・・・あー、やっぱさっきの河南中路の駅まで行って地下鉄に乗ろうか。
観光随道の入口を通り抜けると、そこには場末のゲーセンまたはさびれた観光地の
匂いが漂っていた(そのまんまか。)。ゲーム機の音が空間に響き渡っているがゲームをしている人はなく、
というか人気自体が全くなく、窓口には大量の窓口嬢はいるが客はなく。
うしっ!気合いを入れて窓口で切符を買う。気合いを入れないと買えない状況。しかも往復チケットで。
やるなー、俺。めっちゃ勇気あるよな、俺。誰も並んでもいない改札でチケットをびりっと破って
もらって乗り物のホーム?へ降りるエスカレーターに乗る。何故にこんなに真っ暗でしかも天井には
作り物のツタがびっしり。ここはどこですか?
そしてホームに降り立った俺の目の前には左上の写真のようなシュールかつデジタルな光景が広がっていた。
何ですか、これは?
あの、ペットの小型犬を持ち運ぶ時のような入れ物をでかくしたような乗り物がごっとん
ごっとん動いている(犬かごと命名。)。当然の事ながら約95%の犬かごが無人、無人、無人。・・・
ここは遊園地ですか?そしてもう閉園ですか?
しかし、この犬かごの驚きはこれだけではなかった。
俺が乗り場に着くと、係員のお姉さんが俺を犬かごに入れる。何か予感がして前方が見える窓のそばに
陣取る。でも何故か発車しない。お姉さんはおそらく次の客が来るまで発車させるつもりはないようだった。
こんなに空の犬かごがごろごろあって、次の客など影も形もないのに何故?何故だー。
何分か待ってやっと母親と娘らしい女性2人連れが現れた。お姉さんは2人を俺と同じ犬かごに入れると、
やっと発車させてくれた。
犬かごが動き始めると、大音量のナレーションと音楽と共にトンネルの壁が光り始める。
な、何ですか?これは。スピードは人が走っているのと同じ位だろうか。いきなり黄色に包まれる。
俺も驚いたが、母娘連れも驚いた。彼女達は乗った当初は後ろの方に座っていたが、光に誘われて前方に
吸い寄せられていた。
そしてこれは単なる始まりに過ぎなかった。
黄色の光を通り過ぎたと思ったら、今度は7色のフラッシュ、そして左写真のような赤の光。
わー、中国人ってすげーなー。
感動していると目の前に明らかにここには場違いな物体が立っていた。
かかし?
かかし状の風船のようなものでできた人形が両手をいっぱいに広げて3、4体、線路脇に立っている。
しかもその手は犬かごの前方の窓にぱしんぱしんと被さるように当たる。・・・これは「わーっ!」って
誰かが驚くと思って作ったのだろうか?驚くと言うより、じんわり怖い。そして不気味。
おそらく陽光の下で見るとかわいい人形なのだろうが、人形の顔には下からライトが当っていて、そのおそらく
無邪気を目的に作られた笑顔は不気味さを5割増にしていた。この人形の笑顔、夢に出そう。
そしてその次には何故か前方に映像を映し出したスクリーンが見える。しかし、犬かごの窓が結構汚れて
いるのと、周りの壁がぴかぴか光っているせいで何が映し出されているのかは不明。
ここでのBGMは大音響の水音だったので、おそらく滝か何かと推察される。
犬かごがスクリーンに近付くと、スクリーンがぐいーんと天井に引き上げられ、犬かごはその下を通って
進んでいく・・・。
このトンネルの中のイベントを作成した人と会ってみたくなった。そしてあなたの作った映像は全く
確認できませんよ、と親切に教えてやりたい。
時間にして10分程度、このぬるいお化け屋敷のような乗り物は無事に河の反対側に到着した。
帰りもこれで帰るのがとても楽しみになった。
当然こちらの駅にも客の姿はほとんどなく、こちらはホームから上がると土産物屋や軽食コーナーが
あったが、ここで何かをする気になれない程度には煤けていた。
外に出ると、すぐ近くにタワーが見えていた。上れそうな場所が3ヶ所ほどあるように見えたが、
何故窓がいずれもピンク色に彩られているのか。不思議だ。
何はともあれ、晴れるのは今日だけかもしれない。そう思うと気持ちが急いた。
タワーの根元に到着。一旦は入場券を買って中に入ろうとしたのだが、急激に腹が減っていたのに気付いたのと
