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防火管理と火災

                                                  H5-05    07.11.14  転載を禁ず

1,防火管理の課題としての「刑事責任」
  防火管理に関しては、「火災」による多数の死者が発生するたびに、その建物の関係者が「火災」との
  関係において、責任を問われる。刑事事件では、業務上過失致死傷罪である。

  1、裁判上、重要とされている火災事件とその判決概要            転載を禁ず
 裁判になった火災事件は、多数あるが、主なものとして最高裁まで争われたもの代表的な4つと1つを一覧にした。 

概要 1審(地裁) 2審(高裁) 最高裁
千日デパートビル火災


H2.11/29 最高裁判決
ビル関係者、防火管理者 業務上過失致死傷罪
昭和47.05/13出火
寝具売り場から出火
2階から4階を焼損
118名死亡、42名負傷 
管理次長A公判中死亡
ビル防火管理者B、キャバレー経営者C、同支配人・防火管理者D
  無罪
防火管理者B禁固2年6月(猶予3年)
キャバレー経営者B、防火管理者D禁固1年6月(猶予2年)
B,C,Dの 上告棄却
川治プリンスホテル
火災


H2.11/19 最高裁判決
専務B 業務上過失致死傷罪
昭和55.11/20出火
風呂場から出火
2棟全焼
45名死亡、22名負傷
社長A
禁固2年6月(猶予3年)
専務B
禁固2年6月実刑 
専務B
控訴棄却
(他は確定)
専務B 上告棄却
大洋デパート火災


H2.12/01最高裁判決
ビル所有者側の元課長等
業務上過失致死傷罪
昭和48.11/29出火 
階段から出火 
3階以上全焼
104名死亡、67名負傷 
代表取締A、常務Bは公判中 死亡
人事部長C、火元責任・課長D、防火管理者・係員E
 無罪
部長C禁固2年(猶予2年)
課長D禁固1年(猶予2年)
係員E禁固1年6月(猶予2年)
全員
 無罪
ホテル・ニュージャパン火災


H5.11.25 最高裁判決
ホテル社長と防火管理者
業務上過失致死傷罪
昭和57.02/08出火
客室から出火
9階以上焼損
33名死亡、34名負傷
社長A 
禁固3年実刑
防火管理者B
禁固1年6月(猶予5年)
社長A
控訴棄却
(他は確定)
社長A
上告棄却
 スーパー 長崎屋尼崎店

H5.09 神戸地裁判決
 
 平成2.3/18出火
 4階寝具・インテリア売り場付近から出火
4階814u焼損
15名死者、6名負傷者
店長A
禁固2年6月(執行猶予3年)
総務マネージャB
禁固2年6月(執行猶予3年)
 
   
 この中では、熊本・大洋デパート火災を除くと、起訴された人は「有罪」となっている。
 特に、一審で「有罪」とされると、最高裁は確実に有罪となる傾向が強い。そのためか、
 平成5年9月神戸地裁判決の「尼崎・長崎屋店火災」や平成9年10月福岡地裁判決の「飯坂温泉・若喜館火災」の
 有罪判決では、控訴がなされなくなっている。
 このことから、経営者・店長及び防火管理者は、建物用途が不特定多数の者を対象とする限りは、「防火管理」の
 責任が重大である事になる。
 2、防火管理と、業務上過失致死傷罪(刑法第211条)の関係
   
   刑法第211条 業務上過失致死傷罪 ⇒ 業務上必要な注意を怠り。その結果人を死傷させる、ことによって
                             成り立つ。 一番多い、かつ、分かりやすいのが、交通事故の場合です。 
    業務上過失致傷罪の「防火管理」への適用を、分かりやすく図示すると下図のようになり、
    捜査機関では、これらの点に関する資料が捜査上必要とされる。

 
  例えば、自動火災報知設備の非常ベルの鳴動を「停止」状態にしていた、 避難訓練などをせず、従業員が火災時に
   何の避難誘導もしなかった、 防火扉が壊れていたのを漫然と放置していた、消防用設備を設置しなかった、避難階
   段に品物などを置いて倉庫がわりにしていた。などの具体的事実と、起訴された被疑者との密接な関係が明確に
   されれば、「火災よる死者の発生要因」として、その罪の償いを求められる。

