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三十糎艦船連合呉支部

三十糎艦船連合呉支部

伊号第四十一潜水艦

乙型

伊号第四十一潜水艦は巡潜乙改一型（伊四十型）潜水艦の2番艦である。

日本の潜水艦は大正末期から、艦隊に随伴して敵艦隊の索敵、追躡（ついじょう：後から追うこと。追跡。）、漸減にあたる高速力の海大型（海軍式大型）潜水艦と、長駆敵泊地近くに進出し敵艦隊の動向見張り、追躡にあたる巡潜型（巡洋潜水艦）とに分かれて発達してきた。　巡洋潜水艦として最初に建造された巡潜一型は、ドイツの潜水艦技術を取り入れるため、ドイツのゲルマニア社の元潜水艦開発部長テッヘル博士他の技術者を招聘し、その指導下で建造された。　兵装を日本式に改めた以外はドイツのU142型の設計を踏襲し、燃料搭載量を増加し航続力をオリジナルの10ノットで18,000浬から24,400浬に延伸している。　また、最終艦の伊号第五潜水艦では小型水上偵察機1機を搭載した

次級の巡潜二型では、機関出力の増大により水上速力を21ノットに引き上げた。　航空兵装は射出機と小型水上偵察機1機を搭載した。　巡潜三型は潜水戦隊旗艦とするため居住性と通信能力の強化などがなされ、10,000馬力の機関により、海大型に匹敵する水上速力23ノットを得た。　魚雷発射管は艦尾装備を廃止し艦首に6門装備、航空兵装は後甲板に格納筒2基、射出機1機を装備し、水上偵察機1機を搭載した。

無条約時代に突入した1937年（昭和12年）度の第三次補充計画では巡潜三型の発展型として3種類の巡潜型潜水艦が計画された。　甲型は潜水戦隊司令部設備を持ち、水上偵察機を搭載したもっとも大型の巡潜である。　航空兵装は射出機1機を前甲板に装備し、水上偵察機1機を搭載した。　乙型は甲型から潜水戦隊旗艦設備を除いた形式で、若干小形となっている。　航空兵装は甲型と同一である。　丙型航空兵装を持たず、魚雷発射管の数を2門増やし8門とし、魚雷搭載数を20本に増やし魚雷兵装を強化した形式である　丙型は建造を急ぐため巡潜三型の線図を流用した。　これら3種類の巡潜は水上速力23ノットを超え、海大型に匹敵する機動力を得て、ここに海大型は巡潜型に統合されることとなった。

乙型はマル三（○の中に三）計画の6隻が開戦までに完成、マル四（○の中に四）計画の14隻のうち1隻が開戦までに完成、13隻が建造中であった。　開戦後のマル急（○の中に急）計画で6隻計画されたが、この6隻が乙改一型で、量産のため主機を巡潜三型と同じ艦本式一号甲十型ディーゼル2基とした。　機関出力が若干低下したが、水上速力は0.1ノットの低下にとどまっている。　なお、兵装は変化していない。（1）

要目（2）（3）

艦種一等潜水艦
艦型乙型改一（伊四十型）
水上排水量 ※12,230トン（基準）/2,624トン（常備）
水中排水量 ※13,700トン
垂線間長102.40m
全長108.70m
最大幅9.30m
喫水5.20m
主機艦本式一号甲十型ディーゼル2基、2軸
主電動機特五型2基
蓄電池一号十三型×240個
出力11,000馬力（水上）/2,000馬力（水中）
速力23.5ノット（水上）/8ノット（水中）
燃料重油：814トン
航続力16ノットで14,000浬（水上）/3ノットで96浬（水中）
乗員94名
兵装40口径十一年式14cm単装砲1基
九六式25mm連装機銃1基
九五式53cm魚雷発射管6門（艦首）
九五式魚雷17本
射出機呉式一号四型1基
航空機水上偵察機1機
安全潜航深度100m
その他