夕焼けか夜景の上海を見た方がきれいなのではないかという欲もあり、後回しにする。おそらく今日は晴れでしょう。
勝手な天気予報を発令して周りを見渡すと、デパートらしき建物が見えた。あそこで休憩としよう。喫煙も
したいしね。タワーの斜め向かいに建つデパートに向かう。
上海では信号は自動車だけが守る為にあるらしい。歩行者は赤青関係なく、渡れそうな時もしくは
渡りたい時に道路を横断する。自転車も同じ。なので俺も地元の人に倣って渡れそうな時に渡る事にする。
しかし観光客は遠慮があるので、地元の人達は何があっても道路は歩いて横断するものらしいが、
小走りになる事にする。
デパートに入って、とりあえずは食品があると思しき地下に向かう。匂う匂うね、食い物の匂いが。
さっきまで自分が空腹だという事すら忘れていたのに、匂いで食欲が爆発。
大きめのフードコートがあったが、客が少なく、床が汚く、テーブルも汚く。本日閉店?っつー雰囲気。
一回りしたがイマイチなので専門店街に向かう。専門店街(街と呼ぶほど店数はないが)は外国料理が
多いようだ。
そんな俺の目に飛び込んできたのは「SUMO EXPRESS」の看板。最初はわからなかった。ファースト
フードの店なのかと思っていた。何気にショーウィンドウのメニューを見ていくと、牛丼・鶏の照焼丼
など、見覚えのあるメニュー。おっ、「相撲エクスプレス」か。やっと気付いた。
外国で日本食を食う事はまずない俺だが、もう他の店を探す気力はなかった。
店に入って数あるメニューの中から何故か「カツカレー」を注文。紅茶もつけてみた。
何故この選択か、理由は本人にも不明。
という事で、栄えある上海第一食はカツカレー。俺何か間違えたな。
食す。
異国のカレーなのに非常に馴染みのある味。これはひょっとして日本人なら誰でも知ってる●ンカレー
の味か。という事はまずいという事はないのでOK。カツはチキンカツのようで、一口食った途端に
日本のチキンカツとは違う事がわかった。何やろ。衣の歯ざわりが違うのか。中華感を感じたので
この選択も間違いではなかった事にする。但し、何か味に違和感がある。よーく皿の中を見ると、
カツの下に何かソースのような液体が溜まっている。色もソース。
なめてみる。おうっ。日本ではカツカレーのカツにテリヤキソースはかけねーなー。惜しい。
カツカレーの分析等している俺に自分でも時間のムダだと思いながら完食。
食って外に出ると日が沈みかけてきていた。このタワー「東方明珠塔」は週末は非常に混み合う。
とガイドに書かれていたので、並んでいる間にちょうどいい夕暮れになるだろう。と中に入る事に
した。展望台は3ヶ所。90m位のとこと、200何m位のとこと、300何m位のとこ(適当)。
どことどこに行くかによってセット料金になっている。一番高いとこだけ行きたかったのだが、
そこ単独のチケットはなかったので、3ヶ所プラスタワーによくある何とか博物館(ここも適当)の
セット入場券を買って中に入る。
・・・人いねー。エレベーターの入口付近に手荷物検査があるが、そこに5、6人溜まっている
程度。今日土曜日なんですけどー。皆夜景の時間に来んのかな。ま、空いてるに越した事ねえ。
手荷物検査は手荷物検査だけじゃなくて金属探知機ゲートも付いていた。準備してなかった。
ある意味あっても当然なのだが、想定してなかった。
結果、どうなったかというと、無事に通過できるまで金属探知機を5回ほどくぐった。俺は
バカ観光客。(この時の話は<旅の出来事>にまわします。)
気を取り直してエレベーターに乗る。待ち時間はほぼゼロ。最初に向かうのは何故か200何mの
展望フロア。ここが基本らしい。
おー。結構霞んでるなー、空気が濁っているのか霧なのか窓が結構汚れてるからか、よくわからんが、
思ったほど遠くまでは見渡せない状態だった。とりあえず対岸の外灘を見る。いい雰囲気だな。
ここの展望フロアの窓には、北京何kmとか桂林何kmとか、その方向にある主要?都市とkm数が
書かれていたが、その都市達までの距離はいずれも例外なく100km単位なので、どんだけ快晴でも
1つたりともこっからは見えないと思うのだが、目的は何だ?中国の広さのアピールか?
