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「鳥取農政懇話会 会報53号 特集号 西尾邑次顧問(元鳥取県知事)の農政語録
  −鳥取県議会における発言より−」  2008年7月 鳥取農政懇話会事務局
 
   【目 次

 



■鳥取農政懇話会報52号表紙
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小島先生との交友
 
小島先生夫妻を囲み、全国小島塾の発展を誓って、一本締めの音頭をとる花本会長(故人−右側)と西尾元鳥取県知事(左側) 小島先生と握手をされる西尾元鳥取県知事
(平成11年9月3日、米子市皆生温泉 皆泉荘にて)
小島先生に質問をされる西尾顧問(左側)と
小島先生の奥様
小島先生を囲んでの鳥取農政懇話会会員
(平成12年11月17日、湯梨浜町(旧東郷町) 水明荘にて)
西尾農政語録出版に当たって 鳥取農政懇話会 会長 北浦 勉


 今、世界の農業情勢は大きく変わりつつある。サブプライムローンの破綻に始まった経済の混乱から、世界の投機資本が石油に流れ込み、のっぴきならないほどの原油高を招いて世界経済を脅かしている。これが食糧資源からのエタノール油生産を加速させる一因にもなり、その上、投機資本が穀物市場へも流入したことによって、世界市場に於ける穀物価格が高騰し、アフリカやアジアなどの発展途上国の食糧事情をさらに悪化させ、飢餓人口増大への懸念が強まっている。
 石油の場合は、産油国が生産量を増やすことによって需給関係は改善されるが、食糧の場合は、依然として増え続ける世界人口と、中国やインドなどの経済発展による需要の拡大に対し、環境保護や水資源の枯渇といった要素を勘案すると、農業生産を増大させることはたやすいことではない。地球温暖化を防止しながら農業生産を拡大することは、現在において全世界の最も重要な共通課題となっている。


 翻って、我が国の現状は、生産制限と耕作放棄地の増大という生産縮小への道を歩み続けている。私たち鳥取農政懇話会は、この現状を憂慮し、鳥取県の農山村の今後について、何としてでも明るい光明を見いだしたいと願う昨今である。折しも、農政懇話会の会報誌44号から50号に亘って連載した西尾邑次顧問の農政語録が話題となって、これこそ現在の鳥取県農政の進むべき道を示唆したものではないか、という声が高まってきた。
 そこで改めて、西尾顧問が鳥取県知事時代に、平成2年2月から平成4年3月までの2年間余、9回の県議会において発言されたものを集大成して、我々農政懇話会が今後の農林水産業のあり方について勉強する上での参考資料とすることとしました。
 実は、西尾顧問はこの出版に対し「十数年前の私の発言を今更出してもらうのはおこがましい」と遠慮されたのであるが、「農政懇話会の勉強資料」ということで、出版することを了解していただいたことでした。
 この語録が、これからの鳥取県の農林水産業について、皆で考え、議論を交わし、光明を見いだす一助として活用されることを切に願っている次第であります。


平成20年7月25日

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西尾農政語録の発刊に寄せて 小島 慶三


 平成6年2月に鳥取県版小島塾として結成された鳥取農政懇話会が、ヒューマノミックスの考え方で地域の問題を勉強する集団として、毎年数回の学習会を開催し、会報は51号まで発行されていることはすばらしい業績である。


 私は鳥取県とは縁が深く、10回近く訪れて、その風土に親しんできているが、その始まりは冬に鳥取の名山・大山にスキーを担いで登ったことであった。深い雪に苦しみながら頂上を目指して登るうちに、ふと見下ろすと夜見の浜から日本海の景色が目に入った。本当にこれは感激そのもので、志賀直哉の名作「暗夜行路」の大山のくだりを彷彿させるものであった。
 その後、新日本海新聞社の主催で、米子で行われた「コメフェスタとっとり」でお話ししたのであるが、丁度私にとっては「文明としての農業」を出した頃であったから、「森と水と土のサイクル」「環境と生態系と食生活のバランス」などに触れ、好評を得て鳥取県詣でが増えたということである。
 時の鳥取県知事の西尾邑次さん、農協界の大立者花本美雄さんなどとの付き合いが始まり、これに鳥取農政懇話会の北浦さんをはじめ、県や団体の幹部を交えての夕食会の談笑は私にとっては最も楽しいことであった。鳥取で一番感心したことは、人情が非常に細やかであることと、中でも農業というものが確かにしっかりしていることである。


