πコラム
さて、このπ、「教科書から3.14が消えた」「ゆとり教育が学力低下を招く」となにかと 話題の的ですね。
たしかに、いろいろな方にこの企画をお話すると「でも、これからの子供は3.14は知らないでしょ」とか「もうπは3だから、3月中ずっとパイの月にしたら?」などと言う人もちらほら。
そこで私たちも調べてみました。
友達の子供がちょうど小学生なので、聞いてみると、教科書では「3.14」となっていて、円周率が3.1415…と続くことははっきり明示されているそうです。ただ、「円周率はふつう3.14であるが、この教科書では3として計算する」と記述してあるとのこと。
でも、教師は「3」で計算はしていないそうです。
だって、そうでしょ、3にしちゃうと正6角形の外周と同じになり、多角形と円との絶対的違いをどうやって説明するんでしょうか、ねっ?
ちなみに、学習塾の教科書では「3.14」
灘中学校の入試では「3.1416」
であるとその友達は親子ともども苦笑しておりました。
そこで私たちも実際に計算してみました。
取りいだしたるは、お家で使っている茶筒。よれよれの紙製のメジャーでその直径を測ると、7.7センチメートル。そして、胴の周りもメジャーで測ると24.2センチメートル。円周を直径で割ると、なんときれいな数字が出てきました。測定は相当アバウトなのに「3.14……」だったのです。
面白くなって、つづけてCD-ROMケースでも測ってみました。直径12.7センチ、外周40センチ。割ると3.14……。もひとつ、リビングの小さな壁掛け時計では、直径15センチ、外周47.2センチ。割ると3.14……。
たったこれだけのことなのに、嬉しくなるのはなぜなんでしょう。思わず笑顔の瞬間でした。そして、「3.14」という3桁の重要性もなんだか分かったような気がしました。経験則でこの3桁は譲れないということではないでしょうか。
(※この計算について、実測が小数点以下1桁だから、割った数値の有効桁数も小数点以下1桁ですよ、とのご指摘がありました。あぁなるほどそうでした。でも、あまりに面白い体験だったので、記述をそのままにさせていただきます)
最後に毎日新聞の「余録」(2002.9.22)から一部抜粋したものも掲載しておきます。
「円周率は3.14159……とかぎりなく続く数ですが、ふつうは3.14をつかいます」。小学校5年生の算数の教科書(教育出版)の一節だ。●古代ギリシャのアルキメデスや和算の関孝和の説を紹介し、5億けたより先には、「123456789」と続く箇所があるとも記している。とにかくすべての教科書で円周率は3.14。無限である点にも触れている●ところが、「教科書から3.14が消えた」といったデマが今でもまことしやかに流れている。大概、「これでは学力低下は当たり前」「ゆとり教育は国を滅ぼす」と続く。文部科学省が先ごろ、発展的学習の事例集を作成した際も、「3.14が復活した」かのような言い方がまかり通った●学力低下は問題だが、誤った前提をもとに議論しては困る。今春施行の新学習指導要領には、「円周率は3.14を用いるが目的に応じて3で処理できるように配慮する」とある。以前と同じだ。それを「3になった」と早合点した一部メディアが、「教科書から3.14が消えた」と流した。学習塾の広告があおったとの説もあり、「あしきゆとり教育」の象徴にしたい論者が、不正確を承知で言い続けたフシもある(後略)