私見だが、その情報は必要ないと思う。
この展望台をぐるっと1周。どこのタワーにでもある縮小模型や土産物も一通り見てこのフロアは終了
したのだが、次はどこへ向かったらいいのだろう?っつーか、どこに行けるのだろう?注意深く
1周してみると、300何mの展望フロアへのエレベータ乗り場が地味にあるのを発見した。
200何mの霞み具合からして、もっと上に行くともっと霞んでいるだろう事は想像に難くなかったが、
買っちゃったんだもん、チケット。上ってみる。
・・・霞んでいるかどうかの問題じゃねー。高い所だから拭き難いのはわかるが、ここの窓は汚れ過ぎ。
何枚か写真を撮るが濁った窓にピントが合って、景色が撮れない。
しかも上下の窓にはピンクのセロファン。ここはメインの展望フロアじゃないんだね。それはよく
理解できた。ので、少なかった観光客が一段と減ってる訳ね。
そして次はどこに行けるんだろう。とりあえずメイン展望フロアに戻ってまた1周しながら行先を探す。
探しても他には出口行きの表示しかねー。90何mの展望台へはどこから?
おとなしい日本人観光客は泣き寝入りで出口に向かうエレベータに乗る。チーン。
ん?最初の場所に着くと思ったのだが中途半端な高さの場所で降ろされた。何だここは?
でももう帰るので出口の表示の方向に向かう。すると途中で列が並べるようになっている鎖で仕切った
空間を発見した。そこをしげしげと眺めていると近くの売店でさぼっていたお兄ちゃんがこっちを見ている。
何回かそこを行ったり来たりする。その度にお兄ちゃんがこっちを見てる。・・・不可解。
後からやってきたインド人集団が何故かその列に並んだ。妙に気になったので俺もその列に並ぼうとする。
するとお兄ちゃんが「チケット」と言う。素直にチケットを見せると90何mの展望台入場券の部分を
びりっと破った。おうっ、ここが入口ですか?ほうと俺が納得した顔をするとお兄ちゃんがにこっと
笑った。俺も笑い返す。
日中友好。
並んでしばらく待つと、別のお姉ちゃんが扉が閉ざされていた秘密の入口に俺らを招く。
エレベーター。出口へ向かうエレベーターではない。なーぜー。
答:ここが90何m展望フロアへの入口だった。わかりづれーよ。
90何mの展望フロアは室内ではなく外だった。低いけどいーねー。このフロアにいる観光客は俺を
入れて10人(数えられるのもどうかと思うが)、みんなあの秘密が解けなくてそのまま帰ってしまうの
だろう。ゆっくり歩いて暮れゆく景色を眺めていたのだが、他の人達がとっとと先に行ってしまって、
かつ後続部隊はなく、妙に不安になったのでそそくさと出口に向かう。
来たのとは別のエレベーターで出口に到着した。エレベータのすぐ前に何とか博物館があったが、誰も
入る雰囲気がないので俺もまろやかに無視した。
一旦ホテルに戻って再度休憩した後、その日の夕食と買い物を兼ねて繁華街「南京東路」へ出かけてみた。
夜になって一層華やかさを増した通りには、ネオンの華やかさだけでなく、華やかな蝶々達もたくさん
出没していた。
詳しくは<旅の出来事>に記載するが、最初に声を掛けてきた女には危うく
騙されるとこだった。騙されてもよかったか。いや、いかんいかん。この通りは非常に歩きづらく、
落ち着いて道沿いの店々を見る事ができない事はわかった。
まずは部屋で飲む茶を探しにコンビニ●ーソンへ。
どっかで見覚えのある烏龍茶が並んでいた。もう彼の地で定番となっている●ントリーの烏龍茶に加えて
●リンの少し前に日本でも売っていた烏龍茶、現地メーカーの模倣品。考えた末●リンにした。
酒も買ってみるか。酒のコーナーにも日本メーカーのビールがそこそこ並んでた。でもせっかく中国に
来た事やし、ここは青島ビールだな。・・・ん?・・・ん?
