初代由水十久(2)

加賀友禅を代表する作家・初代由水十久(1913-1988)。没後30年以上が経過し、二代由水十久はじめ多くの子弟が現代の加賀友禅界をささえる今日、いまだその名声は衰えることを知りません。
弊社の初代由水十久コレクションをご紹介いたします。

    

絵羽織「珊瑚樹」

珊瑚樹は晩春から初夏に、光沢のあ
る濃緑色の葉をつけた枝先に、白い
小さな花が円錐状に集まって咲き、花
や実の重さで房が垂れ下がり、晩夏に
なると実が真っ赤に熟します。

実の赤さ以外に単調な色合いになりがちな枝や葉を、加
賀友禅の特色である「虫食い」の技法で色をさすことによ
って華やかさを加え、全体の色のバランスをとっています。
実際にはありえない青色をさしていますが不自然さをまった
く感じさせません。

左:染帯
「(京都に修行に出た頃)芸者者という絵柄のジャンルがあって歌舞伎や浄瑠璃、清元、常盤津、長唄などの図柄のものを書きました。」(『染絵・うなゐ 由水十久作品集』より)
この経験が後の唐子を代表とする人物画を取り入れた作品を数多く生み出すことになったのでないでしょうか。
右:掛軸
「源氏物語を主題にして個展をやりましたが、ある期間明けても暮れても源氏、源氏で過ごして、その世界にわが身を、どっぷり浸していたと言う感じでした。その後、南蛮美術や万葉集でもやりましたが、私は、それぞれ何れの場合も”吾が身を浸す”と言った風でないと発想がない」(同書より)
この言葉に初代・由水十久の制作に対する姿勢が表れています。

左:額

<初代・由水十久 略年表>
1913 加賀大野港の料理屋の子として生まれる
1924 玉井紅リンに墨絵を習う
1927 京都・紺谷静蕉の門下になる
1938 独立を許される
1947 金沢に戻り、制作活動を始める
1965 東京・高島屋で作品展示
1966 東海道五十三次の精密模写
1967 源氏物語主題個展
1969 歌舞伎主題個展
    (以降、日本橋三越などで個展多数)
1973 加賀染振興協会理事となる
1977 伝統工芸士となる
1982 アメリカ・シアトルで個展
1984 ユニセフグリーティングカードに採用される
1988 没(享年74歳)

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