本格的な商業・サービス業向け補助金を作る  

この手法を提案すると、事務担当者からは怒られます。

私が考えた対応策〜(c)常時募集と書面審査(1)
お話ししたように、商業・サービス業の場合、企業は事業化を急いでいます。
支援側もそれに応えなければなりません。私が、その一つの手段として考えついたのが、「常時募集」です。
ですが、事務方の目から見れば、この提案はたいへん不評になるはずです。
手間がかかりますから。

通常、補助金は申請を募集して、まとめて審査をし、採択を発表します。いわゆるバッチ処理です。
スポンサーである行政サイドも、募集開始で事業のPRを展開し、プレス発表で大々的に成果を自慢したい。そう考えると、バッチ処理を望みます。だらだらとした常時募集は、事務方も行政も望みません。

ところが、企業側から見ると、日常業務をこなしながら申請書の作成も進めますから、忙しい時は避けたい。
補助金の募集は2月、3月あたりに集中してしまいます。企業は年度末で忙しい。ことに小さい会社となると、何でも経営者がやらなければならないので、なおさらです。
ですので、常時募集の方がありがたい、と感じます。
再チャレンジをしたいときでも、1年待つというのは、つらいです。

申請者の利便性を考えて「常時募集、流れ処理」を実現するためには、いくつかの工夫が必要です。

まず、受付スタッフの事務軽減を考える必要があります。
いつ来るかわからない申請者のために常時窓口要員を配置しておくわけにはいきませんので、受付けは「郵送のみ」とします。書留で送ってもらいます。
当然、書類不備や資格要件齟齬もあると思います。
客観的にわかる問題があれば、その旨、メールで連絡を入れます。
「○○が不足しているので受理できません」「○○が空欄となっています」「添付書類の○○がありませんでした」といったところでしょう。

こういった問題を避けるために、ホームページにチェック表を載せておきます。「応募書類を投函する前に、このリストをチェックしてみてください」という具合にします。


(必要書類リストの例)
(1)申請前確認書(資格要件に合致しているかを確認する)

(2)申請書様式

(3)事業についての補足説明(必須ではない、最大〇ページ)

(4)決算報告書(直近)

(5)登記簿謄本(履歴次項全部証明書、発行後3か月以内の原本)

(6)会社概要がわかるもの(社歴書なども可)

(7)納税証明書(法人事業税、法人都民税)

(8)返信用封筒(審査結果を送るためのもの)



応援ファンドの場合、購入予定備品の見積書や、2期分の確定申告書のすべて(別表一〜十六、決算報告書、法人事業税概況説明書、勘定科目内訳書等)などなど、かなり多くの書類を求めていました。個人事業主や創業予定者の場合は、さらに提出書類が増えます。
一番大切なのは「事業内容」なのですから、必要書類はできるだけ少なくすべきだと、個人的には考えます。

事務方は、申請者が資格要件を満たしているかどうかを、最初に確認します。
連絡のため、申請書を作った人のメールアドレスは必須となります。
明らかに募集要件を満たさないものについては、まずは連絡して確認し、不足書類については、追加で受け取ることにします。常時募集であれば、こういう処理も可能になります。

返事がない場合、受付期間そのものが存在しないので、そのまま候補作で残ってしまいます。
そのままではきりがないので、<賞味期限>のようなものを設けます。「再提出を受け付けますが、○年○月○日まで提出がない場合は落選とします」ということになります。

一方、事業内容の記述部分については、「問題があってもそのまま受け付けて良し」と割り切ります。
事務方は、受付けた申請書を1か月分をまとめて、書面審査に回します。

申請企業の中には、何を勘違いしているのか、あるいは金策なんかと絡んでいるのか、かなりの部分白紙のままで提出しようとする会社があります。採択される可能性はゼロです。

こういう内容の事業だと、審査する側も躊躇する→

書面審査に回す際、 事務局は必要に応じこれに意見を添えます。
本来、事務方は、事業内容そのものの価値判断はできないことになっていますが、たくさんの書類を扱っていると、いろいろと気づくこともあります。そういう部分を、書面審査員が見落とさないようにするために、意見を添えることができる制度にするといいのではと思います。
事務方にも責任感が出ますし、たくさんの目を通すことが良いのではないかと思います。

事務局側も意見を添える→

予め、順次受け付けたものを書面審査に回す仕組みを作る必要があります。
このため年間契約した審査員を、予め配置しておきます。契約内容は当然「1件についていくら」ということになります。この予算が制約されると、1年間に審査できる申請書の数が減ります。

予算いっぱいになったら、「この補助金の今年度の申請は予定数に達したため打ち切りました」と、ネットで公表することになると思います。
いきなり〆切というのも問題ですので、「残り〇件」という情報提供を、定期的に行う必要があるでしょう。


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