※1：英トン（1.016メートルトン）

履歴（4）（5）

年月日履歴
1942年（昭和17年）3月18日起工。
1942年（昭和17年）8月20日伊号第四十一潜水艦と命名。　本籍地を横須賀鎮守府籍と仮定。
1942年（昭和17年）11月10日進水。　本籍地を横須賀鎮守府籍と定める。
1943年（昭和18年）9月18日竣工。　　訓練部隊（第一艦隊）第十一潜水部隊（第十一潜水戦隊）に編入。　呉発。　内海西部で訓練。
1943年（昭和18年）9月30日呉着。　補給待機。
1943年（昭和18年）10月11日呉発。　内海西部で訓練。
1943年（昭和18年）10月28日呉着。　補給待機。
1943年（昭和18年）11月8日呉発。　内海西部で訓練。
1943年（昭和18年）11月24日横須賀着。　出撃準備。
1943年（昭和18年）11月25日第十一潜水戦隊は第一艦隊より除かれ、第六艦隊に編入。
1943年（昭和18年）12月18日訓練部隊（第一艦隊）より除かれ、先遣部隊（第六艦隊）第十一潜水部隊（第十一潜水戦隊）に編入。 整備訓練に従事。
1943年（昭和18年）12月20日先遣
1943年（昭和18年）12月28日横須賀発。　トラックに向かう。
1944年（昭和19年）1月4日トラック着。　補給待機。
1944年（昭和19年）1月5日第一潜水戦隊司令官は将旗を一時「平安丸」から本艦に移揚。　戦技実視。　先遣部隊（第六艦隊）より除かれ、南東方面部隊（南東方面艦隊）第七潜水部隊（第七潜水戦隊）に編入。作戦輸送等を下令される。
1944年（昭和19年）1月10日第十五潜水隊司令は司令潜水艦を伊号第三十六潜水艦から当艦に変更。
1944年（昭和19年）1月15日第一潜水戦隊は解隊。第十五潜水隊は第六艦隊に編入。　トラック発。　ラバウルに向かう。
1944年（昭和19年）1月19日ラバウル着。　補給待機。
1944年（昭和19年）1月23日ラバウル発。　ニューブリテン島南岸スルミに向かう。　作戦輸送。
1944年（昭和19年）1月25日スルミ着。　ゴム袋糧食ほかを揚陸。　帰還便乗者8名を収容。　ラバウルへ向かう。
1944年（昭和19年）1月28日ラバウル着。　輸送準備。　
1944年（昭和19年）1月31日ラバウル発。　ブーゲンビル島ブインに向かう。　作戦輸送。
1944年（昭和19年）2月4日ブイン着。　輸送物件および便乗者を揚陸して、ラバウルへ向かう。
1944年（昭和19年）2月7日ラバウル着。　輸送準備。　
1944年（昭和19年）2月12日ラバウル発。　ブーゲンビル島ブインに向かう。
1944年（昭和19年）2月14日ブイン付近で敵哨戒機の爆撃をうけ退避。
1944年（昭和19年）2月16日ブインに再び接近したが、敵哨戒機と魚雷艇の警戒が厳重なため、接岸の機会がなく、待機。
1944年（昭和19年）2月17日3:20 ブーゲンビル水道掃海路に向かう。
1944年（昭和19年）2月18日2:01 敵の警戒が厳重なため、離脱。
1944年（昭和19年）2月19日0:05 再びブインに向かう。
1944年（昭和19年）2月20日13:39 オツア島の170度2.5浬において触礁したが進入を続け、18：59 揚陸作業にあたる。　22:06 敵機の爆撃をうけ、タウト島2.7浬において沈座回避。
1944年（昭和19年）2月21日ブイン発。　ラバウルへ向かう。
1944年（昭和19年）2月24日ラバウル着。　輸送準備。　
1944年（昭和19年）2月27日第二〇一航空隊司令以下、搭乗員と基地員を収容してラバウル発。　トラックに向かう。
1944年（昭和19年）3月2日トラック着。　補給待機。
1944年（昭和19年）3月7日トラック発。　ラバウルに向かう。
