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消防署の消火活動実態

(新しく作ったファイルについて)概要 Abstract )。

 
当署では、今年に入って、毎週1件で、3件の延焼火災があった。で。
 いったい「東京消防・80消防署の消火活動実態」とはどんなものなのか? と、疑問が出てきた。
 
 東京の消防署は、だいたいが管内居住人口15万人程度、署員数130人ぐらいです。
 しかし、大きい消防署では、管内人口が54万人の八王子、41万人の町田、38万人
 の世田谷、34万人の足立、32万人の志村、30万人の杉並などの消防署があり、
 反面、人口たったの116人の丸の内、6,600人の奥多摩、2万人の神田・麹町など、がある。 

 そこで、部分焼以上の火災を「延焼火災」とし、その件数と、「焼損床面積」の年間面積を東京消防80消
 防署の4年間データを打ち込んで、平均化し、それらを散布図とした。
 結果。 散布図から見て、80消防署の特徴が、6つのグループに分かれた。
  ・Aグループ(都心・奥地型) ・Bグループ(東京の平均型) ・Cグループ(郊外型)
  ・Dグループ(意外性型)   ・Eグループ(多忙型)      ・Fグループ(例外型)
 
 さらに、ここから、「消防力の基準」ではないが、管内人口との比較をしてみた。
 もちろん、地域性によって、上の6つのグループに見られる、人口とは違った様相を示す。
 そこで、消防署の「延焼火災件数」と「焼損床面積」から見た「仮想管内人口指標」を作ったみた。
   式は、[ Y=80.1a+7500b+22000 ]です。
       Yは仮想管内人口、aは焼損床面積、bは延焼火災件数。 

例えば、 
 [署名]  [管内人口]   [延焼火災件数] [焼損面積]   [仮想人口指標]
 品川  112,889人→   10.25件    258u  → 119,500ポイント
 池袋  112,066人→ 
  16.25件    806u  →  208,400  〃
 昭島  112,985人→
   10.50件    223u  →  101,000  〃 
 同じ、管内人口の上の3つの消防署ですが、「火災」と言う面からは、違った個性を持っている。
 この「仮想人口指標」だと、だいたい消防職員としての「消火活動の実感」に近づくのでは思う。

  4, 「仮想管内人口」を用いた、東京消防の各署のポンプ車1台あたりの受持ち人口
                                           
      09.03.22
 
 
 1,これは何を意味するのか?
  丸の内は、ポンプ車が3台配置されている。そして、居住人口に対する、ポンプ車一台あたりの人口は、たった39人だ。
  品川では14,000人、目黒で28,000人、板橋で32,000人をポンプ車一台が担当している。
 しかし、それだと、実際の「火災実態」とはあまりが合致しない。そこで、下の1〜3により考察した「仮想管内人口」を算出して
 それにより、ポンプ車一台あたりの“受持ち仮想人口”を算出した。
 それだと、丸の内で9,000人、 品川で14,000人、目黒で23,000人、板橋で31,000人となる。
 ポンプ車一台あたりの、仮想人口と居住人口が一致しているのが「青色の7署」。居住人口に対して、仮想人口との差が大きい
 署が「ミドリ色の4署」である。
 いずれにしても、黄色の17署とさらに多い赤色の6署は、居住人口とは関係なく、「火災実態の頻度」として大きい署だ。
 特に、居住人口が少ない割に「黄色・赤色」に該当する、芝・上野・浅草・日本堤・奥多摩などの署は、楽そうに見えながら
 実は、ポンプ車あたりでは結構「火災」を担当していることになる。
 もちろん、下2で解説しているように、「八王子」や多忙型の「新宿・志村・足立・西新井・本田・町田」は、署全体して多忙で
 あることには違いがない。