 
   
ちょっと、一コマ
  多数死者発生時の火災における、「人災」としての責任論は、置くとして。 
  1−1表のとおり、漠然と「火災」を捉えると、一般住宅で火災時に「消火できるのは(0.77*0.70=0.54) 54%」
  で、約5割である。
  これが、3−2表のように、防火管理対象物で {法令遵守}建物であっても「消火できるのは67%」である。
  一般住宅に比べて、13ポイントの差でしかない。これが、極めて大きな「差」と考えるのか、54%と67%は、たまたまの
   偶然により「消火成功」が異なると考えるのか。
  
  しかも{不適正}建物の56%との差、11ポイント。とすると、裁判時に、その所有者の取っていた不適正な防火管理
  のあり方が、即、「火災」の被害に直結して「人災」と、決めつけるのも、難しい面があるようにも思える。
  「火災」時の人が取りえる行動は、「結果」に対して常にプラスに働くケースばかりではなく、その時のさまざまな偶然が
  その「火災」を取り返しのつかない大災害にしたてあげる要素もあるように思える。
  
  しかし、判例上は、火災による結果責任として、「防火管理」がかなり厳しい役割を担うのが、今の現状である。
  
  参考とした資料
  * 中山研一・米田泰邦 著 「火災と刑事責任」成文堂
  * 関 東一 著         「防火管理責任の基礎」近代消防社
  * 西田典之・山口 厚 著 「ジェリス 刑法の争点 第3版」有斐閣
  * 森本 宏 著        「防火管理責任論」全国加除法令出版
  * 石毛平蔵 著        「消防活動と責任」東京法令出版
  * 石毛平蔵 著        「過失の理論と実際」東京法令出版
  * 木下健治 著        「判例解説」全国加除法令出版
  * 雑誌「ほのお」の中の幾つかの記事。
  興味の有る方は、これら資料(書籍)を参考とされてはどうでしょうか。

                                                    08.07/27

2 「火災」と裁判
 火災の発生とその結果の被害、そして、その後の警察の捜査、と検察による起訴。
 火災調査の立場から見ると、次々と発生する火災に気を取られて、昔の「火災の裁判」の問題まで
 気が回らない、とも言えなくもないが、消防官としての立場から、やはり、チェックしておくべかと、思う。

   2008年 最近の判例から               転載を禁ず       
  1 宝塚カラオケ店火災
 
 2008年7月4日に、大阪高裁の判決が出された。これで、ほぼ、決まったような感じた。
 ★ 火災事件
 2007年1月20日18時35分頃、兵庫県宝塚市のカラオケ店から出火。
 鉄骨2階建て、延べ193uのうち、1階の厨房から出火し、1階100uを焼損した。この火災で、
 カラオケをしていて、逃げ後れた16才・17才・18才の青年3名が死亡、他に5名が負傷した。
 火災の原因は、従業員が1階で揚げ物をしていて、その場を離れた為火災となった。
 本建物は、事務所(15項)として設置、その後、カラオケ店(2項ロ)に改装、1階4部屋、2階7部屋
 を設け、1階の一部を事務室と厨房としていた。このため、消防用設備が1階消火器のみで、防炎・
 誘導灯・2階消火器・人員から見た非常用警報設備などがなかった。消防の査察もなかった。
 ★ 判決
 業務上過失致死傷罪で、元経営者(54才)を地裁と同様に禁固4年とした。
 すでに、出火行為者のアルバイト女性店員(35才)の有罪は確定ずみ。
 
  内容
 出火行為者は、揚げ物火災は重過失となることからも、既に、判決のでているとおりである。
 経営者が、本火災に対して、「結果の予見・結果の回避・本来責任」が有るかどうかは、今回は
 争いのないこととされ、
 判決理由で「・防火体制は、あまりにもずさんで、これを放置したまま営業を継続した過失の程度は
 著しい・・」とし指摘した。そして、被害者弁償の見舞金等の支払いを先のばしとしていたことも、今
 回の判決に反映されて、「執行猶予」がつくことなく、「禁固刑」の実刑となった。
  要約すると
  「火災の発生」→「火災による死者・傷者」がある。
 @ 「出火時に在館者に避難を呼びかける対応がなかった。」
 A 「消防法から見た際の防火管理・消防用設備等において、違反とされる事実が指摘される。」
 B 「経営者として防火管理に感心を寄せていた実績がない。」
  このような3つのポンイトがあると、業務上過失致致死傷罪が成り立つようだ。
  そして、
  C「 被災者に対して、誠意有る十分な対応をしていない。」
  この時は、執行猶予が見送られる。
 