 鳥取県は因幡、伯耆の国から成っており、因伯は農で持っているということを聞いたことがあるが、確かに農業県としての立県姿勢のもとに歴代の知事さんを始めとして農業への取り組みが立派に生かされている地域だと思っている。
 そのことについて、最近になって鳥取農政懇話会の会報44号(平成17年11月)から50号(平成19年9月)にわたって掲載された「西尾知事顧問(元鳥取県知事)の農政語録−鳥取県議会における発言より−」を読み一層その感を深くするのである。
 語録の内容は農業理念、農政論、中山間地対策、消費・流通・輸出。担い手、農協、その他と多岐にわたって基本的な理念を開陳されて、農家のやる気を引き出すよう、農の心を注ぎ込まれている思いは、歴代知事の中では希有なことであろうとも思うのである。私はこの語録を読んで、後世に遺すべき話であると心底から思っていると、西尾さんに賛美の電話をしたことがある。
 最近、この分散した語録を一冊に書物として纏めるということを聞き大変喜んでいるところである。
 世の中は、次第に市場原理主義が蔓延し、国土、環境、生態系、地域文化、食の安全など、失われてゆくものの大きさに背筋が寒くなる思いがする。この語録は、重要な「農の心」を守るための貴重な提言として一読をすすめるものである。


(平成20年6月6日記)

西尾農政語録 考える農業、考える人になって −鳥取県議会における発言より−
(※「T 農業」の項を抜粋し、掲載いたしました)

T 農業 
1.農政の方向
 (1)自由化に太刀打ちできる農業を
 (2)農業・農村は経済性だけで論ずべきでない
 (3)「文明としての農業」に見る小島先生の見識
 (4)いかなる事態が起きようと成り立つ農業
 (5)農業に対する国民のコンセンサス
 (6)新しい農政の理念、方向付けが必要
 (7)考える農業、考える人になって
 (8)森と田、土と水を守るのが日本農業の原点
 (9)農業は単に産業であるかどうか
 (10)小島先生の「農に還る時代」に共鳴
 (11)農業は光、空気、水、土との調和の上に



2.ガット・ウルグアイラウンド
 (1)日本農業を守る毅然とした交渉を
 (2)海部総理は自給を堅持すると
 (3)生産者も国民の支持が得られるように
 (4)国内世論の分裂は交渉の支障
 (5)部分自由化論で本当に守れるか
 (6)緑の政策と黄色の政策
 (7)ドンケル合意案と国別約束表


3.農業関係法
 (1)米価を決定する際の基本姿勢
 (2)農業基本法は見直ししても
 (3)新しい時代に対応する制度


4.水田転作
 (1)意慾ある農家へ農地を集積
 (2)転作の公平化
 (3)地域輪作農法の確立


5.中山間地対策
 (1)海部総理に提言
 (2)県独自の対策も
 (3)受委託システムは好評
 (4)所得補償政策はいずれ我が国でも
 (5)中山間地域対策は幅広い価値観から


6.基盤と環境の整備
 (1)中山間地の負担を軽減
 (2)償還対策は望ましい営農体系への誘導
 (3)都市と共生する農村づくり
 (4)下水の整備は重要
 (5)弾力的なほ場整備を