 
2,広域化にむけての、署員の再配置計画
 
広域化すると、各消防本部の従来の職員数が全体としての、バランスから再配置の見直しをうける。
 しかし、その時、従来の消防力の基準、今の消防庁告示「消防力の整備指針」が果たして、意味をなすだろうか?
 と言って、1998年Vol.48 No.2 火災学会論文集の難波・保野氏「火災危険度予測に基づく消防署所の配置計画に
 関する研究」などの論文を参考にしても、実際に現にある消防署を念頭に置くと、実際の火災と救急の実態から、適
 正な職員枠を検討しなければならないのではと思う。
 この、「仮想管内人口」の考え方を参考に、居住人口に拘らずに、火災実態に応じて、配置されてはと思う。
 とすると、上表の東京消防の各署ごとの、ポンプ車の配置台数のアンバランスが見えてくる。
 ただ、ポンプ車一台あたりの数字が、消防の場合「署員数」に決定づけられている、ことが、算定を難しくしている。
 もちろん、「居住人口数」を念頭に置いた補正が求められることは必然的な帰結ではある。浅草は4万2千人、
 ・日本堤は5万3千人、奥多摩は7千人であることからしても、言えることである。

   

 1, 「消防署による、消火活動の違い」

                                                           H3-11   09.01.22 
  東京消防庁内の消防署の消火活動の違いを統計から見て、考えて、見ました。
  下のグラフは、都内80の消防署の4年間の部分焼以上の火災(以下「延焼火災」と
  焼損床面積の平均の散布図です。
  延焼火災としたのは、「その他火災・車両火災」や「ぼや火災」では、実態として「消火活動(放水)」をあまり
  しないだろうと考え、「部分焼以上の火災件数」を一応、延焼火災として考え、放水しているとして、取り上げ、
  そして、建物火災の焼損床面積との比較で、見てみることにしましたを示しました。

   このグラフは、都内80消防署
 の4年間の延焼火災件数と
 焼損床面積の平均の散布図
 です。

 縦軸が、1年間の“焼損床面
 積”です。
 横軸が、延焼火災の建物
 火災件数です。
 
 例えば、
 大井消防署は、年間平均して
 6.5件の延焼火災があり、
 131.5uの焼損面積がある。
 杉並消防署は、
 26.0件の延焼火災があり、
 649.5uの焼損面積がある。
 滝野川消防署は、
 10.0件の延焼火災があり、
 298uの焼損面積がある。
 
 つまり、放水活動している
 実態的な火災活動数値となる。

 この80署の散布図は、近似線が結構正確に直線性を示していることは当然として、署々の特性も表れています。
 まず、近似線ですが、
     a=33.3b 
           a
(年間の焼損床面積),(年間の部分焼以上の建物火災件数「延焼火災件数」)
            の関係があります。    
   東京の80の消防署の平均的な姿は、
          年間「部分焼以上の「延焼火災が14.3件、焼損床面積492u」です。
   消火活動として、建物火災で年間14件程度行い、492uが焼損することなります。

   全国の同様の統計は、「部分焼火災」と言う、火災区分ごとの件数を出していない本部が多いので、分かりません。
   一度、自分の本部の消防署と比較してみてください。
  

  
   各署の延焼火災件数と焼損床面積の関係を大雑把に捉えてみました。
   その結果、おおよそ6グループと1の消防署に分けて見ました。
 八王子消防署  
 (ハイ・グレートな署)
 
  グループの外にはみ出している年間火災件数300件、
 延焼火災件数48件、焼損面積1700uが毎年あるのは、「八王子消防署」です。
 ま、ここは人口54万人以上の都市を1署で扱っている「超・極端な消防署」です。
 この意味では、全国どの地域の広域化も1つの消防署程度で足りることになります。
 と、言っても、出火率は4.2と平均以下です。

