本格的な商業・サービス業向け補助金を作る  

なぜ税金をつかって支援しなければならないか。その哲学が必要。

私が考えた対応策〜(e)コース分けと新規性
ここで、「事業の目的」というものを、どう捉えるかが重要となります。
そもそも、企業活動は経営者が独自の判断で行い、責任も経営者が負うのが原則です。では、なぜそれに税金を投入して支援しなければならないのでしょう。
納税者側を説得する理屈が必要になります。

すでにお話ししたように、私は、2つの理由を考えました。

ひとつは社会貢献の視点。
つまり、「企業が行おうとしている事業が、広く社会からも求められていて、それを行うことが社会のためにもなる」から、「税金を投入してでもやってもらう価値がある」ということです。
もちろん、そんなことは行政がやればいいことなんですが、個々の社会貢献事業にはその利益を受ける人とそうでない人とが発生します。
例えば、私立の学校があります。その受益者はそこで学ぶ学生です。学生を育てることは社会全体にとっても大切なことですから、補助金は出してもかまわないでしょう。
しかし、全額補助するのは、やり過ぎです。やはり、利益を受ける以上、相応の負担は当事者たちが負っていただく、そのような事業なら補助金を出して民間企業にやっていただくのが適当なのではないか、ということです。

もう一つは、企業の経営体質そのものを強化するのは、社会の安定にとって必要だという視点。

企業に成長してもらって、将来税金を支払ってもらえれば、それなりに国や地方も潤うわけだし、企業経営が安定すること自体、雇用や経済にとって重要であるということです。
その意味で、経営そのものを見直す機会を与える。これに要する経費は税金で補助してもかまわないという視点です。

この区分にしたがって、私は、社会貢献事業と経営力向上事業の2つの事業コースを考えました。
  社会貢献コースと二段階抽出→
経営力向上コース→

補助事業には新規性が必要と言われます。
しかし、商業・サービス業の場合、製造業と違って、さほど新規性を求める必要はないのではないか、と私は思います。
もちろん、従来の商材を単純に拡大販売するために補助金を使うというのでは、公費を投入する大義名分は立ちません。

しかし、社会貢献事業の場合、それ自体の普及に公的な価値があります。
「世の中の人が喜ぶ仕事をしているので、この事業範囲を拡大したい」というのは、大変結構なことではないでしょうか。何もわざわざリスクを犯して別事業に仕立てあげる必要はありません。
このため、社会貢献コースについては、新規性を要求しないことにします。
こんなこともあった(物流効率化の失敗)→

他方の経営強化については、新規性云々とはそもそも別次元の話です。
新規性を追ったが故に赤字になったというのでは、「何のための経営強化だったのか」という結果になるでしょう。
ですが、補助金に採択する以上は、これまでの事業をこういう風に工夫して改善した、という主張が必要となります。
その程度の新規性は求めたいと思います。
 

私としては、「商業・サービス業の支援をする場合、新規性を求める必要はない」と考えています。
応援ファンドの卒業企業である志向技研工業様は、今、荒川区で「お年寄りの安否確認・見守りサービス」をやっています。「電気の利用グラフからお年寄りの生活状況を把握する」という方式をとっており、他の区への普及に邁進しておられます。
こういった事業に新規性を求めるならば、普及促進にあたって、その都度別方式を考えなければならなくなります。
どうも、おかしいです。

中には、「新規性のない事業に補助する必要はない」と言う人もおられるでしょう。
その理屈がいかなる場合でも成り立つとするならば、伝統工芸はもとより、古くからの文化や建築物を税金を使って保存する意義もないことになります。「おもてなしの心よりも、ロボットによる自動搬送サービスの方が上」ということになります。
高度成長期の固定観念は、そろそろ捨ててもいい頃あいではないかと、思うのです。
新規性の落とし穴→

新規性を主張するためには、対比表が便利→


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