  2 新宿歌舞伎町・雑居ビル火災(明星ビル火災)
 
 2008年7月2日、東京地裁で5人に有罪判決がなされ、16日に検察・被告ともに上告しないことから
 判決が確定した。
 ★ 火災事件
 2001年9月1日1時前に3階E.Vホールから出火し、3階と4階を160uを焼損した。
 耐火造一部その他構造5/2、建築面積83u、延べ516u。
 所在は、新宿区歌舞伎町1−18−4  明星56ビル
 所有は、有限会社 久留米興産 
 階層・面積   用  途   事業形態  火災時の死傷者
 5階 36u  E.V室、その他事務     
 4階 82u   カフェー キャバクラ  27名中、27名死亡  
 3階 82u   遊技場  ゲーム麻雀 20名中、17名死亡、3名負傷 
 2階 82u   その他事業  イメクラ  閉店
 1階 82u       〃  チラシ配布等  火災影響なし
 B1階 75u   遊技場  バカラ  閉店
 B2階 77u   カフェー・機械室  クラブ  火災により客等は避難
 
 死傷者: 死者44名(男32名、女12名)、傷者3名(男3名)
 焼損部分: 3階と4階の各フロー部分80uの計160u焼損床面積、
         2階階段と5階階段の内壁6u、天井3uの計9u焼損表面積。
 出火原因: 3階階段ホール付近に放火されたもの。
 消防用設備: 消火器−部分有、誘導灯−有、自火報−部分設置。
                                         (詳細は、火災誌No254)
 ★判決
       役職等  求刑       判 決 
 明星グループオーナ
 明星ビルの実質オーナ(66才)
 禁固4年 禁固3年、執行猶予5年 
  明星ビルの所有者(56才)
  〃         〃
  4階飲食店 経営者(34才)
  〃         〃
 3階麻雀ケーム店実質の経営者(48才)      〃         〃
 3階麻雀ゲーム店経営者(44才)   〃  無 罪   
 3階麻雀ゲーム店 店長(41才)    禁固3年  禁固2年、執行猶予4年
     
 ★ 内容
  7年近い歳月を経ての判決となった。
  被告が6名おり、そのぞれぞれに「火災被害」との関係においてどのような「責任」があった争わ
  れた。長く、たいへんな公判であった。結果的には、概ね有罪となり、その罪を問うことができたが、
  これだけの死者が発生した火災としては、「防火管理」を改めて、消防機関に問いかけているよう
  にも思う。
★判決から
  出火原因は、出火場所に火気のないことからも「・・火災原因は放火の可能性が高い」とし、「出火
  の予見可能性は低かった。」としている。
  防火管理の面で。
  狭く急な内階段に物品が所狭しと置かれていた。
  火災感知器、防火扉、非常用進入口など、警報・防火・避難・排煙などの様々な不備のある危険を
  放置していた。 防火、防災意識が極めて希薄で、改善を怠ってきた。
  防火扉の開閉に無関心で、消防の検査で煙感知器の未設置を指摘されても改善しなった。
  ⇒ 防火扉が正常に閉鎖すれば被害者が死亡することはなかった。
  5人は防火管理業務を適切に行なう業務上の注意義務があるのに、最低限必要な防火管理業務
  からしてこなかった。
  (その中で) 遺族らに見舞金を支払っている。

 @出火の予見性はないが、「死傷者発生に及ぼす防火管理上の懈怠から、死者の発生予見がある」
 A消防の指摘も含め、消防用設備・建築上の設備等に何ら注意を払わなかった。特に、防火扉。
 B実質オーナに対しては、具体的な指揮権はなくても、所有者の責任として防火に勤める責任が
  あることとなった。
 C 遺族に対する対応として“見舞金”による償いが、判決上で配慮されているようだ。
  
