<ブラボー、クラシック音楽!−折々の感想#3>
「ベルガマスク組曲」全曲生演奏
[2008年6月の第42回例会]
(Live performance of 'Suite Bergamasque')

−− 2008.06.06 エルニーニョ深沢(ElNino Fukazawa)
2008.06.14 改訂

 ■はじめに − 3周年頃に構想
 私が主宰するクラシック音楽を楽しむ会【ブラボー、クラシック音楽!】でドビュッシーの『ピアノ組曲「ベルガマスク組曲」』(全曲)を初めて聴いたのは05年4月の例会で、その後06年6月の例会では有名な第3曲「月の光」だけを聴きました。これらは何れもCDの再生でが、遂に08年6月4日(水)の例会で全曲生演奏が実現しました。演奏者は3周年(=07年10月の例会)の時にショパンのワルツを弾いて戴いたピアニストの小川恵子さんです。
 実はこの企画は3周年頃から密かに抱いて居たもので、3周年の1ヶ月前に始めた<ロマン派>シリーズの仕上げとしてモダニズム音楽の旗手ドビュッシーに何とか繋げたい、そして出来れば生演奏で遣りたい、と漠然と構想して居ました。この事は既に3周年直後の感想「「ブラボー、クラシック音楽!」3周年」の最後に記した通りです。構想から8ヶ月後に願いが実現した訳で、又「月の光」演奏の映像と音声(=モノラル)をデジカメのビデオ機能で収録しましたので大いに[自己]満足して居ます。ビデオのコピーは演奏者の小川さんに差し上げる積もりです。
 『ベルガマスク組曲』を選曲した理由は、この曲がモダニズムの萌芽を内包し乍らも未だ充分にロマン派的な過渡期の作品なので「繋ぎ」に相応しく演奏時間も20分弱で最適と考えたからです。尚、『ベルガマスク組曲』の曲目解説は
  ドビュッシー「ベルガマスク組曲」(Suite Bergamasque, Debussy)
を参照して下さい。

 ■ワーグナーとドビュッシーを敢えてぶつける
 この日は生演奏の前に<ワーグナーとドビュッシー>というテーマで、
  ワーグナーの『楽劇「ニーベルングの指環」』からの抜粋
  ドビュッシーの『歌曲集「艶なる宴」第1集』から「月の光」
を聴き、音楽の質が対極的と考えられて居る二人の音楽の”因縁の深さ”を話しました。特に後から生まれたドビュッシーにとって、一度は心酔したロマン派の集大成者ワーグナーを如何に超えるか!、は本質的命題だったのみならず「ワーグナー」という語はドビュッシーの音楽を解読するキーワードである、と私は考えて居ます。ドビュッシーが若き頃の1888年(26歳)と89年(27歳)に2度もバイロイト祝祭劇場(←1876年に完成したばかり)を訪れたにも拘わらず、反ワーグナーに転じて行った過程は前掲の曲目解説に記した通りです。尚、この話題に興味有る方はドビュッシー自筆の『ドビュッシー音楽論集』(△1)のp173〜181を是非お読み下さい、凡百の上撫で解説本などが到底及ばない面白さが有ります。
 以上述べた意味で、07年秋から「ロマン派」をテーマに掲げて来た<ロマン派>シリーズの最後として、片やロマン派の終着点に鎮座するワーグナーと片やロマン派を解体するモダニズムの出発点に立つドビュッシーの二大巨頭を私は敢えてぶつけてたかったのです。
 この日の進め方として、先にCDで『ベルガマスク組曲』の各曲の冒頭を聴き乍ら06年6月の例会に引き続き再び題名の由来を説明しワトーの「原風景の絵」を見て戴いた後で、『歌曲集「艶なる宴」第1集』の歌曲「月の光」との聴き比べも試みました(←この聴き比べの意義も前掲の曲目解説に記しました)。1回の聴き比べで全てを感得するのは無理ですが、機会と時間が許せばこの様な試みを今後も取り入れて行きたいと考えて居ます。そして一番最後(=大トリ)に『ベルガマスク組曲』全曲生演奏の熱演を充分堪能させて戴きました。

 ■結び − カルヴァドスで乾杯
 この日は又、若手作曲家の船本孝宏さんが『自作作品集』のCDを持って久し振りに参加して呉れたので、それも少し聴きました。会の皆さんも喜んで下さり、恒例の懇親会は会話が弾み大いに盛り上がりました。上野さん持参の林檎の実が入ったカルヴァドス(※1)が特に旨かった!

 >>>■その後
 後日、私は演奏中のビデオと写真をCDにコピーし小川恵子さんに郵送したら小川さんからビデオの礼と共に、当日の生演奏後の懇親会での会話が切っ掛けで本文で紹介した『ドビュッシー音楽論集』(△1)を早速購入し読んで居ます、というメールを6月13日に戴きました。いやぁ、益々盛り上がって来ましたゾ!!
    {この章は08年6月14日に追加}

−− 完 −−

【脚注】
※1:calvados[仏]。リンゴから作るブランデー。フランスのノルマンディー地方カルヴァドス県で生産されるのでこの名が有る。

    (以上、出典は主に広辞苑です)

【参考文献】
△1:『ドビュッシー音楽論集 反好事家八分音符氏』(平島正郎訳、岩波文庫)。

●関連リンク
補完ページ(Complementary):3周年直後の『ベルガマスク組曲』の
全曲生演奏への願い▼
「ブラボー、クラシック音楽!」3周年
(The 3rd anniversary of our CLASSIC event)

補完ページ(Complementary):『ベルガマスク組曲』の曲目解説▼
ドビュッシー「ベルガマスク組曲」(Suite Bergamasque, Debussy)
モダニズム音楽について▼
「モダニズムの音楽」概論(Introduction to the 'Modernism Music')
『ベルガマスク組曲』全曲生演奏の活動記録▼
ブラボー、クラシック音楽!−活動履歴(Log of 'Bravo, CLASSIC MUSIC !')
ピアニスト小川恵子さんのサイト▼
外部サイトへ一発リンク!(External links '1-PATSU !')


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