 Aグループ
都心・奥地型
 10署をまとめました。
 丸の内・麹町・日本橋・臨港・赤坂・高輪・大井・四谷・狛江・奥多摩です。
 つまり、都内都心部と、多摩の奥地となります。東京は広くて、個性豊かな消防署が
 あることが分かります。
 平均して、年間3.7件の活動で、75uの焼損面積となります。
 八王子消防署と比較すると、気の毒ですが、人口的にはだいたい5万人程度となり
 10分の1以下で、耐火建物や孤立建物が多いことから、わかります。
 しかし、都心部の中枢機能もあり、損害的には、単なる建物火災ではすまないとこ
 が多いです。 
 Bグループ
東京の平均型
  48の消防が該当しました。 
 東京の平均的な署の姿です。
 荻窪・中野・荒川・王子・金町などで、管内人口も約10万人程度で、ターミナル駅
 が1〜3駅あり、何となく、落ち着ける地域を管内としている所です。
 平均して、年間11.9件の活動で、366uの焼損面積となります。
 署員数も120〜160人、出張所も2〜3つ程度です。
Cグループ
郊外型
  4つの消防署です。
 世田谷・渋谷・杉並・福生です
 管内人口も15〜30万人とマチマチですが、ある程度のまとまりを持った街区が形
 成されているところで、署の大きさも大きいところが大く、福生を除いては署員数も
 300人を越えています。
 平均して、年間28.0件の活動で、654uの焼損面積となります。
 つまり、消火活動を必要とする火災は多いですが、その割りには、焼損床面積が
 少なく、放水口数も少ない地域と言えます。
 Dグループ
意外性型
 8つの消防署です
 大森・成城・池袋・城東・立川・府中・調布・日野です。
 管内人口も20万程度となります。15万人の池袋から23万人の府中までの幅があ
 りますが、前記しているように、管内人口がその署の火災実態を示してはいません。 
 つまり、「消防力の基準」で算出されるような、人口と火災との相関は否定されます。
 人口が居住人口であり、その署の管内包括人口ではないからで、特に東京では
 地域によって異なりなります。
 逆に、この「“延焼火災件数”と“焼損床面積”」が「仮想管内人口」を示している
 とも言えます。
 Dグループは、年間17.9件の活動で、847uの焼損面積となります。
 消火活動を必要とする火災件数は、比較的少ないように見えて、実は、大きく延焼
 拡大する火災が多い地域です。
   Eグループ
    多忙型
 6つの消防署です。
 新宿・志村・足立・西新井・本田・町田です

 やはり人口では新宿の16万人から足立の34万人と倍程度の開きがありますが、
 「火災活動」としては、同じランクとなります。
 Eグループは、年間31.3件の活動で、1,130uの焼損面積となります。 
 年間に30件を越す消火活動です。月平均3件は消火活動に従事します。ま
 もっとも消防署らしい消防署と言えそうですが「忙しい」署です。
 そして、火災となると延焼するケースも多く、平均して毎年1,000uの消火活動
 に従事しています。
 この中で、延焼火災件数が一番多いのが足立消防署です。
 焼損床面積では、本田消防署です。
 いずれにしても、この6消防署で“勤務”すれば、消火活動能力がAランクとなります。

  Fグループ
  
例外ケース   
 3つの署です
 小石川・浅草・秋川で、統計を取った4年間に大規模火災があった所です。
 普通は、Bグループに入ります。
 つまり、東京の消防署は、平均してBグループですが、このように、突発的にある
 年に大規模な火災を替え込むことがあります。
 これは、地域性として戦前の焼け残った密集地域などを持っていることや、倉庫
 などがある場合です。今回はこの3署は「レアケース」です。
  

  このように、形としては5つ[都心・奥地型]・[平均型]・[郊外型]・[意外性型]・[多忙型]の5つです
 東京消防に入庁して退職するまでに、この5つのパターンの署をそれぞれ転勤して勤めると、「消防署」を肌で
 感じ取ったと言えるかも知れません。

2, 「消防署の管内人口と“延焼火災件数”“焼損面積”の比較」 

                                                          H3-11   09.01.22 
   ここで、さらに、統計数値をイロイロと探って見ました。
  その基準数値として、「消防力の基準」の管内人口との比較をしてみます。
  「なぜっかって?」→これからの「広域化」の中で、どの消防署がどれだけの人員・資機材を必要とするかは、
  結局のところ、管内人口によるところが大きいですが、果たして、それだけだろう。
    管内人口がだいたい同じの3つの消防署
     [署名]  [人口]         [延焼火災]    [焼損面積]
      品川  112,889人  →   10.25件    258u 
     池袋  112,066人   →   16.25件    806u
     昭島  112,985人  →
    10.50件    223u
 