  今回の裁判で最も注目されたのが、 実質的な「オーナ責任」である。
 今後、「業務上過失致死傷罪」の適用が、市民感覚で言われる「トカゲの尻尾切り」としないため
 に、実質的なトップを包括的な指揮権により、罪に問う事が可能となつた。
 先般、JR西日本、福知山線脱線事故は、事故要因として、同社の勤務指導体制があることが
 鉄道事故調査報告として取り上げられていることから、JR西日本の社長が在宅起訴された。
 JRとしては、従来の判例からも、弁護の主点は「事故と直接因果関係のない勤務指導面で、刑法罪
 の適用は難しい。」とするが、今回の新宿歌舞伎町雑居ビル火災の業過の判例からは、十分に
 有罪もあり得ることになる。

    
  三菱ふそうトラック・バスの「リコール隠し」による人身事故の責任を会長等当時の幹部を有罪とした。
   ★
 2008年7月24日 元三菱ふそう自動車の会長が、高裁への控訴を取り下げたことから、一審の横浜
 地裁の有罪判決が確定した。業務上過失致死傷罪により、禁固2年執行猶予3年の刑が確定した。
 この裁判は、2000年7月にクレーム隠し。02年1月三菱自動車のトラックのハブの欠陥からはずれたタイヤ
 が母子3人を死亡させた。さらに、同年10月にも同様の事故で運転手が死亡。
 07年12月元三菱自動車の部長問う2名が有罪判決。
 08年1月 横浜地裁により三菱ふそう会長・三菱自動車社長ら4人に対して有罪判決。
 ★
 一審の判決で 「部品の欠陥を知りながらリコールなどの改善措置を講じず、漫然と不具合を放置した」
 としている。
 「業務上過失致死傷罪」が、この1ケ月間の裁判判例により、非常に厳しい内容になっていると
 思う。社長やオーナとなっている人は、その業とする事業において、「死傷者」を出すと、説明責任の視点
 において、刑法上も責任を問われる立場となる、と考えたほうが、分かりよいかもしれない。
 確かに、法律論争的には、刑法犯の要件は厳格に適用されると思うが、「結果」としての被害に対して
 果たして、常に無実の立場を貫けるかは、「社会」の評価にも寄るのではと思えていくる。
 

3 ,防火管理による「火災への影響」               転載を禁ず
  ちょっと、ひねったタイトルとなってしまった。ここでは、東京消防の「火災の実態」から
  防火管理に関する数字を拾ってみる。

  実際に防火管理と”火災発生”とのTotalな統計的検討は少ない。
 そこで、「火災一般」から見て、防火管理とはどこまで有効な火災発生と拡大に対して、抑制策を
 提供するのか、を検討みた。もちろん、かなり、一方的な「統計的数字」の産物でしかないので、
 批判的見方をすると、いくらでもあるかと思うが、一つの試案として。

 1,火災時の初期消火成功はどのくらいか?
    まず、住宅火災の場合から見てみる。{3年間(平成14年,17年,18年)}
  

 住宅と共同住宅。つまり「住宅火災」をまず、指標として見てみる。
 取り上げる「統計数字」を火災件数、その消火従事件数、そして、その時の初期消火の成功件数とした。

  1)火災、2)火災時の初期消火従事、3)初期消火成功のそれぞれの件数を調べた。

   (東京消防の平成14,平成17,平成18年の3年間とした。 ⇒以降、15年・16年は統計数字に間違いがあるので除いた。)
    1−1表      
@火災件数 A従事件数 B成功件数 C従事率(A/@) D成功率(B/A)
共同住宅     3,084     2,301 1,799 75% 78%
一般住宅     4,114     3,243 2,101 79% 65%
住宅火災     7,198     5,544 3,900 77% 70%

