本格的な商業・サービス業向け補助金を作る  

商業・サービス業というのは「走りながら考える」商売です。予め事業計画を立てて決められたゴールに向かうのには馴れていません。

商業・サービス業向けの補助金を作りにくい理由〜(4)商業・サービス業の事業は採択後の事情変更が多い
商業・サービス業の経営者は、「金額は少なくてもいいが、使い勝手のいい補助金がほしい」と、おっしゃいます。
つまりは、金一封、使い方自由、ということになりますが、それは報奨金や交付金という性格のお金で、補助金とは違います。補助金は使途がはっきりと決まっていなければならない、とされています。

しかし、そうは言っても、商業・サービス業のための本格的な補助制度となるためには、柔軟に調整できる仕組みが組み込まれている必要があるでしょう。
商業・サービス業の場合、事業計画が途中で変更されることはままあります。状況を見ながら方針修正のかじ取りをしつつ進めなければ成功しないというのが、商業・サービス業の常だからです。
ですから、支援事業も、こうした揺らぎをできるだけ吸収できるように設計しなければならないのです。
後出し補助金の不思議→

補助金では、最初の決定額が全額でないのが普通→

いかなる場合にも事業が成功するとは限りません。

「事業目的も実施計画も良かった。補助制度との齟齬もなかった。お金も適切に支出され、事務に間違いもなかった。しかし、事業は完遂できなかった」というケースが起こります。
問題は、その場合でも補助金を支給するかどうかです。
申請企業としては、補助金が欲しいですから、いろいろと事情説明をします。ここでもめます。
応援ファンドでは、「事業目標が一つでも達成できなかったら、助成金はゼロ」という厳しい対応をしてきました。
また、いったん設定された事業目標については、計画変更が認められないことになっていました。

通常は、事業目的が達成されなかった場合、補助金は支給されません。
製造業の場合、「新製品開発で補助金を申請したのに、新製品が開発できなかった」。この場合は、目標未達で補助金が全額カットされても、まぁ、納得してもらえるでしょう。

しかし、商業・サービス業の場合で、「月商5000万円を目的とする事業を申請したけれど結果的には月商1000万円にしかならなかった」とします。その場合に、手続きは適正だけど、目標未達だから補助金ゼロとするのは、いかがなものかと思うのです。
「新しい学童保育施設を作って児童50名を受け入れると申請し、実際に施設は完成したのだが、募集しても児童が30人しか集まらなかった」「障害者の就職率80%を目指す事業で申請したが、がんばっても50%にしかならなかった」――そういう場合に、補助金ゼロにできますでしょうか。

つまり、商業・サービス業を支援するにあたっては、製造業のような「最終目標を絶対に実現させる」という管理方法は、いささか無理があるということです。
事業に対する哲学の問題になってきますので、これ以上踏み込むのは控えますが、いずれにせよ、避けて通ることができない課題です。

今回の事業提案で、社会貢献型と経営力向上型の2種類のビジネスタイプを設けた理由は、ここにあります。
前者は、事業がともかくも立ち上がっていて、経費支出の裏づけがあれば、補助金を全額認める。ポジティブ評価です。
後者は自分の作った目標が達成できなかった場合、途中までしか補助金は出ない、という仕組みになります。ネガティブ評価です。

他方、補助金のもらい馴れをした企業さんは、資金的な余裕もあるので、「人件費が出なくなった分は、こっちに回そう・・・」というような、のりしろのような経費をちゃんと作っておきます。だから、ムダなくムラなくムリなく補助金ゲットしていくのです。
逆に、素人企業さんは、常に風当たりが強い立場に置かれっぱなしになって、かわいそうです。

事業目標をあまりにも重視しすぎると、別の矛盾も生じます。
補助金審査はコンペですから、当然「高い目標」を立てる方が採択されやすくなります。しかし反面、「高すぎる目標」は、未達で補助金ゼロとなるリスクが生じます。
補助金を出す側も、目標未達でゼロというのは避けたいのです。
かといって、目標下げて不採択になったら、元も子もない。
そういったジレンマにさらされています。


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