    どうでしょうか?
   池袋は、ターミナル駅がありますが、品川と昭島はありません。(JR品川駅は高輪管内)
   しかし、品川と昭島では、昼間人口はかなり違います。街も古い住宅が品川にはまだあり、管内の高低差も
   大きいです。
   つまり、「管内人口」だけからは、その地域の「潜在危険性→火災危険率」が異なると言えます。
  

 このグラフは、
 縦軸に“延焼火災件数”
 横軸に“管内人口”を示す散布図
 です。
 だいたい人口に比例して延焼火災
 も多くなるのが読み取れます。
 しかし、年間延焼火災30件のライン
 に新宿・渋谷・西新井・調布・志村
 足立と“人口に割りに大きくはみ出
 している地域が見られます。
 そして、世田谷に行き着くと、相関に
 沿った延焼火災件数となります。
 ライン上にあるのが、本郷・国分寺・
 西東京・杉並・世田谷・八王子です。
 
   このグラフは、
 縦軸に“焼損面積”
 横軸に“管内人口を示す散布図
 です。
 上グラフの延焼火災件数に比べ
 相関性が悪い(低い)ことが分か
 ります。
 つまり、焼損面積の規模は、人口
 にはあまり比例しないでその地域
 ごと地域性に依存することが大き
 いことが読み取れます。
 ズレの大きいのは、池袋・新宿・
 西新井・本田などです。
 ライン上に、滝野川・王子・渋谷・
 江戸川・足立・町田です。
  

 2つのグラフから近似式がでます。
 「延焼火災件数と管内人口」と「焼損床面積と管内人口」です。
 そこで、この2つの関係を1つの式に、まとめてみました。
   Y=80.1a+7,500b+22,000 
            Y(管内の火災危険性からの仮想人口指標)、a(年間の焼損床面積)、b(延焼火災件数)
                                        (a,b ともに数年間の平均の数値) 
 この式を1つの目安とすると。
    [署名]  [人口]         [延焼火災]    [焼損面積]   [仮想人口指標]
      品川  112,889人  →   10.25件    258u   → 119,500ポイント
     池袋  112,066人   →   16.25件    806u   →  208,400  〃
     昭島  112,985人  →
    10.50件    223u    → 101,000  〃 

 つまり、住居人口では、池袋と昭島は同じですが、火災危険性からも見た実態上の[仮想人口指標]では
 約2倍の開きがでることになります。 つまり、消防職員の体感的な意識から言うと、こんな感じかな、と思います。
    
    [署名]  [人口]         [延焼火災]    [焼損面積]   [仮想人口指標]
      矢口  116,824人  →   11.5件    290u   → 131,400ポイント
     本所  116,993人   →   12.5件    422u   →  149,500  〃
 

  矢口と本所も同じような管内人口で延焼火災もだいたい同じ件数ですが、焼損面積が倍近くことなります。
  そこで、仮想人口指標で見てみると、やはり、12%の違いがでます。
 

 3,まとめ

 消防が、自分達の街を知り尽くしていることを実感して、その地域ごとの違いを様々な物差しで比較してみる
 ことも必要な時代ではないでしょうか?
 今回の「部分焼以上の火災件数」は、東京消防では「火災程度」として統計上の数値表記していますが、
 国の火災報告取扱要領では、り災建物ごとの「焼損の程度」としており、「火災の程度」と言う項目がないこと
 から、全国的には、取り扱われない統計数値の火災件数であり、比較することが難しいかもしれません。

 これは、「火災の消火活動」に限って見たものです。
 予防では「防火対象物数」が、防災的な見地では、やはり「管内人口」が基本的数値になるのではと思います。
 救急では、火災と同じで「管内人口」にある程度の補正を加えないと救急要請の実態数値に近づかないので
 と思いますが、ま、このホームページは「火災」を主体としているので、「消火活動」だけとしました。
 

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