実か
   らすれば、「たばこの火源落下」を考え、その裏付けを求める。モルタル壁の内部から出火していると見られるようなら、漏電、外周部放火、
   花火などを思いつくかもしれない。現場の焼き状況だけから「火災原因」を導き出すとするのはムリが生じる。ジグソーパズルで、不足した
   ピースをもとに復元するような物足りない作業となる。
    空き家から出火して全焼している現場は、まさに、これに該当する。焼けの見方から、建物の内部か外周部から出火したのかの検討はつ
   くかもしれないが、と言って、「そこで、突きあたってしまう」。およそ、火災現場とはそのよう対象(=field work)である。
    ・ これは、研究者、学者が火災現場に出向いて調べた内容の多くが、およそ「火災調査としての手順=技法を学んだ経験のなさが示され」
     単なる個人的な散文に近いものとなってしまうことに通じる。本人達は、火災研究者として現場に行けば、何んらかの手がかりがつかめる
     ものと勢い込んで出向くが、結局は、地元の消防本部の資料にすがりついているのが実態です。

 関係者の供述に着目した姿勢
    「焼けた現場」は、所詮その程度のものでしかなく、抽出する要素が少ない対象であるとすると見る姿勢が必要です。火災原因を究明しょうと
   する火災調査の立場からは一歩突き放して見る必要があります。
    関係者の供述に着目した姿勢が、あらゆる現場の基礎となっています。特に、交通機関、設備器具類、研究実験等の現場などでは、新参者
    の立場で「質問」を連発する図太しい神経が大切です。
2, 関係者の供述の落とし穴

 
関係者の供述の落とし穴
    火災と関係者の立場から見て供述録取をする。
    関係者とりわけ出火行為者(例えば 喫煙した居住者)から話しを聞く際、本当のことを聞き出すことは、なかなか骨の折れることです。
    「誰だって、嘘はつきたくない」だから、誰だって、相手が嘘をついているとは、思いたくもない。しかし、「本当のこと」を話してくれるとは限ら
   ないだけに、供述に基づく「現場の発掘」が、まるで的外れのことも起こりえます。例えば、外出前にタバコを吸って、出かけに吸殻を台所の
   「ゴミ入れ」に捨てた。しかし、本人は、当初から「外出前、ストーブを消し忘れた」「ストーブの調子が良くなかった。」と話した場合。この本人
   が、義理の親同居のお嫁さんだと、どうしても、タバコを吸っていたこと、そのことを、話したがらない。かくして、台所と居間の部屋を、主に
   ストーブを中心に発掘が始まるが、 発掘すると、どうしても、「焼け」と辻褄が合わない。かくして・・・・再度、やり直しとなることもある。
    供述に頼りすぎると振り回されて、現場発掘が手順どおりにいかないでバラバラとなってしまう。
   
 供述が、始めから“曖昧”となる関係者
   火災調査に際し、関係者の質問回答の多くが「あやふや」になるのは、工場・作業所で起きた火災です。一般的に、工場・作業所での火災は、
  その工程上、当事者が日常的に、今までの経験による失敗を含めて様々なことを知っている。そのため、火災も、経験からしてその原因が推定
  されることが多く、しかも、その原因が自分の過失によるものとうすうす気づいていることがあり、結果、回答が「あやふや」になる。
   特に、「危険物施設」は、その傾向が強い。質問の仕方に工夫がいる場面です。このような火災原因に関することを「関係者が話したくない、
  あるいはあいまいなままである」場合は、火災現場の発掘過程から詰めていく姿勢が必要で「現場が答え」を出してくれることもあります。
  また、初期消火や避難誘導となると、関係者の供述がコロコロと変わって「本当のことは何に??」となります。とりわけ、最近のように防火管理
  に関することが厳しいと、それらに関与した出火建物の防火管理者や防災センター職員などは、意識的に話しを自分に有利に繕ってしまうことが
  あります。