何故ここにこれがある?
見るはずのないものを見た気がした。何回もチラ見して、しまいには手に取って確かめる。本物だな。
俺はここである製品を発見した。買いましょう。その製品も含めてレジに持って行った。
後に並んだカップルのおねえちゃんが、俺が持ってるその製品を指差して何やら俺に話しかけてきた。
中国語わからんねん。と日本語で言うと、今度は身振りを入れて同じ言葉(推測)を言う。
どうやら、「それは飲み物なの?」と聞いているようだ。「うん。」と頷いて店を後にした。
おねえちゃんは他にも何か聞きたそうだったが、無言で去る。
さて、今日の晩飯はどうしようか。そしてお茶屋はどこにあるんだ?この繁華街の中にお茶屋があると
ガイドには書いているのだが、見当たらない。一旦繁華街を出て交差点で信号待ちの間に再度ガイドを
広げて店の位置を確認する。地図を見間違えたらしく、お茶屋は元々繁華街の外にあった。
簡単に発見できたので、お茶屋「天福茗茶」に入った。
いらっしゃいませ。と日本語で声がかかる。お茶を買う時は好みの説明が難しいので日本語ができる人が
いる店はありがたい。とりあえずお奨めを聞いてみると、緑茶なら「龍井」烏龍茶なら「凍頂」だと言う。
凍頂烏龍茶。俺が大好きな烏龍茶だ。でも今回自分用には別の種類の飲んだ事ない茶にしようと思っている。
凍頂烏龍茶、日本では花粉症に効く茶という事で有名になった烏龍茶。・・・花粉症。俺の頭には
ある人物が思い浮かんだ。
お土産に買って帰ろうか。まずは凍頂烏龍茶を購入した。そして店員に変わった茶はありますか?と
聞くと、面白いものがあります。といって、直径2cm位の茶を固めたようなボール状の物体を持って来た。
何だこれ?
これは何ですか?と聞くと、店員が1つのグラスを指差す。そこにはグラスの中に水と花が入っていた。
これをコップに入れてお湯をそそぐとああいう風になります。
なるほど。このボールは湯を入れると花が開く仕組みになってんのか。何味?と聞くとジャスミン茶です。
と言う。面白い。ちょっとだけ購入。
本当は色々試飲をして買いたかったのだが、混み合っていて試飲する場所がなかったので、紙コップで
1杯2杯飲んだだけだが、ここの品質は間違いない。とガイドに書いていたから大丈夫だろう。
店を出てあとは夕食と思ったが、結構面倒くさくなっていた。初日から無理しても仕方ねーしな。と
いう事で、今日の夕食はマクドナルド。
上海に来て一食目はカツカレー、二食目がマクドナルド。・・・俺、何しに来とんねん。明日は間違いなく
中華料理を食うから。といないのに誰かに言い訳をして、マクドナルドお持ち帰りでホテルに戻った。