  一般的な「住宅火災」を想定すると、77%が初期消火に従事するが、成功する率はそのうちの70%となる。 
  さらに、「成功率」を見ると、一般住宅では65%だが、共同住宅では78%と13ポイントの高い値を示す。
  その差は、何か。
  「従事率」では一般住宅が79%と、共同住宅の75%より4ポイント高い。
  この差は、長年住み慣れた自宅内での「火災」には何としてでも「消した」という気持ちが働いたとすると
  「意識の差か?」となるのかなと思う。
  では、「消火に従事したうちの成功率」は、なんなのか。
  
  これを、共同住宅の「防火管理者が該当の建物火災」と「防火管理者非該当の建物火災」の場合で見ると、
   「防管該当」81% 「非該当」74%となる。
  同じ共同住宅で見ると、「防火管理該当建物かかどうかで」7ポイントの差がでている。
  防火管理者該当建物は、共同住宅ではだいたいは耐火建物で少し大きな規模となる。
  だとすると、「成功率」の差は、「建物の消防用設備」の整備状況によるものが「半分程度」を占めている
  見てよさそよだ。 
  残りは、火災遭遇時の一般住宅と共同住宅の居住者の「年齢・身体状態」などが考えられがデータがなかった。
 
  念のために、防火管理該当建物で「防火管理者・消防計画あり」と「そうでない(未届・未選任)」場合を見ると、
  前者が82.1%、後者が81.9%と同じ82%と「ほぼ同じ」となる。
  つまり、共同住宅の「火災」では「防火管理・消防計画の届出」の有無は、火災時の消火活動の
  「成功率」には、ほとんど影響していないといえる。
    
(ただし、統計を取った年により若干の違いはあり、すべてこの通りではない。)
  
  まとめると、
  建物居室内での「人」行動としては、火災時に初期消火に従事するのは77%程度で、そのうち初期消火に成功
  するのは70%となる。そして、初期消火の成功率は、建物の消防用設備の充実度などが過半程度に影響している。
  共同住宅に限って言えば、防火管理対象物であれば、「防火管理者・消防計画届け出」の有無は、火災時の
  初期対応に、あまり影響がない。 
 
                   1−2表
  住 宅 火 災 
  消火に従事(77%)
 消火に成功(70%)
   
 2, 政令用途の防火対象物の初期消火時の成功率は?

  次に、政令用途の防火対象物(共同住宅を除く)について、同じように、
  火災、消火従事、初期消火成功の各件数とその比率を取り出した。
        2−1表
@火災件数 A従事件数 B成功件数 C従事率 D成功率
防管該当建物 1,701 1,296 1,109 76% 86%
防管非該当 1,159 812 533 70% 66%
防管建物全体 2,860 2,108 1,642 74% 78%
  防火対象物では、全体として、
  「火災」時に消火に従事するのは74%で、そのうち初期消火に成功するのは78%となる。
  住宅火災時での、主として「居住者」の行動パターンと、防火対象物での主として「従業員」との違いは、
                 2−2表       
C従事率 D成功率
住宅火災 77% 70%
防火対象物火災 74% 78%
  
  従事率では、住宅火災のほうが3ポイント高く、初期消火の成功率では防火対象物のほうが8ポイント高い。
  これは、一般住宅と共同住宅を見た場合と、良く似た傾向となっている。

  やはり、一般的に見た、政令用途の防火対象物は、消火活動が主として「従業員」なので、「居住者」ほどには、
  消火活動に“熱心”ではないのかなと、思われる。
  しかし、設備的なことや、従事時間帯であることから、住宅のように「夜間・寝ている時まで」の火災ではない
  ことからか、初期消火の成功率は、高くなる。この8ポイントの差が微妙である。
 
 3, 防火管理者の選任など「法令遵守」による建物とそうでない建物、
      「法令遵守」は初期消火の成功率はどのように反映されるか?
  