7.生産振興
 (1)有機、減農薬で低コストな栽培方法
 (2)有機米の食味試験を開始
 (3)県の顔となる米の新品種
 (4)米は適地適作が基本
 (5)二十世紀梨が続けられるのを夢見て
 (6)花きの生産を増やす
 (7)花は心の時代に必要
 (8)薬草には関心あり
 (9)鳥取和牛は高い評価
 (10)いい肉はアメリカにも出せる
 (11)和牛繁殖グループを育成
 (12)和牛が増えた


8.消費と流通、輸出
 (1)学校給食で日本型食生活を定着
 (2)自然乾燥の方がうまい
 (3)牛乳を1日に2合飲む
 (4)全共を誘致したい
 (5)フライト農業は難しい 
 (6)本県産のコシヒカリは大丈夫
 (7)全共では優勝したい
 (8)アジア諸国に目を向けよう


9.農業の担い手
 (1)農業体験は人づくりの上からも大切
 (2)若者が生き生きと生活できる村づくり
 (3)農業担い手育成基金で後継者を 
 (4)獣医学生に女性が増えて
 (5)普及員に求められる知識、技術


10.農業協同組合
 (1)農協は農政上の重要な地位
 (2)農協はジゲの要
 (3)サービスの向上が重要
 (4)営農指導が充実される合併
 (5)集団でやる日本の農業と農村


11.全県公園化構想
 (1)できるものから実施
 (2)現在あるものを大切に
 (3)住民の参加で
 (4)リゾート構想は全県公園化構想の中に
  

12.その他
 (1)食糧自給率を高めること
 (2)産地間競争に打ち勝つバイテク
 (3)リゾートで得た利益を社会に還元する哲学
 (4)産業と結びつけたフラワーパーク
 (5)大農か、集落か、家族労働か 
 (6)企業の農業参入は好ましくない
 (7)干拓地では収益性の高い農業を
 (8)21世紀農業発展構想
 (9)若者が魅力を持つ農大


U 林業
1.林政の方向
 (1)自然を守るのが林野行政
 (2)林業の担い手確保は農業との通年雇用で
 (3)森林の保健休養的な利用 
 (4)山村に人が定住する
 (5)林業長期構想を策定
 (6)長期構想の3つの視点
 (7)県境を越えると美しい杉林
 (8)これからは広葉樹造林も
 (9)間伐だけはやって


2.担い手・組織
 (1)林業労働力の確保は重要
 (2)通年雇用で若い労働者を
 (3)合併の啓発指導
 (4)公社造林は難題
 (5)流域林業活性化センターの発足


3.林道・その他
 (1)林道の国予算が少ない
 (2)農林道は農林業者だけのものでない
 (3)林道と一般自動車
 (4)林道整備は必要
 (5)木材製品の規格を統一
 (6)育樹祭を誘致
 (7)育樹祭は平成10年に


V 水産業
 (1)ヒラメが鳥取県の魚
 (2)栽培漁業の定着
 (3)栽培漁業協会の自立
 (4)ヒラメの陸上養殖と放流
 (5)韓国漁船の不法操業
 (6)境港は日本で2番目の水揚げ高
 (7)漁協合併はなるべく早く
 (8)小さい漁協では運営が難しい


T.農 業


1.農政の方向


(1)自由化に太刀打ちできる農業を (H2.3.5)

