第4回

「タイ〜バンコク〜」(2002.2)

- タイの映画といえば、ごく最近日本でも公開された「アタック・ナンバー・ハーフ」と「レイン」ぐらいしか知りません。どちらも印象的な風景がある映画でもありませんし、特別気に入った映画というわけでもありませんから、映画の舞台を訪れるという点では、魅力のある国ではありませんし、今回の旅行の目的も当然それではありません。ただ、オカマが多いとか、屋台が多いとか、映画の雰囲気は少し味わうことはできました。現地ガイドは「誰でも生まれたときの性別にこだわらず、大人になったとき性別を選べる自由な国」なんて言ってるし、実際明らかにそれと分かるオカマさんを1日1回は見たので、確かにオカマ密度は高いのでしょうが、「法律とは無関係に皆が飲酒運転をしてる自由な国」なんて言ってるガイドの言葉ですから、本当に自由かどうかは何とも怪しいものです。「アタック〜」を見る限り、それなりにオカマさんたちに対する差別もあるようですしね(そりゃそうでしょうね)。屋台は確かに多く、町なかの数多くの屋台が並ぶ通りだけでなく、少し町から外れた車道にもぽつんと屋台が出てて、何人かが食事をしています。「アタック〜」で、あるオカマさんが屋台の手伝いをしていたり、「レイン」で主人公の殺し屋がバイクで横付けして屋台で買い物したりするシーンがありましたが、それほど屋台は生活に密着しており、なくてはならない存在なのでしょう。そんな屋台で食いまくることも今回の旅行の楽しみの一つでした。ただ、「レイン」の公式サイトで紹介されていたような殺し屋の多さは感じられませんでしたけどね。あたりまえか・・?

- さて、今回のタイ旅行の本当の目的は、実はジャッキー・チェンなのです。で、なぜタイでジャッキーかといいますと、実は彼がタイを舞台に「HIGHBINDER」という新作を製作しており、なんとその撮影を見学させてくれて、しかも彼との昼食会、ツーショット写真まであるというツアーがあったのです。「ラッシュアワー2」のプレゼント企画にもなったこのツアー(申し込むも見事に外れ)ですが、そのツアーの案内が送られてきたのがきっかけでした。こんなことはめったにない、もしかしたら一生に一度かもしれないと、若干高目のツアーでしたが、私財を投げ打って(?)申し込むことにしました。(後で結構頻繁に開催されていると知ることになるのですが・・)

- ジャッキー・チェンといえば、少年時代にTV放送の「酔拳」で知り、人並みにカンフーのカッコ良さに憧れ、「プロジェクトA」の面白さにすっかりファンになり、彼の作品を何本も見た時期がありました。しかし、彼の作品のほとんどは、ジャンルの制約がある以上仕方がないのかもしれませんが一定のパターンに収まってしまい、そこから抜け出そうという努力はアクション的には肉体を痛めつけることばかりに、内容的には暴力を正義化できる刑事物が多くなってしまいます。結局、コミカルアクションが消えた無謀なアクションや、メッセージが先行した映画にどうも馴染めなくなって、「ポリスストーリー」あたりから彼の映画からしばらく遠ざかっていました。もともと脚本が作れず(紙にするとすぐに盗まれ盗作されるため)、監督の頭の中だけで処理されるという香港映画の性格上、複雑な映画を作ることは不可能ですから、彼ひとりでは袋小路に陥ってしまうのは無理もないところでしょう。(そういう意味で「プロジェクトA」は実に良くできた映画でした)しかし、最近になって、香港映画人たちがハリウッドに進出し、その力を発揮している中、ついに彼もハリウッド進出を果たし、また彼の映画を見始めることになります。ハリウッド映画自体は十分彼の魅力を引き出せているとは言えないものの、彼自身の作る映画にはかなり影響を与えているのでしょう。「Who am I?」はハリウッド映画の良いところを吸収した結果生まれた近年の傑作だと思います。そんな訳で、改めてジャッキーファンとなったところにこんなお知らせが来てしまったのですから、行かないわけにはいかないでしょう。もしかしたらサインをもらえるかもと「Who am I?」のDVDだけは忘れないよう、準備万端整えて、出発の日を待ちます。

- 1日目。関空へ行くと、若い女の子や一目でそれと分かるいかにもな女性ファン、"龍"と背中に書かれたジャンパーを着た青年、幼い子を連れた夫婦や年配の女性まで実に幅広いファンが列を作っていました。そして、タイへ。5時間程度のフライトなのでそれほど苦にはなりません。タイは雨季、夏季、乾季の三つの季節があり、11月から2月の乾季は一番過ごしやすく、外国人観光客が最も多く訪れる時期だそうです。確かにすこし蒸し暑いものの、最高気温も32,3度程度だし、日差しもそれほどきつくなく、旅行中通して不快感はありませんでした。

- 2日目はバンコク市内ツアー。なかなか楽しかったですが、映画には全く関係ありませんので、その話題は後に回します。そして3日目。いよいよお待ちかねのジャッキーとの昼食会です。

次のページ