  防火対象物(共同住宅は除く)の中から、「防火管理対象の建物」と「防火管理非該当建物」を取り出して、
  その違いを見てみる。
    3−1表  
@火災件数 A従事件数 B成功件数 C従事率 D成功率
防管該当建物 1,701 1,296 1,109 76% 86%
防管非該当建物 1,159 812 533 70% 66%
防火対象物全体(計) 2,860 2,108 1,642 74% 78%

     政令用途の防火対象物(共同住宅を除く)の火災を取り上げると、「防火管理者該当建物」と「非該当建物」の
   火災が、だいたい同じ件数となっており、統計的には、都合の良い値となっている。
   そこで、これを見てみると、「防火管理該当建物」は、「非該当建物」の場合に比べて、「消火従事率」も「消火成功率」も、
   いずれも高い値となっており、防火管理対象物の主として従業員の消火活動は、たいへん良くできていると言える。
    特に、初期消火成功率は86%と約9割が“成功”している。
    非該当建物と「初期消火の成功率」の違いは、20ポイントと明らかに有意な差を示している。

   もちろん、その中には、建物の規模の大きさによる、消防用設備の設置状況が大きな要因となっているが、合わせて、
   防火管理面のソフト面もあるものと思う。
   設備面では、病院・福祉施設などの建物はスプリンクラー設備などにより、スプリンクラーが作動するとほぼ100%消火
   していることから、これらの用途を個別に見ると「成功率100%」が見られ、設備面での充実は初期消火の成功率を押し
   上げる要因となっている。
   
   次に、防火管理対象物の火災の中から、
   火災発生時において、「防火管理者・消防計画のいずれも届け出」されている{法令遵守}対象物と、
   防火管理又は消防計画のいずれかが届け出されていない{不適正}対象物との違いを表す。
   3−2表      
@火災件数 A従事件数 B成功件数 C従事率 D成功率
防管・消防計画届出 {法令遵守} 1,418 1,092 949 77% 87%
届出なし  {法令不適正} 283 204 160 72% 78%
防火管理該当建物 1,701 1,296 1,109 76% 86%
  
 火災件数の個数が、{法令遵守}対象物と{不適正}対象物では、1/7とかなりの差があり、小計の防管該当対象物全体
 におよぼす統計上の影響が表れている。C従事率、D成功率は、{法令遵守}の数値が平均の数値を支配している。
 つまり、前段の「防管該当建物」と「防管非該当建物」との差は、「防火管理{法令遵守}対象物」と「そうでない建物」との差
 となって表されているとも言える。
 
 この表で見ると、「防火管理該当対象物」としては、その意味で建物規模等が同じ程度だとすると、ソフト面での、
 {法令遵守}対象物と {不適正}対象物の違いが、C従事率とD初期消火の成功率となって表れるものと考えられる。
  とすると、C従事率では5ポンイト、D成功率では9ポイントの差が、ソフト面での差に近いものとなる。
 
                まとめると

 
1,防火管理対象物であっても、{法令不適正}建物は、
         共同住宅での火災対応程度しか「活動能力がともなわない」。
  
   3−2表から、防火管理該当対象物として、それなりに消防用設備を設置させていても、火災時の初期対応を見ると、
   消火の従事率やその時の消火の成功率では、{法令不適正}建物では、従事率72%、成功率78%でしかなく、
   共同住宅での居住者の従事率75%、成功率78%と、ほぼ同じ程度でしかない。
   つまり、設備的に消火器・自動火災報知設備などがあり、かつ、活動時間帯が多い中であっても、「一般的」な共同住宅
   の「火災」時の活動内容程度しか、活動能力がともなわなず効果がないことになる。
   消防用の設備は、主として人が扱うものが大部分であることからしても、設備投資は役立っていないとも言える。
   
 2,防火管理者・消防計画の届出がなされている{法令遵守}対象物は、
   一般人が自宅を想起する程度の意識で、従業員が初期消火の対応を行い、
   かつ、初期消火成功率は9割近い成果がある。

  3−2表から、防火管理者・消防計画の届出がなされている{法令遵守}対象物は、火災時の従事率は77%と高く
  住宅火災時の「居住者」とほぼ同程度の数値を示しており、火災対応力は「従業員」の意識が、「居住者」の意識と
  近い程度にまで、なっていることが分かる。
  さらに、消火成功率は87%、約9割にも達しており、{法令不適正}と比べると9ポイント、約1割もの差が生じている。
  しかし、用途別の違いも大きく、「事務所」の用途では90%近いが「飲食店」では80%と10ポンイトの差があり
  飲食店などの「用途」では、火災時の初期消火訓練は普段から欠かせないことが見られる。
 

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