1944年（昭和19年）3月9日反転帰投を下令され、トラックに向かう。
1944年（昭和19年）3月10日トラック着。　補給待機。
1944年（昭和19年）3月15日第十五潜水隊司令は司令潜水艦を当艦から伊号第十六潜水艦に変更。　トラック発。　ラバウルに向かう。
1944年（昭和19年）3月20日ラバウル着。　輸送準備。　第七潜水戦隊司令官は将旗をラバウル陸上から当艦へ移揚。　南東方面部隊（南東方面艦隊）から除かれる。　先遣部隊（第六艦隊）第七潜水部隊（第七潜水戦隊）に編入。　南東方面における作戦を下令される。
1944年（昭和19年）3月21日ラバウル発。　トラックに向かう。
1944年（昭和19年）3月25日トラック着。　輸送人員を揚陸。　補給待機。　第十七潜水戦隊司令官は将旗を当艦からトラックの陸上へ移揚。
1944年（昭和19年）4月1日トラック発。　ブインに向かう。　作戦輸送。
1944年（昭和19年）4月7日ブイン着。　糧食40トン、その他25トンを揚陸。　航空基地員73名を収容して待機。
1944年（昭和19年）4月9日ブイン発。　トラックに向かう。
1944年（昭和19年）4月13日トラック着。　輸送人員を揚陸。　補給待機。
1944年（昭和19年）4月17日先遣部隊第一潜水部隊（第六艦隊司令長官指揮）に編入。　特別作戦のため内地帰投を下令される。
1944年（昭和19年）4月19日トラック発。　呉に向かう。
1944年（昭和19年）4月25日呉着。　整備休養。　龍巻作戦の準備にあたる。
1944年（昭和19年）5月3日あ号作戦命令を下令される。
1944年（昭和19年）5月5日呉発。　内海西部で、特四式内火艇と連合訓練にあたる。
1944年（昭和19年）5月8日呉着。　補給待機。
1944年（昭和19年）5月12日龍巻作戦は中止となり、作戦準備作業を取り止め。
1944年（昭和19年）5月14日15日呉発、アドミラルティー諸島−ウエワク間に配備、敵情偵察を下令される。
1944年（昭和19年）5月15日呉発。　アドミラルティー諸島−ウエワク間に向かう。
1944年（昭和19年）5月29日アドミラルティー諸島−ウエワク間の配備につき、索敵。
1944年（昭和19年）6月4日第七潜水戦隊司令官の作戦指揮下に入る。
1944年（昭和19年）6月8日第七潜水戦隊司令官の作戦指揮を解かれる。
1944年（昭和19年）6月13日あ号作戦決戦用意を下令される。　アメリカ機動部隊がマリアナに来襲。　先遣部隊指揮官は、マーシャル諸島方面配備の潜水艦を、カロリン諸島北方に移動、敵機動部隊攻撃を下令される。　当艦は潜水艦長板倉少佐の独断でマリアナ諸島方面に向かう。
1944年（昭和19年）6月14日グアム島南方に急行を下令される。
1944年（昭和19年）6月15日あ号作戦決戦発動を下令される。　アメリカ軍サイパンに上陸。
1944年（昭和19年）6月16日在サイパンの第六艦隊司令部はアメリカ軍上陸により作戦指揮が困難となり、第七潜水戦隊司令官に第一潜水部隊の指揮を委ねる。　丙潜水部隊（第二十二潜水隊司令指揮）に編入。　E散開線に配備を下令される。　丙潜水部隊とグアム島東方のX散開線南端（北緯11度、東経140度付近）に配備を下令される。
1944年（昭和19年）6月19日丙潜水部隊と東方の配備（北緯15度40分、東経147度20分〜北緯12度、東経146度）の東端に配備を下令され、東方に移動。
1944年（昭和19年）6月20日配備点付近に到着。　索敵。
1944年（昭和19年）6月22日24日グアム島に到着して搭乗員100名を収容、大分基地に輸送するように下令される。　配備を撤収してグアムへ向かう。
