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コラム「前向きに暮らしましょう」
病気を正しく理解し、改善し、そして自分の体と仲良くしつつ
「前向きな生活」を送る事ができるようにと書いてきた記事です。少しでも参考になる事があればと思います。
記事10 自覚症状と手術適応に関して(2009.5.24)
このサイトの「骨盤臓器脱に関するアンケート」にお答えいただく方は骨盤臓器脱の症状を心配していらっしゃる方々だと思います。お答えいただいた中では、およそ70パーセントの方が自覚症状として違和感、不快感を感じています。
そして、50パーセントの方が脱出症状があるようです。
このところ、違和感、不快感という自覚症状はとても強いのにも関わらず、検査では異常が見られずというメールをいただくことが多くあります。機能障害があるかどうかは別として、自覚症状が強いので異常なしに納得することができずに困ってしまうということです。異常なしですから手術適応にもなりません。
そこで今回、自覚症状と手術適応に関してお話を伺ってきました。
下の表は、私なりにお話をまとめて作ってみたものです。参考になりますか。
自覚症状
違和感 |
臓器の脱出あり |
排便・排尿トラブルあり |
手術適応 |
臓器の脱出なし |
違和感はあり
排尿・排便トラブルあり |
診察
検査等により
診断がつく |
違和感はあり
排尿・排便トラブルなし |
診察
検査によっても
問題がわからず
診断に及ばない |
様子観察
その他の問題点も考える |
受診をした結果をわけて考えると、ピンクの文字の所に含まれる方々が、検査で異常がなく安心できる場合と自覚症状はあるのですから、例えば、症状を理解してもらえなかった解ってもらえなかった等、自覚症状との間でとても困ってしまうという具合だと思います。
・明らかな脱出とはどの程度のことをいうのか解りにくいのですが、これは実際の写真を載せることができないためになおさら解りにくい点となっています。
ここからは伺って来たお話ですので参考にしてみてください。
骨盤臓器脱や直腸脱は、手術で何かを除去したら治るという病気ではありません。
また形が良くなったからといって、それで良いというものでもありません。
機能性疾患であり、QOL(生活の質)疾患です。
逆に手術したことで、前より状況が悪化する可能性もありますので、なおさら手術の適応は慎重(控えめ)にならざるをえません。骨盤臓器脱に限ったことではありませんが、特にこの病気では、患者さんとその家族とは、入院前から良く話をして納得してもらい、かつ仲良くなっておく必要があります術後にもし不都合があっても、安心して任せられるような(任せてもらえるような)信頼関係が必要です。
手術をすすめる場合
直腸が肛門から脱出している、あるいは、膣から子宮が脱出しているという場合は、手術適応になることが多いです。
脱出してしまっている場合は、手術によってそれがなくなります。
ただし、手術をして脱出は治っても症状がすっきりととれないケースもあります。
これは、症状が脱出以外で生じていることもあるからです。
手術をすすめることがないまたは少ない場合
脱があっても軽度の場合は、排尿障害や排便障害などの症状がなければ、通常は手術をすすめることはありません。
他に、少し難しくなりますが、会陰下垂やダグラス窩への小腸や結腸の落ち込みが、不快な症状の原因になることもあります。
これらは、外見からは分かりにくいので、診断には排便造影が必要です。MRIも有用ですが、動的な評価ができないことが欠点です。また、手術をしても症状が改善しない可能性もありえますので、これも手術はすすめにくいものです。
私もそうでしたが、骨盤臓器脱は、長い時間立位を続けていた場合などに下垂感が強くなります。
MRIは、横になった状態で撮ることがほどんどですから、重力がかかった、あるいは息んだ状態の様子をみることがなかなか困難です。これが動的な評価ができないこということです。
以前にも書きましたが、排便造影は疑似便をつかって透視台を立てて行き息み、疑似便の様子を見るという検査なので動きが見られます。ただし、直腸側の問題は、再発のところで書いたいわゆるPOP-Qだけでは判断しにくく正しい診断が必要なようです。
2009.5.24
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