 いろいろ課題はございますけれども、農業施策の方向といたしましては、生産のコストの低減ということが一番大切な事でございますし、また、需要に合った農産物をつくっていくということも重要でございます。
 中でも稲作の問題でございますが、本県の米の生産コストは、全国と比較いたしまして3割方高くなっております。
 全国が60kg当たり約1万6千円程度なのに対し、本県の経費が1万9千円〜2万円ぐらいかかっているわけでございまして、全国に比較しまして、非常に生産性が低い位置にございます。
 県ではそういったことに着目いたしまして、何とか生産性を上げる道を考えなくちゃいかぬということで、モデル的に幾つかの集落営農の地区をつくっております。
 8つほどとり上げております地区の中で一番成績が上がっているのが、鳥取市の例でございまして、ここでは60kg当たり1万円程度となっております。
 8つの平均を見ましても、1万3千円程度となっておりまして、やり方によっては低コストも可能だということでございます。
 こういった非常にいい成績が出ている例がございますので、このような例を県下全域に波及させる必要があると考えております。
 また、農作業の担い手が不足するような中山間地域においては、農協等による農作業の受託組織づくりということも、進めていかなければならないと考えております。
 需要に合った農産物の生産ということで、いわゆるブランド化を図っていくことも必要でございます。
 また、花き、あるいは野菜等の施設化を進めるということ、また最近非常に注目されてまいりました有機農法を取り入れるといったことも、必要であろうと考えているところでございます。
 そういったことを進めるためにも、特に基礎的なバイオテクノロジーの活用ということが大切でございます。こういったことの試験研究、あるいは開発できたものの普及ということについても強化してまいりたいと考えております。
 さらに、これらの施策に加えまして、何と言っても若者が農村に定着するということが必要であるわけでございまして、そういった若者が定着するような農村環境の整備ということも、重要なこととして考えていかなければならないことでございます。
 いろいろとやらなければならないことがございますけれども、足腰の強い農業、農業の自由化があったとしてもそれに太刀打ちできるような農業、というものをつくり、明るい農村をつくっていく必要があろうと考えております。


(2)農業・農村は経済性だけで論ずべきでない (H2.3.6)
 私はいつも申し上げておりますが、農業というのは、単に経済性だけで論ずべきものではないと。米の自由化についても、経済論で考えると、消費者のためには安い米がいいんじゃないか、ということを論ずる人もありますけれども、単に経済性だけで農業というもの、あるいは農村というものを論じてはいけないと、私はこのことは絶えず考えております。
 食糧の供給ということも、もちろん大切でございます。食糧の安全保障ということも、もちろん大切でございます。それ以上に、それ以外に農村というものの持っている公益的な役割というものが、非常に大きいわけでございます。これを考えないと、単に経済性だけで農業、あるいは農村を論ずると大変なことになるということを、絶えず頭に入れているわけでございまして、そういったことを考えながら、これからの農政も取り組んでいくつもりでございます。


(3)「文明としての農業」に見る小島先生の見識 (H2.10.1)
 私も小島慶三さんとは2、3回お会いいたしまして、いろいろとお話を伺いましたが、小島先生の考え方について本当に同感しております。
 また、「文明としての農業」という本も、直接に小島先生から送っていただきまして、拝見をしたわけでございますが、小島先生は、世界の現状と歴史という観点から、農業を捨てて没落した国や、あるいは農業をもとにして不死鳥のように立ち上がった国の事例などを交えて、長い目で見た農業の重要性を述べられております。
 大変高い見識だと、しかも、経済同友会という経済界の方が、こういった意見を述べていらっしゃることは、非常に私は力強いことだと感じております。


(4)いかなる事態が起きようと成り立つ農業 (H3.2.21)
 私も、今、農業は非常に重要な時期にさしかかっていると思います。これまでも農業は「曲り角、曲り角」と言われておりましたけれども、現在の状況はそうやさしい事態ではないという認識を持っているわけでございます。
 農業の重要性については、いまさら申し上げる必要はないと存じます。従って、いかなる事態が起きようと成り立っていく農業というものをつくっていかなければいけないと思います。
 そういったことを考えますと、農業の低コスト化と高品質生産ということを進めていかなければならないと思っております。
 ただ、この農業というのは、一朝一夕に大改造ということが行えるものではございません。工業生産ならば、すぐぱっと切りかえられますけれども、なかなか農業というのは、そういった切りかえということが容易ではないと思います。そういったことからも、一歩一歩着実に進めていく、取り組んでいくということが必要であろうと思います。