1944年（昭和19年）6月24日グアム島アプラ湾 沖に到着。　搭乗員107名と第三水雷戦隊参謀伊藤少佐を収容、大分に向かう。
1944年（昭和19年）6月30日大分着。　輸送人員を揚陸。　呉に向かう。
1944年（昭和19年）7月1日呉着。　入渠修理。　休養。
1944年（昭和19年）8月24日呉発。　内海西部で訓練。
1944年（昭和19年）9月1日呉着。　呉工廠に入渠。　回天搭載設備工事。
1944年（昭和19年）9月27日回天搭載設備工事を終わり、玄作戦準備にあたる。
1944年（昭和19年）9月28日呉発。　内海西部で回天との訓練。
1944年（昭和19年）10月3日呉着。　出撃準備。
1944年（昭和19年）10月17日捷一号作戦警戒を下令される。　回天関係作業を中止。　呉に回航。　急速出撃準備を下令される。
1944年（昭和19年）10月18日乙潜水部隊に編入。　比島方面の敵機動部隊殲滅のため19日出撃、A散開線配備（基点：北緯18度20分東経136度、基準方向：210度、距離：60浬）のホ哨区に配備を下令される。
1944年（昭和19年）10月19日呉発。　台湾東方に向かう。
1944年（昭和19年）10月20日乙潜水部隊と第三散開線（基点：北緯14度東経129度、基線方向：350度、距離：60浬）のネ哨区に配備を下令される。
1944年（昭和19年）10月25日錯誤によりレイテ湾北東400浬の配備につく。
1944年（昭和19年）10月27日甲潜水部隊に編入。　第一散開線（基点：スルアン島、基線方向：100度、距離：60浬）のヌ哨区に配備を下令される。
1944年（昭和19年）10月28日ミンダナオ島東方の哨区に配備を下令されるが、錯誤によりサマール島北東の哨区に向かう。
1944年（昭和19年）10月31日散開距離を100浬に変更を下令される。　スルアン島北東220浬において、敵機動部隊を発見と報告。
1944年（昭和19年）11月3日23:20 マニラの90度、600浬付近において敵機動部隊を攻撃。　エセックス級航空母艦撃沈確実と報告。　［アメリカ軍資料によれば、北緯13度46分、東経131度27分において、軽巡洋艦「レノ（Reno）」が雷撃をうけ損傷。］
1944年（昭和19年）11月4日リ哨区に配備を下令される。
1944年（昭和19年）11月8日ヘ哨区に配備を下令される。
1944年（昭和19年）11月12日3:40 サマール島北東の配備点において、敵情報告最後に消息を絶つ。
1944年（昭和19年）11月15日サマール島北東のニト哨区に配備の変更を下令される。
1944年（昭和19年）11月18日［アメリカ護衛空母「アンツィオ（Anzio）」の艦載機と、護衛駆逐艦「ローレンス・C・テイラー（Lawrence.C.Taylor）」の攻撃をうけ沈没。］
1944年（昭和19年）12月2日比島東方海面で亡失認定。
1945年（昭和20年）3月10日除籍。

謝辞

アイコンはkiyochan様の「アイコン&お絵描き工房」より、ご提供頂いた。

参考資料

  1. ∧雑誌「丸」編集部編．日本海軍艦艇写真集：ハンディ判　19巻　潜水艦伊号．東京，光人社，1997，p8-12,120-124
  2. ∧ 日本潜水艦史．東京，海人社，1993，p66，世界の艦船．No469 1993/3増刊号 増刊第37集
  3. ∧ 福井静夫．（写真）日本海軍全艦艇史資料篇．東京，ベストセラーズ，1994，p53
  4. ∧前掲．日本海軍艦艇写真集：ハンディ判　19巻　潜水艦伊号．p135
  5. ∧渡辺博史．鉄の棺　日本海軍潜水艦部隊の記録　資料編 3下．名古屋，ニュータイプ，2005，p789-794