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5:数日後


「博美ちゃん…」
この数日間、まったく話すらしなかった美香が話しかけてきた。
「……。」
土日に泊まりに行くほどの仲良しだった二人が、月曜になってみれば険悪になっていた。
そしていま初めて接触しているわけなのだから、自然と周囲には張りつめた空気が漂う。

「……。」
「……なに? 話しかけてきたんだから何か用なんでしょ?」
「博美ちゃん… 今朝『して』きてるでしょ?」
「!?」

「相手は……お兄ちゃんね。 博美ちゃんのお兄ちゃん。」
「…………。」
「なんでわかるかって?
 ……匂い、かな。 なんとなくわかるの。
 『あ、セックスしてきてる。』って。 精子の匂いかな?

 私と同じ……」


「……。」
「……博美、ちゃん?」
「……ねえ美香。 後で私の家に来てくれる? そこで話ししよ。」
「…わかった。」

出るとき、トイレの鏡を見て気付いた。
笑ってた。私。  だから美香は変な顔してたんだ
私、お兄ちゃんとセックスしてきた事を指摘されたのに……

その笑みは、どこかで見た気がするものだった……

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「……結局、二人共そうなったんだぁ。」
「……。」
「……。」
なんか、お兄ちゃんと一緒に美香に尋問されてるみたい。

「……変態なんかじゃない、って言ってたのにね……」
「……。」
「……。」
その言葉も、いまになっては何の意味もない。

「で? まさか土日はずっとセックスしてたとか?」
「……それは、美香も一緒でしょ?」
「……。」
美香の表情が明らかに不機嫌なものへと変わる。


「私たちはね、そんな甘い感じのセックスじゃないの。
 私の初めてはね……お兄ちゃんに、レイプされたんだよ。」
「え…」

「お兄ちゃんが、私を変な視線で見ているのは知ってた。
 お兄ちゃんがいつも家にいるようになってから……
 ますますその視線が気にはなってた。
 でも、まさかそんな事、するなんて……


 けど……結局襲われるまで、気付かなかった。
 どれだけ暴れても、お兄ちゃんは止めなかった……

 そしてね、毎日…毎日されてるうちに、私まで変になってきた。」

「……どんな風に?」

「……あんなにイヤだって思ってたのに、いつの間にか感じている自分がいた。

 お兄ちゃんなんてキライだ、死んじゃえ、って思ってたのに、
 されてる最中も、その後も……好きだって言われて、喜んでた……

 いつの間にか、自分からお兄ちゃんに求めるようになって……」

「……。」

「博美ちゃんにもお兄ちゃんがいるって聞いて…
 『不公平だ』『あいつらもこんな風にしてしまいたい』って……」


「フフ、んふふふふふ…… なんだそんな理由だったんだ。」
「博美ちゃん、何がおかしいのよ!?」
「フフ、なんならここで、お兄ちゃんと私がセックスするところでも見せようか?」
「おい博美!」
「……いいよ。ヤってみせてよ。 あんた達だって……」

「だってさ、お兄ちゃん。」
「い、いくらなんでもそんな急に出来るわけ…」
「……いいから勃たせてよ。」
お兄ちゃんのズボンから引っ張り出したモノを、一瞬息を付いてから口にくわえ込む。

「ん、うぐんむ…」
「う、うぉ…」
歯を当てないように、唇で扱くようにしながら、匂いを吸い込むように……
程なく勃ち上がったモノに上から覆い被さってあてがう。(パンツはもう脱いでいた。)


「んん……」
「う、はぁ……」
ため息のように同時に漏れる喘ぎ。

「おいちょっと、キツイ…」
「いいから。 お兄ちゃんはそのまま気持ちよくなってて。」
そしてそのまま動きを全開にして快感を貪る。


「どう美香? これで私たちも、あなたと同じ変態。 気が済んだ?」
「う、うん……」

「……もしかして、濡れてるでしょ?」
「う……」
あの時みたいな口ぶりで挑発する。 私、変わっちゃった…
「悪いけど、相手なら帰ってからお兄さんにしてもらいなさいね。」
「…………。」


「……美香、ちょっと見て。」
ずるる、と抜き出して、お兄ちゃんの性器を見せる。

「こ、これって……」
「そ、コンドーム。 コレしてれば妊娠する確率はぐっと下がるわよ。」
こんな技までも憶えてしまった。


「……美香、このぐらいは意思表示しときなさいよ。
 そうなったら、困るのは美香だけじゃないんだから。
 親だって、お兄さんだって… なにより美香自身が一番かわいそう。」

「……。」
「そして主導権を奪ってしまいなさい。
 そのくらいしないと、美香らしくないでしょ?
 お兄ちゃんなんて…色目使えばイチコロなんだから。 ね?」
そう言ってにっこりと笑う。 それは壊れてしまったからではなく、友人としてのほほえみ…

「……博美ちゃん……

 うん、わかった……」
美香も友人としても笑みを返してくれた。 わかってくれた。


「じゃ、悪いけど早く帰ってくれる?」
「え?」
「残念だけど〜、私たちは見せつけて興奮する趣味は無いんで。」
「ふふ。 うん。わかった。

 じゃ、あとは二人でお楽しみね。 私帰るから。」
「うん。 じゃ、また明日ね。」
「うん…… また明日……」

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「…………おい博美。」
「あ、ゴメンお兄ちゃん。 すぐに続き……」
「ちょ、あ痛てててて……!」
「え、痛かった!?」
「……毎日されてる上に今日も朝に2回抜いて、
 さっき1回抜けばいいかげん尿道が痛くなるっての。」
「あ、そうなんだ……」


結局萎えてしまったお兄ちゃんと、横になってるだけだった。
あの2人は今日も帰ってこない。

「お前、変わったよなぁ…」
「え?どこが?」
「……こんなに好き者だとは思わなかった。」

「……お兄ちゃんが、『好きだ』とか言うから…… その……」
「……でもな、いつまでもそうしてるわけにも、いかないんだよな……」
「……。」

「まあ、今はそんな小難しいこと考えなくてもいいけどな。」
「……そう、だね。」

「また、食べに出るか。 ワイン飲ませてやるよ。」
「うん……
 帰ったら、セックスする…?」
「コンドーム付けてな。」
「うん……」

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いつまでも、こんな事をしているわけにはいかない。
それは私もお兄ちゃんもわかっている。
でも… 一度嵌ってしまった、甘く温かい場所からは…なかなか抜け出したくはない…

あの時と同じ帰り道を歩く。 まるで恋人同士みたいに寄り添って。
「なあ、なんで…… 俺とセックスしたいって思ったんだ?」
「……好奇心、かな。一番相応しいのは。」
「好奇心…?」
「うん…
 お兄ちゃんとセックスしたら、どうなるのかなって…」
「……で? どうなった?」
「……わかんない。 まだ結論出てない。」

そして二人きりで眠りに就く。 それが当たり前だった昔のように。
「いつかは…」
「ん?」
「いつかは… こんな事もしなくなって… 離れちゃってくのかな…」
「さあ… それが普通だろ。」
「普通…… じゃあ、私たちは普通じゃないから……」
「いいからもう寝よう。……な。」
「……。」


いつも心は混沌に、頭は混迷の中にある……
でも、とりあえずこの場所では… 頭痛も起きずに、よく眠れる……

終わり



おまけ