(5)農業に対する国民のコンセンサス (H3.2.26)
 今、米の自由化ということがいろいろ課題になって、国会でも自由化阻止の議決が再三なされておりますけれども、やはりそれだけではいけない。その背景に、国民のこのことに対するコンセンサスというものがなければ、本当に力強くやっていくことができないと思います。そういった意味でも、このコンセンサスの確立ということは、政策の上では非常に重要なことだと考えております。
 県の農業政策についても、県民の多くの皆様の御理解を得るということ、コンセンサスを得るということは非常に大切なことだと考えているわけでございます。
 先般、私はヨーロッパに参りましたが、食料の確保は国家の最も重要な安全保障だという認識が高いこと、それから美しい景観の、いわゆるグリーンヨーロッパの基礎は農業だという認識をみんなが持っていること、特に田園地帯を心のよりどころとする価値観が国民の間に定着しているということ、そういったことを強く感じたわけでございます。
 このようなコンセンサスも、やはり長い歴史の中で定着していったものだと私は考えておりますが、我が国においても、心のゆとりを重要視する時代を迎えてきておりますし、都市と農村との交流が進められるといったような機運が出てきております。この期をとらえて、是非ともコンセンサスを得る努力をするということが、これからの日本の農業、鳥取県の農業を育てていくためには、非常に大切なことだと考えております。
 従来からも、いろんな広報の手段を通じて、あるいは農業祭などのいろんなイベントによって、県民の皆様にそういったことがご理解いただけるよう努めておりますし、また農業団体でもそれぞれ取り組んでいらっしゃるわけでございます。今後ともそういった点には一層力を入れてまいりたいと考えております。


(6)新しい農政の理念、方向付けが必要 (H3.5.17)
 私も、昨年ヨーロッパを訪問いたしまして、田園があっての都市づくりということが国民の合意事項になっていることを知りました。そこで、我が国でも国づくりということの中で、農業を守っていかなくちゃならないと、それが非常に大切なことだということを改めて認識し、肌で感じたところでございました。
いまさら申し上げることはないと思いますけれども、米というのは、日本の文化をつくってきております。同時に、唯一の我が国の食糧自給の作物でございます。何としても米づくりということはやっていかなければなりません。かつ国土を保全する上からも、例えば災害のときの洪水の調整機関としても大きく役立っているわけでございます。
 また度々申し上げますが、農村の地域というのは、我が国の社会、潤いのある社会というものを形成している重要な「じげ」でございます。
そういった農村を守っていくためにも、単なる食糧の生産ということだけに着目した農政ではなくして、環境というものを守っていくためにも、農村というのが非常に大切だという観点にたった、農政の新しい理念、方向づけということが、これから必要ではないかということを、私は強く考えているのでございます。


(7)考える農業、考える人になって (H3.5.20)
 農業基本法では、行政はいろんな施策をやるんですけれども、その施策を講ずるに当たっては、農業者の自立的な努力を助長することである、というふうになっております。
 私は従来から、これからは農民の皆さんも考える農業、考える人になっていただかなければいけない、ということを申し上げておりますけれども、そういったことでございます。
 行政は、何を作ればいいかということは申し上げませんけれども、判断の材料としての情報の提供、あるいは、個人ではできないいろいろな農業の助長策、こういったものはやっていかなければならないであろうと考えております。


(8)森と田、土と水を守るのが日本農業の原点 (H4.3.5)
 もう少しみんなが、社会一般が、農業というものを見直しをする、もっと理解をするということが、非常に大切な時期に来ているなということを、常日ごろから感じているわけでございます。
 それは、ただ単に食糧の生産ということだけではなくして、国土や環境の保全といった非常に大きな意義、役割を持っているのが、農業であり、農村であり、農林業だということからでございます。今こそ、森と田、そして土と水を守るのが、日本農業の原点だということを、大きくいわなければならない時代に来たんだな感じているわけでございます。
 このような役割は、我が国の農業がきちんと健全な形で営まれることによって、維持されると言わなければならないと思います。これはまた、将来にわたって重要なことだというふうに私は考えております。
 鳥取県というのは、気候的には必ずしも恵まれてはいないのでございますけれども、非常に立派な農業をやっていただいている地域もあるわけでございます。中山間地域における20世紀梨の栽培とか、砂丘や大山山ろくにおける大規模な畑作、あるいはほ場整備後の質の高い水田農業、そして米、畜産、園芸作物といったもののバランスが非常によくとれたところの農業が営まれていると言っていいのではなかろうかと思います。これは先人の皆さん、また農家の皆さんのたゆまぬ努力の結果であろうと思います。このような本県の農業を、将来にわたって維持発展させるということは非常に重要なことだと考えております。


