◆ 神々の魔法

『エンサイクロペディア・アルカナ』が手元に届いてから大分経ってしまった。AFF2サプリメントの例にもれず、この『エンサイクロペディア・アルカナ』もTRPG用のデータとして色々手が入っているわけだが……なんというか、各々のゲームブックでは特定のシチュエーションにあったあれやこれが、無限の可能性(=シナリオ)に適応するために汎用的な設定を与えられているように感じてならない。いや、サプリメントとして再構成されている以上、こうなるのは必然であるし、実際にTRPGのシナリオを作るうえで活用するとなれば、非常によくできているに違いない。ただ、自分のようにあくまでゲームブック『ソーサリー!』における考察ごっこをしている身からすると、こう、なんというか事象の角が削られていてしまっているように感じてしまうところもあり……。つるつるに仕上がった球体ではなく、このとがった角はどうちゃらとか、この部分の凹みはきっとこうこうして出来たのではなかろうか……という遊びがしたい自分にはあんまり向いていない資料な気がするわけです。当然のことながら、『エンサイクロペディア・アルカナ』の編集意図はそこにはないので、これは仕方無し。そういうものなのだと割り切るしかない。あくまでこれは私個人の問題である。わかっている。

 さて、それでも『エンサイクロペディア・アルカナ』にはいくつか興味を惹かれる記述がありました。その中から、今日はとある首飾りを取り上げようと思う。
 そう、『ソーサリー!』の冒険においてシャムタンティにて拾うことができるアレだ。『エンサイクロペディア・アルカナ』では、聖なるアイテム「アスレルのお守り」として紹介されている。こいつはマンパン砦の奥深く、衛兵隊長カートゥーム攻略に一役買うアイテムなわけだが、その流れは少々強引であった。
 ここについて、『エンサイクロペディア・アルカナ』では以下のように説明を試みている……


 一部の者が言うには、隊長はあらかじめアスレルに魔法をかけられていたそうです。

 このアスレルというのは愛と美の女神様である。つまり、カートゥームが主人公のでっちあげた恋物語を信じたのは、愛の女神の魔法によるものだったのかもしれないというわけだ。となると、この話をとっさに作り上げた主人公のほうも魔法にかけられていたのかもしれない。偶然、愛の物語が符合したなんてことは都合がよすぎる。だが、首飾り=アスレルのお守りを拾った時点でアスレルの影響が主人公にあったとしたら……これならまあ、ありえない話ではない。読者のアバターであるはずの「きみ」がいきなり口八丁っぷりを示す例のシーンの違和感を考えると、確かに何かしらの力が作用していたというのもありかもしれない。
 となると、ゴブリンジョークの数々も冗談と皮肉の神の御業としたくなるし、さらし台の男に浴びせた罵詈雑言の裏には悪意の神・スラング様の思し召しがあったのも確かと言える。そう、「きみ」はカーレで四行詩を集めていたあの時、スラングの試練と称して悪意の神の信徒と触れ合っている。悪しき神の陰謀に巻き込まれる機会は確かにあったというわけだ……

(8/15/25)

◆ ヴィシュラミ沼のゾゴルゲス

『エンサイクロペディア・アルカナ』にはいくつかの新しい魔法が載っているのだが、その説明には時として著名な術師についての情報もついている。その中の一つ、妖術(アナランドの魔法)に属するであろう FIZ なる呪文は可燃性のガスの泡を飛ばせる術だ。そして、この使い手として「ヴィシュラミ沼のゾゴルゲス」なる沼ゴブリンの女シャーマンが紹介されている。
 常々、フェネストラが沼ゴブリンたちに LIX の巻物を譲ったにしては、活用する側に素養が無さ気のは不思議と思っていたのだ。ゾゴルゲスというシャーマンが存在するのであれば、フェネストラが LIX を上手く使って時の蛇と戦うと考えたとしても不自然ではあるまい。そしてゴブリンにシャーマンは付き物なので、沼ゴブリンことウグラック・ジェイ族にもシャーマンがいて然るべき、と考えることに個人的な抵抗はまったくないわけである。

 ヴィシュラミ沼で出会う4人の沼ゴブリンたちは、フェネストラから受け取った巻物を彼らのシャーマンのところへ運ぶ途中で時の蛇と出会い、逃げていたのだとすると……ゾゴルゲスの住処は沼の北岸、つまりザンズス連邦の麓近くと想像できる。もしも第三巻と第四巻の間で出会えていたのであれば、きっと我らがアナランダーにとって大きな助けになったのではないだろうか……もちろん、利害関係が一致すればの話であるが。沼ゴブリンは人間を特に嫌っているらしいが、マンパンの衛兵派兵や七匹の大蛇の悪行によって大魔導がカーカバード中から恨みを買っている現状、手を組める可能性はあるに違いない。

 ところで最初に触れた FIZ だが、面白いことに触媒は「橙色の粉末」とされている。この粉は本編中では女族サチュロスからもらうことができるアイテムであるが、麓の沼地に関連があるのであれば、入手場所としては適切な気がする。ちなみに『エンサイクロペディア・アルカナ』にはこの粉そのものについても触れられており、そこでは「起源は不明、おそらく薬草だろう」と書かれている。

(8/24/25)

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