 供述者は、火災との関連が深いほど自分に有利となる記憶の辻褄合わせをする。   
  事故心理学では、これを研究者の名前から「ベーカーの法則」と言うらしいです。つまり、起こったアクシデントに対する切れ切れの記憶を
  「筋の通ったシナリオ」として、関係者が、自らから意識の中で組み立てるのです。この記憶の隙間をうめる「記憶の歪み」が自然と自分が
  不利益とならないようになっていくことを意味します。
   このため、現場で消防・警察が聞いた供述内容と、そのあと、〇〇大学や〇〇研究所等が「×××火災の研究」と称して関係者から聞いて
  レポートした内容とかなり食い違っていることがあります。消火も避難誘導もロクにしていないのに、消防隊が到着するまでの間に奮闘して、
  消火作業、避難誘導をしたように話す防火管理者や従業員がおり、これらが、消防雑誌や学会誌などの「×××火災の研究」に掲載される
  こともあります。しかも、このような火災の結論として、その火災で死者が出たのは、法令の不備であるとか、建物の構造上の問題があるとか、
  となっていることもあります。
 
3,早い段階の供述録取を心がける
   火災では、関係者(目撃者・通報者等も含めて)から、早く話しを聞くことが、より事実への近道で、それが常道である。   
   質問を採る時には、関係者が取り繕う暇を与えない状態の時、つまり、できる限り早い段階で、供述をすることが鉄則です。
  しかも、大事なことは、良く知っている調査員が聞くことであす。早い段階の関係者からの供述録取は、ベテランの火災調査員が当たることです。
  不慣れな調査員だと相手に予想以上の先入観を持たせてしまい、後々まで影響することがあります。一度、造られた「嘘の供述」はなかなか
  訂正されることはありません。
   ・ 本部詰めで、およそ現場を知らない者が、大規模・特異火災だからと言って、本部職員・階級・知ったかぶりの3点セットの職員が、関係者に
  質問すると、もう、ダメです。東京消防にはこの手の本部職員、研究所職員が多くいます。普段、火災現場で関係者から供述録取の書類など書
  いたこともない職員です。
   関係者は、そのヘタクソな「質問の意図」から、自分に都合の良い「記憶を作り」上げてしまいます。完璧に無意味な供述となってしまいます。
   「質問は、火災原因調査で最も重要な技術だ!」と覚えておこう。火災調査に普段から  
   関与していない職員は「排除する」姿勢で現場を統制することが必要です。

余談で~す
   これらは、中公新書「犯罪心理学」や交通事故心理学なども参考しています。
   また、少し離れていますが、岩波新書「自白の心理学」なども参考しています。
   交通事故行為者の心理などが参考となります。なお、USAの心理学は社会学的な心理学が多く、事故原因などに参考になります、
   反面、ドイツを中心とした病理心理は、犯罪者の犯罪行動を解きあかすことに関して、有用とされています。
   J.S.Bake(ノースウェスタン大学)
   Joel Aronoff の研究から「当事者は自分の過失をかばって、もっともらしく取り繕った状況を報告して、事故を説明する傾向がある」と
   要約して、これらを普遍的な法則であるとした。
 
もう一つ、余談で~す
   上記の教科書的なことでなく、最近の若い人からの供述録取の難しさについて。 
   《 四六時中、耳から音楽を聞き、スマホのゲームに熱中となっている、今どきの若者が多いです。そのためか、自分とって「関係ないなと。
    判断する」と、例え、目の前の人が、どんなに分かりやすく、理路整然と話しても、質問(話し)そのものに、乗ってこない。「心を消す」と言う
    か「質問されていること、自体を消去する」ので、とりつく手だてがない。聞いても「はあー 」と言って、肯定でも否定でもなく、顔を傾げるだけ。
    現場に立ち会って、質問されても一日中、その調子で通してしまう。若い年齢で“無関心”に包みこまれた関係者。 》
  
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