(9)農業は単に産業であるかどうか (H4.3.5)
 農業というのは本当に重要な産業だと思っておりますが、さらに、単に産業であるかどうか、もっと幅の広いものというふうに私は理解をしたいわけでございます。地下資源のように有限のものではなくして、光と空気と水と土、こういったものによって無限の生命力というものを生み出すのが農業だと。そういった観点で、私は全ての人が農業農村というものを理解していただきたいものだと考えております。


(10)小島先生の「農に還る時代」に共鳴(H4.3.5)
 昨晩、小島慶三さんの「農に還る時代」という本を読みました。誠にいいことが書いてございます。小島先生は、かつて「文明としての農業」という本をお出しになった方でございますが、通産審議官を努められ、経済同友会の幹事でございますし、日銀の政策委員もなさった方でございます。先生は、農業ということに対して非常に深い理解を持っていらっしゃる方でございます。
 この方が、かいつまんで申し上げると、農業は食糧だけを生産する産業ではないと、日本の農業を救わなければいかぬ時代が来ているんだと、食糧の生産もあるけれども国土を保全するために今こそみんなが農に還る時代だと、そういうことをおっしゃっているのでございます。
 そこで、日本農業の腰を強くするための第1のことは、農業と他の第一次産業、つまり林業や畜産業、水産業といったものの関係を見直して再構築する必要があるということ。2つ目には、工業とは対立するのではなくて、相互協力できる融和体制をつくり上げていかなければならないということ。第3には、農業と農産物の付加価値を高めることが必要だということ。4番目には、生産者と消費者の関係を改善し、農業への理解を深めていくことが大切だということ。そして5番目には、農業従事者自身が希望と誇りを持って働けるような、可能性に満ちた魅力ある農業を育てていくことだと、このようなことを書いていらっしゃいまして、私はもっともだと思った次第でございます。
 これからは、農業というものは、単に食糧の生産だけではないということを意識しながら、本当にそういった農政というものを、いい具合に打ち立てていかなければならないと考えている次第でございます。


(11)農業は光、空気、水、土との調和の上に (H4.3.13)
 同友会の小島慶三さんによると、限られた狭い耕地で何年連作を続けても自然環境を守ることのできる農業のシステム、これは日本の水田農業だけだということでございます。
 ヨーロッパやアメリカは雨が少なく、表土が消耗しやすいということから、土壌が非常に荒廃しつつあるということでございまして、新しい肥料の開発や農薬の使用量を少なくするといった農法を、やっていかなければならないというような課題が出てきているということでございます。
 私も、農業というものは、光、空気、水、土との調和の上に成り立っている自然を相手の産業でございます。無限の生命力を生産するということを申し上げましたが、まさに私はそうだろうと思います。
 そういったことを考えますと、農業を単に経済性ということだけで論じてはいけないと思います。いつまでも永続できる生態系の循環という機能を、農業あるいは農林業は持っているわけでございまして、そういったことを重視していかなければならないと思うのでございます。世界がだんだんとそういった方向に向かっているということであれば、大変喜ばしいことだと考えております。
 国の方でも新しい農政の方向を探ろうということで、新政策本部を設置されまして、検討項目の中には、環境保全に資する農業の確立、また農業の担い手の育成方策、土地利用型農業の新たな生産体制の確立、といったことを重要な課題として検討されているようでございます。




(以上抜粋)

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